霧越邸殺人事件 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1793
レビュー : 157
  • Amazon.co.jp ・本 (701ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101386119

作品紹介・あらすじ

或る晩秋、信州の山深き地で猛吹雪に遭遇した8人の前に突如出現した洋館「霧越邸」。助かった…安堵の声も束の間、外界との連絡が途絶えた邸で、彼らの身にデコラティブな死が次々と訪れる。密室と化したアール・ヌーヴォー調の豪奢な洋館。謎めたい住人たち。ひとり、またひとり-不可思議極まりない状況で起こる連続殺人の犯人は。驚愕の結末が絶賛を浴びた超話題作。

感想・レビュー・書評

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  • 雪に閉ざされた洋館で次々と起こる連続殺人。
    クローズド・サークルものの本格ミステリである。

    見立て殺人で始まる連続殺人劇は、どこかちぐはぐな部分を残しながら進んでいく。
    主人公は長年の友人に誘われての参加であり、劇団員がひとり、またひとりと理由もわからぬままに殺されていく状況に戸惑う。
    しかし想いを寄せていた女性が被害者となったとき、初めて主人公にリアルな感情として殺人への怒りがわいてくる。
    トリック自体はそれほど凝ったものではないと思う。
    物語が書かれた当時はどうだったのかわからないが、多くのミステリーを読んでいると何となく解決への糸口がいくつか読んでいて浮かんできてしまうからだ。
    それでも、何故?と思いから読み進んだ。
    人によって美意識は違う。
    歪んでしまった強烈な意思は、他の人たちを巻き込んで悲劇を呼ぶ。
    到底受け入れられないと感じた犯人の論理を、時が経ち、完全に否定しきれなくなっていく主人公の心情が切ない。
    物語の世界観がそうさせているのか。
    独特の雰囲気の中で淡々と物語は進んでいく。
    本格ミステリーが読みたい!!という人には面白い物語だと思う。
    犯人について頭ではこういう人もいるのだろう…と理解できるものではあっても、やはり納得できる動機ではなかった。
    館の持つ不思議な力と理解しがたい動機。
    本格ミステリーなのに読み終わったあとに残ったのは、どこか哀しみが混じったやりきれなさだった。

  • 劇団員の8名が季節外れの大雪で道に迷い、泊めてもらうことになった霧越邸。そこで起こる連続殺人事件。北原白秋の『雨』の歌詞による見立て殺人と考えられること、殺された人物名と共通する暗合が次々と見つかるなど、謎は深まっていく。邸の関係者からは、この邸は訪れた者の未来を映す家であるという謎めいた発言があり、最初の被害者の実家での警備員殺しや過去の火事との関連性が疑われること、邸内を徘徊する謎の人物の存在など、事件の展開や膨らまし方がすばらしく、引き込まれる内容であった。
    事件の途中で、事件記述者が消去法による犯人の特定を行ったところ、全員が消去されてしまうところも面白い。
    探偵役からの真相説明で、「吹雪の山荘」での連続殺人のメリット・デメリットや、見立て殺人が行われる理由の解説があり、興味深い内容であった。
    探偵役等から、論理的な推理が示されていくが、その内容は厳密に考えると甘いと感じる部分があるし、根拠として出される伏線があまりに細かすぎて読者には気づきにくいものがあるし、犯人を特定するだけの根拠が十分に示されてはいないと感じた。
    また、犯人の設定に関しては、現実的にありうることなので個人的には問題はないと思うが、きれいな回答ではないので、不満に感じる人もいるのではないだろうか。
    犯人が最後に語る「美のあり方」に関する独自の哲学も興味深い内容であった。

    (ネタバレ)
    ・アリバイなどで、共犯の可能性が一切検討されていない。
    ・槍中の説明の中で、犯人が『雨』の見立てをした理由として、「死体が水で濡れていたから」としているが、その前の説明で否定している「犯人の唾液、血液等を洗い流すため」という理由でも成立するのではないだろうか。
    ・甲斐が忍冬の鞄から睡眠薬を取っていない理由として、忍冬が他の人に薬を渡すのを甲斐が目撃していないことを挙げているが、鞄の中に薬剤名と用法を書いた紙が入っていたら、甲斐でも盗みだすことは可能。そのあたりのことが明確に示されていない。

  • これも読むのは何回目だろう。

    これまでは読むたびに「なんだかイマイチだよなー」と思ってたのだけど、今回はなかなか楽しく読めました。思ったよりちゃんとした新本格ミステリだったんだなぁ。

    最初の殺人の解明は論理的で「うまい!」としか言いようがないんだけど、その後がグダグダで落差が激しすぎる(笑)。この頃からミステリにヘンテコ超常現象っぽいものを取り入れようとしているみたいだけど、思わせぶりに肖像画が落ちたり天井のガラスにヒビが入ったりするのは、正直言って興ざめ。(ただ綾辻さん自身はこの路線が好きみたいで、その最たるものが『暗黒館の殺人』になるんだよね、きっと。)

    十角館や水車館でも感じる、この頃の綾辻行人の小説に共通する勢いみたいなものは強く感じられます。この頃は有栖川有栖も『双頭の悪魔』みたいな傑作を出してきていて、ミステリファンとしてはウホウホでした。・・・良い時代だったな(涙)。

  • なんとも不思議な「館」…。その館に訪れた「私」たち。
    その館には私たちの名前が隠されている。例えばじゅうたんの文様と同じ名前の「ニンドウ」、ガラスの文様と同じ名前の「リンドウ」、…など。
    それらは結局本当に偶然だったというのには驚いた。誰かのたくらみなどではなく…館の仕業?この家は来客があると途端に動く…この館は未来を映す。
    そんな中起こった殺人事件。しかも殺される前に自分達と同じ名前をもつ物に異変が起こる。
    それもまた館の仕業…。奥が深い小説でした。面白かった。

  • 綾辻の館シリーズファンであるので、霧越邸殺人事件も当然ながら期待大で読んだ。やはり、期待に応え十分楽しめた作品だった。第七幕の対決はなかなかの展開だった。

  • ある信州の山で、猛吹雪に遭遇した8人の男女。突然現れた洋館『霧越邸』に避難する。お城のような素敵な洋館には、同じように吹雪にあった町医者が避難していた。洋館の使用人たちは、温かいご飯や部屋を用意してくれたが、少し取っ付きにくい。吹雪はなかなか止まずに、避難して2日目の夜。事件は起きた。次々に起こる北原白秋の『雨』に見立てた事件。犯人は、洋館を訪れた9人の中にあるのか、それとも洋館の住人たちなのか…



    なかなか面白かった。だけと最初のほうで洋館の使用人たちが『ここはホテルではありません。善意でみなさまをお泊めしているだけです。屋敷の中を勝手に歩き回らないで下さい』と何回も言ってるのに、興味があるとか主人が謎めいてるとかの理由で歩き回って、調度品を触ったりして本当この人たちなんなの?と思ってしまった。
    また、劇団の主宰の男の考察とか講義が長い。薀蓄語るというのか、なんかまだぁ?ってかんじ。たぶん、劇団の最年少の彩夏ちゃんなんて『まぁた、始まったよ』とか思ってんじゃないかな?



    でも、読みごたえはあった。閉ざされた雪の山荘っていうシチュエーションが好きだ。そして、この話の舞台が昭和の終わりぐらいで、今よりいろんな技術が発展してないかんじがいい!今なら、閉ざされた山荘で電話やテレビ、ラジオがなくても、スマホでなぁんでも出来ちゃう。たぶん、スマホあったら今回の事件起きてなかったかもってぐらい。



    犯人については、読んでる途中で『あれ?』と思ったところがあって、そのまま犯人だったからちょっと残念だったかなー


    2017.8.27 読了



  • ガッツリ重厚な本格ミステリ。とはいえ死人が出るまでは読むのが辛かった。厚意に甘えてうろつく劇団員においおいと思ったり、ひたすら続く調度品や館の装飾の説明がイメージできずに手が止まったり。でも人死にが出てからはのめりこんで一気に読めた。ロジックが綺麗。キャラは個体識別がしっかり付くのに鬱陶しくない程度のキャラ立てで読みやすい。吹雪の山荘のようなベタな本格ミステリと言えば犯人は…という思い込みを利用した真相には驚いた。ただ動機についてはピンとこず。当時はあれが時代の最先端の動機だったのかな。大満足!

  • 以前、綾辻作品の中でもっとも賛否両論分かれる作品だろうと『人形感の殺人』の感想に書いたが、それと双璧を成す、いやもしくはそれ以上に賛否両論分かれるだろう作品が本書である。

    吹雪舞う冬山に遭難した劇団“暗黒天幕”の一行は山中に聳え立つ洋館に辿りつく。高級な調度品に装飾された館「霧越邸」に命からがら飛び込んだ一行。しかしそれは惨劇の幕開けであったという、“吹雪の山荘物”そのままの設定。

    閉ざされた館で起こる連続殺人事件で作者は綾辻行人となると、館シリーズを思い浮かべるが、本書はノンシリーズである。それについては後述するとしよう。
    今回一番目立つのはペダンチックに飾られた霧越邸を彩る一流の調度類について語られる薀蓄だろう。家具、照明器具はもちろん、書斎に置かれた万年筆の類いに至るまで、全てが高級品であり、それらについて事細かに語られる。こういう内容は雑学好きには堪らなく、無論、私もその一人であった。そしてそれらの中には犯罪の煽りを受けて、無残にも壊され、また殺人道具として使用される。この勿体無さは『時計館の殺人』で次々に壊されたアンティーククロックに匹敵する。私は作中人物が、これら職人が精魂込めて作り上げた芸術ともいえる物を躊躇無く壊す、もしくは意図的に壊す行為は、なんだか綾辻氏のある哲学、美学に裏打ちされた行為ではないかと思う。例えばミステリに関する既成概念を打ち砕くとか、過去の偉大なミステリ作家が築き上げたトリックやロジックの砦を敢えて壊して、新たな本格を作るといった意気込みというか。この辺はまだ漠としたイメージでしかないので、また綾辻作品に触れた時に作品と照らし合わせて考察していきたい。

    で、この作品に対する私の評価はと問われれば作者のやりたい事は理解できるものの、では作品としてカタルシスを感じられるかと云えば、そうではなく、従ってなんとも中途半端な印象を持ってしまった。ずるい云い方になるが賛成半々、否定半々というのが正直なところ。綾辻氏の持ち味である日本なのにどこか異界を舞台にしたような幻想味と一種過剰とまで思えるロジックの妙、これが実にバランスよく施されているのが館シリーズだが、このうち幻想味の方にウェイトを置いたのが本書。最後にいたり、これが豪壮な館を舞台にしながら敢えて館シリーズにしなかったわけが解る。つまりそこからして綾辻氏は館シリーズからへの分化には意識的だったのだ。とはいえ探偵役島田潔は登場しないものの、文体ならびに作中の陰鬱さを感じさせる抑制された雰囲気は館シリーズと変らないし、また文中、中村青司がデザインしたと匂わせる表現もあり、そこに作者としての迷いも感じられる。綾辻作品世界のリンクであるくらいの内容かもしれないが、私はそれだけとは受け取れなかった。

    ミステリの既成概念を打ち砕くために敢えて挑戦した企み、この手の作品には過去にカーのある名作があるが、そこまでには至らなかったと感じてしまった。その後の綾辻氏の諸作で彼がどのような本格ミステリ観に基づいて作品を著していったのか、さらに追っていこう。

  • 暗色天幕という劇団一行がロケの帰りにバスがエンコ。
    徒歩で山道を強行突破する予定だったが、天候が急変。
    突如吹雪に見舞われ、奇跡的にたどり着いた洋館「霧越館」
    吹雪の山荘状態の中で起きる北原白秋の「雨」を模した連続殺人。
    館の主人から探偵役を命ぜられた劇団代表。
    劇団の脚本担当が回想という形で語っていて
    最後の方で、劇団代表が全員を集めて
    犯人当てをするのだが・・・
    完全に予想外で、面白かったぁ~

  • 完全なクローズド・サークルもののミステリー。
    その美しさと物悲しさが良かったです。
    現実だけど、幻想のように、相反する非科学的要素を取り入れているところも素晴らしいと思いました。

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著者プロフィール

綾辻 行人(あやつじ ゆきと)
1960年京都市生まれ。京都大学教育学部在学中、京大推理小説研究会に所属。研究会同期に、後に結婚する小野不由美がいる。1982年、同大学大学院教育学研究科に進学。1987年、大学院在学中に『十角館の殺人』で作家デビュー。講談社ノベルス編集部が「新本格ミステリー」と名付け、その肩書きが広まった。1992年大学院を卒業後、専業作家に。
1990年『霧越邸殺人事件』で「週刊文春ミステリーベスト10」1位。1992年『時計館の殺人』で日本推理作家協会賞長編部門を受賞。2011年『Another』で「ミステリが読みたい!」1位。2018年第22回日本ミステリー文学大賞を受賞。
主な代表作として、デビュー作『十角館の殺人』以来続刊されている、長編推理小説「館シリーズ」。

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