あこがれ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 332
レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101388632

作品紹介・あらすじ

おかっぱ頭のやんちゃ娘ヘガティーと、絵が得意でやせっぽちの麦くん。クラスの人気者ではないけれど、悩みも寂しさもふたりで分けあうとなぜか笑顔に変わる、彼らは最強の友だちコンビだ。麦くんをくぎ付けにした、大きな目に水色まぶたのサンドイッチ売り場の女の人や、ヘガティーが偶然知ったもうひとりのきょうだい…。互いのあこがれを支えあい、大人への扉をさがす物語の幕が開く。

感想・レビュー・書評

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  • 小学校高学年の麦くんとヘガティーの男の子と女の子コンビは、大好きなこととかすごく気になることを共有し合える特別な友達。男女として好きとかそういうのではないところが良いです。ヘガティーの映画の銃撃戦アクションの真似に感動したり、絵の上手な麦くんのことをリスペクトしてたり、お互いの世界を大切にしながら自然に歩み寄って共感を交わし会えるところなど、大人にもなかなか出来ないコミュニケーション能力です。悩みがある時にもきちんと向き合って自然に助け舟をだせるところとか、なんかいいですね。この2人の関係が大人の私から見ても羨ましい…としみじみ思いながら読みました。「アルパチーノ」という掛け声でバイバイするとか、「トム・クルーズって、なんかすごくいいよね」「いいよね」「いいんだよね」っていうノリで良さに共感し会えるところとかほんと、なんかもう、すごくいいです。羨ましいです。ヘガティーの母親違いのお姉さんに逢いに行くところは気になって一気に読みました。たぶん長い人生の中で、この物語の中に書かれている出来事はふたりにとって生涯忘れられない思い出となるのでしょう。そのうち受験もあるし、進路が別れていけば、2人で過ごす時間も無くなってしまうかも…だからこの時間はこの時だけのかけがえのないものだったんだと、後で思い返したりするかもしれないですよね。そう考えるとなんだか切なくなります。
    胸いっぱいの幸福感と、夕焼け空にバイバイする時に感じるような切なさの両方に満たされました。かわいくて綺麗で甘酸っぱい苺ジャムのようなお話しでした。

  • 長い一文、平易な語句。小学生だなー。
    ヘガティー、チグリスと、麦くんのあだ名センスは素晴らしい。
    自分の感覚はおかしいんじゃないかと不安になる、でも、そこからブレない二人がいいな。
    付き合うとか付き合わないとか、そういう関係におさめるのはもったいない二人。ずっとそばにいてほしい。アルパチーノ。いいな。

    ヘガティーは、自覚していないけど(いや、してたかも)麦くんが好きだったのでは?だから、ミス・サンドイッチの話を聞いて、しばらく距離を置いたのでは?それでも背中を押すのはすごい。

    麦くんは、大人になるにつれてその魅力が広まっていきそう。好み。
    苦手だったヘガティーのお父さんも、好きになってた。その人を知れば、だんだんと変わっていくのかな。それとも、ヘガティーのお父さんだからかな。

    ヘガティーの、急に世界が壊れてしまってどうしたらいいのか分からなくなってしまうの、分かる気がする。麦くんがいてくれてよかったな。

  • タイトル通り「あこがれ」をテーマにした二章立て。
    1章目は他者を意識しない独自の美しさに対してのあこがれ。
    2章目は家族に対してのあこがれ。
    主人公2人が小学4年生の頃から物語は始まり、小学校6年生の秋頃までが描かれている。
    子どもからちょっと大人に足を踏み入れた多感な時期の、思いや考えが散りばめられている。
    文体は一文が長めで、意識の流れや感情の移り変わりを読者に意識させる。

  • 小学生の麦彦とヘガティー(おならが紅茶の匂いだったせいで、このあだ名がついた)の物語。
    前半の「ミス・アイスサンドイッチ」は小学四年生の麦彦が語り手。
    上手いね‼パンのトングを「銀ガニ」とか。
    子どもの頃の感じ方ってこうだった。一般的な美醜がわからず、興味があると惹かれる。(小学校中学年でモテるのは美少女、美少年ではない。)
    パレットの上でうっすら膜をはっている白とビリジアンを水を含んだ筆で撫でると「なんだか小さな膜のむこうから閉じこめられた色を逃してやってるみたいだ」とか、こういうところ、グッとくる。
    しかし、リアルな小学生が感じたことをここまでちゃんと表現できるかと言えば無理だし、リアルな小学生がこれを読んで共感するかというと、読み取れなくて無理だと思う。そういう意味で大人向きの本。大人が、ああ子どもの頃、確かにこんな風に感じてたよなあって切なくなる。
    ポーの「大鴉」がネタになった遊びが盛られている。

    後半の「苺ジャムから苺をひけば」は小学六年生になったヘガティーが語り手。小学生には『夏への扉』さすがにむずかしいだろうと思うが、後半のヘガティーはもう大人の女性の感じ。付き合ってと脅す三人組女子の身勝手さ、これ日本の小中学校に通った人はみんな経験していると思う。当事者じゃなくても噂聞いたり。
    後半の麦くんはカッコ良くて、二人の友情でもない恋愛でもない関係が爽やか。
    物語としては後半の方が万人受けしそうだけど(わかりやすくて泣ける)、個人的には前半の方が好きだ。ミス・アイスサンドイッチの孤独が胸にしみる。川上未映子の表現力が堪能できる佳作。

  • 読みたいリストより

    とてもすき、うつくしい。
    泣いた、10さい以上若い人たちが主人公なのに!聡明でうつくしい子たち。
    最初からずっとよかった、途中笑ったところもあって、泣いたのは最後のほう。

    • あたらしい11ぴきさん
      たしか単行本の帯にあった、「会いたい人がいて……」のセリフが聞きたかった。聞けてよかった、とてもそうおもう。最初に読みたいと思ったのは、この...
      たしか単行本の帯にあった、「会いたい人がいて……」のセリフが聞きたかった。聞けてよかった、とてもそうおもう。最初に読みたいと思ったのは、このセリフが紹介されていたからだろう。
      他にもいい言葉ばかりで、たくさん賛成した。
      2018/07/16
  • できるだけ今度っていうのがない世界の住人、にわたしもなる。

    ヘガティーのお母さんへの手紙、グッときました。

  • そういえば、もしかしたら川上弘美さんの作品に近い年齢になってるかもしれないから、
    川上さん目当てで図書館に行ったら、
    返却コーナーにあった川上さん。
    帰る途中で気づいたのは、川上弘美さんじゃなくて、
    川上未映子さんだ!
    川上未映子さんの作品は初めて!

    わたしは、この作品が大好きになりました。
    大好きになって、誕生日にこの本を買いました。
    もし大切なひとができたら、‘麦’という名前を付けたいと思いました。

    麦くんとヘガティー、小学生の二人で出来たこの本の中は、
    小学生ならではの、ことば、感じ、ひらがなの使い方で、
    この本を読んでて、小学生ならではの、
    心模様が愛しく、いつの時代も振り返れば受け止めれるかもしれないけど、
    子どもの頃の時代って、本当によかったんだなぁ。
    人生生きる中で、ほんのわずかなこども時代は、
    貴重だったんだなぁ。と感じました。

    第1章はとミス・アイスサンドイッチ
    冒頭の麦くんの世界から、とても好きでした。
    麦くんは、なんとなく、というか、しっかりと家庭の状況を感じてる。
    独特なお母さんに、
    麦くんの大きな拠り所のおばあちゃん。
    ミス・アイスサンドイッチの似顔絵を何十回も描いた。
    第1章が終わるときに、
    あれ?そういえば、この子の名前なんていうのだろう?
    と気になってたら、

    第二章 苺ジャムから苺をひけば
    で、やっと麦くんの名前がわかった!
    そして、ヘガティーの名前は、第一章で、
    麦くんが、おならが紅茶の匂いがしたさら、
    できたあだ名がヘガティー

    ヘガティーは、麦くんにとても大事なことを言ってました。
    会いたいって思ったときにはもういなくなったりするんだよ。
    人ってたぶん、ものすごく簡単に

    感想を書いてても、また読みたくなった
    本当にこの世界が大好きで、
    わたしも、こんな心情でいられたらいいのに。
    好きなものには、わたしの憧れがいっぱいつまってます。
    人と生きていくの苦手だけど、
    自分の好きなもの、大切なものをしっかり持って、
    生きて行けたらな

    麦くんとヘガティー
    それに、ママ、おばぁちゃん、パパ
    漫画を描いてるチグリス、おせっかいなリッスン、
    なんだっけー?のドゥワップ、
    ミス・アイスサンドイッチ
    みんなすきです。

    アルパチーノ


    2017.07.13

  • すごく良い本だった

    思ったこと考えたことをうまく言葉にできない感覚や、ぐるぐると思考の渦にはまってしまう感じ、相反するのだけどひとつでもある痛みと暖かさ
    そういうのを感じた

    麦くんもヘガティーもだいすきになった
    2人とも本当に優しい

    付き合うってなに?とか、失敗した顔とかどういうこと?とか、普段の生活でよく聞くけど、ちゃんと考えたらそのたびにチクッとするような、違和感を覚えることが、我々への気づきとして描かれているのが良い


  • 小学生が主人公のさわやかな2つの話。
    独特の言い回しが初め馴染めなかったが、読み進むにつれて心地よくなってくる。
    1つ目を読み終える頃には主人公のことも作品もすごく好きになっていて、2つ目で更に好きになった。

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著者プロフィール

川上未映子(かわかみ みえこ)
1976年大阪府生まれ。大阪市立工芸高等学校卒業。2002年から数年は歌手活動を行っていた。自身のブログをまとめたエッセイ『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』で単行本デビュー。2007年『わたくし率 イン 歯ー、または世界』『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』で早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞、2008年『乳と卵』で芥川賞、2009年詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で中原中也賞、2010年『ヘヴン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、紫式部文学賞、2013年詩集『水瓶』で高見順賞、『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞、2016年『マリーの愛の証明』でGRANTA Best of Young Japanese Novelists、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞を受賞。2017年、『早稲田文学増刊 女性号』で責任編集を務める。2019年7月11日に『夏物語』を刊行し、注目を集めている。

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