ツナグ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 14232
レビュー : 1600
  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101388816

作品紹介・あらすじ

一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員…ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 少し前に父が亡くなりました。
    仕事中に急に具合が悪くなり帰宅したという父。週末、ずっと家で安静にしていたのが、夜中に容態が急変し救急車で病院へ。私が駆けつけた時には意識なく集中治療室でたくさんの管に繋がれていました。そして、数日後意識が戻ることなく父は亡くなりました。父と話をしたのはその3か月ほど前でした。あることが原因で大ゲンカとなり、逃げるように父の家を飛び出したのが、結局、父との最後の時間になりました。口論が父との最後の思い出。死は突然にやってきます。長い療養の果てに亡くなる場合には、本人にも残される者にもその心構えは出来るのかもしれません。でもすべてがそうではありません。まさかあれが最後の時間になるなんて、と知るのはもう二度戻れない、生者と死者に区分けされた後の時間です。

    『僕が使者です。死んだ人間と生きた人間を会わせる窓口』、日常の会話の中で、ネットの書き込みで、偶然に『死んだ人間と生きた人間を会わせる』、そんなことができる人がいる、実際に死者に会えた人がいる、あなたがそのような話を聞いたらどう思うのでしょうか。新手の詐欺か、新興宗教か、それ以前に取るに足らない話題と右から左に流してしまうのか。『その存在を知っているかどうか、知って信じるかどうか、そしてそこからの運だ』この話を偶然に知って信じたとしても使者につながることができるかどうかは全くわからない。だから余計に噂が噂を呼んでいく。また、そもそも死者と再び会えるなどということは決して気安く考えられるものでもありません。それ故に『どれだけ探しても辿りつけない人がいる一方で、それを本当に必要だと思ってる人のところには届く仕組みになってるの。お兄さんのところに届いたのも、きっと縁なんだろう』、5つの章から構成されたこの作品では、うち4章で、実際に使者に辿り着いて、死者に会う機会を得、言葉を交わし、そしてその後の人生をまた歩んでいく人たちの物語が語られます。

    そんな使者の見習いとして務めを果たしていく歩美。生者が死者を指名することはできても、死者が生者を指名することはできません。でも死者がその会いたいという申し出を断ることはできます。生者にとっても死者にとってもそれはただ一度だけ与えられた権利。会うことを断る理由がある一方で、会うと決めたらそこにも理由はあるはず。突然の別れを経験した者どうしにとっては、まさかの再会の機会とも言えますが、それ以降二度と会えなくなることを考えると、会ってしまったことで負うことになる必要もなかったまさかの後悔を一生背負うことになるかもしれない、ある意味とても危険な賭けとも言えます。歩美が『使者って、結構しんどいね。単なる傍観者でいいかと思っていたら、こっちにもダメージが来る』と心の内を吐き出します。それに対して『そうさ。人の人生に立ち会うってのは、生半可な気持ちじゃできないんだよ』と答える祖母の言葉には数多くの使者としての務めを果たしてきた自身の苦悩が滲んでいます。

    4組の再会の場面で一番印象に残ったのは〈親友の心得〉でした。仲の良かった嵐と御園、それが演劇部の発表で主役の座を巡って二人の間がギクシャクし始めます。自分が主役の座を演じるのが当然のことと思っていた嵐、いつも裏方に徹していた親友の御園が同じ役に手をあげるとは思わなかった嵐。まさかの主役の座の行方、まさかの出来事、そしてまさかの真実。別れの挨拶なしに突然の別離を経験したとしても必ずしも死者と再会することが幸せなその後を導くものではない現実が描かれます。『使者って何なのか。使者は、生者のために存在してしまっていいのか。死者に会いたがるのは、すべて生者の勝手な都合なのではないか』見習いとして使者の役割を自覚すればするほどに歩美の中に葛藤が生まれ、その意味を、その意味するところの答えに必死の思いで近づこうとするのは当然なのかもしれません。

    この作品を読みながら、ずっと自分のことを考えていました。自分がもし使者の連絡先を入手できたとして、果たして連絡するだろうか、連絡する勇気があるのかどうか。そもそもこのレビューで父のことに触れること自体どうかとも思いました。今はまだ言い合いになった内容もはっきり自分の中に残っています。一番の肉親と仲違いしたまま終わった時間、それは自分の心の内に秘めておくには耐えられないものを感じることもあります。その一方で自分に近い人には逆に話しにくいことでもあります。書いて、話して気持ちを楽にする。後年、自身が書いたこのレビューを振り返る時があった時、その時は心の整理がついた時なのだろうと思います。そう、今はまだ使者の連絡先を入手できたとしても連絡をすることはない、そう、まだ連絡できるまでに心の整理はついていない。4組の再会に至るまでの話、そしてその後の話を読んでそう感じました。

    この国には宗教にもよると思いますが、○回忌という『年忌法要』、『お盆』、『お彼岸』といった形で、昔から死者と、そして死者が暮らす彼岸とのつながりを大切にする考え方が息づいてきました。この作品を通じて、死者とは何なのか、死者とつながるということはどういうことなのか、普段意識して考えることのない事ごとに思いをはせる機会ともなりました。

    辻村さんの作品群は読む順番が大切、よくよく分かっていながら、実は続編にあたる「ツナグ 想い人の心得」を先に読むという大失態を犯してしまいましたが、続編ともども何度も心を鷲掴みにされるような読書となりました。
    数多く読んできた辻村さんの作品の中でも、特に強く印象に残る、忘れることのできない、そんな傑作だと思いました。

  • 一生に一度だけの死者との再会の橋渡しを担う「使者」。「使者」と書いてツナグと読む。

    読み始めたとき、亡くなった人と会えるっていいなぁと思いながら、私なら誰と会いたいだろうと、そんな軽い気持ちで読んでいた。
    物語が進むにつれ、本当に亡くなった人たちと会っていいのか?会いたいと思うのか?納得できる再会になるのか?など、この自然の原理に反する行為に、何かもっと他の意味を感じ取るべきではないかと、想いを巡らせた。

    本作は、突然死したアイドルとそのファンとの再会、年老いて病死した母と家業を引き継いだ息子との再会、事故死した親友とその親友の女子高生との再会、失踪した婚約者と会社員との再会、ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれが抱える思いを持ち共に過ごす一夜の邂逅は、それぞれにどのような未来の軌跡を提示するのであろか。

    私がもし再開するなら誰と会いたいか、そしてあってどうするのか、もし私が亡くなった時に誰に会いたいと思うのか、なぜ会いたいと思うのか、会ったあと私はどうするのかとら考える時、なかなか手放しに喜び、会いたいと言えない自分を感じた。

    アイドルの心得
    亡くなったアイドル・水城サヲリに会おうとする冴えないOLの平瀬愛美の再会の物語。

    「心が風邪をひく」って、心が病んでいるとおなじ表現だと思うのだが、もっと具体的で心に響いてきた言葉である。生前、サヲリも心が風邪をひいていたからこそ、愛美の切迫した想いを感じ取ったのだと分かる。
    結果的には、サヲリとの再会は愛美の今後の自分の道を示すことになる。

    長男の心得
    癌で亡くなった母・畠田ツルからの教えで、ツナグを知り、母と会う息子・畠田靖彦の物語。

    母に癌告知をすべきであったのかを確かめたく、母と再開する。孫や親戚への告知も靖彦の判断でしなったことを責められ、自分が下した判断を良し、悪しではなく、自分が母に告知しなかったことを受け入れて欲しくて会ったのだと考えると、靖彦の傲慢さと弱さのような気がしてならなかった。
    後に記載されている、いわゆる告白により自分の心の中の悩みを吐き出しているとしか思えなかった。

    親友の心得
    亡くなった親友・御園奈津に会って、自分の行為を恨んでいるかを知りたかった嵐美砂の物語。

    がんじがらめの状態を表す「黒く、タイヤやゴムを燃やした時に出る濃い煙のように、もやもやと、ぐるぐると私の身体を巡る。自分がその煙に呑まれたのか、それとも煙は私の内側から吹き出ているのか、境界が曖昧になる。」が、なんとも身動きが取れない心理を表しているようで想像して恐ろしく感じた。そして、この物語こそ、死者と再開することを考えさせられる物語であった。

    「懺悔する、告白するという行為は、随分やった側に虫のいい考え方だ。」自分の中の悩みを吐き出して、懺悔し、告白することでそれを正当化してしまう。嵐もまた、御園がわざと事故が起きるようにしたことを知っているのか、知っていれば謝って許してもらおう、そうすれば、今のこの苦しい状態から解き放たれると言う気持ちで再会をした。でも、御園の気持ちを確かめる勇気もなく、結局、再開が終了した後に歩美から「道は凍ってなかったよ」という伝言を伝えられた瞬間、一方通行な残酷さを感じる。つまり、「道は凍っていなかったけど、あなたの殺意は知ってたよ。」ということだ。

    待ち人の心得
    行方不明の婚約者・日向キラリの安否を確かめるためにツナグに再会を依頼する会社員・土谷功一の物語。

    「夫が妻を殺せる年数」つまりは、「結婚相手が失踪した場合、殺された方は七年経てば死亡手続きが取れる。法的に正式に殺して、新しい生活を始めることができるようになってるんだ。」と大橋は土谷を思ってこの言葉を伝えている。それでも心変わらず待ち続けるなんて不可能だとこの言葉が発せられた時に感じた。なぜならこの言葉は、土谷の気持ちに今後、居座ることになる。だから、土谷はツナグの存在を頼ることになるのだ。そして、そのことが気持ちの整理という点ではこれも生者の側に立った再会とはなるが、意味のある再会であったと思える。

    また、再会当日の雨が、土谷の気持ちを表現していることに、寂しさと虚しさを感じた。「あいにくの雨だった。満月の夜と指定されたにもかかわらず、分厚い煙のような雲が何層にも重なった空には、月どころか星の姿も見えなかった。」「黒く塗られたアスファルトの道が鏡のように光って、道行く人の姿と色とりどりの傘の色を反射している。」


    使者の心得
    死者として、歩美が祖母から力を引き継ぐ。その過程で、歩美の両親の死の理由が明らかになる。

    青銅の鏡の展開が本当はこの物語のテーマではないかと思えるくらいうまく繋がって、この作品がなぜ面白いかというのが、解った気がした。歩美な両親が二人してなくなり、これが青銅のの持つ力であり、これを歩美が解き明かしていくことに、歩美の使者としての運命のような感覚を読者に植え付けている。また、展開もさることながら、そこに使者して生きていくことの辛さも感じられ、本作の読者に与える想像の大きさと深さが、読んでいて心地よかった。

  • 会社の方から、ツナグの続編を頂いた。

    あれ?そういえば「ツナグ」を読んでいなかった。
    何年か前、一度購入して読み始めたが、自分の好みではなかった為
    数ページ読んで諦め、売ってしまっていた(-_-;)

    仕方ないので、古本屋さんで購入し、再びチャレンジ。

    ツナグは、生きている人間を、既に他界した人間に合わせることのできる使者。
    生きている間に会えるのは1度だけ。
    死んでいる人間も会えるのはたった1度だけ。

    この世の者から、あの世の者へは交渉が出来るが、死者からこの世の者に対して
    交渉することはできない。

    最初の依頼者は突然亡くなったアイドルに会いたいという女性。
    次の依頼は、癌で母親を亡くした長男。

    この2作は、どうもなかなか本の中に入り込めず、
    (自分の好みはミステリの為)もがいていたのだが、

    3作目は喧嘩したまま亡くなった親友に会いたいという高校生。
    この作品はゾクゾクするほど良かった。

    4作目は、突然婚約者が姿を消す。まさかとは思うが、
    ツナグに依頼する男性の話。
    この作品もとても悲しいのに、どこかほっこりさせられる良い作品。

    最後はツナグ本人の物語。

    物語が進んでいけばいくほど、物語の世界に入り込むことが出来る。
    中高生でも読み易い良書ではないかと思う。

  • 死者と生者をつなぐ使者: ツナグ 。死を取り扱う話なため、なかなかシビアな話が続く。

    有名タレントに会う話。ふむふむ、出だしの話としては悪くない。なるほど、こう言う風に死者と会うのね、、出会えてよかった、よかった、、

    次、不器用で無愛想な親父の話。読んでいて腹が立つぐらいだか、母親と会ってからが、ごろっと印象が変わり、意外にも終わり方が清々しい。男として変な意地はる所、よくないが分からなくもない。改心したなら、悪くない、悪くないぞ、、

    一個飛ばして、結婚直前に彼女が失踪した話、、うーむ、かなり切ない、かなり切ない、、長く長く待ってたどり着いた悲しい真実、、結構きたぁ〜、、でも、これでようやくようやく彼の人生の時計が進められる、、悪くない、悪くないぞ、、

    一個前に戻る。とーっても嫌な予感、、女子高生同士の話、親友同士だったのに、、あぁ、、な、なんと、、マジで読んでて胃が痛い、、グググッ、、相当に厳しい終わり方だ、、

    あぁ、こんか感じでこの小説は終わってしまうのか、あと1章しかない、、

    (ここでリアル事件発生。ノートルダム大聖堂炎上に激しく動揺。フランスの同僚達に連絡をとる。本中断。あぁ、同僚達が悲しんでる。俺も悲しい。こないだ見たばかりだ。あぁ、パリ市民が炎上するノートルダム大聖堂のまえで賛美歌を歌っている。頰を涙か伝う。もはや小説で落ち込んでるのか、ノートルダムで落ち込んでるのか分からなくなる。でも、フランスの同僚達が必ず再建するんだ!と強いメッセージ!どっちが勇気付けられてんだ!よし小説に戻ろう)

    残すは最後の1章。読み始める。
    おおおお、こ、これは、、まさかの使者目線のリプレイ&裏舞台暴露、そして使者自身の物語ではないか!目からウロコ。この話の展開は全く予想してなかった!使者の思い、苦悩、背景が丁寧に描かれていく、、まるで呪縛を解かれていく見たいだ。主人公のツナグ を引き継ぐまでの話でこの小説は一気に花が咲く。静かな感動にこころが満たされる。読んでよかった、、

    初辻村深月さんでした。テーマがテーマなだけに重い話をどうやって仕立てるのか楽しみにしていました。最後の章での話の展開が実に見事だと思います。あのまま、別の人の死者との面会の話で終わっていたら、ここまでの読後感は得られなかったでしょう。最後に粋な展開を見せたストーリー。いやはや、参りました^ ^

  • 新刊(続編)が出ると聞いて慌てて読んでみる。

    対象喪失と対象関係の再配置の物語だった。

    「生まれついての死刑囚」である人間にとって死は誰にでも平等に訪れる。

    大切な人である対象にも例外なく、平等に。

    しかし、死は時として前触れなく、行くものも残る者も、どちらにも十分な準備ができていないうちにやってくる事もある。

    その時に感じる対象喪失体験は残された者にとって深い体験となる事は多いし、当然でもある。

    死の受容、或いはモーニングワーク。

    否認、怒り、取引、抑うつ、そして受容。

    対象喪失では概ねこの4段階を経る。いずれの段階に費やす時間とエネルギーは均一ではなく、場合によってはある段階に何年も何十年も留まり、或いは受容へ至る事ができない事も多い。

    そして、喪失した対象が自己にとって重要であればあるほどに、時間とエネルギーが必要になる。

    構成が素晴らしいのは喪失した対象が徐々に身近で、かつ激しくなっていく点。

    「アイドルの心得」では他者。通りすがりでかつ、面識もほとんど無い、一方通行の好意を抱いた相手に対して。

    「長男の心得」では、初老を迎えた父親、家督を継いだ男性にとっての母。

    「親友の心得」は疾風怒濤の時期にある思春期女性にとっての親友。

    「待ち人の心得」ではプロポーズを経た後これから生活を共にしようと待ち望んだ夫にとっての妻。

    そして、「待ち人の心得」では。

    徐々に愛着対象が身近に、記憶も鮮やかに、喪失体験も激しいものへと移ってゆく。

    それでも死者にもう一度会うという体験を通じて、残された者は死を受け入れ、その体験を自己に取り込んでゆく。

    取り入れられることは驚嘆や尊敬、安心感や自己肯定感など暖かいものだけでなく、罪悪感と言った激しいものも含まれる。

    陰性の感情も陽性の感情も、混然一体となった感情ひとつひとつが激しい感情の集合体としてのコンプレックスは、ツナグによる体験によってそれぞれの関係性が星座のように繋がり、やがて残った自己が航海を続ける上で人生にとってのコンステレーションとなる。

    使者と書いてツナグと読む。ツナグのは今生きている人の過去と現在と未来という、自己の同一性だったのかもしれない。

    ここまですごい物語だったのに続編が出てしまう。

    しかし、すぐに読み始める前に少しだけ時間を置きたくなるのはいまこの物語を読んだ体験を次にツナグための時間がほしいからかもしれない。

  • 何のために「ツナグ」のか。
    傍観者のままでは、出せない“こたえ”。

    一生に一度だけ、死者との再会の機会をくれる「ツナグ(使者)」の物語。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    映画「ツナグ」を見たことがありましたが、当時はあまり本を読まない時期だったので、原作が辻村深月さんだと知りませんでした。
    ですが、主人公・歩美役の松坂桃李さんと、祖母役の樹木希林さん、そして桐谷美玲さんが演じていた役は、いまでも覚えています。

    映画は映画で良かったですが、小説はより深く、じっくりと、その世界を味わうことができました。
    「ツナグ」は、祖母からツナグの能力を受けつぐ歩美の話でもあり、死者と生者の一晩の再会の話でもあります。
    「アイドルの心得」「長男の心得」のあたりは、今ひとつ物語がしっくりこなかったものの、「親友の心得」「待ち人の心得」で、一気に「ツナグ」の世界にとりこまれてしまいました。

    死者と向き合えたことで、次の一歩を踏み出せた人もいる。
    一方で、自分の保身のためだけにその機会をつかい、一生なくならない後悔を抱えてしまった人もいる。
    すべての再会が、よいものになるとは限らない。

    結局「ツナグ」という能力は、すべての人の後悔を無くしたり、苦しみから救う能力ではないのだ、と思いました。
    「ツナグ」という能力がある世界でも、ない世界でも、人々の中から後悔が消えきることはありません。

    「ツナグ」のいない世界でしか、わたしたちは生きられませんが、もし「ツナグ」がいる世界だったとしても、わたしはきっと、誰とも会わないだろうな…と思いました。

  • 使者(つなぐ)とは―
    それはたった一度だけ―、死んだ人と会わせてくれる案内人。
    生きている人が会いたいと望む、
    すでに死んでしまった人との再会を仲介する”使者”を表す言葉。
    映画「ツナグ」公式サイト より

    自分にとって大切な人、誰かにとって大切な人
    たった一度だけ、死んでしまった人に会えるとしたら誰に会いたいだろう.

    言いたいことを生きている間に言える割合てどのくらいなのだろう.
    死んでしまつていなくなってから気がつくことがどのくらい多いのだろう.
    生きている間に悔いのないように、そうは言っても本のように相手が思っていることが分かるわけではない.たとえ必要なことをすべて話したとしても伝わりきれない部分は残るわけで.でも、伝わるように努力をするべきなんだろうな.人間、すべてのことを見通すことができるわけではない.だからことばを使うのだけど、ことばがあるがゆえに捻じ曲がって伝わることもある.
    ツナグ、からは死者と生者のやり取りを通して、その間の溝を埋めているような印象を受けた.

    失ってからの時間、生きている人間は自分の頭の中にある死者とやりとりをする.こんなことを思っていたのでは?本当はこうだったのでは?ツナグ、はそれを確かめる機会があるものという設定.そんな機会があったなら、自分なら誰とどんな話をするだろう.

  • いい話し…なんだと思う。
    これはもう完全に趣味嗜好の問題で物語に難癖を申したいわけではない。
    ただ…しっくりこなかった。
    確かに、都合の良い再会ばかりでないだろうことは分かる。
    だけどできることなら、旅立った者にとっても大切な一回であるなら、残された者、再会を望んだ者にもう少し成長が欲しかった…。
    一夜の限られた時間の中で、特別に与えられた最後の時間の中で、もっと深い本質に触れた対話ができたんじゃないか、体裁など気にせず本気でぶつかり合うべきだったんじゃないかとつい欲が出てしまう。
    さう…これは欲なのだ。
    私自身ノ希望的観測。
    と言う個人的事情でいささか物足りない感じ。
    今年の15冊目
    2020.5.20

  • 死者と生者をつなぐ使者「ツナグ」
    生きている人間が望み、死者が受け入れれば、一晩だけ会って普通に話すことができるという。
    死んだ人と一生に一度、一人だけと会うことができるとしたら‥?

    「アイドルの心得」
    38歳で急死したタレント・サヲリに会いたいと願う女性・平瀬。
    酔って過呼吸に陥っていたところを助けられ、以来ファンになっていた。
    「世の中はみんなに平等に不公平なんだよ」と去って行ったアイドル。
    一ファンに過ぎない自分に会ってもらえるとは思わなかったのだが‥
    死んだときには大騒動になったが、4ヶ月たっても会いたいといってくる人は他にいなかったと話す彼女。
    生きる望みを失っていた平瀬に、サヲリは一言告げたかったのだ‥

    地味すぎて華やかな家族からも疎まれ、気力を失っていた平瀬。
    会社でも浮いていて、同僚に「いつも暗くて怖い本を読んでいる、そんなの読んでると呪われるんじゃない」と言われるのが可笑しい。どんなんや~?
    ミステリかホラー??

    「長男の心得」
    店を継いだ長男・畠田靖彦は口が悪く、周りとちょっとした衝突を起こしてばかりいる中年男。
    ツナグの存在を教えてくれた亡き母に聞きたいことがあるとやってきたのだが‥
    不器用な困ったおじさんの内心抱えていた後悔は‥?

    「親友の心得」
    事故死した親友・御園を死なせたのは自分だと苦しむ嵐美砂。
    高校の演技部で、いつも自分を立ててくれていた優しい御園に裏切られたと感じ、嫉妬を抑えきれなくなって‥
    女子高校生の微妙な張り合いが緊迫して、痛いほど。
    すれ違いが起きた原因、結局ちゃんと話せなかったいきさつとは。

    「待ち人の心得」
    突然失踪した恋人を待って7年になる土屋。
    知り合ったのも偶然で、何も知らないことに後から気づいた。
    日向キラリと名乗った彼女だが、偽名だったのだろうと思う。
    騙されたんだよと言われるが‥
    (土屋の抱えるものすごい肩凝りに思わず共感~パソコンが普及してから増えた症状だそう。結局、それなのかなあ‥いやこの時期に強くなったのはストレスってことですか)

    「使者の心得」
    ツナグという存在が高校生の男の子の姿をしている‥
    という最初は印象でしたが、家系に伝わる仕事で、それを託されたばかりだったとは。
    思いがけない役割と、意外に個人的な関わりに戸惑う歩美。
    そして‥

    よくまとまっている印象でした。
    暗いものを突きつけてくる部分もありますが、人の関わり方や優しいまなざしに励まされる部分もあり、最後はあたたかなものが胸に残ります。
    所々にさりげなくあるいい言葉を、多くの人に読んでもらいたいなという気持ちになりました。

    単行本化は2010年10月。
    映画化のキャスティングも合っていたらしいですね。

  • 一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれる使者(ツナグ)。
    私がツナグに出会ったら、誰との再会を望むだろうか、逆に誰か私との再会を望んでくれる人がいるのだろうか。そんなことを考えながら読み進めました。

    けど"親友の心得"を読んだあたりから、たった一度の再会の機会が、必ずしもお互い気持ちのいい本当の最後の別れになるとは限らないよな…と思ってしまいました。

    人との別れは突然にやってくるものだから、なるべく後悔のないように大切な人には思いを伝えながら生きていきたいです。

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著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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