ツナグ (新潮文庫)

  • 新潮社 (2012年8月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (448ページ) / ISBN・EAN: 9784101388816

作品紹介・あらすじ

一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員……ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 生きて行く中で色々あった人達が
    ツナグに会いたい願う死者との交渉を
    してもらい会うことが出来た人達。

    読んでいる中で自分なら誰かなぁ
    死者になり会いたいと言われたら
    どうするかなぁとこの物語を読んだ人は
    みんな考えるのかな?と思いました。

    この先の自分の気持ちは変わるかも?
    とは思いますが、
    今の気持ちは誰にも会わないし
    死者になって誰かが会いたいと願っている
    事を知っても会わないだろうなぁと。

    誰にでも会いたいなぁと思う人はいると
    思いますが、私の中で忘れないでいる
    その人でいいと思いました。
    凄く矛盾してますが後悔は沢山あります。

    • なつこさん
      うふふ。じつはこれ、友達がおすすめしてくれたんです。ぜひ読んでみてくださいね!
      うふふ。じつはこれ、友達がおすすめしてくれたんです。ぜひ読んでみてくださいね!
      2025/01/04
    • まめたカチカチパスタさん
      そうなんですね!
      私も なつこさんに教えてもらわなかたら
      きっと出会えなかった物語だと思います!
      偏ってしまいがちな 自分の本棚が
      より楽し...
      そうなんですね!
      私も なつこさんに教えてもらわなかたら
      きっと出会えなかった物語だと思います!
      偏ってしまいがちな 自分の本棚が
      より楽しい物になると思います。
      教えていただきありがとうございます!
      2025/01/04
    • なつこさん
      いえいえ、こちらこそ宜しくお願いします。
      いえいえ、こちらこそ宜しくお願いします。
      2025/01/04
  • 少し前に父が亡くなりました。
    仕事中に急に具合が悪くなり帰宅したという父。週末、ずっと家で安静にしていたのが、夜中に容態が急変し救急車で病院へ。私が駆けつけた時には意識なく集中治療室でたくさんの管に繋がれていました。そして、数日後意識が戻ることなく父は亡くなりました。父と話をしたのはその3か月ほど前でした。あることが原因で大ゲンカとなり、逃げるように父の家を飛び出したのが、結局、父との最後の時間になりました。口論が父との最後の思い出。死は突然にやってきます。長い療養の果てに亡くなる場合には、本人にも残される者にもその心構えは出来るのかもしれません。でもすべてがそうではありません。まさかあれが最後の時間になるなんて、と知るのはもう二度戻れない、生者と死者に区分けされた後の時間です。

    『僕が使者です。死んだ人間と生きた人間を会わせる窓口』、日常の会話の中で、ネットの書き込みで、偶然に『死んだ人間と生きた人間を会わせる』、そんなことができる人がいる、実際に死者に会えた人がいる、あなたがそのような話を聞いたらどう思うのでしょうか。新手の詐欺か、新興宗教か、それ以前に取るに足らない話題と右から左に流してしまうのか。『その存在を知っているかどうか、知って信じるかどうか、そしてそこからの運だ』この話を偶然に知って信じたとしても使者につながることができるかどうかは全くわからない。だから余計に噂が噂を呼んでいく。また、そもそも死者と再び会えるなどということは決して気安く考えられるものでもありません。それ故に『どれだけ探しても辿りつけない人がいる一方で、それを本当に必要だと思ってる人のところには届く仕組みになってるの。お兄さんのところに届いたのも、きっと縁なんだろう』、5つの章から構成されたこの作品では、うち4章で、実際に使者に辿り着いて、死者に会う機会を得、言葉を交わし、そしてその後の人生をまた歩んでいく人たちの物語が語られます。

    そんな使者の見習いとして務めを果たしていく歩美。生者が死者を指名することはできても、死者が生者を指名することはできません。でも死者がその会いたいという申し出を断ることはできます。生者にとっても死者にとってもそれはただ一度だけ与えられた権利。会うことを断る理由がある一方で、会うと決めたらそこにも理由はあるはず。突然の別れを経験した者どうしにとっては、まさかの再会の機会とも言えますが、それ以降二度と会えなくなることを考えると、会ってしまったことで負うことになる必要もなかったまさかの後悔を一生背負うことになるかもしれない、ある意味とても危険な賭けとも言えます。歩美が『使者って、結構しんどいね。単なる傍観者でいいかと思っていたら、こっちにもダメージが来る』と心の内を吐き出します。それに対して『そうさ。人の人生に立ち会うってのは、生半可な気持ちじゃできないんだよ』と答える祖母の言葉には数多くの使者としての務めを果たしてきた自身の苦悩が滲んでいます。

    4組の再会の場面で一番印象に残ったのは〈親友の心得〉でした。仲の良かった嵐と御園、それが演劇部の発表で主役の座を巡って二人の間がギクシャクし始めます。自分が主役の座を演じるのが当然のことと思っていた嵐、いつも裏方に徹していた親友の御園が同じ役に手をあげるとは思わなかった嵐。まさかの主役の座の行方、まさかの出来事、そしてまさかの真実。別れの挨拶なしに突然の別離を経験したとしても必ずしも死者と再会することが幸せなその後を導くものではない現実が描かれます。『使者って何なのか。使者は、生者のために存在してしまっていいのか。死者に会いたがるのは、すべて生者の勝手な都合なのではないか』見習いとして使者の役割を自覚すればするほどに歩美の中に葛藤が生まれ、その意味を、その意味するところの答えに必死の思いで近づこうとするのは当然なのかもしれません。

    この作品を読みながら、ずっと自分のことを考えていました。自分がもし使者の連絡先を入手できたとして、果たして連絡するだろうか、連絡する勇気があるのかどうか。そもそもこのレビューで父のことに触れること自体どうかとも思いました。今はまだ言い合いになった内容もはっきり自分の中に残っています。一番の肉親と仲違いしたまま終わった時間、それは自分の心の内に秘めておくには耐えられないものを感じることもあります。その一方で自分に近い人には逆に話しにくいことでもあります。書いて、話して気持ちを楽にする。後年、自身が書いたこのレビューを振り返る時があった時、その時は心の整理がついた時なのだろうと思います。そう、今はまだ使者の連絡先を入手できたとしても連絡をすることはない、そう、まだ連絡できるまでに心の整理はついていない。4組の再会に至るまでの話、そしてその後の話を読んでそう感じました。

    この国には宗教にもよると思いますが、○回忌という『年忌法要』、『お盆』、『お彼岸』といった形で、昔から死者と、そして死者が暮らす彼岸とのつながりを大切にする考え方が息づいてきました。この作品を通じて、死者とは何なのか、死者とつながるということはどういうことなのか、普段意識して考えることのない事ごとに思いをはせる機会ともなりました。

    辻村さんの作品群は読む順番が大切、よくよく分かっていながら、実は続編にあたる「ツナグ 想い人の心得」を先に読むという大失態を犯してしまいましたが、続編ともども何度も心を鷲掴みにされるような読書となりました。
    数多く読んできた辻村さんの作品の中でも、特に強く印象に残る、忘れることのできない、そんな傑作だと思いました。

    • おびのりさん
      さてさて、こんばんは。
      おびのりです。
      ほんとうに、いつも、真っ先にいいねしていただきありがとうございます。
      さてさてさんの綿密なレビューに...
      さてさて、こんばんは。
      おびのりです。
      ほんとうに、いつも、真っ先にいいねしていただきありがとうございます。
      さてさてさんの綿密なレビューに比べ、雑な私のレビューにお付き合いいただいて、ちょっと申し訳ないぐらいなのです。

      まだ他の源氏物語を読んで、最後に角田さんの作品に行こうと思っていたのですが、さてさてさんに先を越されて、私も近いうちに読み始めようと思っています。
      また、参考にさせていただきます。
      ありがとうございます♪
      2022/09/01
    • さてさてさん
      おびのりさん、こんにちは!
      なんと申したら良いのか、おびのりさんの凄い読書量に毎晩驚いています。私は週に三回が正直なところ限界いっぱいいっぱ...
      おびのりさん、こんにちは!
      なんと申したら良いのか、おびのりさんの凄い読書量に毎晩驚いています。私は週に三回が正直なところ限界いっぱいいっぱいで、これ以上に上げることは無理だと思っています。多彩に、かつ、多数の作品を読まれて、きちんとレビューを残されてということで、本当に頭が下がる思いです。
      「源氏物語」は、上巻のレビューをアップしたのがちょうど半年前。〈雲隠〉まで進んだので、あとは締めの下巻ですが、読み始めるまでに気力がいるんですよね。こよあたりが古典に慣れていない証拠だと思うのですが、もう一つは、中巻でレビューが初めて11,000字を超えたんです。多けりゃいいわけでは当然にないわけですが、それでも自身の中では新たなハードルを作ってしまった感があって、下巻はなかなか手がのびないです。あと半年のどこかで頑張って決着させたいと思っています。
      一方で、この「ツナグ」もそうですが、辻村深月さんの作品は、ストレートに良いなあ…と感じます。最新でレビューを書いた「ハケンアニメ!」なんか、読んでいて、体が熱くなってきて、この熱量半端ない!と思って今日アップしたブックリストは、内容をこの作品に合わせたほどです。
      すみません。長くなってしまいました。
      今後ともよろしくお願いします!
      2022/09/01
    • おびのりさん
      こちらこそ宜しくお願いします。
      こちらこそ宜しくお願いします。
      2022/09/01
  • 私にとって初辻村作品。
    一生に一度だけ死者と会える機会を繋げてくれるツナグの物語を含む全5つの連作長編集。

    最近気が付いたのだが、自分ではSF系は苦手…と思っていたが、小説に関してはその限りではないようだ。
    これは著者の綴る作品の魅力の賜物なのだろう。

    本作品も感情移入しながら、喜ばしくもあり、怒りを覚えたり、哀しくなったり、楽しさを感じたり、感情を揺さぶってくれる作品だった。

    さて、私が会いたい人は置いておいて、故人となった私に、一生に一度のその機会を繋いで会いたいと思ってくれる人なんて果たしているのだろうか。
    …と、少々センチメンタルになってしまった。

  • 辻村氏の作品は初。聞いたことのあるタイトルと思い購入。ジャンルはファンタジーなのだろうか。
    都市伝説ともなっている「ツナグ」は死者に会えることを仲立してくれる使者。死者にとっても、会いたいという人にとってもただ一度だけの面会。もし本当だとしたら誰に使うか悩むだろう。
    最初の章はアイドルに会いたい一ファン。無理矢理の設定かとも思ったのだが、ちゃんとお互いに理由があった。長男と母親の章も、最後の日記で長男の長年の疑問が解決する。親友同士の結果は残酷だった。会いたい理由に黒い理由があり、それに対してのお返しも黒かった。
    同棲相手との面会は切なかった。7年間の消息不明だった真相は、本当は前向きだったことに救われる。最後は使者の交代の章だったが、全ての章が経緯も含めて繋がった。どうやって死者を呼び出すかや何故無料なのかも分かるし、何より使者を引き継ぐ少年の葛藤に引き込まれる。少年の両親の死の真相も解明できてスッキリした。

  • 突飛な話ではあるが、死んだ人に会いたいと思う人は大勢いるだろう。それが叶うのなら…
    唯一、希望が見えなかった嵐にも最後の章で顔を上げる兆しを用意していた。
    私には待ち人の心得が一番心に刺さった。

  • 今、世界で争ってる人
    争いをおこしてる人達は
    【自分の亡くなった肉親に胸を張って会えるのか?そもそもあってもらえるのか?】
    と思いました

    結局自己満で、自分の命をかけずに 大勢の命を使い
    大勢の命を奪わせる…ホントに意味がない

    ついでに文化や、植物や動物…自然も失われ
    一般人が泣き、一般人が飢える
    でも自分達は好きな物を着て、食べて…
    しかもそんなに先が長くない老人達がだいたいそれをやる…

    ホントバカバカしい

    全員に大事な人がいるのに

  • 本の中で一番[死]を分からせてくれた本で、[死]という尊さを分からせてくれました。ニュースとかで、殺人とかがおきてもへぇ~怖いな~ぐらいしか感じなくて死んだ人や残された人の気持ちを分かろうともしなかった。今度はなるべく相手を考えようと思いました。

    • マメムさん
      初コメです。
      優しい話もあればゾワッとする話ももあって、自分の生き方や人との向き合い方を考えますよね。
      同じようなメッセージで森絵都さんの『...
      初コメです。
      優しい話もあればゾワッとする話ももあって、自分の生き方や人との向き合い方を考えますよね。
      同じようなメッセージで森絵都さんの『カラフル』も読みやすくてオススメです^_^
      2024/02/04
  • 昨日の満月の夜も、きっと死者と生者が会ったんだろうな。
    あの人ならどうしただろう、と思いを馳せるのは、死んだ者に限らず、今は会えない誰かへも。

  • 「かがみの孤城」を読んでから、久々の辻村さん作品となりました。ファンタジーっぽいものを続けて選んでしまいましたが、後悔はしてないです。この本も読んで良かったヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*。巻末の本多孝好さん解説もじっくり読んでしまいます。
    『死を書くのは難しい。いつの時代、どこの場所でも難しいのだろうが、特に現代の日本で書くのは難しい。ここにはベースとなる物語がないからだ。』

    星になって空から見守っているかもしれないし、未練があって幽霊になるかもしれないし、何度もタイムリープして人生やり直してるかも、それか転生して別世界を冒険するとか…。いやいや、もう1回だけ使者ツナグを介して、ちゃんと会えて話せるかもしれないですね。歩美が誰と会いたいか決めたシーンに、目頭が熱くなりました。数年後を描いた続編も読みたいし、ダークな辻村作品も、気になっています!

    2024.11

  • いい意味で裏切られたというか……まさかこんな話とは予想していませんでした。
    想像を超える素晴らしい作品に出合うと、言葉の整理ができなくなりますね。

    この小説を読んでふと考えました。

    自分だったら、誰に会いたいだろうか。
    死んだあと、誰と会いたいだろうか。

    そんな平凡な思いが胸をよぎりました。
    けれど現時点では、そう思うほど切羽詰まった生活をしているわけでもなく、過去の辛い時期にそういう存在がいたのかも思い出せません。
    だから、今はまだ「誰もいない」のだと思います。

    この物語に登場する「死者に会いたい人たち」は、人生に区切りをつけたい人ばかり。
    皆それぞれ事情を抱え、ある意味で崖っぷちに立たされています。
    亡くなった人に会うことで、ようやく前を向く決意ができる――そんな人々の姿を描いた小説だと感じました。ところが「親友の心得」だけは辛口な結末で、他のストーリーとは違う心境になりました。

    女子高生の友情を描いたその物語。
    嵐の気持ちも、御園の気持ちも、どちらもわかる。
    多分、ほとんどの女性はこの二人の性格を両方とも少しずつ持っているのではないでしょうか。

    あれほど会いたかった御園に再会しても、プライドの高い嵐は最後まで素直になれなかった。
    その後悔は、若さゆえの行動だったのかもしれません。「あんなことをしなければ」
    「数年後に会っていれば」
    「素直に伝えられていれば」
    いくつもの「もし」が浮かんでくるけれど、やり直しができないのが人生なんですよね。

    私自身、学生時代に心残りがあるせいか、このエピソードには強く反応してしまいました。

    そして最後の「死者の心得」は、涙なしには読めない章でした。人と人とのつながりを深く感じさせる物語です。私は現実の人間関係にはかなりあっさりしている方なのですが、だからこそ「絆」を描くストーリーには憧れもあって、人一倍心を揺さぶられてしまいました。
    フィクションとわかっていても、心が持っていかれるのです。

    そして驚いたのは、すでに映画化されていたこと! 
    歩美は「絶対に高橋文哉だ!」と思っていたのですが、実際は松坂桃李だったのですね。
    もしリメイクがあるなら、ぜひ高橋文哉で。
    ジュンヤワタナベのコートも、きっとスタイリッシュに着こなしてくれるはずです!!

  • 再読。
    前に読んでからは時が流れ、その間に大切な人たちを何人も見送った。
    その人たちの顔を思い出したりしながら読んだ今回は、やっぱり前とはちょっと違う読後感。

    死者に会わせてくれる使者ツナグ。但し、会えるのは死後もあわせて1回限り。
    今、その権利を使ってしまうか、もう少し先までとっておくか。
    きっとこの条件が小説のポイントで、5話それぞれの主人公に「これは会っておくべき!」「ここで使っちゃう?」と思いながら読んだ。

    私は会いたい人はたくさんいるけど、とても決められないので先送りで。

  • 会社の方から、ツナグの続編を頂いた。

    あれ?そういえば「ツナグ」を読んでいなかった。
    何年か前、一度購入して読み始めたが、自分の好みではなかった為
    数ページ読んで諦め、売ってしまっていた(-_-;)

    仕方ないので、古本屋さんで購入し、再びチャレンジ。

    ツナグは、生きている人間を、既に他界した人間に合わせることのできる使者。
    生きている間に会えるのは1度だけ。
    死んでいる人間も会えるのはたった1度だけ。

    この世の者から、あの世の者へは交渉が出来るが、死者からこの世の者に対して
    交渉することはできない。

    最初の依頼者は突然亡くなったアイドルに会いたいという女性。
    次の依頼は、癌で母親を亡くした長男。

    この2作は、どうもなかなか本の中に入り込めず、
    (自分の好みはミステリの為)もがいていたのだが、

    3作目は喧嘩したまま亡くなった親友に会いたいという高校生。
    この作品はゾクゾクするほど良かった。

    4作目は、突然婚約者が姿を消す。まさかとは思うが、
    ツナグに依頼する男性の話。
    この作品もとても悲しいのに、どこかほっこりさせられる良い作品。

    最後はツナグ本人の物語。

    物語が進んでいけばいくほど、物語の世界に入り込むことが出来る。
    中高生でも読み易い良書ではないかと思う。

  • 親友の心得が響いたなー。親友でありライバルであるって、大人でもなかなか自分の気持ちに整理が付かず、難しいだろう。それが、高校生の多感な時期ともなると、こういう関係はさらに複雑な心境になるだろう。大いに理解できる。また、死者と生者が出会うのは誰のためになるのだろう?と主人公が悩み葛藤する姿が印象的だった。ショートストーリーが展開された後に、最後は使者の心得として、少し重みのある内容で、構成もしっくりきた。

  • 一生に一度、一夜だけ、死者との再会を叶えてくれる使者(ツナグ)。その存在にたどり着き、奇跡の再会を果たした人たちの姿を描く連作長編小説。

    まず感じたのは「長男の心得」の主人公が嫌なやつすぎるということ…!頑固で意地っぱり、人をバカにしたような言動が多く、見ていて辟易した。
    しかしその嫌なイメージの反動もあってか、彼がある人と再会するシーンは、温かくて懐かしくて寂しい気持ちになり、ぼろぼろと泣いてしまった。そして彼も実はそんなに悪いやつではないかも…と見方を変えてしまいそうになったが、普段の言動があまりに酷かったため、彼の印象をどこに落ち着かせればいいか分からなくなった(笑)


    さて。死んでしまった人と一度だけ会えるとしたら。私なら迷わず、数年前に死んだ母と会いたい。そんなチャンスがあったら、どれだけいいだろうと思う一方で、実際にはそんなチャンスがなくてよかったと心底思う。

    普通、「会うのはこれで最後」と確信を持って人と会うことはない。最後にしよう、とか最後になるかもしれない、と思うことはあれど、また会える可能性は残っている。だから大切な人が死んで二度と会えなくなってから、もっとああしてればと後悔する。でもそれでいいのだと思う。
    ツナグに頼んで大切な人と会うことができても、この人とはもう会えないんだ、死んじゃったんだと思いながら、平静を保って話せる気がしない。その一夜が明けたとき、亡くなったとき以上の悲しみにも襲われそうだ。
    そして後から、もっとあの話をすればよかったとまた同じような後悔に苛まれる気がする。
    死んだら会うチャンスはない、弁解も懺悔もできず、死者と生者をきっぱり断絶してくれているこの世界のほうがずっと優しい。だからこそこの世で会って話せるうちに、ちゃんと向き合おうと思える。

    「親友の心得」はまさに、再会を果たしたにも関わらず後悔が残ってしまった人の話。
    前に読んだ『Another side of 辻村深月』で辻村さんが語るところによると、この章は本当は後味のいい話を書くつもりだったが、締め切りを勘違いしていて、慌てて書いたらあのラストになったそう。私は死者との再会が温かく後味の良いものばかりではないことを描くこの章が、他とは違うリアリティがあってとても好きだ。

    総じてどの章も強く引き込まれ、それぞれ違う意味合いで心に残った。
    ただ連作長編小説のため、一つ一つのストーリーが濃密かつ端的に描かれていて、ようやくの思いで再会を果たした彼らが、朝を迎えるシーンで毎回「えっ、もう?」とあっけなく感じた。欲を言うならば、一晩かけて何をどんな風に話したのか、もっと知りたかった。きっとそれらが詳細に描かれていたとしても読後に感じることに変わりはないだろうが、一夜だけのその不思議な世界にもう少し浸っていたかった。それほどに引き込まれていた。

    次は、映画版をぜひとも観てみたい。

  • 人の歩む人生の数だけ、悩みというものは存在するのだろう。だが、悩みを解決するのは自分自身であっても、きっかけを作るのは周囲の人間だ。

    アイドル好きのOL、頑固な工務店経営者、親友を亡くした女子高生、交際相手が失踪したサラリーマン。大切な人の死に行き当たり、それぞれの悩みを解決するきっかけを掴み損ねてしまった人物たちが、使者(ツナグ)を通じて二度と会えないと思っていた人に出会うことで、止まってしまっていた時を動かしていく様は、残酷なようで羨ましくもあった。
    どの作品も、登場人物の心象の変化が死者と出会う前と後ではっきりと描かれていて、読みやすさとは裏腹に描写の繊細さに驚いた。人生に打ちのめされていようと、親族間で上手くやれていなかろうと、大切な人の前では弱い部分を曝け出してしまう人物たちの姿は、人間味があってグッとくる。

    全5篇ある話の中から、印象に残ったセリフと好きなエピソードを紹介しようと思う。
    印象に残ったセリフは、1篇目『アイドルの心得』で登場するアイドル・水城サヲリの言った、「人間ってのは、身近なものの死しか感じることも悲しむこともできないんだよ」というセリフだ。
    この本を読んでいた2024年10月中旬は、有名人の訃報が特に多かったように思う。不謹慎かもしれないが、私にとってそれらの訃報は世界のどこかで起こった不幸のひとつでしかなく、どこまでいっても彼らとは赤の他人だった。ゆえに、悲しみを抱くことはあっても、背負うことはない。
    私は身近な人が亡くなったという経験が少ない。だからこそ自身が死というものに疎いのだと、このサヲリのセリフによって気づかされ、いつか来る悲しみに耐えることができるのか不安になった。

    次に好きなエピソードの紹介をしよう。4篇目となる『待ち人の心得』は、使者を通じて失踪した婚約者・日向キラリに会おうとする男性・土谷功一の話だ。
    使者とのやりとりの中で、失踪したキラリが死亡していたことを知った土谷は、婚約者が死亡していた事実を認められず、キラリとの面会をセッティングした日の夜に逃亡してしまうのだが、使者である少年・渋谷歩美に叱咤され、面会に向かうことになる。
    ネタバレになるため結末は省くが、「中の物は、説明が必要ないほど当たり前に、彼女の大事な物であり続けた」という文章で涙腺ダムが決壊。読んだ方ならなんのことか分かるはず。こういうのダメなんだよ…私…。
    また、これまでの話の中で、人としての感情が欠落しているように描写されていた歩美の必死の説得が印象的で、年相応の感情を押し殺し、使者としての役割を全うしている事実に感服した。歩美の心境の変化の理由はは5篇目『使者の心得』で描かれるのだが、それはぜひ読んで確かめてほしい。

    辻村氏の作品を読むのは『闇祓』以来だったのだが、透明感のある澄み切った文体が、「あの世」と「この世」を繋ぐ物語である本作にマッチしており、読んでいて幸せな気分になれた。
    もし、この世界に使者がいるのなら、私は誰に出会うことを選ぶのだろうか。ゆっくりと考えながら、それが決まった時、いつか本作の続編を読みたいと思うのだった。

  • 辻村深月さんの作品を読むのはこれが初めてです。ヒットを飛ばしている作家さんだという認識はあったのですが、どちらかというと学園ものは世代が異なり感情移入が難しい?という思い込みが勝ってしまい距離を置いていました。

    一方でブクログの皆さんの感想を読んでいたら、どうにも読みたくなってしまい、辻村さんの多くの作品群の中から選んだのが「ツナグ」でした。続編も出ていたので狙いを定めました。イャー面白かった。この出会いに感謝です。

    「ツナグ」というの能力を主題とした作品。死と生を繋ぐという能力はもちろん創作なのだけれど、ここまで深く考えさせられるとは思っていませんでした。しかも面白くて感動する。

    初めのイントロのところは、ん?という感じで、私自身が少し気負いすぎたかな?と思ったのも束の間。ストーリーの真ん中に入っていくと、前半の展開が主人公の成長に繋がっていく。ストーリーの後半に進むにつれて深みを増していく。死者が生きている人へ与える影響・意味、生と死を繋ぐことの意義を主人公が考えるとともに、考えさせられる。

    ストーリーの展開や主人公の成長とともに徐々に読者の心を揺さぶっていく構成の仕方、作品の最初から最後まで、とても丁寧に作り込まれた作品だと思いました。

    読み終えて、どうしても「その後」を読んでみたくなりました。というか、早く読まなければ!という気持ちにさせてくれました。(読みます)

    読んでよかった。

  • 「一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれる」
    そんな使者「ツナグ」を基に構成された4編と。
    使者の使命と4編のサイドストーリーを綴った物語。
    ファンタジーとミステリーが融合された話は、苦く、切なく、痛く、そして温かく。
    心に響くものがありました。
    自分的には「待ち人の心得」が特に心に残ったかな。
    続編もあるようなのでこちらも読んでみたいと思います。

  • やはり、辻村深月だった。さすが、辻村深月だった。

    と、まるで辻村作品を読み込んでいるような感想を持ったけれど、実は二冊目。「かがみの孤城」が素晴らしかったので、この有名な「ツナグ」ももちろん相当期待して読み始めた。

    依頼者一人目、二人目と読み終え、「ん?」と思った。辻村深月にしては、さらっとしてるな、と。依頼者三人目の話から一気に辻村さんの本領発揮だと思った。

    友達への信頼、嫉妬、怒り、悲しみ・・・なんとも表現しがたい感情を、ストーリーの展開とともにここまで表現するとは。御園の想い、嵐のとてつもない悔恨、重すぎるものを背負って生きていく嵐、全てが見事に描かれていた。

    そして、依頼者四人目とツナグ(使者)の話・・・
    やはり、構成が素晴らしい。読み終わった後のスッキリ感も、この構成ならではなのではないかと思う。

    永遠のテーマともいえる「生と死」についての考察をまた新たな視点から見ることができたような気もする。
    歩美が悩むように、「死者に会おうとすることは生者のエゴかもしれない。」。けれど、死者に先に進むよう後押しをしてもらうのは、そんなに悪いことでもないのかもしれない。いずれにしろ大きすぎる喪失感を背負って生きていくのは生者に課された使命なのだから。

    それにしても、不思議な力を持つ者達には概して不幸が起こってしまうものだなぁ。

  • そういうことだったんだ…
    ぞくぞくしました。

    諸事情を抱えて生きていく人たち。
    とある事情から突然さよならした人たち。

    そのひとたちをつなぐ(ツナグ)ボランティア。
    わだかまりを抱えていきていくことは大変なことだと思います。

    恨み辛みを抱えるのではなく、感謝・感動をかかえていたい、と心から思います。
    そのきっかけをつなぐのですね。
    こわいくらいの良本です。(続編をよむのがこわい・・・)

  • 一生に一度だけの死者との再会の橋渡しを担う「使者」。「使者」と書いてツナグと読む。

    読み始めたとき、亡くなった人と会えるっていいなぁと思いながら、私なら誰と会いたいだろうと、そんな軽い気持ちで読んでいた。
    物語が進むにつれ、本当に亡くなった人たちと会っていいのか?会いたいと思うのか?納得できる再会になるのか?など、この自然の原理に反する行為に、何かもっと他の意味を感じ取るべきではないかと、想いを巡らせた。

    本作は、突然死したアイドルとそのファンとの再会、年老いて病死した母と家業を引き継いだ息子との再会、事故死した親友とその親友の女子高生との再会、失踪した婚約者と会社員との再会、ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれが抱える思いを持ち共に過ごす一夜の邂逅は、それぞれにどのような未来の軌跡を提示するのであろか。

    私がもし再開するなら誰と会いたいか、そしてあってどうするのか、もし私が亡くなった時に誰に会いたいと思うのか、なぜ会いたいと思うのか、会ったあと私はどうするのかとら考える時、なかなか手放しに喜び、会いたいと言えない自分を感じた。

    アイドルの心得
    亡くなったアイドル・水城サヲリに会おうとする冴えないOLの平瀬愛美の再会の物語。

    「心が風邪をひく」って、心が病んでいるとおなじ表現だと思うのだが、もっと具体的で心に響いてきた言葉である。生前、サヲリも心が風邪をひいていたからこそ、愛美の切迫した想いを感じ取ったのだと分かる。
    結果的には、サヲリとの再会は愛美の今後の自分の道を示すことになる。

    長男の心得
    癌で亡くなった母・畠田ツルからの教えで、ツナグを知り、母と会う息子・畠田靖彦の物語。

    母に癌告知をすべきであったのかを確かめたく、母と再開する。孫や親戚への告知も靖彦の判断でしなったことを責められ、自分が下した判断を良し、悪しではなく、自分が母に告知しなかったことを受け入れて欲しくて会ったのだと考えると、靖彦の傲慢さと弱さのような気がしてならなかった。
    後に記載されている、いわゆる告白により自分の心の中の悩みを吐き出しているとしか思えなかった。

    親友の心得
    亡くなった親友・御園奈津に会って、自分の行為を恨んでいるかを知りたかった嵐美砂の物語。

    がんじがらめの状態を表す「黒く、タイヤやゴムを燃やした時に出る濃い煙のように、もやもやと、ぐるぐると私の身体を巡る。自分がその煙に呑まれたのか、それとも煙は私の内側から吹き出ているのか、境界が曖昧になる。」が、なんとも身動きが取れない心理を表しているようで想像して恐ろしく感じた。そして、この物語こそ、死者と再開することを考えさせられる物語であった。

    「懺悔する、告白するという行為は、随分やった側に虫のいい考え方だ。」自分の中の悩みを吐き出して、懺悔し、告白することでそれを正当化してしまう。嵐もまた、御園がわざと事故が起きるようにしたことを知っているのか、知っていれば謝って許してもらおう、そうすれば、今のこの苦しい状態から解き放たれると言う気持ちで再会をした。でも、御園の気持ちを確かめる勇気もなく、結局、再開が終了した後に歩美から「道は凍ってなかったよ」という伝言を伝えられた瞬間、一方通行な残酷さを感じる。つまり、「道は凍っていなかったけど、あなたの殺意は知ってたよ。」ということだ。

    待ち人の心得
    行方不明の婚約者・日向キラリの安否を確かめるためにツナグに再会を依頼する会社員・土谷功一の物語。

    「夫が妻を殺せる年数」つまりは、「結婚相手が失踪した場合、殺された方は七年経てば死亡手続きが取れる。法的に正式に殺して、新しい生活を始めることができるようになってるんだ。」と大橋は土谷を思ってこの言葉を伝えている。それでも心変わらず待ち続けるなんて不可能だとこの言葉が発せられた時に感じた。なぜならこの言葉は、土谷の気持ちに今後、居座ることになる。だから、土谷はツナグの存在を頼ることになるのだ。そして、そのことが気持ちの整理という点ではこれも生者の側に立った再会とはなるが、意味のある再会であったと思える。

    また、再会当日の雨が、土谷の気持ちを表現していることに、寂しさと虚しさを感じた。「あいにくの雨だった。満月の夜と指定されたにもかかわらず、分厚い煙のような雲が何層にも重なった空には、月どころか星の姿も見えなかった。」「黒く塗られたアスファルトの道が鏡のように光って、道行く人の姿と色とりどりの傘の色を反射している。」


    使者の心得
    死者として、歩美が祖母から力を引き継ぐ。その過程で、歩美の両親の死の理由が明らかになる。

    青銅の鏡の展開が本当はこの物語のテーマではないかと思えるくらいうまく繋がって、この作品がなぜ面白いかというのが、解った気がした。歩美な両親が二人してなくなり、これが青銅のの持つ力であり、これを歩美が解き明かしていくことに、歩美の使者としての運命のような感覚を読者に植え付けている。また、展開もさることながら、そこに使者して生きていくことの辛さも感じられ、本作の読者に与える想像の大きさと深さが、読んでいて心地よかった。

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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