盲目的な恋と友情 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 4643
感想 : 379
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101388823

作品紹介・あらすじ

タカラジェンヌの母をもつ一瀬蘭花(いちのせらんか)は自身の美貌に無自覚で、恋もまだ知らなかった。だが、大学のオーケストラに指揮者として迎えられた茂実星近(しげみほしちか)が、彼女の人生を一変させる。茂実との恋愛に溺れる蘭花だったが、やがて彼の裏切りを知る。五年間の激しい恋の衝撃的な終焉。蘭花の友人・留利絵(るりえ)の目からその歳月を見つめたとき、また別の真実が――。男女の、そして女友達の妄執を描き切る長編。

感想・レビュー・書評

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  • 辻村さんの作品を読んでいると、いつも完全に引き込まれて虜になる。
    作品の中で、主人公が、盲目的に恋をするように、夢中になる。
    いつだって彼女の作品には、登場人物の命が宿っている。

    解説を書かれた山本文緒さんの言葉が、的確にこの作品を表現している。
    「客観性を失って自分の問題しか見えなくなっているふたりの一人称を並べ、家族や仕事などの要素を最小限に留めて、彼女たちの狭い視界をきめ細かく追った。それによって、混乱の渦はより濃く、凄みのある素晴らしい作品になった」

    「恋」の章ではタカラジェンヌの母を持ち、とびぬけた美人の蘭花が、とびぬけた美男の星近と恋に溺れる様子が描かれ、
    「友情」の章では蘭花の友人、留利絵の視点で蘭花と留利絵の友情関係が描かれる。

    初めての恋、美男だけどダメな男星近とずぶずぶと溺れていく蘭花は見ていて痛々しくもある。
    親しい友人は言う「別れなよ」と。
    傷つく蘭花を見ていられない友人からしたら、適切な助言である。
    でも、蘭花は。それでも彼を好きなのである。例え彼がクズだったとしても、彼を好きなのである。
    好きという感情は、人間の心と、考える頭脳を、奪う。

    留利絵も、蘭花と星近が別れた方がいいと思っている友人の一人だ。
    ただ、留利絵の友情は、他の蘭花の友人のものとは異なる。
    もっと熱烈で強烈だ。他のどの友人よりわたしを選んでほしい、ここまで蘭花のために自分を犠牲にしているのだからもっとわたしに感謝をすべき。
    それは一方的な慕情だ。
    だからそこに、相手からの見返りを求めてはいけない。
    そんなの分かってる、それでも求めてしまう。
    友情とは平等に存在するものだ。それが、相手から選んでほしい、感謝されたいと、そこに見えない優劣が生じたとたん、その慕情は暴走する。

    わたしにもいつか、そんな風に思う友人はいた。
    でも、そんな関係は自分が都合よく頼られているとわかると、とてつもなく疲弊する。
    いつも自分だけが相手に合わせていて、なぜかいつもドタキャンされ、それを許している。
    それを許さずに彼女と関わらなければいいのに。それでもその関係性を捨てられないのは。
    ずっと人並みに扱われることがなかった自分を、人並みに扱ってくれたから。
    もうこれ以上、自分が魅力的な友人に恵まれることはないと思い込んでいるから。
    縋ってしまう、依存してしまう、期待してしまう。

    「恋の前には、友人に失礼なことをしてもいいのか、思いやりを欠いてもいいのか、恋ならばすべてが許されるのか」

    何より残酷なのは、恋と友情を天秤にかけた時、恋の方が、ガクンと下に、傾くことだ。
    気付かないうちに、人は恋人を優先する。
    つまり、自分自身を優先させる。
    だから、恋は友情には勝てない。
    結局、また友人に傷つけられておしまい。

    今はもう、そこまで強烈な思いをもって関わる友人はいないけれど。
    それが、恋なら。
    今自分が抱えている慕情が、いつか暴走してしまうのでは。
    いくら気をつけていても、その暴走に気付かなくなるほど強烈な愛情を孕んでいると、盲目になる。
    他人事ではない、そんな不安に駆られる瞬間がいくつかあった。

  • 一気読み必須です。
    読んでて感じたのが、辻村さんっぽくないなと
    感じたことです。まったく無いわけじゃないですが、どこか洗練されているというか、上手いなと感じました。「恋は盲目」とは、よく言われますが、
    「盲目な友情」とは、どういうことなのか、ぜひ
    読んでみてほしいです。

  • ヒグチユウコさんのカバー装画に惹かれて購入しました。
    珍しく恋愛物でも読もう、と読み始めました。
    一気読みです、あっという間に睡眠時間は削られた。
    終わってみれば、完全なるイヤミスっ‼︎
    今回はブラック辻村さんだったのか、と。

    一人の男との恋愛に溺れる主人公蘭花と、蘭花に執拗に執着する女友達の留利絵。
    その二人の目線からのお話。
    『盲目的な恋』は、そんな時があってもいいなって思えるけど、『盲目的な友情』は怖い…
    度が過ぎてしまうと、それは狂気そのもの。
    留利絵の蘭花に対する独占欲や執着心が、もはや身勝手…
    でも本人には、そんなつもりは少しもないし感謝されるべきだと思っている。
    同じ出来事を各々の目線で語った時に、二人の感覚のズレや温度差がはっきりと分かる、何が余計なお世話なのかも。
    ラストには、ゾワッとする結末が待っています。

    男女の恋愛のやりとりや、女友達の微妙な会話や雰囲気など、さすがの辻村さんです。
    わかるわかる〜、いるいる〜、です。
    イヤミス苦手でなければ、おすすめです。

    • ほん3さん
      イヤミス、なんですねえ。気になります。
      盲目的な友情、は確かに怖いですね_:(´ཀ`)
      イヤミス、なんですねえ。気になります。
      盲目的な友情、は確かに怖いですね_:(´ཀ`)
      2022/06/22
    • あゆみんさん
      ほん3さん、イヤミスでした。
      自覚の無い盲目的な友情、怖いです。
      辻村さんの文章は、こう自然にザワザワさせてくるんですよね_:(´ཀ`」 ∠...
      ほん3さん、イヤミスでした。
      自覚の無い盲目的な友情、怖いです。
      辻村さんの文章は、こう自然にザワザワさせてくるんですよね_:(´ཀ`」 ∠):
      2022/06/22
  • やめられないのです、最後まで一気読み
    ホントはダークな話は嫌いなはずなのに
    「黒辻村」にはまります
    恋対友情
    うーん
    独り占めしたい
    自分だけを見つめてほしい

    それにしてもこの著者にはやはり惹きつけられる

    過去にあったノンフィクションより
    明日起こりそうなフィクションを書く
    そう言い切る「黒白辻村深月」
    これからも楽しませていただきます

    ≪ もう見えぬ その妄執が 壊してく ≫

  • 『どうして、いつの日も、友情は恋愛より軽いものだというふうに扱われるのだろうか』留利絵の心情を現したこの表現がこの本の全てだと思いました。今までこんな風にこの両者を比較する、比較して考えたことがなかったので、なかなか感想の言葉さえ上手く浮かばないですが、読み終わった後、確かにどうしてだろうと考えこんでしまいました。

    「盲目的な恋と友情」書名そのままの作品だと思いました。
    最初の<恋>で、『気高く他人を見下す』茂実が壊れていく描写。辻村さんって男性が壊れていく描写が本当に上手いです。ただ、『気高く他人を見下す』ということで指揮者が登場というのは、設定として上手いなあと思う一方で、自然とそう感じてしまう自分の卑屈さも感じてしまってなんだか微妙ではあります。いずれにしても、これでもかという位にものすごく<盲目的な恋>のお話でした。当事者になったらと思うと、とても怖い展開。ただ、次章に比べると明暗がハッキリしていた分まだ救いがありました。

    一方で、次の<友情>の薄暗い怖さ、絶望感は格別です。最初から最後まで光の当たらない日陰の世界。そこで蠢く<盲目的な友情>の沈鬱さ、もどかしさ、凄惨さ。この世界はあまりワイドショー的ではないけれど、その分逆にそこかしこにありそうに感じてしまうところが絶妙だと思いました。ただ、決定的な証拠があったとは思えないこと考えると、結婚式の最中にそれで中断という展開は流石にないかなぁと。いろいろとリアルに描かれていただけにそこがちょっとひっかかりました。

    いずれにしても、この本で淡々と描かれる一人の女性の情念の世界。一般的に、<友情>という言葉からは何だかとても美しい響きを感じますが、この章<友情>を読んでしまった後では、<友情>って何なんだろうと思ってしまいました。

    それにしてもダークだ。

  • ほぼ同時系列のお話しを、盲目的な「恋」と「友情」の2つのパートで描いた今作。

    大好きな作家さんでも文庫化してからじゃないと買わないんで、出版順に読めてはいないんだけど、辻村さんがあまりに表現うまくて恐くなるくらいの女の世界、女の友情が書かれてる作品で、あーまたコレ系かぁ…。なんて思いながら読みました。

    が、読んでみたらやっぱうまいんだよなぁ。
    最近一冊を一気読みすることなかったのに、これは一気読みしてしまった。野球のCSやってるというのに、読みたい衝動の方が勝つなんて!(笑)

    「ふちなしのかがみ」や「太陽の坐る場所」はうまいけどなんか好きになれず、心に残らない作品で、今作「盲目的な恋と友情」のあらすじ読んだときにこの2作品と同じ傾向かな…と思ってなかなか手がでなかったんですが、いや、おみごと、今作は読み終わってからも余韻にひたり、所々何回も読み返してしまいましたよ❗

    辻村さんはほんとラストの持って行き方が秀逸で、毎回これ以上はないだろう…と思わされるし、同じようなテーマでもさらに予想を裏切ってきて、ただただ感心する。

    ある程度先は読めるんだけど、それでもきちんと裏切ってくれる、というか…。
    いや、これは面白かったです。

    最後まで同時系列で「恋」と「友情」を描いてましたが、恋が終わってからも友情は続いていたのに、ラストで友情も終わる予感?余韻?を残してend…だったのでめちゃめちゃ続きが気になります。


    あと、関係ないけど最後の解説が非常にうまくて共感しまくりで、読み終わってから誰が書いたんだ?と見返してみたら、山本文緒さんでした。
    有名だから名前も代表作品名もすぐ出てくるけど、実際作品読んだことないんで、これきっかけに、山本作品読んでみよう、と思わせる文章でした。

  • 【盲目的な恋】は蘭花の視点。冒頭の「あの人が死んでしまったら、とても生きては行けないと思った」…こんな想いを味わった経験者は少なくないだろう。私も然り。。。そんな恋を実らせて人生を進めた人も中にはいるのだろうけど。

    【盲目的な友情】は同じ時系列と事柄を留利絵の視点で描く。

    恋ver.も友情ver.も独占欲と執着が共通で痛々しい。

    盲目的な恋は想像しやすいけど、友情の方は⁈ 異性を好きという気持ちは友情より優先させることなのか?これがテーマでもあり、自分の価値観を顧みるところ。

    【黒辻村】そして、さすが辻村深月。

  • 終盤鳥肌が立った。
    ありきたりな表現だけど「まさか」としか言えない私は、本当に語彙力がない。

    序盤は「えっ!えっ!これ辻村深月?えっ!」
    って思ってしまうくらい、意外にも濡れ場が登場してビックリした。でもこんなしっとりした話でも、言い回しや、文章の流れみたいなのがやっぱり辻村深月だなぁ、と読みながら思っていた。

    2人とも、こんなに1人のことを長く深く好きでいられるなんて、もうすごい。偏りがすごいけど、でもここまで突き抜けてると好感しかない。

    結果的に留利絵の希望が叶ったのではないかなあ。
    蘭花ちゃんは星近以外、誰にも興味なかったんじゃないかな。あれだけ恵まれてると興味を持たれることが多すぎて、自分から興味を持てないのかも。留利絵は全くそれの対岸にいる感じ。
    そういう意味ではピッタリな2人なのかも。

    欲を言えば、室井の妻にもっと社会的な罰が与えられてほしかったな。

    辻村深月の世界がますます広がって、ますます好きになった一冊でした。

  • 怖い…けれど面白かった。辻村深月の作品はいつも続きが気になって一気に読んでしまう。

  • 恋は盲目と言いますが、友情まで盲目になってしまったらそんな怖いことになるのだな、と始めて思った。
    盲目になってしまえば欠点も見えなくなって直面することを恐れてしまう。
    友情まで盲目になってしまうとその他が邪魔になって特定のその人だけを守ろうとしてしまう。
    それぞれ人間関係は付かず離れずがいいのかな。

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著者プロフィール

1980年2月29日生まれ。千葉大学教育学部卒業。2004年『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で直木三十五賞を受賞。2018年には『かがみの孤城』で本屋大賞第1位に。本書の本編『ハケンアニメ!』は、2015年に本屋大賞3位に選ばれ、2022年5月には映画公開が予定されている。主な著書に『スロウハイツの神様』『V.T.R.』『ハケンアニメ!』『島はぼくらと』『朝が来る』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』などがある。

「2022年 『レジェンドアニメ! 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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