盲目的な恋と友情 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 224
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101388823

作品紹介・あらすじ

タカラジェンヌの母をもつ一瀬蘭花(いちのせらんか)は自身の美貌に無自覚で、恋もまだ知らなかった。だが、大学のオーケストラに指揮者として迎えられた茂実星近(しげみほしちか)が、彼女の人生を一変させる。茂実との恋愛に溺れる蘭花だったが、やがて彼の裏切りを知る。五年間の激しい恋の衝撃的な終焉。蘭花の友人・留利絵(るりえ)の目からその歳月を見つめたとき、また別の真実が――。男女の、そして女友達の妄執を描き切る長編。

感想・レビュー・書評

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  • 辻村さんの作品を読んでいると、いつも完全に引き込まれて虜になる。
    作品の中で、主人公が、盲目的に恋をするように、夢中になる。
    いつだって彼女の作品には、登場人物の命が宿っている。

    解説を書かれた山本文緒さんの言葉が、的確にこの作品を表現している。
    「客観性を失って自分の問題しか見えなくなっているふたりの一人称を並べ、家族や仕事などの要素を最小限に留めて、彼女たちの狭い視界をきめ細かく追った。それによって、混乱の渦はより濃く、凄みのある素晴らしい作品になった」

    「恋」の章ではタカラジェンヌの母を持ち、とびぬけた美人の蘭花が、とびぬけた美男の星近と恋に溺れる様子が描かれ、
    「友情」の章では蘭花の友人、留利絵の視点で蘭花と留利絵の友情関係が描かれる。

    初めての恋、美男だけどダメな男星近とずぶずぶと溺れていく蘭花は見ていて痛々しくもある。
    親しい友人は言う「別れなよ」と。
    傷つく蘭花を見ていられない友人からしたら、適切な助言である。
    でも、蘭花は。それでも彼を好きなのである。例え彼がクズだったとしても、彼を好きなのである。
    好きという感情は、人間の心と、考える頭脳を、奪う。

    留利絵も、蘭花と星近が別れた方がいいと思っている友人の一人だ。
    ただ、留利絵の友情は、他の蘭花の友人のものとは異なる。
    もっと熱烈で強烈だ。他のどの友人よりわたしを選んでほしい、ここまで蘭花のために自分を犠牲にしているのだからもっとわたしに感謝をすべき。
    それは一方的な慕情だ。
    だからそこに、相手からの見返りを求めてはいけない。
    そんなの分かってる、それでも求めてしまう。
    友情とは平等に存在するものだ。それが、相手から選んでほしい、感謝されたいと、そこに見えない優劣が生じたとたん、その慕情は暴走する。

    わたしにもいつか、そんな風に思う友人はいた。
    でも、そんな関係は自分が都合よく頼られているとわかると、とてつもなく疲弊する。
    いつも自分だけが相手に合わせていて、なぜかいつもドタキャンされ、それを許している。
    それを許さずに彼女と関わらなければいいのに。それでもその関係性を捨てられないのは。
    ずっと人並みに扱われることがなかった自分を、人並みに扱ってくれたから。
    もうこれ以上、自分が魅力的な友人に恵まれることはないと思い込んでいるから。
    縋ってしまう、依存してしまう、期待してしまう。

    「恋の前には、友人に失礼なことをしてもいいのか、思いやりを欠いてもいいのか、恋ならばすべてが許されるのか」

    何より残酷なのは、恋と友情を天秤にかけた時、恋の方が、ガクンと下に、傾くことだ。
    気付かないうちに、人は恋人を優先する。
    つまり、自分自身を優先させる。
    だから、恋は友情には勝てない。
    結局、また友人に傷つけられておしまい。

    今はもう、そこまで強烈な思いをもって関わる友人はいないけれど。
    それが、恋なら。
    今自分が抱えている慕情が、いつか暴走してしまうのでは。
    いくら気をつけていても、その暴走に気付かなくなるほど強烈な愛情を孕んでいると、盲目になる。
    他人事ではない、そんな不安に駆られる瞬間がいくつかあった。

  • 『どうして、いつの日も、友情は恋愛より軽いものだというふうに扱われるのだろうか』留利絵の心情を現したこの表現がこの本の全てだと思いました。今までこんな風にこの両者を比較する、比較して考えたことがなかったので、なかなか感想の言葉さえ上手く浮かばないですが、読み終わった後、確かにどうしてだろうと考えこんでしまいました。

    「盲目的な恋と友情」書名そのままの作品だと思いました。
    最初の<恋>で、『気高く他人を見下す』茂実が壊れていく描写。辻村さんって男性が壊れていく描写が本当に上手いです。ただ、『気高く他人を見下す』ということで指揮者が登場というのは、設定として上手いなあと思う一方で、自然とそう感じてしまう自分の卑屈さも感じてしまってなんだか微妙ではあります。いずれにしても、これでもかという位にものすごく<盲目的な恋>のお話でした。当事者になったらと思うと、とても怖い展開。ただ、次章に比べると明暗がハッキリしていた分まだ救いがありました。

    一方で、次の<友情>の薄暗い怖さ、絶望感は格別です。最初から最後まで光の当たらない日陰の世界。そこで蠢く<盲目的な友情>の沈鬱さ、もどかしさ、凄惨さ。この世界はあまりワイドショー的ではないけれど、その分逆にそこかしこにありそうに感じてしまうところが絶妙だと思いました。ただ、決定的な証拠があったとは思えないこと考えると、結婚式の最中にそれで中断という展開は流石にないかなぁと。いろいろとリアルに描かれていただけにそこがちょっとひっかかりました。

    いずれにしても、この本で淡々と描かれる一人の女性の情念の世界。一般的に、<友情>という言葉からは何だかとても美しい響きを感じますが、この章<友情>を読んでしまった後では、<友情>って何なんだろうと思ってしまいました。

    それにしてもダークだ。

  • ほぼ同時系列のお話しを、盲目的な「恋」と「友情」の2つのパートで描いた今作。

    大好きな作家さんでも文庫化してからじゃないと買わないんで、出版順に読めてはいないんだけど、辻村さんがあまりに表現うまくて恐くなるくらいの女の世界、女の友情が書かれてる作品で、あーまたコレ系かぁ…。なんて思いながら読みました。

    が、読んでみたらやっぱうまいんだよなぁ。
    最近一冊を一気読みすることなかったのに、これは一気読みしてしまった。野球のCSやってるというのに、読みたい衝動の方が勝つなんて!(笑)

    「ふちなしのかがみ」や「太陽の坐る場所」はうまいけどなんか好きになれず、心に残らない作品で、今作「盲目的な恋と友情」のあらすじ読んだときにこの2作品と同じ傾向かな…と思ってなかなか手がでなかったんですが、いや、おみごと、今作は読み終わってからも余韻にひたり、所々何回も読み返してしまいましたよ❗

    辻村さんはほんとラストの持って行き方が秀逸で、毎回これ以上はないだろう…と思わされるし、同じようなテーマでもさらに予想を裏切ってきて、ただただ感心する。

    ある程度先は読めるんだけど、それでもきちんと裏切ってくれる、というか…。
    いや、これは面白かったです。

    最後まで同時系列で「恋」と「友情」を描いてましたが、恋が終わってからも友情は続いていたのに、ラストで友情も終わる予感?余韻?を残してend…だったのでめちゃめちゃ続きが気になります。


    あと、関係ないけど最後の解説が非常にうまくて共感しまくりで、読み終わってから誰が書いたんだ?と見返してみたら、山本文緒さんでした。
    有名だから名前も代表作品名もすぐ出てくるけど、実際作品読んだことないんで、これきっかけに、山本作品読んでみよう、と思わせる文章でした。

  • 結構激しかった。恋編と友情編に分かれており、主人公は変わるけど友達同士、という構成。最後はサスペンスのようなミステリーのような終わり方だった。

    〜恋〜
    茂見みたいな男に捕まりたくない、と誰もが思いそう。でもたしかに「ほんとの初恋相手」のことが忘れられない、というのは誰しもあるのではないだろうか。それにしても蘭花がもったいなかった…茂見に青春捧げてるのが。

    〜友情〜
    肌がコンプレックスな気持ちはわかるけど、友達がセクハラされたときの「私だったらされなかっただろう」発言は、美波の言う通り、場にそぐわないんじゃなかろうか…。しかし自分も似たような過ちを犯す可能性がありそうで、身近に感じた。

    恋編では恋人への執着、友情編では友達への執着が激しく描かれていた。
    留利絵は「なぜ友情は、恋愛より優先度が低いような扱いをされるんだ」と言っていた。私はそうは思わない。
    恋人より友達の方ができやすいから、傍目にはそう見えるかもしれない。けど「この子がいてくれて良かった」と思える友達は確かに存在する。恋愛が上だとは思わない。

    正直リベンジポルノの話が気持ち悪かったけど、作品は作品だから仕方ないかな…。

  • 恋は盲目と言いますが、友情まで盲目になってしまったらそんな怖いことになるのだな、と始めて思った。
    盲目になってしまえば欠点も見えなくなって直面することを恐れてしまう。
    友情まで盲目になってしまうとその他が邪魔になって特定のその人だけを守ろうとしてしまう。
    それぞれ人間関係は付かず離れずがいいのかな。

  • 私の好きな文章を書くあおちゃんが2019年1番だと言っていた本。なんだかんだ一番仲の良い友達がこれは面白かったと言っていた本。絶対に交わりそうにない二人の感想が一致している作品ってどんなもんだと思って興味深く読み進めた。間違いなく盲目的な二人の過ごした平行世界は、とてつもなく不器用で、人間臭かった。結婚式のシーンから始まって、結婚式のシーンで終わるんだけど、同じ状況を描いているのにページをめくりはじめたあの時の私と、今この本を読み終えようとしている私では全く違う世界を見れるあの感覚が味わえて、乾くるみのセカンドラブとかこの本とかは好きだと思った。だがしかし救いがない。朝井リョウの切なさはどことなく綺麗で儚いのに、この本には綺麗さがあんまりなかったように思う、あ~~~朝井さんの新作が読みたい少女は卒業しないっぽいやつ。ごめんこれのネタバレ思いっきりすると私るりえが殺したかと思ってたららんかが突き落としてたのね手が出たって突き落とした表現かと思ったら口を抑えただけなのね。駄目だと分かりながら誰かを愛すことほど盲目的になる瞬間はないし、だれから何を言われようが戻れないことを知ってる。だって誰よりも自分の理性止めてるのに戻れない道を行く人を、他の誰が止められる?幸せだって言い聞かせながら本当は選びたかった人を捨ててしまった女がほかの人との結婚式を終えて幸せになれるのか?警察が来てくれてよかったんじゃないだろうかと思う、よくはないけど。

  • あの人ではない人と私は結婚する。
    すべてをかけて愛したあの人は、もういない。

    恋愛において盲目的という表現はよくありますが、友情においては考えたこともなかった。
    客観的にみれば気付けるはずのことが、盲目的になると気付けない。
    周りから見れば異常なことがわからない。
    恋愛も友情も愛ありきですが、いきすぎたものは何かを壊す。

    盲目的な恋愛をしていた頃の私自身も、周りから見るとこんな風に愚かで壊れていたのかな。

  • 本屋にふらりと寄った時に見つけた本。

    最初は恋の話…?溺れすぎた恋の話…?
    なんて思いながら読んでました。

    確かにそうなんだけど、
    そうじゃなかった。

    盲目的って、こういうことなのかと思いました。
    鳥肌立ちながら読みました。

    ところどころ、抱えてしまいがちな感情だ、と共感できる場面もあって。
    人間の愚かさ、どうしようもなさ、弱さ、
    そんなものを感じました。

  • 暗めの辻村作品。

    私が1番理解しているはずなのに、、といった友人への執着って醜いな〜と。
    自分にも思い当たる過去があったからか苦しくなる場面がいくつもありました。

    おい!彼女へのプレゼントを違う女と選ぶな!!

  • 蘭花の美しさ。
    恋が生活の全てを覆っている。

    友情なのか、執着なのか。
    安心できない、常に不安で心細くて。
    認められたい、求められたい。

    ぐぐーっと読み終えちゃうね。

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著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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