晴天の迷いクジラ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 113
  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101391427

作品紹介・あらすじ

デザイン会社に勤める由人は、失恋と激務でうつを発症した。社長の野乃花は、潰れゆく会社とともに人生を終わらせる決意をした。死を選ぶ前にと、湾に迷い込んだクジラを見に南の半島へ向かった二人は、道中、女子高生の正子を拾う。母との関係で心を壊した彼女もまた、生きることを止めようとしていた――。苛烈な生と、その果ての希望を鮮やかに描き出す長編。山田風太郎賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 生きる権利があるのだから、死ぬ権利もある。
    本当にそうなのだろうか。
    だって“生きる”と対になる言葉って“死ぬ”ではないと思っているから。“死ぬ”の対義語は“生まれる”じゃないかな。だから“生きる”権利があっても“死ぬ”権利があるわけではないと思うのだ。私の中では。
    人が生まれること。
    自分がこの世に誕生すること。
    それは、自分自身の力ではどうすることも出来ない奇跡。神さまからの授かり物。だから、自分がこの世からいなくなることも、自分で決めることではなくて神さまが決めること。
    だけど、こんなに苦しいのに。悲しいのに。真っ暗闇の中にいるのに。死んでしまいたい。
    そんな想いを抱えている人たちがいるのは事実で。全ての人に、必ずしも死ぬ権利がないとは言えないのではないか。心が揺れ動く。答えのない問いは、これからも続く。
    だからこそ、この物語が必要とする人のところに届けばいい。
    あなたの生きる意味を見つけてほしい。

  • 本って、本当に良いものだなと思った。

    本を読んでいると、この主人公のような体験をしてみたいと思うことがある。

    遊園地や水族館、花火大会、旅行、スカイダイビング・・・。

    本の中の世界に、良い意味で影響されることで、世界が広がってゆく。

    でも、時には、あまり体験したくない出来事が書かれていることもある。

    人は、簡単に壊れてしまう。死んでしまう。
    この本を読んで、改めて教えてもらった。

    大切な人の全てを受け入れて、何かを求めるんじゃなくて、ただ、自分の傍にいてくれる。それだけの事が、とてつもなく幸せなことなんだと。

    悲しい思いをするために生まれてくる人なんて一人もいない。みんな、幸せになって良いんだよと言っているような気がした、心が暖かくなる小説でした。

  • 自ら死のうとしていた性別も年齢もバラバラの男女三人が出逢い、ひょんなことからある島の入り江に迷い込んだクジラを見に向かうという物語。
    三人はそれぞれ、いわゆる“毒親”の元に育ち、その影響もあって間違いを犯したり失敗したりして傷つき、ぼろぼろの状態で死のうとしていた。
    一人ずつのエピソード、そして三人が出逢った最終章。
    絶望から始まった物語に、光は見えるのか。
    それぞれのエピソードの章は胸が痛かったし、解る、と思うところがいくつかあった。
    きっとどんな人が読んでもそう思う瞬間があるのではないかと思う。

    窪さんの小説は、とても温かい。
    駄目でも、いろんなことがうまくいかない人生でも、「それでいいんだよ、あなたは悪くない」と言われてるような気持ちになる。
    そうして自分自身も、大切な人が苦しんでいるときに、理屈じゃなく「ただ生きていて欲しい」と言える強さを持ちたいと願う。

    けっこう何でも読むわりに「好きな作家は?」と訊かれると言葉に窮するかも、と最近なんとなく感じていて、でも今もし同じ質問をされたら窪美澄さんって答えると思う。他の既刊の小説をもっと読みたい。

  • 面白かった。面白かったんだけど、前回読んだ「ふがいない僕は空を見た」と否応無しに比べてしまい、それ相当のレベルを期待していたため、相対的に所々つまらなく感じた。
    「なんでクジラなんだろう?他の動物ではいけない理由があるのか?」結局読み終わってもその気持ちは解決しなかった。
    鯨が出始めた場面から退屈に感じた。この物語の本質は3人がそれぞれ絶望に陥っていく過程にある気がする。現実味がとてもある。窪さんの描写は本当に上手い。
    生きていて辛いことは沢山ある。そしてその大半は本当の答えがわからない。みんな手探り状態で自分は間違ってないか、相手を傷つけていないか、自分は傷ついてないか、そんな葛藤を抱えて生きている。みんな正答がわからず湾に迷っている鯨なのかもしれない。沖に出れるといいね

  • 生きる中で人は、心も体も呼吸をしている。
    心の呼吸が出来なくなったら……
    教え諭すのではなく、呼吸するための空気穴をひとつ、作ってもらえる作品。

  • 「ふがいない僕は空を見た」が思いがけなく良かったので期待しすぎた感があり。ある人の読メの感想で読みながら嗚咽したとあったので響く人にはかなりの衝撃みたい。深い傷を負って死を考えた3人が迷い込んだクジラを見物に出かける。瀕死のクジラもこの3人と重なってるから雄叫びをあげながら沖に出たのはそれぞれの再出発だ。最後は由人の恋人が戻ってくると思ってた。でも彼にとってはきっぱりミカと別れることが始まりだったんだ。

  • 『ふがいない僕は空を見た』で抱いた期待を
    そのまま持ち込むのは酷だったのかもしれない。

    登場人物3人の出生の不幸の大枠が、
    どうもステレオタイプに思えて、
    序盤からいまいち乗り切れなかった。
    だからといって終盤が、
    グンと盛り上がるわけでもないし。

    だけどそれでも読めてしまうのは、
    文章自体が流れるようにスムーズだし、
    ディテールの記述がうまいから。
    最後の終わり方も、ちょっと好きだった。

    映画にしたらどんな風になるんだろうと
    勝手な妄想が湧く。
    由人は窪田正孝だなーやっぱり。

  • 2013年本屋大賞6位

    「死にたい」と思った3人が出会い、湾に迷い込んだクジラを見に行く話。

    本の4分の3が三者三様の「死にたい」と思うまでの生い立ち。
    かといって取り立てて感情移入するほどでもなく、逆に腹立たしく、憂鬱になってくる。
    でも、そんな「負」の状態が、3人が出会ってからの最後の4分の1は…

    マイナス×マイナスはプラス?
    それとも
    毒を以て毒を制す、ってこと?

    いつの間にか泣いてもーたぁ。

  • 今年22冊目。「言わなくちゃ。死んでしまったら、何も話せないから。」
    帯に惹かれて読むことにしたのだけど、まさかの一気読みでした。
    誰もが、誰にも言えない絶望を抱えて生きていて、それでも、みんな何もないかのようにしてて。
    ふとしたきっかけでその絶望が溢れ出すのかもしれない。
    絶望の向こうに、光り輝く希望なんか、なかなか見つけられないけど。
    迷って苦しんで、それでも生きなくちゃ、言わなくちゃ、自分の人生を精一杯生きなくちゃ、と思いました。
    重いけど、素敵な小説でした。
    母の愛の在り方にも、いろんなかたちがあるなあ、というのも感想のひとつ。

  • 窪美澄さんの作品に出てくる登場人物はどこか脆く、壊れやすいと思う。
    だからこそ最後の希望が嬉しく感じられる

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著者プロフィール

窪美澄(くぼ・みすみ)
1965年東京都稲城市生まれ。カリタス女子高等学校卒業。短大中退後、広告制作会社勤務を経て、出産後フリーランスの編集ライターとして働く。2009年「ミクマリ」で第8回R-18文学賞大賞を受賞し小説家デビュー。
2011年、受賞作収録の『ふがいない僕は空を見た』(新潮社)で第24回山本周五郎賞受賞、第8回本屋大賞第2位。同作はタナダユキ監督により映画化され、第37回トロント国際映画祭に出品。2012年、『晴天の迷いクジラ』で第3回山田風太郎賞受賞。2018年『じっと手を見る』で直木賞初のノミネート。

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