- Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101391434
作品紹介・あらすじ
母親との確執を抱えて育ち、望まれない子を妊娠、たった一人で出産を迎えようとする三十代の真菜。七十歳を過ぎても、育児中に始めたマタニティスイミングの指導員を続ける晶子。あの日、あの震災が、二人を結びつけた――。食べること、働くこと。子供を産み、育てること。世代の違う二人の物語を丁寧に紡ぎながら、時代とともに変わりゆく女性たちの生を凝視した渾身の長編小説。
感想・レビュー・書評
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東日本大震災は、多くの作家さん達にも衝撃を与えました。こちらの作品も震災後の執筆とのことで、当時の混乱した様子や、崩れた日常生活が、小説に読む事ができます。
第一章では、70歳をすぎても、お元気にマタニティスイミングのコーチとして、新米妊婦さん達のアドバイスを続ける女性、晶子の半生を。戦争直後から昭和の成長期を、彼女の当時の家庭生活を通して、描いていきます。これは、「ヤンババの出産・子育て知恵袋」の金澤直子さんの人生に近いものでしょうか。
第二章では、平凡な主婦だった母親が、その料理センスからお料理タレントとして成功していき、一般的家庭から乖離した少女時代を過ごしたカメラマンの女性、真菜。母親との隔たりは、今なお続いている。願わぬ妊娠をするが、一人で産み育てようとしている。
第三章で、震災は、多くの犠牲をだし、社会は混乱する。孤立した真菜へ、晶子や彼女の幼なじみの女性達が手を差し伸べる。最初は躊躇していた真菜も、その手助けを受け取る。
親から受けたい愛情は、子供によって違うのかもしれない。親の背中を見て、そんな言葉は死語かもしれない。それでも、一人では、できない時は、誰かの助けが欲しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
重い、重い、重い、、、、。
いろいろな場面が刺さりすぎて、
一晩置いて、解説を再読して今に至ります。
第一章の晶子の戦時中のシーンに入った時は、
「あれ、思ってたんと違う、読了できるかわたし!」
となったけど、
気づけばあれよあれよと言う間に窪美澄ワールド。
みんな多分背景があって行動に至っていて、
誰も悪くないんだよな、、と思いつつ、
晶子と真菜の孤独に自分が重なって本当に辛かった。
ラストの真菜は周囲の手を借りて顔を上げれたけど、
本当の家族とは最後まで交われなくて、なんだか救われない思い。。
この本の女性たちの境遇にグサグサ共感するけど、
こういう時どう行動したら救われるのかな、の問いが最後まで自分で出せなかった。
小島さんの解説の
「自分が正解だと思ったしあわせの形が、大事な人を追い詰めることもある。」の言葉を胸に刻みます。
どんな状況であっても、
命あるものを祝福したいね。 -
食べること、働くこと。
子供を産み、育てること。
世代の違う二人の女性の人生を中心に進んでいく物語。
真菜の「家族にも相性がある」というセリフが胸に刺さった。
家族なんだから…家族なのに…家族だったら…「家族」というだけで無条件に許さたり愛されたり伝わっているなんてことはない、って思う。
子供がいないから分からない、なんてこともない。
自分は必ず誰かの子供なんだから。
自分がして欲しかったことをして自分がして欲しくなかったことをしなかったとしても、それが正解かは分からない。
正解なんてないんだろうな。
とてもいい作品でした。 -
晶子は千代子によって、真菜は絵莉花によって、良くも悪くも、友達によってふたりの世界が開かれていく。
おそらく実在の人をベースに書かれたであろう晶子のパートは説得力があった。
真菜のパートは家政婦の宮崎さんと別れるところが悲しかったな。子供って大人が思っている以上にナイーブなのか。カメラを買ってもらう約束とか、家政婦さんを替えられたこととか、たぶん大人にとっては造作もないことなのだろうけど、子供の真菜にとってはとても重大なことで、そういう小さな傷つきの積み重ねでどんどん母親を信頼できなくなっていったのだろう。
では真希はどうすれば良かったのか?と問われるとよくわからない。だれかが悪いとか、そういう簡単なところには落とし込めない。だからこそリアリティがあるんだろうな。 -
最初はちょっと窪さんっぽくない?って思ったのですが、読み進めて行ったら、やっぱり窪さんだー!って思いました!
やはり窪さんは女性を描くのが抜群に上手い!
それぞれの世代の女性の生き方がすごく上手に描かれていて、共感を覚えました。
3.11の東日本大震災が題材になっている為、とてもリアルに感じました。
読後感も良かったです! -
やっぱり窪美澄さんは上手い。
読んだ後、今回も号泣でした。
物語の主人公は75歳にしてマタニティースイミングのインストラクターを務める晶子と、彼女のクラスに少しだけ通っていたワケあり妊婦の真菜。物語の前半では戦争を生き延びてきた晶子と、家族との不和を抱えて生きてきた真菜のそれぞれの半生が語られ、後半からは東日本大震災を機に深く交わってい2人の人生が描かれています。
「パパは、いつも、家族だから、って言うけど、血がつながっていたって、人間だもの。相性があるよ。パパと、ママと、私の、家族としての相性は最悪だと思う。」(p369)
物語の後半、シングルマザーとなった真菜は晶子の勧めで絶縁していた父と話し合う機会を持ちます。そこで出てきたのがこのセリフです。この「家族だから」という言葉は私も言われるのが嫌いなので、すごく真菜の気持ちが分かって印象に残りました。
でもそのあと晶子の友人の千代子が真菜に言った「だけどね、あなたが正しいと思ってしてあげたことだって、この子は嫌がるかもしれないよ。いくら親が愛情だと思って、子どもに差し出したって、子どもは毒に感じることだってあるんだから。その子もいつか、母親を憎むかもしれない。・・・あなたみたいに」、「でも、それでいいのよ。そうやって続いていくんだから」(p390)も同じぐらい印象に残りました。
あと晶子の旦那さんが要所要所ですごく良い。仕事人間でほとんど家のことは晶子に任せきりだったけど、ちゃんと晶子を見ていてくれる優しい人で。次男を病気で亡くした時とか、「ここぞ」って時にはしっかり支えてくれるのです。こういう風に辛い時に助け合えるのなら、結婚も悪くないのかも。
子育てや家族に悩んでいる人、生きづらさを感じている人にぜひ勧めたい一冊です。 -
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