よるのふくらみ (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101391441

作品紹介・あらすじ

同じ商店街で幼なじみとして育ったみひろと、圭祐、裕太の兄弟。圭祐と同棲しているみひろは、長い間セックスがないことに悩み、そんな自分に嫌悪感を抱いていた。みひろに惹かれている弟の裕太は、二人がうまくいっていないことに感づいていたが――。抑えきれない衝動、忘れられない記憶、断ち切れない恋情。交錯する三人の想いと、熱を孕んだ欲望とが溶け合う、究極の恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 窪美澄さん3作目。本当に読みやすくて好き。
    お兄ちゃんむっつりだなぁ〜苦手なタイプだわ〜と思ったけど、最後は無意識にお兄ちゃんを応援してた。
    "同情している、というポーズで自分の身を守りながら、皆が皆、他人の家で起こった火事に油を注いでいた"
    なんかぶっ刺さったなぁ。自分もそうゆう所あるよなと考えてしまった文章だった。
    あー面白かった!!

  • 近い距離、性の問題、事情を抱える人たち。
    重くて息苦しい印象だったなぁと思う。
    読後消化しきれない気持ちが残ったものの、若いということは自分の幸せを求めるため貪欲に進んでいいのだと、希望の見えるラストでそう感じられた。三人の視点から描かれる各章。どれもそれぞれの言い分、捉える世界の違い、抑えられない感情があるという巧みな心理描写が響く。正直なところ、みひろの気持ちがどこにあるのか段々わからなくなってきた。しかし、実際その人の立場にならないとわからないだろう。自分自身さえ切羽詰まると何を欲しているのか迷うことがあるだろうから。
    控えられがちな女性側からの性に真正面から向き合った作品だと思う。ストーリーはドラマを見ているような展開だった。キャストを思い浮かべながら。
    個人的には、裕太と里沙、ショウが海へ出かけたシーンが無性にやるせなくて好き。
    気持ちと身体はいつも一体ではなく、些細なズレで関係性が崩れてしまったり。目の前の人に飛び込めばいいのに抱えきれない大人の事情があったりで、うまくはいかない。本能的な欲求にパートナーが答えることができないとしたら、という重いテーマを突き付けられたようだった。「誰も傷つけずに生きていくのは難しい」この一文が残って仕方ない。

    この本を読んでいるとき、窪美澄さん、直木賞受賞を知りました。おめでとうございます!

  • 今では、少し寂れた商店街で、みひろ、圭佑・裕太兄弟は幼なじみとして育つ。その地域の濃密なネットワークの中で成長する。
    兄圭佑は、みひろと結婚を見据えて同居を始める。
    弟裕太は、自分の気持ちを抑えながら見守る。
    それほど目新しい設定ではないのだけど、章ごとに、三人の目線から語りを変えていく。折り合えない身体と気持ちのすれ違いが生々しく描かれる。
    変化する文章がそれぞれへの感情移入に心地よい。
    自分にさえ掴めきれない本当の気持ちに正直になろうとする。それを許したいと願い、許されたいと思う。
    シビアな内容をそんな事もあるよねって読ませてしまう感覚。

  • 2014年の発売当時から何度も買い変え読み直していてもなお、
    飽きることなく物語世界に浸れるから不思議だ。
    僕の場合、好き過ぎるモノについては冷静に見ることができないのか、
    レビューがうまく書けないことが多い。
    多くを語らずとも好きなものは好き。
    音楽も映画も小説も(人もか)
    肌に合うか合わないか。
    理屈ではないのだ。


    圭祐とのセックスレスに悩む保育士のみひろ。
    理想の家族を築く幻想にとらわれ、弱い自分と向き合えない圭祐。
    みひろへの恋ごころをひた隠しにする圭祐の弟の裕太。

    優等生な兄の圭祐、やんちゃな弟の裕太、
    クールで凛としたみひろ。
    商店街で商いをする店主の元に生まれた
    三人の子供たちの恋と青春が
    章ごとに語り手を変え綴られていく。

    ひとつの大きな家族みたいに仲が良い商店街に店を持つ面々を見てると、
    その鬱陶しくもあったかい関係に憧れる。
    家族というものを知らない僕だからこそ、
    昔から商店街のある町の活気やあたたかさに惹かれるのかもしれない。



    それにしてもなんと生々しく、リアルな物語なのだろう。
    自分勝手でズルくて打算的で
    どうしようもなく弱い三人なのだけど、
    読むたびに三人それぞれが抱える『痛み』や『あがき』が胸に迫ってきて
    どうにも切なくなる。

    そして僕がこの作品から感じ、
    この小説に強く惹かれた最大の理由は
    窪 美澄さんの文体に見え隠れする
    官能的なエロティシズムだ。
    もっと簡単に言えば、
    あからさまにではないのだけれど、
    小説に流れる空気感が『なんだかエロい』のである(笑)
    (皆川博子や小川洋子や川上弘美や服部まゆみの官能的なのに品がある文体に近い)

    カッコいい文体、お洒落な文体、軽妙洒脱な文体、硬派な文体、
    『文体こそ、人なり』とはよく言ったもんだが、
    窪さんが持つ、『色気のある文体』というのは
    それだけで粋だし、なかなか得難い魅力だと思う。
    (わずか290Pの短い小説ながらストーリーも構成も素晴らしいのだけど、僕なんかはこの、そこはかとなく香る文体の色気だけで何度も読み返したくなる)

    そしてもう一点、この作品に僕がハマった理由を挙げるなら
    脇役たちがどれもみな人間臭く、
    本当に魅力的なのである。

    『好きな人ができました』という書き置きを残し、
    ある日突然出ていった、みひろの母。

    裕太と恋に落ちるパチンコ中毒の小笠原さんと
    その息子のショウくん。

    圭祐と裕太の父の浮気相手だったマリアさん。

    圭祐が転勤先の大阪で出会う
    風俗店で働くミミ(京子)。

    ページを閉じたあとも
    彼ら彼女らの行く末を案じ
    想像せずにはいられない。


    程度の差こそあれ、
    誰もが自らの内に
    自分では『どうしようもできない野獣(抗えないモノ)』を飼っている。
    家族のような共同体の商店街の中も同じく。

    そして、大人になればなるほど
    しがらみが多くなり、
    ただ『好き』だけでは
    恋愛ができなくなってくる。
    (これは本当によく分かる)

    そんなジレンマに悩み、もがき続けた
    幼馴染三人の物語。

    生々しく官能的な描写から、
    甘い蒸気が立ち上がってくるような恋の匂いにクラクラするロマンティックなシーンや、
    日だまりの猫みたく思わずほっこりしてしまうエピソードなど、
    巧みな構成と繊細な筆致で
    読む人それぞれ、
    好きなシーンが挙がるだろう幸福な小説だと思うが、
    いかかだろうか(笑)
    (僕のたまらんシーンは、熱を出して寝込んだ小笠原さんを裕太が介抱する恋が生まれる瞬間を捉えたシーンと、物語後半、傷心の裕太が夜の商店街でみひろの後姿を見つけ再会するシーンかな。次点は物語のラストシーンの圭祐が下手な大阪弁で口説くシーン笑)

    余談だが、みひろに吉岡里帆、圭祐に松坂桃李、裕太に池松壮亮で
    映像化期待してます(笑)


  • 同じ商店街で幼なじみとして育ったみひろと、圭祐、裕太の兄弟。
    同棲している圭祐とのセックスレスで悩むみひろ。
    みひろの気持ちを繋ぎ止めようとEDの治療を始める圭祐。上手くいっていない2人に感づき みひろへの想いが抑えきれなくなっていく裕太。

    これはあれですね。
    アルコール飲みながら 女友達と何時間も語れるあれですね。

    心と体は必ずしも同じ反応をするのか
    どこからが浮気なのか
    男女の友情はあるのか
    理性を失うような場面に遭遇した時 ブレーキをかけられるのか
    あの時 誓った愛は永遠に続くのか…

    100人に聞いたら 100通りの答えがあるだろうし、正解なんてないし

    浮気されたことがあるか、したことがあるか。これによっても 登場人物の誰に共感できるか違ってくるし。

    わたしアルコール飲めないけど 語れると思う。

    窪美澄さん やっぱり面白くて読みやすくて好きです。文章かな?設定かな? 内容は不妊治療や不倫やなんだけど少女マンガを読んでいるような感覚で
    サクッと読み終えました。
    そうだ!優等生でイケメンメガネ男子の圭祐と、自由奔放でカワイイ系イケメン男子の裕太の2人から好かれているみひろって…少女マンガみたいな設定じゃん。うらやま ( *¯ ³¯*)笑 そして不憫すぎる圭祐に幸あれ!!!

    それにしても この商店街の人達 みんな浮気しすぎ笑


    • ゆーき本さん
      神輿?と思って画像検索しました
      すっご(°д° )!!
      ブルーピリオドしばらく読んでないなぁ。

      1Qさん、最初はかわいく
      「奥さんのどこが...
      神輿?と思って画像検索しました
      すっご(°д° )!!
      ブルーピリオドしばらく読んでないなぁ。

      1Qさん、最初はかわいく
      「奥さんのどこが好き?」とかから聞こうかな
      ディープなのはのちのち( ≖ᴗ≖​)ニヤッ笑
      2023/09/03
    • 1Q84O1さん
      奥さんのどこが好きですって…?
      そんなの遠い昔に忘れちゃいましたよw
      今もあの当時の気持ちがあればきっと夫婦円満ですよw
      奥さんのどこが好きですって…?
      そんなの遠い昔に忘れちゃいましたよw
      今もあの当時の気持ちがあればきっと夫婦円満ですよw
      2023/09/03
    • ゆーき本さん
      ふむふむ〜(°∀° )ニヤニヤ
      ふむふむ〜(°∀° )ニヤニヤ
      2023/09/03
  • 一緒に生きていくとき、その時に考えたこと、考えること、がある意味赤裸々に描かれています。

    みひろちゃんは正直でかわいい。
    最初の第一印象からきまっていたのではないかな。
    お兄ちゃんと、弟と。

    学生の頃に読んだタッチ。
    南ちゃんの気持ちは第一印象で決まっていました。
    誰もが選ぶであろうとおもったひとは違っていたのです。

    結果として自分が選んだ道は正しかったし、それで幸せになっただろうな、間違っていなかっただろうな、と思わせてくれます。

    みひろちゃん、よかったね。
    お兄ちゃんも、弟さんも。

  • 窪美澄さん初読みです。直木賞を受賞されたのを機に手に取りました。

    感想としては……誰に対しても共感できなくて「何だかなぁ」って感じですかね。
    真面目だけどちょっと面白みのない兄と、おちゃらけてるけど人気者の弟。
    その二人と三角関係に陥る幼なじみの子。
    不倫やら浮気やらする人達。

    いや……なんか無理。
    こんなごちゃごちゃした関係を続けられる彼らにちょっと辟易しちゃいました。
    強いて言うなら、兄の圭祐の心情は分かるかなぁ?
    自分が長子だから気持ちが分かるというか、逆に弟みたいなタイプは単純に苦手ですね。

  • 同じ商店街の幼馴染、圭祐、裕太兄弟とみひろ。

    圭祐、裕太兄弟は幼い頃からみひろに恋心を抱くが、弟がみひろに気があることに気づいていた圭祐は、裕太より早くみひろに告白をし、同棲する。

    みひろは圭祐の同棲生活に長い間セックスが無いことに悩み、同時にそんな自分に嫌悪感も抱いていた。

    弟の裕太は、兄がみひろと同棲をを始めても、気持ちをなかなか断ち切れずにいた。
    そんな時、みひろが兄とうまくいっていないことに気がつく、、、


    どの登場人物の気持ちにものり移れるほど、その登場人物それぞれの気持ちが丁寧に描かれている。

    みひろ目線、裕太目線、圭祐目線、それぞれの方向から物語は綴られていくが、どこか切なく、しかしどこか救われる、一言では簡単には表現出来ないような物語がこの一冊に詰め込まれていた。

    まるでドラマか映画を見ているような、、、
    そんな気持ちになる一冊だった。

    恋愛小説はそれほど読まないが、これはそんな私にもなかなか良かったと思う。

  • 窪美澄さんの本はまだ2冊目だけど、この本も登場人物の語り口調とか諸々、すごく身近に感じる。だからラストでちょっとした放心状態になる。
    また違う本を読んでも、こんな感じになるのかな?

    誰しも心の中で感じた事を全部なんて出せない。特に近い人には話せるようで案外「絶対」話せない事が多いように思う。
    不器用な圭ちゃんに共感した。圭ちゃん、頑張って!

  • もどかしいっ!

    この兄弟も、幼なじみの女の子も、
    自分の気持ちを伝えられないことで、
    自分が思ってもみないことを相手に
    感じさせてしまう。

    言葉の選び方やタイミング。
    気持ちの伝え方を考えさせられた。

    育ってきた環境で自分の伝えたいことが
    うまく伝えられなくなってしまったんだね。
    親の影響力は、偉大だね。

    それにしても、窪さんは、感情の描き方が
    うまいですねー。

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著者プロフィール

1965年東京生まれ。2009年『ミクマリ』で、「女による女のためのR-18文学賞大賞」を受賞。11年、受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、「本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10」第1位、「本屋大賞」第2位に選ばれる。12年『晴天の迷いクジラ』で「山田風太郎賞」を受賞。19年『トリニティ』で「織田作之助賞」、22年『夜に星を放つ』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『アニバーサリー』『よるのふくらみ』『水やりはいつも深夜だけど』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『夜空に浮かぶ欠けた月たち』『私は女になりたい』『ははのれんあい』『朔が満ちる』等がある。

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