女王の百年密室―GOD SAVE THE QUEEN (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (585ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101394329

作品紹介・あらすじ

2113年の世界。小型飛行機で見知らぬ土地に不時着したミチルと、同行していたロイディは、森の中で孤絶した城砦都市に辿り着く。それは女王デボウ・スホに統治された、楽園のような小世界だった。しかし、祝祭の夜に起きた殺人事件をきっかけに、完璧なはずの都市に隠された秘密とミチルの過去は呼応しあい、やがて-。神の意志と人間の尊厳の相克を描く、森ミステリィの新境地。

感想・レビュー・書評

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  • 森博嗣百年シリーズ第1作

    以前に読んだときは、これがシリーズものだとは知らなかったが、最近GシリーズやXシリーズを読んでいて、また過去の作品が読みたくなり再読して登録してみた。
    物語の舞台が現代ではないので、なんというかミステリーとSFファンタジーが混在した、独特の魅力的な作品になっている。
    最初はSF小説風で、あまりミステリーとは感じなかったが、それでもミステリーに良くある「密室殺人」みたいな形式は踏襲しているような...。この作品では、トリックではなくてそういうやり方になるのかと納得。

    最初に読んだ頃は、S&MシリーズやVシリーズとはまた別の作品だと思っていたが、森作品の世界がこんな壮大なものになってくるとは...。そういえば、主人公サエバミチルの名前にも、最初は気にもとめなかったな。

  • 西暦2113年、取材旅行中に道に迷ったミチルとロイディが、周囲を高い塀で隔離された未知の都市ルナティック・シティにたどり着き、そこでの体験が語られる話。
    女王デボウ・スホが支配し、争いや妬みがなく、平和で、犯罪も罰もなく、人が死なない楽園ルナティック・シティ。
    ミチルにとっての因縁の敵マノ・キョーヤがここに居ることがわかり、やがて、王子の密室殺人事件が起こる。人が殺されることがないはずの楽園で起きた殺人。誰が、なぜ、どうやって王子を殺したのか。ミチルは謎を解明しようとするが、女王をはじめとする楽園の人々はなぜか、関心を示さない。他にも、女王が年齢よりもはるかに若く見える謎、マノやミチルがやってくることが神によって予告されていたという女王の言葉の謎など、ミチルは不思議な体験をする。さらに、この楽園を誰が、どういう目的で作ったのかという大きな謎が立ちはだかる。西暦2113年ということで、現在ではまだ実現されていない技術がいくつか使われており、それが謎の解明にも活かされている。
    楽園の住民とミチルとの間での死生観や罪に関する意識の違いが印象的であり、とりわけ、復讐に関する女王とミチルの間の議論が興味深い。
    楽園の誕生に関する謎の真相は、よく考えられていると感じた。
    王子の殺人事件では、犯人がどこから侵入したのかという謎の真相はたいしたことはないが、なぜそんなことをしたのかという動機、その背景にある新技術がもたらした悲劇が実に痛烈である。
    また、最後に明らかとなる主人公に関する二重三重の秘密も面白い。

  • あぁ、なんて上手いんだ。騙された。綿密に織り上げられた世界に。物語の中心にい続け、その存在に何の疑問も持たされていない主人公が最後に化ける。そしてその設定に何の違和感も感じないほど完璧なリアリティが出来上がっている。

  • 森博嗣、2000年発表の小説。SFミステリー。ユートピア小説のようでディストピア小説のようでもあり、ジェンダーやアイデンティティの問題、死生観、宗教観、罪と罰、復讐と赦し・・・等々様々な要素を含んだ寓話のような物語り。

    100年後の世界、日本人青年とパートナーのロボットが中央アジア近辺で道に迷ったあげく不思議な隠れ里にたどり着きます。そこは100年前に作られて以来世界から孤絶したユートピア・・・?
    100年後の世界ですが舞台となるのはその時代から100年前に作られた孤絶した都市・・・つまりは現代社会とたいして変わらない所で、主人公とロボットのペアだけがSF的存在。
    そこで殺人事件が起こるのですが、警察も法律もなく神と女王が支配するその町の人々は事件として扱おうとしません。主人公だけが一見密室のその事件を調べようとするのですが・・・。
    殺人事件を核にして、町そのものの謎にせまるミステリー、とても面白いです。

    寓話的雰囲気が強く、それは冒頭や所々に現れる文学的、象徴的表現が醸し出すものなのかもしれません。悲しい物語りですが、エピローグで明かされる何だか過剰にSF的設定に多少救われるような感がし、読後感は良いです。

  • 偶然たどり着いた街で、復讐したりされたりするお話。
    もっと昔に読んだはずだけど、すっかり忘れてまた一から楽しめました。
    読むのは難しくないけど、理解するのは難しい。
    ロイディが好き。

  • 本格ミステリ的なS&Mシリーズからエッセイ的小説水柿助教授シリーズを経て、このSFというかファンタジィというかな小説に至った訳ですが、全く雰囲気の違う小説でありながら、完全に森博嗣ワールドを出しちゃうところが凄い。
    物語のバックボーンが太くしっかりしてるから、凄く奇をてらってる様だけど無理に感じないというか…。
    途中まではちょっと進みにくかったけど、最後は怒涛のようにパパパッと読み終わってしまった。

  • 近未来が舞台で、ハイテクなゴーグル型端末やアンドロイドが登場するSF作品ですが、特にそのようなデバイスが謎解きに用いられるわけではなく純粋にミステリーとして楽しめました。著者の作品はたくさんのシリーズが刊行されていますが、なんとなくスカイクロラシリーズに似た雰囲気だと感じました。
    次巻も早速購入したいと思います。

  • いろんな意味で思わせぶりなお話。事件のトリックはミステリとしては反則気味だけど、その分特殊な世界設定を生かしきってておもしろかった。というかむしろこれ、世界そのものについての謎を楽しむのがメインです。一人称視点の文章から、主人公についてのネタ2つはなんとなく読めた。それだけに、父親の正体に思い至らなかったのは悔しい。たしかにどう考えてもあの人しかいないよなあ。そしてこの世界、未来のお話なわけで。つまり別のあのシリーズから繋がっている、というのは想像に難くない。それを匂わせる描写もあって、外伝的に楽しめた。

  • 面白く、先が気になってどんどん読めた。結末には驚いた!けど、性別に何かがあるのはわかりやすすぎてちょっと興ざめ、
    でもなんかこのひとの小説の文体は、いまいち好きになれないな。面白いんだけど、

    血。
    血。

    とか。Vシリーズとかおなじみの作品ではまだ我慢できたんですが。くせ強いよねぇ…

  • 不思議な近未来のお話。
    ある個人の理想世界で静かに、穏やかに過ごす人々。
    外の世界の事など何も知らずに、
    盲目的に自分達の小さな箱庭世界を信じて生きてゆく。
    永い眠りにつくことで、未来に希望を託し、死から目を背けて。
    実際にはその未来は訪れなくとも。知らずに眠り続けて、いつか朽ちる。

    それは幸せなのでしょうか?
    幸せかどうかはわからない…。
    きっと、本人以外には。

    主人公や、女王、神や、様々な人の葛藤もなどが相まって
    不思議で素敵な世界観を作り上げていて、
    その世界観こそが最大の魅力だと感じた小説でした。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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