おしゃれの視線 (新潮文庫 み 26-1)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101401218

作品紹介・あらすじ

きびきびと立ち働くミラネーゼの姿に憧れ、可愛らしく歳を重ねたマダムの女らしさに触発され、どんな人にも必ず美しさがあることを教えてくれたイタリアの日々。そこで学んだ本当のおしゃれとは、まず自分を知り、どう生きていきたいかを考えることだった-。自分のスタイルを確立した魅力的な女たちを見つめてきた著者が、もっと素敵になりたいあなたへ贈る"おしゃれへの近道"。

感想・レビュー・書評

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  • ハンカチ、ストッキング、口紅

    おしゃれ
    「彼女たちはきっぱりという、
    私の肌にはこれが似合う、
    私のいいところはここなの、と。
    その自信と客観性に満ちた姿。
    おしゃれの主人は物ではなく、
    自分自身なのだと知らされる。
    エレガンスとは、自分を知り人に優しくなれること。
    「おしゃれ」は、そのためのひとつの方法である。」

    「一見男っぽく強いが意見から、
    ふとしたときにのぞく内面の女らしさ。
    その意外性にふれるとき、
    私はいつも「ああ、可愛いな。」と思う。
    それはなにか「女」を生きている
    真剣さのようなものだ。
    自分の中の「女」の部分と真剣に向き合い、
    それを堂々と表現する。」

    「着る人と服とが一体になっているおしゃれが好きだ。・・
    完璧に確立された「その人らしさ」のスタイル。
    そのスタイルをもっていれば、
    おしゃれはずっとシンプルになるだろう・・・
    彼女自身が安心して着ていること。
    自信に満ちていることが、
    その着こなしをよりきれいに見せているのだと、
    私は思えるのだった。」

    <理想のミューズ(女神)>
    「「自然なものは、あるがままに。」という
    イタリアの精神風土である。
    露にされた身体の線や胸を、
    誰も好奇な目で見たりはしない。」

    「それはいまの自分の前にひかれている
    「線」を踏み越えることであり、
    別の線を別の場所に引き直すことではないだろう。」

    「この街で、私は生まれて初めて、
    そういう女たちの存在を知ったのだった。
    年をとることで、失われていく若さ以上の
    すてきさを手にした女たち。
    単なる「若さ」より、何十倍も磨かれ練られた
    おんなの美しさというものが存在することを、
    私は知った。そして、それは、若い娘の時代から
    揺るぎなくひかれた1本の道の上になり立っているのだ、
    ということも。」

    「自分の個性や、何が自分をきれいに見せるか
    ということに対しての判断があまく、
    何となく漠然と好みだけで服を着てきたのだと、
    私はつくづく思いしった。」

    西欧で「スタイルがある」という言葉は、
    最高のほめ言葉のひとつである。
    「スタイルの特徴は、深みのある人格が
    知らず識らずのうちににじみ出て、
    何もしなくてもいつの間にか人間の関心を集めている、
    という点にある。」

    「二人はお金も広い住宅ももっていなかった。
    もっているものはただ、本と愛情と、
    健康な食欲、それだけだったかもしれない。」

    三島由紀夫 「女神」・・・・<優雅の情景>
    「おんなの服飾は、空の色、海の色、夕焼けの色、
    あけぼのの雲の濃淡、池の反映、樹木、建物、部屋の配色、
    一日のうちのあらゆる時間、光線、会合の雰囲気、
    すべてのものと調和や対照を保っておかなければならなかった。」

    「切り替えがうまいな。
    時間の配分の仕方にセンスがある。
    1日に何回か着替えるのだろう。
    その時の状況に一番ぴったりとした
    装いができるというのは、素敵なことだ。
    それでいて妙にはしゃいだり、
    がんばりすぎていないところがいい。
    きっと毎日の生活でも、こんな風におしゃれしているのだろう。」

    「僕たちサービス業にとってはね、
    どん欲に楽しもうとするお客様が一番うれしいんだよ。
    もちろんそれはわがままばかりを言うと
    いう意味じゃない。
    ルールをきちんとわきまえたうえで、
    食事でも何でもこころから楽しみたいという
    意欲を感じさせてくれる人さ。
    そういったお客様には、こちらも必ず満足させてやるぞって
    奮起してしまうんだよね。」

    「瑛子さん、流行には慎重でなければならないよ。
    流行は、いつも人をきれいに見せるとは限らない。
    それよりも大切なのは、自分のテーマを決めることだよ。
    それは、内面の成長とともに変化するけれど、
    いつもあなたのそばにあるものだからね。」

    白と紺が好きなこと。
    「さっぱりとした明るさ」という感じかもしれない。
    これが私のテーマなのだ。

    「きれいであろうとすることを、
    決してやめてはいけないよ。
    どんなに忙しくても、つらいときも、
    年をとってからでさえ、
    それは生きることの一部なのだから。」

    視線、音、香り
    イタリア人は、いつも女を見ている。
    男たちは女を見る。
    女たちも女を見る。
    だから、ただすれ違う、それだけで、
    自分の存在を確認することができる。
    美しいもの、愛らしいものを見たときの感動を
    素直に表現する彼らを、私も素直に受け入れる。

    → 視線が、育てる。

    放っておけば頬も髪も爪も、すべてが水気を失い、
    細っていく。ゆるみ、下がり、そしてくすんでいく。
    女性としての美の存在を二度と
    省みられなくなったとき、それは何にもまして
    おおきな挫折となるだろう。
    しかし私はまだそれを知らない。
    その入り口にさしかかっているが、
    まだ余裕がある。
    おいて行く自分を見つめる準備を始めるだけの
    こころのゆとりがある。
    おいることをおそれ、みっともなくあがくのはイヤだが、
    あきらめきってしまうのはもっといやだ。
    年をとることは目に見えない財産が蓄積されていくこと
    でもあると思っている。パンとはった若い肌にはない、
    そんなデカダンな美しさも好きなもののひとつなのだ。

    自分のうちにいつまでもあると思っていた女のみなもとが、
    ある時期を境にして、知らず知らずのうちに
    指の間からこぼれ落ちる水のように減り、
    枯れていくことを自覚するのはなかなか勇気がいることである。

    どんなおばあさんになりたいか?
    優雅なおばあさん、それとも洗練された?
    いやいや違うわ、「魔女」のようなおばあさんよ。・・・
    それは年を重ねるたびに積み重なるこころの
    ひだを軽やかさにかえて、より自由に穏やかに、
    かつアナーキーに情熱をもって生きていきたいという、
    強く深い願いなのだ。

    山田詠美
    今夜、着る服がないのだ。
    何しろ、それは、装うための服ではなく、
    男によって脱がされるための服であるべきなのだ。
    性的なニュアンスがなくてはいけない。
    かといって、作為が露骨に見えてしまっても悲しい。
    自然で、ちょっとキュートで、それでいて、そそる服。

    ミラノやパリで出会ったマダムたちが、
    そのおしゃれによって教えてくれるもの。
    それらは、服であって服でなく、
    アクセサリーであってアクセサリーではない。
    装いによって濾過された彼女たちの人生のエッセンスである。
    それが、年輪によって美しいかたちに醸造された時、
    人は、エレガンスという言葉を当てはめる。

    数々の失敗やこころの傷ですら差し色として、
    人を引き立てているその領域、やはり、おしゃれは
    人生に有効だ。いいかえれば、
    自分自身を見つめたことのない人のするおしゃれは、
    人生を台無しにするということである。
    服を脱いだ裸の自分を愛せるように
    し向けることができてこそ、服には命が宿る。

  • オシャレなオシャレの仕方とは

  • ヴァンテーヌ大好きでした!

  • 高校生の頃購読していた雑誌『ヴァンテーヌ』に掲載していたエッセイをまとめたもの。
    「ブランド」の「アイテム」が大事なのではなくて、その人の審美眼が大事なの。
    そこに、その人の生き様が表れるのよ。

    ブランド礼賛のファッション雑誌にあって、軸のある文章にあの頃は「大人とはこういうことか・・・」などと感嘆し凄い人だ、と思っていたけれど、今となるとちょっと「ん?」と思うところも有り。
    着ることも大事だけど、人生には本とか食事とかが繋がって生き様になるじゃないの?と思ってしまう、牡牛座の女。
    まぁ10年以上前の本に酷な評価かもしれません。
    今みたいにオシャレブログがあったわけでもないしなぁ。

    憧れから手に入れた服が馴染み、なんでもないようになった頃スタイルができあがる、というのはよくわかるんだが、そこに行き着くまでの試行錯誤が大切なんだよね。
    「誰かと寄り添うための装い」ということの大切さを教えてくれる今の日本には珍しい一冊の一つ。
    三島由紀夫が読みたくなったので評価を上げておこう。

  • とてもとても読みやすい『ヴァンテーヌ』に連載したコラムのまとめらしい。
    ところどころ良いなあという所と、気持ちが良いだけの文章を確信的に語られるのにとまどうのと半分半分。

    あとミラノやパリでこの人の目に留まるファッションの色合いが派手すぎていまいち想像力が追いつかない。
    ピンク!とかグリーン!がバーンと出てこられても素敵なのかどうか・・・。

    リゾートにいるような雰囲気をさくっと読めたのでまあいいかな。

  • おしゃれの本質を見抜く一冊。
    光野さんの色彩描写は美しい!読んでいてわくわくしてくる。
    新たな自分を見つめるため、今までの自分を振り返るため…おしゃれだけに留まらないエッセイ。

  • 身につけるジュエリーにすごく惹かれてピアスを開けたくなった。
    おしゃれに着飾るという意味ではないことがとても魅力的。
    お気に入りのネックレスを早速毎日つけてみることにした。ジュエリーはパワーをくれる。すごくわくわく。ジュエリーに興味アップ。

  • この本と「着ること、生きること」は大好き。
    オシャレやファッションのあり方を教えてくれます。

  • おしゃれについて、イタリアでの経験から著者が思ったことをまとめた本。
    全部で 30編ほど、ほとんどが 6 〜 7ページのエッセイで
    もともと 1990年頃の「ヴァンテーヌ」なるファッション雑誌に連載したものらしい。
    ヴァンテーヌ (Vingtaine)は、フランス語で 20代という意味だとか。

    女性が求めるおしゃれってどんなもんなの? と社会勉強してみようと読んでみたけど
    わからないカタカナ文字が出てくる出てくる。
    調べ方もわからないしこりゃえらく畑違いな本を選んじゃったどうしようと思ったけど
    ブランドやらファッション用語らしきものはまあ雰囲気かと目で追うだけに。

    イタリアでの町並みやお手本とすべき人々について
    あこがれのまなざしでお店やおしゃれをくまなく描写しつつ
    イタリアは素敵だけど私は私だし、だからおのれを知るところから。
    私は一歩前に進みますわよと
    やんわり啓蒙しながら結論づける、みたいなパターンで
    うまいことまとまってるものが多い感じ。

    なにかふわふわしたお客様の夢見心地をきかされてる気分になるんだけど
    ファッション誌に掲載する文章だから、といった立ち位置が
    たぶん基本的にあったんじゃないかなと。

    他人をうらやましく思ったり、ファッションをくまなく眺めたりする
    衝動的な欲がつらつらと吐露されるのは
    働きだして経済的に余裕の出てきた女性には
    あこがれや共感できるものとして読まれるのかもしれないなー。と思いました。

    でもそれにしても。
    勉強として読んだのだから文句をいうことはないのですが
    一読者としての感想を添えさせてもらうなら。

    一編読むだけなら、まあそういうもんかで終わりなんだけど
    何編かまとめて読むと、なんでこの著者はこうのほほんと
    ファッションやら買い物のことが考えられるのか?
    描きかたがやたらと美化されてるのも陶酔してる感じだし
    なにものなんだろうこの人、どこのお嬢様かと鼻持ちならなくなってきたりしました。

    ファッション誌用につくられた文章だとしても
    どうにも馴染めないのは
    たぶん著者と自分では生活習慣がずいぶん違うからなんだろうなあ。
    まあ自分の生活など 20代女性が憧れるようなものには思えないし。

    そんな感じで、消費者と目線を同じにした文章というのがめずらしく、
    なかなか興味深く読めました。好きではないです。
    もっとこの辺の分野のいろんな人の文章を読んでみたい。

  • 私はエッセイをほとんど読まない。
    けど、光野さんの作品は何冊が購入している。

    この「おしゃれの視線」は文章がとってもオシャレ。
    フランスやイタリアの空気を感じさせてくれる。
    ファッションに関しても、本当のオシャレについて教えてくれる。

    まだまだ教えられたものを実践できてないけれど
    いつも読み終わると、「女子を頑張ろうっ!」と思える。
    (byいも)

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著者プロフィール

作家・エッセイスト。東京生まれ。小池一子氏に師事した後、女性誌編集者を経て、イタリア・ミラノに在住。帰国後、執筆活動を始める。1994年のデビュー作『おしゃれの視線』(婦人画報社)がベストセラーに。主な著書に『おしゃれのベーシック』(文春文庫)、『実りの庭』(文藝春秋)、『感じるからだ』(だいわ文庫)、『おしゃれの幸福論』(KADOKAWA)などがある。2008年より五感をひらく時空間をテーマにしたイベント『桃の庭』を主宰。

「2018年 『これからの私をつくる 29の美しいこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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