- 本 ・本
- / ISBN・EAN: 9784101405025
感想・レビュー・書評
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叙情性と本格ミステリのトリックが両立する稀有な短篇集。しかも6篇全てネタが被らずテイストがまるで違うという贅沢な奇跡。こんな傑作がどうして絶版なんだ。新潮社さん、なにやってんの! 創元推理文庫、文春、双葉社あたりが版権とって復刊させてください。
『化石の鍵』 冒頭にも書いたが、叙情性と密室トリックという一見相容れない要素の親和性が凄い。アパートでひっそり暮らす父子家庭の車椅子の少女。少女をめぐる殺人未遂事件と密室の謎に無理がなく、謎の解明がそのまま人間ドラマに繋がるラストが素晴らしい。『化石の鍵』という詩的表現が見事。
『奇妙な依頼』 ハードボイルドの探偵物でありながら、二転三転どころか五転も六転もする展開。全く予測不能でちりばめられた伏線と構成に唸る。かなり面白かったしお気に入り。
しかし、なんといっても表題作『夜よ鼠たちのために』が至高。
孤児院で育った男の復讐譚。クライム・サスペンス、ピカレスク・ロマンでありながら高密度のサプライズ。そしてサプライズの奥にある犯行動機にさらに驚く。こんなことを考えつく連城三紀彦は凄過ぎる。あとがきに作者自ら「フィクションとして時代遅れになる事を願う」と書いてあったが、残念な事に(そして本読みとしてはありがたいことに)全く古びていない。ラストの愛とニヒリズムに胸が締めつけられる。
他、誘拐ものあり、男女の愛憎劇あり。全てに驚きがある。ハズレなし。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
思い込みによる目の錯覚というものがあるが、この先生の作品はまさに思い込みによる心の錯覚を衝いてくる。
連城先生の作品を読むと、「こういうものだ」と思い込んでいることがいかに多いことか。
並みのどんでん返しじゃない。
加えて描写の機微の美しさ。すべての物語に通底する切なさと悲しさ。
先生は本当に天才だと思う。 -
連城三紀彦というと幻影城作家という印象が強い。ぼくは同誌の熱烈読者だったので当時の作品は全部読んでいるはずだけど、それ以降人気作家となってからのはまったく読んでいない。これは評価の高い短篇集。何度も書いているように人をうならせる短編は難しい。どんな一流作家でもそれが言える。しかしこれはその稀有な成功例といっていいだろう。収録されている6編すべてがとはいわないけれど、いずれもたかだか50ページほどの長さで不可解な状況を作り出しそれを鮮やかに解いてみせる。まさに練達の業。古風だがしっかりと地に足のついた描写が状況の不条理さを際立たせている。いかにもというトリックでないところがうまい。
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濃密なミステリー短編集。
全てをひっくり返す大胆なトリックに翻弄させられっぱなし。 -
短編。
話は古い内容を含みますが、昭和生まれの私にはむしろ
落ち着いて厚みのある雰囲気が心地よかったです。
初めての連城三紀彦作品でしたが、他の作品も読みたいと思います。 -
これほどまでに濃密な短編集はあまり無い・・・・と思う位に
秀逸な作品が詰まったミステリ小説である。
文章の巧みさと言うか、「言葉にするとこういう事」と思わず唸ってしまう
上手さが散りばめられていて素晴らしい。
特筆は「二重生活」。このどんでん返しにはしばらく余韻が消えなかった・・・。 -
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脅泊電話に呼び出されて出かけた総合病院の院長が殺され、続いて、同じ病院の内科部長の死体が発見された。見つかった二人の死体は、首に針金を二重に巻きつけられ、白衣を着せられていた。何故二人がこんな姿で殺されたのか?そして、「妻の復讐のために殺した」という犯人の電話の意味は?執拗な復讐者の姿を追う表題作ほか、人間の心の奥に潜む闇を描くサスペンス6編。
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表題作のほか、「二つの顔」 「過去からの声」 「化石の鍵」 「奇妙な依頼」 「二重生活」
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どれもとてもよくできた物語である。極自然にまっすぐに流れていた流れが、ある時点を境にもつれ絡まり合い逆流するように、がらっと様相を変える。その変わり様が見事である。真実がわかるとそれまで見逃していた些細な点が、浮かび上がるように見えてくるのが不思議である。どこでどうひっくり返されるかわくわくする一冊だった。 -
仕掛けは基本的に似たようなものなのだけど、どれも面白く読める。好きなのは「過去からの声」、びっくりしたのは「二重生活」。
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6編の短編集。
だれが本当のことをいって、誰がうそをついているのか。
頭がぐるぐるしてきます。
どれもこれもええっ!?と驚くこと間違いなし。いい作品集です。
著者プロフィール
連城三紀彦の作品





