- Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101421049
感想・レビュー・書評
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H31年大河ドラマ「いだてん」に出てくる天狗倶楽部が活躍するSF「人外魔境」。
元ネタはコナン・ドイルの「失われた世界」
https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4334753280
コナン・ドイルの「失われた世界」を実際にあったこととし、チャレンジャー教授が古代生物の生息する“台地”の科学的根拠と、その存在を世界に公表したらどうなるのか…、という後日談的SF。
なお、天狗倶楽部SF本はHGウェルズ「宇宙戦争」を元にした「火星人類の逆襲」もあります。
https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/410142103X
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冒険小説家押川春浪(しゅんろう)の元に、化学博士からアマゾンの奥地探検の依頼がくる。
イギリスでチャレンジャー博士が見つけたという南米大陸奥地の“台地”へ行き、古代の巨大生物が生き残っているのは本当か、それが本当ならなぜその場所でだけ古代生物が生存しているかを確かめてほしいというのだ。
春浪と共に旅に出たのは、バンカラ運動集団「天狗倶楽部」の仲間たち、その中でも学生会の名物男で日本初の応援団長“虎髭将軍”の吉岡信敬(しんけい)、医学博士相沢光次郎とその娘の峯子(吉岡信敬とのろまんす?が展開する)たち。
ブラジルでの案内役兼通訳はコンデ・コマこと前田光世。
ブラジルから“台地”へ彼らを運んだのは飛行機王のサントス・デュモン。
サントス・デュモンの用意した飛行船で彼らは“台地”へ入る!
時間軸でいえば、「失われた世界」でチャレンジャー教授一行が、二回目の探索で猿人とインディオの戦いに加わり、プテラノドンの子供をイギリスに持ち帰った直後くらいだ。
天狗倶楽部探検隊はインディオや猿人の生き残りに会う。「失われた世界」では戦争の末、インディオが猿人を奴隷にしていたが、若干の猿人の生き残りが密かに暮らしていた。未だに緊張感の走るインディオと猿人を野球の試合で決着をつけさせようとする。
…恐竜の跋扈する台地でインディオと猿人が野球の練習、さすがに読者はびっくりした(笑)
チャレンジャー教授の発見した“台地”で恐竜にであい、なぜこの地だけで古代生物が存続しているかの仮説を立てる。
(コナン・ドイルが「失われた世界」を書いたころから、ヨコジュンさんがこれを書くまでに科学も進歩したため、科学的仮説がそれなりに辻褄合わせることができるようになったんですね)
しかし同時期にドイツも軍隊を送り込んできた。
ドイツは皇帝ウィルヘルム二世の命令により、失われた世界にはラヂュームがあると見込み、それを使い不老不死者を作ろうとしている。
ラヂュームが無いと分かったドイツ軍は “台地”に現代武器を投入して攻撃する。次々倒れる古代生物たち、焼かれるインディオや猿人の住居。
破壊を止めようとする天狗倶楽部は、古代生物をドイツ軍幕へ攻め入らせようとする…
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「The lost word」を「人外魔境」と書き、恐竜の名前を漢字で書くと、何とも迫力が沸きます。
翼龍プテラノドン
剣龍ステゴサウルス
異龍アロサウルス
巨龍メガロサウルス
鎧龍アンキロサウルス
暴君龍ティラノサウルス
三角竜トリケラトプス
彼らが繰り広げる戦いは、「魚龍のからだに蛇頸龍の長い頸が巻き付き、その頸に魚龍が噛み付いている。」というようなもの。
コナン・ドイル「失われた世界」ではインディオと猿人とは苛烈な戦いの末最後はインディオが猿人を奴隷化したという結末ですが、こちらでは共存を図るという結末なので、時代による価値観の変化も現れています。
ラストは「サラエボでオーストリア皇太子が殺された」という戦争勃発を予言するもの。
どうやら本当はもう一作書く予定だったようなのですが、結局刊行されたのは「火星人類の逆襲」「人外魔境の秘密」の二作で終わってしまったということです。詳細をみるコメント0件をすべて表示