- 新潮社 (1997年1月1日発売)
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感想 : 4件
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Amazon.co.jp ・本 (297ページ) / ISBN・EAN: 9784101432212
感想・レビュー・書評
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第1次戦後派、第2次戦後派、第3の新人、内向の世代、そんなふうに作家や批評家たちが「文学史」として色分けされていて、新しい読み手が、その分類を口にしながら作品が読まれた時代がありました。
いつのころからでしょう、そういう分類が消えて、一人一人作家が一人で立っていている時代が始まりましたが、個人的感慨で言えば、戦後派の分類が消えたときに現れた代表選手は、やはり村上春樹と村上龍の二人、ノーベル賞の大江健三郎も分類されませんが、やっぱり、両村上かなって思います。
この作品の日野啓三は「内向の世代」として登場し、ジャーナルな、あるいは社会的な主題で書いてきて、古井由吉や後藤明生とは色合いが違う人だと思っていましたが、この作品では、いかにも内向の世代の視線で自らを見つめていると感じました。
久しぶりに読み返して、あれこれブログに書きました。覗いてみてください。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202210220000/詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
過去の記憶をイノセントに描いて振り返る様な話は、読んでいて楽しくないから自分はあまり好きではない。
が、この作品には凄みがあった。“台風の眼”という表題も素晴らしく、嵐の中心(現在)とその風雨(記憶)の対比にも非常に納得のいく内容だった。 -
作家が一生に一度大きな決意を持って書くようなこのような小説をしばしば手に取る。サマセット・モームの「人間の絆」のように、半自伝的小説の形を取り、生きている実感のなかで世界の輪郭をなぞろうとするもの。日野を続けて読んだ3作目に「台風の眼」を読めたのはとても幸運なことだった。
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重い病の中、著者の生身の体験としての「昭和」が炙り出される。わたしもこういう体験をする日がくるのだろうか・・・
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日野啓三の作品
