なんとなく,クリスタル (新潮文庫 た-33-1)

  • 新潮社 (1986年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (227ページ) / ISBN・EAN: 9784101434018

みんなの感想まとめ

1980年代の女子大生の生活を描いたこの作品は、当時の日本の景気や若者文化を背景に、ブランドや恋愛に奔走する姿をユーモラスに綴っています。独特な構成で、本文と豊富な註釈が並ぶスタイルは、ストーリーをよ...

感想・レビュー・書評

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  • 1980年のある女子大生のクリスタルな日々を固有名詞を多量に用いながら綴られた作品。まだ日本の経済が上向きで景気も良く、裕福な大学生はブランド品に身を包み、講義そっちのけで恋愛に奔走する姿そのものを描いている。オイルショックを乗り越え、バブル崩壊を前にした80年代初頭は戦後日本で一番いい時代だったのかなと思いながら読み進めていた。
    見開きの右側に本文のテクストを左側に膨大な註釈を配置した独創的な手法をとり、ストーリーも含めて枠に当てはまらない作品である。
    肝心のストーリーは令和の時代に読むと、ブランドや価値観には古さは否めないが、根底にある女子大生像は令和も80年代も変わってはいないのだろうと考える。
    好き嫌いや心地よさなどの感性による選択、記号的な物質的表現による自己表現とともに生きる若者の姿は今の時代にも通じる。
    既存の枠に当てはまることのないこの作品はこれからの現代純文学の可能性を多大に感じた。

  • 消費社会の原理に飲み込まれた若者のなんとなくクリスタルな生活。選んでいるようで実際は選ばされているのかな。逐一ぶち込んでくるクセのある注釈がちょっと癪だった。

  • 「なんとなく、クリスタル」というより「なんとなく、バブリー」。男も女もステータスファースト。でもだからこそ今読んでも面白いのかも。当時は「悦」、今は「クスっ」。

  • 「クリスタル族」が流行った時、私はまだ小学生だったので世相を感じ取ることはできませんでしたが、そのコトバはなんとなく知っていました。
    「33年後のなんとなく、クリスタル」という本が去年発売になり、当時一世を風靡した「なんとなく、クリスタル」の彼女たちの今(50代)が描かれていると聞いて興味が湧き、積読リストにいれてました。
    読むなら33年後、よりも当時のものから読まないと★

    まず、国力があるとそれだけで世の中全体に自信がつくのね、と実感させられました。今だって物質的にはそこそこ満たされているはずなのに、今とは流れてる雰囲気が明らかに違います。
    そんな世相をバックにした当時の若者文化がすごくよく描かれていると思いました。
    物語自体はたいして面白くないのですがとにかく、根拠もないのに将来に希望を持った感じとか、そのくせ無気力感が漂い、自分のアイデンティティについて考えたり弱い心に不安を持ったりしながら、気分の良い方に流されていきたいという、ふわふわした感じがリアルです。そういうところが評価されたんでしょうね。。

    と同時にびっくりしたことが。
    巻末に出生率のデータなどが掲載されているのですが、すでに少子高齢化の予兆を見ることが出来ます。
    この浮かれた好景気の物語の巻末にこのデータを載せてるって。著者はバブル崩壊を見据えてたのかもしれません。

  • まずタイトルがいい。
    「なんとなくクリスタル」
    って。
    この「なんとなく」って感覚がとっても大事な小説。一見中身がないように見える。少しあざとくも見える注釈。やたらとブランドやミュージシャンの固有名詞が出てくる感じとか。きっと嫌な人は嫌だと思うし、全然面白くないと感じる人は沢山いるだろうと思う。でも、個人的には凄く面白かった。
    「なんとなく」な気分がとってもよく表現できていて、なんとなく気に入りました。

  • これだけ詳細な注が書けるのはなかなかすごいと思った。しかも、ただの説明ではなく当時の若者の感性が反映されていて面白く出来ている。注を文学として読ませる試みは、今読んでも新しい。

  • 田中やすお・・・・キモっ!!!!
    でも、その時代描写的なのが妙に面白かった。。

  • 今読んでも十分衝撃的なのに80年代だったら尚更だろうなと思います。
    そして注釈を読んでいると、作者は嫌なヤツだろうなと思わされてしまいます。
    本自体は一瞬で読めます。半分は注釈なので。

  • 30代の若者が「おしゃれな本(知的に見えたりセンスの良さを感じる内容)を教えてほしい」との発言に、その場にいた初対面のみんなで悩み、おじさま方が「僕らの世代だと『なんとなくクリスタル』かなあ」と答えたのが印象的で読んでみた。
    地名や店名やブランド名や音楽なカルチャーが出てきて、今もある、もうないかも、と答えあわせは楽しかった。物語は全く好きじゃなかった。主人公が大学生やりつつ、なんとなくファッションモデルをしてて、そのバイトで月に40万円稼いでいで、そりゃなんとなくクリスタルにもなってしまうわなあ、と思った。
    今の閉塞感しかない時代ってなんだろう。

  •  ノスタルジーでどことなく違う世界を見ているようだった。大学生活を送る傍らモデルと音楽活動をして、当時の服や音楽に身を染める。
     足りないものはクラブなどに行き身体の交わりや精神的な通じ合いを通して埋める。
    自分とは違う生き方をしている人の、瞬間をのぞいてるみたいだった。
     読み返すことはないだろうけど、この本でしか味わえない当時の雰囲気や流行り廃りの空気感が伝わってくる。

  • 田中康夫氏のデビュー作。
    本作がベストセラーとなったことにより氏は職業作家に転身し、その流れでタレント活動を行い、現在は政治家として活躍しています。

    都内に一人で住む裕福な女子大生の生活を中心にした小説です。
    彼女は大学に通う傍ら、ファッションモデルとして活動していて、海外に行っている両親の仕送りに加えて、月40万円以上の収入があります。
    また、彼氏の淳一は、有名バンドのリーダー兼キーボード奏者で、全国ツアー中とです。
    有名ブランドに身を包んでいながらも一定のポリシーを持った日々を送っており、当時の女子大生憧れの生活をしています。

    作中では、ある程度裕福でないとわからない単語が多数登場します。
    例えば、作中、以下のような文章が出てきます。
    "テニスの練習がある日には、朝からマジカかフィラのテニス・ウェアを着て、学校まで行ってしまう。"
    "でも、一番着ていて気分がいいのは、どうしてもサン・ローランやアルファ・キュービックのものになってしまう。"
    これらブランド名は実在のもので、各ブランドの特徴や、ここで登場する意図が注釈という形で説明されます。
    その数が総数442個あり、ページの半分が注釈で埋まっているのが特徴です。
    洋服ブランド以外にも、カバンや靴、日用品、音楽グループ、曲、地名や、当時流行っていた言い回しなんかにも注釈が入っていて、ブランド名などは現在も参考になるものが多いです。
    ややスノッブな感じがしますが、注釈を読むだけでも面白いです。

    読んでいると、注釈がメインなのではないかと感じることもあります。
    徒然草を想起するところがあり、「これがいい、だけどこのときはこっちがいい、でもやっぱりあれがいい」という感じで、次々ブランド名が登場し、その注釈がつきます。
    ブランドのこだわりや聞いている曲のタイトルで文章のほとんどが埋まっていて、ストーリーはあって無いような感じでした。
    その一方で、セックスの描写が濃厚で、現代の中高生向けでは無いと思います。

    バブル景気も手伝って、本作に登場するブランドや音楽を模倣した結果、頭空っぽのままブランド品をぶら下げる女子大生を増やしてしまった作品です。
    衒学的な面白さはありますが、文学小説として称賛できる作品かというと、賛否があると思います。

  • 意外に面白かった。が、ほとんど印象に残らない。

  • もちろん江藤淳の選評、そしてそれを常に引用する大塚英志の批評が好きだったので、元をたどらなければと漠然と思っていたのだけれど、どうにも引用されている文章を読むと男が描いた女の空虚さみたいなものがある気がしていて、読む気が起きていなかった。ところが、読み始めてみると失礼ながら意外にも(!)とても面白くて、あまりの面白さに驚いてしまった。そういえば、この本に対する女の意見みたいなものは読んだことがなかったことを思い出した。男が描く女に対して、男が「こんなものは女を描くとしてどうなんだ」と文句をつけていることが多々あるのだけれど、私は意外と、男が描く女の弱さに、時おり真に迫るものがある気がすることがあり、これもその一種だった。江藤淳はかつて、「女が男をよく書くときには嘘っぽくなるのに、嫌なところを描く筆はあまりに正確で迫力があって怖い」的なことを言っていたと思うけれど、私も時々これを思う。男が女を礼賛するときは嘘っぽくなるのに、女の弱さみたいなものを描くときに、自分の芯が見透かされたみたいな気がしてぞっとする。

  • 読みやすい!!1時間もかかりませんでした。
    東京で大学生活を送ったからか、なんとなくわかるなぁという描写が多かったです
    ブランド物の名前も大量に出てきますが、同じブランド物が大量に出てくる"アメリカンサイコ"よりははるかに読みやすいです。
    苦労のない女の子だからこそ出せる、そこはかとなく漂う退廃的で気だるく醒めた感じが好きです。

  • 250円購入2005-08-21

  • 注釈の多さに笑けてくる。
    2つのものを、同時に読んでるような、不思議な感覚になってくる。
    内容(ストーリー)より、写真に近い描写とでもいうの?
    この、「いま」ごと、閉じ込めた感じかな。
    職人芸ぽさも感じる。
    33年後の方もちょっと読んでみよっかな。

  • 「33年後のなんとなく、クリスタル」を読んでみようと思って、まずは「なんとなく、クリスタル」から…と読んでみた。

    改めてあのバブルの頃を思い出して、気恥ずかしいような…なんとも言えない読後。私自身はバブルの名残がある大学生だった。そう言えば由利のような達観したような女子学生は結構いた。雑誌のモデルしてるという子もいたり。怖いもの知らずで、根拠のない自信に溢れてる感じ。ブランドありきの選択の仕方も時代だなぁと。3高、アッシー、メッシーという言葉も流行った時代。女子力高めまくった女の子たちが、高飛車なふるまいをしても許される、イケイケドンドンだった世の中の一コマを改めて思い出した。
    そう思うと、随分と世の中の価値観も変わってきたと思う。地に足が付いているというか…。

    この本がとても話題になっていたことは覚えているけど、今読んでこんな内容だったのかとちょっと残念感…。当時インパクトはあったんだろうなぁ。

  • ここに出てくる学生が今の団塊世代かと思えば、今の「パープリン」な大学生とさほど変わっていないですね、というのが素直な感想。

  • 登場人物たちは、みんな大学生なのにやけに羽振りがよくて楽しそうだ。これが書かれたのはバブル突入直前の1980年5月。一橋大学在学中に図書館で書いたとのこと。
    固有名詞が散弾銃のように散りばめられていて、悪ふざけのような膨大な注が付いているのが特徴的。
    ただ、今から読んでも固有名詞のない時代が想像できないのは確か。いろいろな条件が重なって、音楽もファッションも若者が楽しめるようになり、雑誌に載せる情報が整ってきたのが1970年代なのだ。僕らは間違いなくこの延長線上にいる。

  • なんとなく
    気分

    なんとなく生きて、なんとなく死ぬ。
    なんとなく楽しんで、なんとなく悲しむ。
    なんとなく笑って、なんとなく泣く
    なんとなくやってみたくて、なんとなくがんばって
    なんとなく勉強して、なんとなく就職して
    なんとなく働いて、なんとなく生活していく。
    なんとなく結婚して、なんとなく子供を生み育てる
    なんとなくかっこよくて、なんとなくきれいで
    なんとなく憧れて、なんとなく逞しくて
    なんとなく会いたくて、なんとなく


    気分で生きていくことのできる平和な世界
    なんとなくで生きていけることを
    どう捉えたらいいんだろう?

    そもそも、なんとなく生きていくのはいいことというか悪いことというかどうでもいいことじゃないのかなぁ?
    とも思われ.

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著者プロフィール

1956年東京生まれ。一橋大学在学中の1980年に『なんとなく、クリスタル』で文藝賞受賞。長野県知事、衆参国会議員を歴任。著書『昔みたい』『33年後のなんとなく、クリスタル』他、著書多数。

「2019年 『ムーンウォーク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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