欲望 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (493ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101440149

感想・レビュー・書評

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  • 古典的な香りが色濃く感じられる究極の恋愛小説。

    三島由紀夫に興味がなくても読める。

    主人公は図書館司書の類子。かつての同級生で、建築家の正巳。もう一人の同級生、阿佐緒。
    物語は三人を中心に進んで行く。

    それぞれが抱える心の闇は深くて重い。特に、建築家の正巳は事故により性的不能者である。

    色々な事件を織り交ぜながら、確実に死へ向かって行く者達。そこに行き着くまでの心理描写が細密。

    愛する者達を失っても、生き続けていかなければならない人間の静かな強さを感じさせるラスト。
    余韻が切ない。

  • 目眩く性と死…圧倒された世界でした。
    類子と正巳と阿佐緒、そして袴田…形の違う欲望でも、それぞれの欲望はとても強かったです。
    肉体だけでなく精神のエロス。かなり際どいことも書かれているのですが全く厭らしくないのはさすがです。
    正巳が性的不能者じゃなかったら、類子と正巳はここまで感応し合い、高まらなかったのではないか…とも思いました。
    静かに狂っていく感じも良かったです。正巳の最後の海での言葉は悲しくなりました。
    そして三島由紀夫の豊饒の海を今度こそ読破したくなります。その上で再読したいです。
    官能にもみくちゃにされました…すごかったです。

  • 一日の終わりに人一倍疲れを感じてしまう彼は、時々ベッドの中で私の頭を抱き寄せ「すまない」と言った。疲れすぎていて、どうしても肌を合わせることができそうにない、という意味だった。
    何故あやまるのかわからなかった。交合はしなければならないからするのではない、したいからするものだった。ましてそれが愛情の証であると信じるほどわたしたちは若くはなかった。それに第一、交合は官能の象徴ではない。いわばそれは、官能への入口のちょっとした扉のようなものでしかない、と私は考えていたのだが、そうしたことを彼に説明するのはなんだか億劫だった。(本書P456)

    そして、三島由紀夫「天人五衰」をオマージュしたラストの華麗さを味わってください。

  • 著者の直木賞受賞作「恋」よりはまだ理解できる内容。だけどやはり、そこまでこじらせなくてもよくない?今ある現実に満足しようよと思ってしまう私にはあまり共感できない。三島由紀夫オマージュという内容だったけど、三島由紀夫もこじらせ系なのか。読んだことないけど。

  • 人間関係、ドロドロな小説。
    と言ってしまえば一言で終わるし、全く面白くは聞こえないと思うが、忘れられない小説。
    主人公は今は幸せなのか?誰も救われていないのか?色々考えてしまう。
    所々の描写が美しくて、その部分だけ読み返してしまうような本。

  • 林真理子と間違えて買う。せめてあらすじ読んでから買うんだった。超絶つまらなくてほとんど読まなかった。

  • 恋、無伴奏に続き、欲望を読み終えて三部作を読破。
    最後の解説にもあったけど、文章がすぅっと入ってきて、ついついゆっくりと読みふけってしまうー、そんな作品でした。
    読み始めてからラストまで、とても濃密な時間を過ごした感じ。
    三部作のなかでは本作が一番好きかな。

  • 感想を書くのが難しい。この読後のぐったりとした疲れは、死による終焉と言う眈美主義の極みから取り残された、生き続けるしかない平凡な人間の倦怠感だろうか?類子の回想という形を取ることで、阿佐緒や正巳の人物像の歪みが緩和され、それが本来の姿の様に描かれているが、読み終わって考えると、全てが類子の妄想によって美化された姿に過ぎなかったのでは無いかとも思える。妄執であるからこそこんなにも身を切られるような凄絶な想いを持ち続けられるのでは?自分の中で消化するのに時間がかかりそうな作品でした。

  • 恋愛小説は苦手なので、基本的には読まないのだけど、この小説は『この文庫が、すごい!』というムック本に紹介されており、「面白そうだな」と思い購入した。

    現実には体験出来ない恋愛が書かれていたのが、良かったのかもしれない。いっきに読めた。

    しかし、この登場人物みたいな男子とは恋愛したいとは、思わないな~(⌒-⌒; ) 色んな意味で…\(//∇//)\

    初めての恋愛小説がレベルの高いもので、良かった! これがきっかけになり、小池真理子の小説を読むようになった。早く、読めば良かった。
    次は直木賞受賞作の『恋』を読むぞ~!

  • 引用になりますが解説にて池上冬樹氏がこう綴っています。「とにかく本書は女性の官能の世界を激しくきらびやかに描いた作品である。<中略>三島文学を継承した、比類なき美しさをもつ現代文学の古典といっていいだろう。」
    私の感想を自分の言葉より端的に表現していますので感想として引用させていただきました。実に美しい物語だと思います。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小池真理子の作品

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