恋 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101440163

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに小説らしい小説を堪能しました。
    殺人罪で10年の服役を終えた後、世の中から隠れて静かに生きてきた女性の葬儀から始まり、死の前、彼女からその犯罪に至った真相を聞いたノンフィクション作家の回想となります。
    事件は、彼女が女子大生の時、学生運動の終焉浅間山荘事件のその日に起こりました。
    エネルギーはあるけれど、退廃的な学生運動と、彼女がのめり込んでいく、ブルジョアな奔放的享楽の生活が、反しながらも、その時代に共鳴していくような。
    彼女は、大学教授夫妻とアルバイトを通じて知り合い、夫婦それぞれの魅力と、二人の倒錯的な関係性に魅了されていく。“恋”は、この三人のバランスの上に成り立つ、特異な純愛感情でした。永遠に続くと思われたこの関係が、異分子が入り崩れていきます。
    最後まで、官能的で虚無感漂う魅惑的な作品でした。

    • ゆーき本さん
      「神よ憐れみたまえ」が面白かったから
      読んでみようかなぁ。
      「神よ憐れみたまえ」が面白かったから
      読んでみようかなぁ。
      2023/05/22
    • みんみんさん
      やっぱ昭和感満載が好きよ(〃ω〃)
      おばちゃんは今どきについていけない笑
      やっぱ昭和感満載が好きよ(〃ω〃)
      おばちゃんは今どきについていけない笑
      2023/05/22
    • おびのりさん
      最近は、読み手も贅沢言うから、時系列変えたり、語り部変えたり、飽きさせないように大変よね。
      まっすぐ直進して読めるってのも、良いわ。
      最近は、読み手も贅沢言うから、時系列変えたり、語り部変えたり、飽きさせないように大変よね。
      まっすぐ直進して読めるってのも、良いわ。
      2023/05/22
  • 第114回直木賞受賞作。

    読み進めるのに苦労したというか…
    辛い気持ちにさせられるというか…

    女子大生が奔放な結びつきの大学教授夫妻に惹かれて、その関係に陥っていく物語。

    『恋』とは…
    どう表現したらいいのだろうか。

  • 小池真理子(1952~)
    軽井沢で執筆した本作で直木賞を受賞(1995)
    夫は同じく直木賞作家の、藤田宜永(よしなが)(1950~2020)


    女子大生の矢野布美子が、大学助教授の片瀬信太郎と妻の雛子というインモラルな夫婦に心酔するお話。
    1970年という時代背景もキーの1つだが、勉強不足のせいであまりリアルに想像できず。

    猟銃で射殺とか、異母兄妹が結婚とか、殺人犯が10年で出所とか、いろいろ引っかかるところはあったけれど、大切なのは「恋」であるのでサラッと受け流す。
    布美子が夫妻に恋する様子(愛ではない)がとても丁寧に描かれていて、大事なのはそこなのだ。

    布美子が信太郎だけでなく、雛子にも恋をするのがごく自然なことに感じられたのは、小池さんの筆力。
    とにかく雛子というキャラが突出してよかった。
    匂い立つ妖艶さ。生々しさ。

    布美子をドラマ版の石原さとみに変換して、再読したい気もしなくもない。
    私的には長澤まさみのほうがイメージに近かったけれど、小池さんが太鼓判をおしたドラマらしいので、石原さとみでいいのだろう。

  • タイトルの壮大さから、どんな物語か想像つかず読み始めたら色々な設定がとんでる部分があり、「またまた…無理あるでしょう」と序盤は冷静に眺めていました。

    読み進めていくと、布美子、信太郎、雛子たち登場人物がとても立体的に思えてきて、一緒にラストまで落ちていくようにさえ感じました。
    恋って言うとなんだか響きがよく、キラキラした印象を受けますがこの本でかなりイメージを覆されました。恋という曖昧な言葉の、醜いところや虚無感をかなり凝縮したようなお話。

  • 完璧。
    その一言に尽きる直木賞受賞作。
    タイトルの【恋】で手に取るのを敬遠しがちだが、ただの恋ではないそんな印象を受けた何対もの異常な恋。
    片瀬夫婦とふうちゃんの普通じゃない三角関係、そこに現れてしまった一人の男による、肉体と精神を取り巻く快楽と苦痛の話。とにかくあり得ない設定だけど、惹かれ合うそれぞれには共感してしまう。そして期待を裏切らないラストから見る全体の構成に拍手。

    小池真理子さんが政治、経済といった社会現象には全く興味がなく、愛とエロスと死のような人間の本質的なことばかりを考え書いているとはまさにこの事だと思う。
    この人の描く短編も好きだけど、時間を忘れてどっぷりと浸れる長編はもっと好き。
    冬の伽藍で冬の軽井沢に連れて行ってもらい、恋で夏の軽井沢に連れて行ってもらえた気がした。
    私の中でもこの3人は実際にいたように生き続ける気がする...マルメロの木と共に。

  • 奇妙で退廃的な内容なんだけど、淡々と読めた。
    戻れない過去についての話だと序章で理解した上で物語が展開する流れと、情景描写が緻密なお陰でさっぱりとした読後感を味わえたような気がする。

    信太郎も雛子も奔放だけど、2人は人間、一般人として過ごしている。
    2人のうち特に信太郎は、助教授という社会的存在の自覚を忘れていない一般人であるにも関わらず、布美子にとっては彼らは世間から逸脱した神のような存在に見えていたのが理想の押しつけに思えるし、紛れもなく恋だった。

    事件が起きてからの信太郎と雛子の胸中が気になる。
    共感がしにくいからこそ面白くて、感想を抱くのが難しい。

  • 文学小説みたいで素晴らしかったです。ラストも良かった、、
    タブーが満載なのに、美しく感じてしまう世界観がすごいです。

  • 小池真理子さんの小説は、読んでいてとても心地よく、癒される。上品で、自然に流れる文章に引き込まれ、気付くと物語の世界に自分が居る感覚・・何度も味わっている。大好きな作家さん。

  • なんか…恋っていうレベルが違いすぎて正直布美子の気持ちは理解できなかったわ。大人って…恋って複雑だ…難しいね。

  • 「恋」。完璧。圧倒されて直ぐにはまとめられませんでした。息苦しい。
    片瀬夫妻はどんな関係でも2人で一組で、布美子はそれをいつまでも失いたくなかったんだろう。布美子は片瀬先生の事は好きだけど、片瀬先生は妻の雛子にぞっこんで、それなら2人の側にペットみたいにいるだけでも…な打算もきっと。
    布美子を足して3人一組だと片瀬夫妻は思ってたけど、雛子が大久保に本気の恋をしたところで崩壊する。
    大久保は布美子に、「お前はお子ちゃまだ」みたいな態度を貫くし、雛子がそんな大久保にぞっこんでそれまでの(布美子にとっては)素敵な姿から変わってしまったのも耐えられず…で発砲、というのも自然な流れでした。
    布美子の心情が過不足なく描かれていて物凄いです。なんたって全共闘世代の大学生だし元恋人は活動家なので知らず知らずその空気に染まってて、意識しなくても「銃」が選択肢にある。
    発砲当日、あさま山荘事件でざわつく世間が背景として描写されるのも緊迫感がありました。この日は母も一日中テレビに齧り付いてたって言ってた。
    ラストの救いも好き。布美子に届いてたら救いレベルは上がったのでしょうけど、そこは殺人は殺人という線引きがされているように思いました。良かったです。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小池真理子の作品

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