無伴奏 (新潮文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101440200

作品紹介・あらすじ

その果てに待つものを知らず、私はあなたを求めた-。多感な響子は偶然に出会った渉に強く惹かれるが、相手の不可解な態度に翻弄される。渉に影のように寄り添う友人の祐之介と、その恋人エマ。彼らの共有する秘密の匂いが響子を苛み、不安を孕んで漂う四角形のような関係は、遂に悲劇へと疾走しはじめる。濃密な性の気配、甘美なまでの死の予感。『恋』『欲望』へと連なる傑作ロマン。

感想・レビュー・書評

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  • 不穏な雰囲気が最初から漂っているのだけれど、幸せなオチではないと気付いてはいるのだけれど、、どうしても続きが気になってしまいました。

    高校生にしてはませている響子が主人公ですが、駆け引きや計算で人付き合いしないところとか、いざという時に大人には劣るところとか(渉とうまく2人きにりなれた時の喜びようは切なかった)、、若いならではの純粋さ故の結末が衝撃でした。

  • 「きみが決めることだよ、響子」

    この一言がすごく印象に残った。
    恋人と友人の関係を知ってしまって混乱している中で、この発言をした渉は非常に残酷である。だけど、渉の心情も読み取ることができ、響子と普通の恋愛を送りたい思い、そこへ引っ張ってほしいという願いもあったと気付ける。

    冒頭で「事件」について触れる部分があり、内容を想像していたが、終盤になって予想していたものよりももっと残酷で悲しい事件に最初は受け止めきれなかった。渉の下した決断も、展開が早すぎて主人公と自分が置いてけぼりだった。

    幾度となく渉と祐之介は普通の恋愛をしていこうと決意をしたが、相手の恋人に嫉妬したり、わざと嫉妬させるようなことをしたり、結局2人の結びつきを強くしただけだった。AとBはっきりさせないといけないと主人公の響子は迫っていたが、その気持ちがわかる反面、恋人が2人いてもいいのではと考える自分もいた。その場合、甘い時間が少し長くなるだけで精神は摩耗し続けることだろうけど。

    恋を知っていく響子の変化が可愛かった。最初は良い家庭のお嬢様として見られたくなくて、とりあえず反発するということ、プライドを保ち続けることに必死だったが、渉と出会いどんどん変化していく。無理に背伸びしないで自分を曝け出したり、渉の姉である美人の勢津子に嫉妬したり、渉から事実を告げられ混乱してもそれでも渉のことを好きでしょうがなかったり。等身大になっていく響子は可愛く、また懐かしさを感じさせた。

    事実について響子はエマにも、警察にも、そして勢津子さんにも言わなかった。いつでもその前にトリガーがあって、発言をきいて伝えるのをやめる優しさを持っていた。事実を事実だからと伝える必要がないことを教えてくれた。そんな響子も祐之介の悪口を渉に伝え、渉の優しい反応でエスカレートしていく部分は見ていて辛かったがそれほど傷ついていたのだろう。過去の出来事にして欲しかったのだ。



    最後はみんなに家族ができて、ようやく当たり前の幸せを手に入れたことになっていたけど、主人公のように囚われているのかな。忘れて欲しいとも思えないが、どうか今の家族との日々を大切にして欲しいと願う。

  • あの嵐のよるに、、、
    あの日のことは忘れもしない、、、
    的な冒頭から始まり、絶対に誰か殺される。

    犯人はこの私が怪しい。と睨んでいたところ。まさかのボーイズラブ。

    !!!!!変死体が!って話になる、、はず!!!っと、ミステリタッチの話の進み具合で、犯人についつい目星をつけてしまったよ。

    よく考えたら、私読んでるの小池真理子だった。

    あーいつもミステリだから、たまには恋愛モノでも、、と思って借りたんだったー!!!!!
    小池真理子ならミステリって感じではないよな、、、

    刑事出てこないなぁ。とも思ってたんだよね。

    何度も何度も。小池真理子の本だってこと忘れて、事件の発展を願ってしまったわたしでした。

  • 悲劇だなぁ。60年代の青春を舞台にした恋愛ミステリー?まず、学園紛争用語がほとんどわからなくて苦戦した。アジビラ?ノンポリ?ゲバルトローザ?始めはウィキペディアで調べてたけど面倒になってきた。そして物語のキモとなる秘密にすぐ勘づいてしまったので、物語を読み進む面白さは半減してしまった。けれど主人公響子の不良ぶってるけどお嬢ちゃんな感じが、こっ恥ずかしいような理解できるような..好きじゃないけど共感できるような。ラストにかけてはわかっていても胸が痛くなった。現代なら全然違った展開になるのかもしれないなぁ。

  • 結末はハッピーではなく、また嗜好は分かれるであろう作品であり、ある程度自分に余力がある時にお勧めします。

    心情の描写が緻密である。
    恋愛小説であり、人生とは、という小説でもある。

    多感な高校性の若いゆえのゆらぎ、この年代の独特の背伸びや虚栄、自由な時間が多いゆえに内向に傾倒する気質、心情が丁寧に書かている。
    ストーリー展開は、先が読めてしまう人もいるかもしれないが、まとまりの良い心地よい小説。

    転機にある人は何かヒントを得られるかも。

  • 若いときの恋の憂鬱でもあり燃えたぎるものでもあるエネルギーを感じるものでした。性好についてはまああの時代はという感じでした。

  • 何度か読んでいるがまた新鮮な気持ちで読み終えた。コインが落ちていく最後の電話。

    あれが最後に見た渉の笑顔だったと思うと、切なさがこみあげてくる。渉は本当に穏やかにわらつていた。心になんの翳りもない青年のように。

    結果としての別れ、後から気づく別れは寂しいものだなと思います。

  • セピア色の情景とクラシック音色が浮かんでくるような作品。
    エマが少女の恋への純粋さそのものを現していて、流れのスパイスとなっていてよかった。

  • ズタズタにやられた。ラストは衝撃すぎて叫んじゃった。

  • 「欲望」からの「無伴奏」。
    三島由紀夫が再びチラッと出てきていた。

    渉と響子。美しくきれいだからこその悲しさが垣間見える

    小池さんの小説は音楽が出てきたり、美しい庭の表現があったりと 頭の中できれいな情景が浮かぶ

    今回も カノン、アダージョ、悲愴…と、少しかなしい曲が使われていて 話しの予感を感じさせる

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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