晏子(四) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.92
  • (81)
  • (55)
  • (89)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 672
感想 : 35
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101444246

作品紹介・あらすじ

崔杼は慶封と手を組み君主を弑した。一旦は崔杼の専制が成ったかにみえたが、崔氏は分裂崩壊し、代わった慶氏も誅せられた。脆弱不安の政情下、晏嬰は天の意志、民の声を全うしうるのか。後代、司馬遷がその御者になりたいとまで敬慕した晏嬰。稀代の聖人の人生の哲理を捉えた巨編。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 晏子の4巻を通じて登場する崔杼が没落するところに関する晏纓の論が興味深かった。荘公への憎しみが深いほど手厚く葬り、自身の幻影を見せれば、死ぬことはなかっただろう、ということである。それだけ荘公への憎しみが深かったということであれば、そのために崔杼は死んだということだ。ここに、学びがあった。強い憎しみだけで行動してはいけない。
    季札から晏纓への助言も興味深い。危ういバランスをとっている閣内において、職位を返上し距離をとることで、政争に巻き込まれないようにアドバイスしている。これは非常に重要なことだと感じた。正道のない嵐が巻き起こっているときは、距離を置くのが吉と出る。
    あとは、和と同の話か。
    話は例えるならスープ。火と水が合わさって、美味しいスープができて飲むことができる。同は水と水、合わさっても生み出されるものはない。王が言うことを察して、答えるだけでは、同であり諫めたりさらに深めたりすることが和であると理解した。
    自分が人を用いる立場にあっても同ではなく、和を大事にするようにしたい。

  • 最後でジーン。晏嬰みたいな嫁が欲しいです。

  • 中国春秋時代に生きた篤実と正義の政治家、晏子の物語。ヒーロー伝ではなく、宰相として、参謀として、そして人として、どう生きるか、が描かれている。史実や歴史書などの多くの情報に支えられた宮城谷昌光さんの文章。司馬遼太郎さんの後継者一番手と感じる。

  • ひとたび小さな声を発しても国の隅々までその声が伝わる。君主でされも憚られる小さな大声。声を上げなくてもそのたたずまいから国中ににらみを効かす怪人。沈みゆく国を背負い聖人となって何を見るのか。

  • 君子は己を知らざるものには屈し、己を知るもの志を伸ぶ。

    自分の行いをふりかえる者は、あやまちを引きずらないものである。相手の真実を察する者は、うわべの言葉があやまっていても、謗らぬものである。

  • 正月休みで4巻全て読了。

    久しぶりに宮城谷さんの小説を読んだ。
    史料の読み込み方や、それを表現する力は流石というほかない。

    他の方も書かれているが、1、2巻の疾走感に比べ、3、4巻はどうしても重たいのが、読んでいて苦しかった。

    しかし、晏子父子の心の揺れ動きや、ぶれない社稷の臣というスタンス。
    これを示たこの本は何度読んでも、新鮮な気持ちになると思う。

  • 最初はそれなりに面白く読んだが、途中からなんか平板な感じ。
    展開にワクワク感がない。

  • 全4巻

  • 【概略】
     荘公、死す!権力への飽くなき野望を抱いていた崔杼に一線を越える決断をさせたのは、くしくも「愛」だった。荘公の死後、景公に引き継がれた斉は、脆弱な政情を見せる。そんな斉という国、そして、景公に晏嬰は「社稷に仕える身」として並走することとなる。晏弱・晏嬰と続いた晏子の人生における哲学、最終巻にて昇華される。

    2020年02月18日 読了
    【書評】
     最後まで走り切った!なんのストレスもなく、自動的に手が次の巻、次の巻へと進む、久々にエンターテイメントと自己啓発の融合が見事な作品と出会うことができた。眼福。
     多分、今後の人生においては、第三巻とこの第四巻がズシリとのしかかるような気がする。エンターテイメントとしての興奮は、第一巻と第二巻の方が強いものの、行間に埋められた風味は、後半2冊が深い。読者が歩んできた人生や、困難、悩みが鏡のような形で反射されるような気がする。逆に言えば、とある特定の経験や辛苦がより比例するのが第三巻・第四巻、と言ってもいいかも。
     少し本の感想とは離れるけれど、メタ的な形でいうと、組織の長などが理念を掲げたりする行為や、大きくなることで社会性が高まる組織などでは、経営者がより「国家観」というものを強く考えるようになるのは、話の中で晏嬰が言及している「社稷に仕える」という点と相似な気がする。前回・前々回の書評でも述べたかも知れないけれど、これは決して「愛国心」と同義では、ない。(ってか、愛国心をことさらに押し付ける国家もヤバいと思うけど、愛国心に対してことさらに過敏に反応する人も、どうかと思う)
     話の中の晏嬰のような聖人君子ぶりは、めちゃめちゃ難しいと思う・・・けど、意識して可能な第一歩目は「自身がもつ感想・嗜好・趣味と、全体がもつ感覚を分けること」な気がする。自分の感覚(特に正しい正しくない)は本当にイチ個人のもので、それが組織や国家の長のものとしてそえられた場合、必ずしも適切なものとは限らないのだよねぇ。この意見も、ファッショ的捉え方として誤解されそうだけど、「公私」として分けるだけの話。これができてない人・・・多いの(涙)決して自分自身ができてる訳じゃないけれどね(笑)
     うん、本の内容とは全然かけ離れた書評になっちゃった(笑)でも、これは実際に自身で手に取ってみて、第四巻まで読み切った方がいいと思う。その人なりの捉え方、あると思う!
     3年後・5年後、もう一度、読んでみたい。多分、今自分が頑張ってる組織の形、大きく変わってると思うから。


  • 目まぐるしい政変の傍らで、何人殺されても同じ言葉を刻む史官のエピソードが印象的。

    晏嬰の筋の貫き方も、対比の中で、一層、際立つのか。

    大義、歴史、民、幅 ――― 

    考えさせられることが多い。

全35件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

宮城谷昌光
1945(昭和20)年、愛知県蒲郡市生れ。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。91(平成3)年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。94年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、2000年、第三回司馬遼太郎賞、01年『子産』で吉川英治文学賞、04年菊池寛賞を受賞。同年『宮城谷昌光全集』全21巻(文藝春秋)が完結した。他の著書に『奇貨居くべし』『三国志』『草原の風』『劉邦』『呉越春秋 湖底の城』など多数。

「2022年 『馬上の星 小説・馬援伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宮城谷昌光の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×