随想 春夏秋冬 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101444604

作品紹介・あらすじ

音楽の道をあきらめ、文学を志した十代。大学では英文科に籍を置くもののフランスの詩に心惹かれた。稲垣達郎、小沼丹、新庄嘉章 ……錚々たる師の学恩に導かれるも道は険しく遠い。雑誌記者を経て、競馬で食いつなぎ、結婚後は、英語の私塾で糊口をしのぐ。クラシック音楽、古典文学、写真、陶器、書と様々な学びを得て二十数年、曙光が漸く身を照らし出した。著者の文学的軌跡を刻む傑作随想。

感想・レビュー・書評

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  • 劉邦を読んでいる。癖で、初めての作家がいったいどんな人なのかにも興味が強いため、手に取った。読後に、存外に最近の本である事を知り、内容が今という時間軸に近いことを喜べたのはボーナス。

    劉邦には、内容に圧倒され続けている。古代。しかも、他国(隣国とはいえ)。広大過ぎる舞台、覚え切れるはずもないほど登場する人物群。極めて少ないはずの情報から、水が滴るように瑞々しく、リアル感のある物語を巧みに描き出してくれる宮城谷氏。読者としてはありがたくて仕方ない。

    子供の頃から、どういうふうに生きてきたか、大学生時代のお話も多いが、いかに小説家を目指すようになったのか。そして奥様との出会いから現在の夫婦関係についての印象まで。やや難解と言ってもいい、最近では目に触れることが少なくなった日本語の単語が(劉邦でももちろんそうだが)多数使われていて、そういう、絶滅危惧種的な単語に触れるたびに、そもそもそういう単語を知らない自分を恥じる気持ちになり、改めて日本語の美しさ、素晴らしさに想いが及んで思わず背筋が伸びてしまう。

    自己の内面世界の輪郭をはっきりと持ち、外界との関係を常に冷静に分析し、自分を見つめながら日々を過ごし、大人になられた方なんだなと理解できる。その中には多少ならずの劣等感が常にありつつも、ただし、それを上回るほどの楽観も持っておられる。その点が何か、目上の方に失礼だが可愛らしく感じられるというか。

    自分とはかなり性格のかけ離れたタイプの人格の方。でも、読むうちにすっかりファンになってしまった。歴史小説作家の自分のナンバーワンは(凡庸ながら)司馬遼太郎。しかし、(劉邦しかまだ読んでいないが)大衆娯楽性というような面では宮城谷作品はより硬く、歴史書に少し寄っている。違いはあるが、司馬遼太郎に次いでまた新たに好きな作家に(青山文平に続いてか)出会うことができた。僥倖だ。

  • 宮城谷さんの主に小説家になるまでの随想録。四十代半ばまで色々な経験、出会いが糧になったのだろう。特に良い奥さんにめぐり逢えて良かった。2018.4.12

  • 随筆集。過去に出された物と内容的に重複してる部分もあったりしますが、これはこれで楽しく読みました。個人的には奥様とのお見合い場面の話が好き。

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著者プロフィール

宮城谷昌光
1945(昭和20)年、愛知県蒲郡市生れ。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。91(平成3)年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。94年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、2000年、第三回司馬遼太郎賞、01年『子産』で吉川英治文学賞、04年菊池寛賞を受賞。同年『宮城谷昌光全集』全21巻(文藝春秋)が完結した。他の著書に『奇貨居くべし』『三国志』『草原の風』『劉邦』『呉越春秋 湖底の城』など多数。

「2022年 『馬上の星 小説・馬援伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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