中国の鳥人 (新潮文庫 し 25-19)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101448190

感想・レビュー・書評

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  • 椎名誠自身は自分の代表作はSF 小説であると言っていたので、とりあえずこれを読んだ。
    昔よく読んでいた筒井康隆に似ていて面白い。
    ネーミングだけでも怪しげな生き物、食べ物。シュールでディストピア的設定。ブラックで狂気を感じさせる内容。どれもすばらしいと思う。
    なのに今電子書籍でしか手に入らないのはなぜかというと、きっとコアな椎名誠ファンは、『岳物語』的私小説や「怪しい探検隊」などのエッセイが好きで、それらの作品の椎名誠のイメージは仲間や子どもや自然を愛するおおらかで豪快で、でも優しい人なのだ。しかしSFにおける椎名誠はかなりダークで危ないし残酷。コアなファンはこの椎名誠を受け入れたくないんじゃないか。出版社もそれをわかっているので、SFという言葉を使わないように神経質になっている。(ことが大森望の解説に書いてある。)
    もし世に出たのがSFが先だったら、違ったかもしれない。あるいはSFの作品とそれ以外の作品の量の比率が逆だったら。椎名誠はSF作家であると認識されたかも。椎名誠の現状のイメージでは、SFファンは椎名誠が好きだとは言いにくい。
    こういう作品を読むと、いい人にもダークサイドがあり、だからこそバランスがとれるのだし、単なるいい人より魅力があると思うが。
    個人的には、私小説やエッセイにもこういうところがもっとあったら良かったのに、と思う。

  • 筒井康隆に近い印象、なんというか現実を疑うような姿勢、山田太一にも近いのかな

    中国の鳥人は風土病的な統合失調、ちくわは病的酩酊、鯨女は統失かな
    月下の騎馬清掃団など、何も理解できない事象が嵐のように過ぎ去ってゆく話は好き
    思うがままの人生は統失の妄想というより夢の世界のよう、1人称視点に終始する書き方も好き
    蚊無し川では思いがけず徐々に異界に足を踏み入れてゆく、夢枕獏で似たものを読んだ気もする
    たどんは狐に騙され一夜の夢を見る類
    スキヤキはSF、

    中国の鳥人
    月下の騎馬清掃団
    思うがままの人生
    ちくわ
    蚊無し川
    たどん
    鯨女
    スキヤキ

  • 久しぶりに幻想的な本を読みたくなり「椎名誠」の『中国の鳥人』を読みました。

    心のどこかで現実逃避したいという気持ちが強くなっているのかもしれませんねぇ。

    -----story-------------
    商用で中国奥地を訪ねた男が、ふと立ち寄った少数民族の村。
    そこでは人が空を飛んでいた。
    幻を見ているのだと思いつつも、いつしか現実との境目がわからなくなり…(『中国の鳥人』)。
    タクシー運転手の饒舌にうんざりして、思わず口走った小さな嘘が招いた悲劇とは(『たどん』)。
    妄想が産みだす恐怖と笑いに満ちた不思議な世界へ読者を誘う幻想譚八編。
    著者の短編小説リストを収録。
    -----------------------

    本作品には以下の八篇の摩訶不思議な物語が収録されています。

     ■中国の鳥人
     ■月下の騎馬清掃団
     ■思うがままの人生
     ■ちくわ
     ■蚊無し川
     ■たどん
     ■鯨女
     ■スキヤキ

    広い意味ではSFというジャンルに含まれるんでしょうが、、、

    「椎名誠」の独特な雰囲気と幻想的な雰囲気から、超常小説と呼ぶほうが似合っている感じがしますね。

    日常生活の雰囲気がプンプン漂いつつ、不可思議なシーナワールドに惹き込まれて行く作品達。

    特に印象に残ったのは、『たどん』。

    タクシーに乗ったとき運転手に話しかけられたり、散髪するとき理容師(美容師)に話しかけられたりするのって、とても苦手だし、知らない相手に適当に話をするのは面倒なので、タクシーの運転手に適当に受け応えをしていて、恐ろしい思いをする本作品は、本当に恐怖感を感じましたね。

    あとは、、、

    中国奥地の集落で空を飛ぶ鳥人たちと出会い、自分も同じように空を飛ぼうとして魅力的な先生と訓練を行う中で、次第に現実と幻の境目がわからなくなっていく不思議な物語『中国の鳥人』、

    こんなの有り得ないだろう、と思いながら、不気味だけど実際に自宅の大掃除をして欲しいなぁ… と感じた『月下の騎馬清掃団』、

    本当は、姥捨て山として哀しい川と呼ばれていた蚊無し川… その上流で出会った謎の小屋、そこの住人は!? ぞくっとするエンディングの『蚊無し川』、

    この三篇が印象に残りましたね。



    表題作『中国の鳥人』、『ちくわ』、『たどん』の三篇は映画化もされているらしいです。

    機会があったら観てみたいですね。

  • 2015/7/21読了


    どの作品もシーナさんらしい文章や会話文もあるが、それがまたいい。 ジャンルとしてはSFであり、SFではない。少しずつ日常から非日常へシフトしていき、その世界に気がつけば引き込まれている。

  • う〜ん、椎名さんは、やはりエッセイや、自伝、放浪もののが良いですね

  • 映画 中国の鳥人 とストーリーは
    同じようだが・・・テイストがかなり違う。

    おどろおどろしい 雰囲気が小説の中にある。
    「照葉樹林」文化が そこに深く横たわる。

    水木しげる風の怪しさ・・・
    が満ち溢れる。
    椎名誠って こういう作品を
    書くヒトだったのだろうか?

    中国の鳥人では・・・
    東京から昆明に来るのに・・・
    成都から 成昆鉄道にのって 
    昆明にくることになっている。
    わざわざ汽車に乗らなくても 飛行機で来ればいいことだ。

    この中では 便所のウジムシ事件が 
    成昆鉄道の途中の駅で発生する。
    ある意味では それを書きたかったのだろう。
    でも やはり 話の整合性は ちょっとなくなる。
    宝石の出る村に行く途中の出来事として
    組み入れればよかったと思う。

    それにしても 椎名誠は 擬声語がうまい

    ぬらびらぞらぞり
    ぬらりじゃらじょり
    じょりざらじょりざら
    もりもりもらもら

    ウジムシの這う音である・・
    この想像力が なんともいえない 怪しさを生み出している。

    通訳の 沈さん がおもしろいのは
    『貴様』ということだ。
    これは 軍隊映画 に影響されているのだろうか。
    そういえば 水戸黄門 が好きだという
    日本語のできる中国人にあったことがあるが・・・
    その人も おかしな日本語を使っていたなぁ。

    ござりまする。
    とんでもねぇ。
    おたすけください。

    それが 水戸黄門から来たのかよくわからないが
    時代劇風の 
    言葉を使うというキャラクターもおもしろい。

    鳥人になるためには
    1 人間も空を飛べるということを信じること
    2 特別の訓練と特別の食事
      飛ぶために最も効果的な身体を作る。
    3 自分にあった揚力と浮力効率の高い
      鳳羽根 をつくる。

    鳥人料理がいい
    どろりとした汁のなかに 小さな穀物のようなものが
    はいっている、噛むと小さなくせにきしきしとした
    鋭い歯ごたえがあり 一粒一粒が 破裂する・・・蚊の目玉汁。
    作り方は 蚊を沢山食べるコウモリの糞を
    沢山集めて 煮て漉す。・・・それが ドロリとさせるのだろう。

    アヒルの水かきのうま煮。
    アヒルを生きたまま 鉄板の上に乗せて・・・
    熱くて 沢山 はねると おいしくできる。

    この 鳥人料理を 考えると
    もっとおもしろい・・・

    これは 実際に飛ぼうとするが・・
    そうではなくて 幻覚症状として飛ぶ
    という方法も 考えられる・・・
    でも けしなどの覚醒作用だけではねぇ。
    ちょっと 物語としては 貧困かな。

  • (メモ:高等部1年のときに読了。)

  • この作品は、ジャンル的には「SF小説」という括りでいいんでしょうね。奇妙な地名や、お得意の造語がたくさん出てきて、まさしくシーナ・ワールドが展開されています。読んでいるうちに、名作「アド・バード」を思い出しました。

  • 椎名誠のSF。不思議な味わい。特に、スキヤキがせつない。

  • ちょっとブラックな短編集。御伽噺のような・・・。

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著者プロフィール

1944年生まれ。作家。1988年「犬の系譜」で吉川英治文学新人賞、1990年「アド・バード」で日本SF大賞を受賞。著書に「ごんごんと風にころがる雲をみた。」「新宿遊牧民」「屋上の黄色いテント」「わしらは怪しい雑魚釣り隊」シリーズ、「そらをみてますないてます」「国境越え」など多数。また写真集に「ONCE UPON A TIME」、映画監督作品に「白い馬」などがある。

「2012年 『水の上で火が踊る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

椎名誠の作品

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