卑弥呼 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 67
感想 : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (601ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101456263

感想・レビュー・書評

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  • 私にとって久世光彦さんと言えば「寺内貫太郎一家」ではなく「時間ですよ」でもない。
    私にとって久世さんと言えば「刑事ヨロシク」だ。
    当時肩をカクカクさせながら「冗談じゃねねえよコノヤロウ」とかを速射砲的早口でまくし立てていた主演のビートたけしと、小刻みにギャグを間に挟んだかと思えばジェットコースターのように場面を転換させる久世の演出法とが絶妙に合っていたと当時思ってたけど、その演出法が世間より少し先んじていたのか、大ヒットとまでは至らなかったと記憶している。

    この「卑弥呼」でも、久世さんの自分の興味と知識と、現場や私生活で積み上げたアレコレとのテンコ盛りな展開がスピード感を伴ってすごく気持ちよく、文庫本で600ページもあっというまに過ぎ去った感じ。

    それと、この本には「小刻みに(話の展開とあまり関係ない)ギャグを挟んでくる手法」とか、「登場人物は若者世代だけど、その親の世代(中年世代)と、さらにその祖父母の世代(高齢世代)というように世代をいくつも登場させてパラレルに物語を進行させる手法」が出てくるが、「どこかで見たことあるぞ…」と引っ掛かり、読後にずっと考えてみた。そして出てきた答え→『これって「あまちゃん」と同じやん!』
    いみじくも、あまちゃんで伊勢志摩さん演じる“花巻さん”がレディーガガの仮装をする女子に続いてレディオガガのフレディーマーキュリー姿で登場して劇中で言った超名セリフ「わかるやつだけ、わかればいい!」の世界観がこの本でも全編にあふれてるではないか!
    もちろん宮藤さんより久世さんのほうが先。やっぱりいいモノって言わなくても受け継がれるものなんだなあ。

    それとこの作品で久世さんのこだわりと思われる要素として2つ挙げておきたい。
    1つ目は「古今東西の埋もれようとする文学作品を忘れさせないように記録しておく」こと。
    2つ目は「70年代フォークの心の奥に染み入るような歌詞を忘れさせないように記録しておく」こと。

    1つ目については、文庫本では巻末の既刊紹介の欄が、この作品に登場した数々の“隠れた名作”のうち新潮文庫で読める作品がリスト化されている。
    リストの一部をあげておくと、中野翠「ウテナさん 祝電です」からはじまって、山田風太郎「室町お伽草紙」を経て、ラディゲ「肉体の悪魔」、シェイクスピア「リチャード三世」、夏目漱石「倫敦塔・幻影の盾」、ヴェルヌ「十五少年漂流記」、尾崎士郎「人生劇場(青春篇)」…編集スタッフのこういった“演出”も心憎い。

    2つ目は、フォークグループ「猫」とか、井上陽水とかの歌詞がストーリーにからめて登場する。しかしこれが、この本が現在(2018年時点で)絶版となっている要因と考えている。つまり出版時は音楽著作権の管理が今ほど厳しくなかったからたくさんの歌詞を作中に引用しているけど、これが再版への足かせになってるんじゃないのかなあ。

  • 言葉のリズムが絶妙。
    大学時代に方言と民俗学の講義をとっていたせいなのかはわからないが、ぐいぐいきた。

    久々に、読んで声を出して笑った。

  • 再読本
    大好きな本
    あらすじだけ見てこの本を敬遠する人は少なからずいるのではないだろうか
    本が好きなひとこそ読んでほしい。最初の方で、ん?苦手な感じ…と思っても読み進めてほしい
    主人公のふたりよりも周りの人たちが魅力的すぎて、ずっと読んでいたい
    カオルのおばあちゃんが繰り出す本の知識に圧倒される
    昔の本は有名なものでもあまり読んでこなかったけど、この本を読むと途端に読んでみたくなる

  • 裏表紙に『・・・おかしくも切なく、卑猥にして気高きビルドゥングス・ラヴ・コメディ』とある。が、それだけじゃない。読んでみたくなるような本が、作中にちょいちょい出てくる。行きたくなる場所も。近所の摩耶山に摩耶夫人像があるらしい。知らんかった。ぜひ見に行きたい。でも見たら、松任・行善寺の摩耶夫人像も見たくなるんやろうなぁ。評価は3と4の間くらいかな。

  • 一見ラブコメ、でも実は新旧の作家や小説への深い愛と知識に溢れた作品。
    私自身この作品を通して興味を持った作家や小説は数知れず。太宰の「葉桜と魔笛」の切ない使い方に読む度に泣きそうになります。
    80歳になっても若者に文学問答をふっかけ恋に生きる橘のお祖母ちゃんは私の憧れ。

  • 本書は、私が久世氏を知るきっかけとなった一冊である。古代女性が好きな私は、タイトルからあの卑弥呼そのものを想像したのだが、内容はまるで違った。
    雑誌編集者のユウコは、全国各地で異なる女性のアソコの呼び名を調べ、大らかで明るい呼び名に統一する、という企画を立ち上げる。一方私生活では、恋人のカオルとアレができないという悩みを抱えていた。
    奇想天外な雑誌の企画と二人の恋の行方も気になるところだが、この作品を読む価値はカオルのお祖母ちゃんにある。このお祖母ちゃん、とにかく本に関しての知識が底なしなのだ。随所に挟まれるお祖母ちゃんのご講義は、本好きの読者にとってはまさしく永久保存版の読書指南書である。

  • 20歳のユウコと23歳のカオルはアレが出来ない恋人同士。脇役はカオルの父で女にだらしない志郎、中学の時出て行ったカオルの母和歌子、読書マニアで博覧強記のお祖母ちゃん80歳、お祖母ちゃんが恋するコネリーさん、ユウコの母で銀座のママをしている久美、ユウコの勤める雑誌編集部の先輩草加さん、カオルにとっての思い出の人未知子、ユウコの同僚で影のある大人の男可門さん。お祖母ちゃんがいるからこの本はとても沢山の小説が出てきます。ところでタイトルの「卑弥呼」は何かというとあるプロジェクトなのだがそれは読んでのお楽しみ。

  • 女の子は赤い風船である。ちゃんと糸の端を持っていてくれないと、指の間をスルリと脱けてどこかへ飛んで行ってしまう。でも、ほんとうは、飛んで行きたいのではなく、飛ばないように糸をしっかり持っていて欲しいのだ。

    この文章に感心しました。

    そうだといいなー。

  • 最高!!!
    この本は皆に薦めたい。
    でも何故か絶版…

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著者プロフィール

1935年東京生まれ。演出家、小説家、随筆家。おもな演出作品に『寺内貫太郎一家』『時間ですよ』、小説に『一九三四年冬─乱歩』、エッセイに『触れもせで─向田邦子との20年』など。2006年没。

「2021年 『「女」のはなし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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