- Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101457161
感想・レビュー・書評
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ようやく最終巻読了。
駒田は本当どうしようもないな。巣藤と游子は出会った当初のことを思えば意外なほど強く結ばれる。
油井は変わらず冬原親子に執着し続け、箍がはずれてしまう。繊細すぎるが故に暴走を止められない亜衣と、彼女を持て余す両親。ついに芹沢家は家族狩の標的候補に入ってしまうほどに崩壊寸前。
親を殺す子供がいる。子供を殺す親もいる。現実にもそんな事件は起きているし、家族があたたかいものだなんて言えないのかもしれない。
世界には貧しさや戦争などにより、もっと大きな問題が日々起きているのも事実。でも、だからと言って家庭という小さな世界で起きていることに無関心にはなれない。
白蟻が家を巣食うように、気づいた時にはそれは手遅れになっているかもしれないのだから。
でも犯人の目的や理論にも一理あるし、全く理解できないわけではないけれど、私は游子と同じ意見だなぁ。
最近読んだ遠藤周作さんの本から引用するけれど、
「自分がいつも正しい、正義漢だと思っている人というのも、知らず識らずに傲慢という罪を犯していると思います。なぜかというと、自分が正しいという気持ちは、かならず他人を裁こうとします。つまり、人を裁こうとする気持ちというのは、自分が裁く相手の心の悲しみとか寂しさということが、よくわかっていないことなのです」
「正しいことをやっていることで、すべてが許されたりしないのです。正しいことは絶対的なのではありません。愛は絶対である、という錯覚に捕らわれてはいけません。愛が絶対なのは神様だけであって、愛が人を傷つける場合もあるのです。社会正義がすべてではないのです。社会正義のために、たくさんの人が傷つく場合もあるのです」
フランシスコ・デ・ゴヤ『我が子を食らうサトゥルヌス』に加え、「儚い羊たちの祝宴」に登場したテオドール・ジェリコー『メデューズ号の筏』など絵画が効果的に紹介されるのもこの作品の妙な格調の高さにつながっている気がする。
天童さんという作家は「再生」「信仰」「愛」「家族」「救済」「死」など重めのテーマを扱うので、読むときはそれなりに気力が必要です。
長くなりましたが「家族」と聞いて、私が一片の曇りもなく「あたたかさ」や「きずな」「安らぎ」「信頼」など良いイメージを抱けるのは、両親が大切に築き上げてきてくれたこの「家族」のおかげなんだなぁと心の底から感謝しました。悲しいけど世の中には「家族」と聞いても暗いイメージしか持てない人もいるのだから。大切で大好きな家族がいることはけして当たり前のことではなくて、本当に恵まれたことなのだと思う。
お父さんお母さん、もう少し一緒に居させてね。私自身もう新しい家族を作り始めてもいい年頃だけど、あまりにもこの家族の居心地が良すぎるの。笑詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
“思い出し泣き”ができるくらい心に残る傑作。
そのわけは、文章がとても丁寧に、大切に書かれているから。
それが伝わってくるから。
こんなにも心に響いて、するりと中にまで入ってくる作品は初めてかもしれない。
「永遠の仔」では生きる意味を、
「悼む人」では死の受け止め方を、
そして「家族狩り」では・・・家族の愛し方を・・・
いつも天童作品を読了後に思うのは、受け入れてもらったという思いだ。
奇妙な言い回しだけど、“作品に自分を受け入れてもらった”感じになる。
人はそれぞれ。型にはめようとするのはつまらないことだな。
でも、それでもいいんだよと、どれだけ自分は寛容になれているのだろう。
何も知らないと、何も許す事ができなくて怒ってばかり。それは子供っぽい。
経験を積み、知る事で、慮り、許す事ができる様になる。自分はまだまだできない。 -
ちょっとだけおっかない作品ですが、
面白かったです -
重かった。読んでて辛い話過ぎた。
でもそんな話でこれだけ長い話なのに最後まで一気に読めたのは作者の文章のうまさだろうな。
各人物に感情移入できた。
タイトルはまだ遠い光とあるけど、最後に光が見えるだけでも救われた気分になる。 -
行動力があるあまり出世街道からは外された馬見原は
仕事では尊敬されることもあるが家族はばらばらだ。
厳しくしつけた長男は自殺して長女はグレてヤンママに。
妻は精神を患って入院し、母親も施設に入っている。
それでも家族の大切さを説き子どもを大切に思っており、
暴力団員の父親から虐待を受けていた男の子とその母親を守り
彼らと擬似家族のような関係になってしまう。
一方美術教師をしていた巣藤は教え子の亜衣から憎まれ
彼女に暴行容疑を着せられた。
さらにテレビで問題発言をして学校を辞職。
郊外に家を借りて絵を描くことにした。
児童心理に携わる氷崎はたびたびセミナーに来る女に手を焼いていた。
公共団体では出来ないような電話受付や相談会を開き
そのビラをセミナーに言っては配っていたのだ。
そして一家心中事件を中心に彼らは家族について考えていく。
装画:日置由美子 デザイン:新潮社装丁室
重い。簡単には解決できないことばかりです。
家族内で起きた問題というのはやっぱり隠したがる。
親は子どもを信じていると言って現実と向き合わない。
子どもは親がわかってくれないと嘆きさらに閉じこもるか
親や弱いものに向かって暴力を振るうようになる。
さらに親が子どもを虐待していたらどうなのか。
そこに愛情があるとは思えないが引き離されると怒る親もいる。
自分たちの家族さえちゃんとしていればよいと思っていても
別の家族のうっぷんがこちらに飛び火することだって考えられる。
解決方法は書かれていないけれど
とりあえずは事なかれ主義をやめて少しでも行動することだと。
自分の思いを話す場所があって聞いてくれる人がいれば
少しはいい世の中になるのではないか、という話です。
大きくまとめれば。 -
愛ってなに?
家族ってなに?
すごく全巻読みながら考えた
分かったのはうちが読んで、いいなと思う本は全部家族が根本にある話ってこと
家族の大切さと同時に難しさも知ることができた
みんな自分自分しているこの世界はすごく生きにくい
まずは自分を信じる
無償の愛はもらうものじゃなくて与えるもの -
5部作の最終巻。
ここまで読んできて、最後はすべてが解決し、「良かった、良かった」で終わるのが常套手段だろうけど、この思いテーマではおそらくそうならないだろうなと思いながら読み進めた。
案の定、読後にすっきり感はない。
おそらく「家族」の問題は、それぞれの家族が課題として持ち続けていくものなのだろう。
全5冊、まさに一気読みという感じで読んだ。
それほどまでに惹きつけられたのは、これが決して他人事ではなかったからなのだろう。
多かれ少なかれ、どんな家族であっても家族の問題は抱えているのだと思う。
それが表面化しているかしていないかの違いはあっても…
決して特別な家族にだけ起こる問題ではないと思う。
それと同時に、社会で考えていく問題なのではないだろうかと思う。
重いテーマではある。
でも、多くの人に読んでもらいたい作品だった。 -
初天童作品です。読んで「とても良かった」と思える作品です。全く読者を飽きさせません。1部から凄い勢いで5部まで読みきりました。作者の資料の下調べも熱心で素晴らしいと思いました。話が身近なものだけにとてもリアル。最初は重くて暗くて鬱になりそうだったけど、読んでいくうちに生きることや愛について、家族のあり方についてなど色々考えさせられました。是非色んな方に読んでもらいたいです。暗闇の中に光が見えてきた気がします。もう1度読み返したいと思える作品です。