俺の考え (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101461113

感想・レビュー・書評

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  • 1.著者; 本田氏は、ホンダの創業者です。オートバイから四輪車事業に参入し、世界のホンダを作り上げました。そして、F1グランプリなどの国際レース進出を通じて、エンジン技術を世界レベルに高めました。本田氏は、事業発展だけでなく、旺盛なチャレンジ精神・後継者育成・潔い引け際(若い世代に早くバトンタッチ)等、人間として、尊敬出来る経営者です。本田氏の遺言通り、氏の葬儀は行われず、謝恩の会が催されたそうです。会場はホンダ製品で埋め尽くされ、一隅に遺影と感謝の言葉=「有難うございました。お陰様で、私は本当に幸せでした」が掲げられたそうです。”会社の事より、先ず世の中の事を考えよう”という精神に、誰もが感動したのは想像に難くないと思います。
    2.本書; 本田氏が普段から口癖にしている考えの集大成です。20項目(歓迎したい悪口二つ~わが人生哲学)の構成です。城山三郎氏(故人)は、「数多くの学ぶべきこと、倣うべき事が、今もこの本の中から声を上げ続けている。何度聞いても新鮮で、大きくうなずきたくなる言葉の数々が、ここに潜んでいる」と絶賛しています。現在でも、数十回の増刷を重ねており、読者の心に響く一冊です。
    3.個別感想(琴線に触れた書中記述と私の感想⇒3点);
    (1)”人生は信用とカネの天秤棒”より、「カネより信用を先にすることは損なようだけれども、長い目で見れば絶対に得である、信用は何かといえば、一番大事なことは約束を守ること、信用というものは、正直さがあくまでも土台になっている」
    ●感想⇒私も、”人間関係の基礎は、信用と嘘をつかない正直さ”と思います。場当り的な言動をする人には、心を許す気になりません。正直者が割を食わない社会を作りたいものです。
    (2)”高賃金こそ国を富ます”より、「企業を大事にしなければいけないけれども、それ以上に大事なことは、そこに働きに来る人達は、それぞれ自分の生活をエンジョイするための一つの手段として来ているのだ、という意識に徹すること」
    ●感想⇒本書は、平成8年に出版されました。今でこそワークバランス、すなわち仕事と生活のバランスをとることが良いと言われています。本田氏は、私生活の重要性をすでに20数年前に言っています。私はといえば、家族(家庭)が最も大切だと考えます。なぜなら、家族の支えがあってこそ、仕事に打ち込めるからです。
    (3)”自由化時代の経営学”より、「私はもともと多くの人の犠牲の上に立った”英雄”というものを好まない。・・・一人一人の人間の特性が正しく評価され、活用されることが(大切)」
    ●感想⇒私もこの考えに賛成です。しかし、他人を評価するのは、非常に難しい事なので、一人の権力者(職制)だけのミスジャッジを回避できるシステムがあると良いですね。
    4.まとめ; 本田さんと聞くと、厳しい人だったというイメージです。しかし、裏方を常に大事にする思いやり人間だったようです。管理職に向けて、「部下の心に棲んでみよ」と言い、下積みや裏方の人達をとても大切にしていました。人間性のなせる技でしょうか。また、新入社員に向けて、「会社で、長が付く人が偉いという事はない(人間性重視)」と言いました。上司等の権力者への戒めでしょう。本書は、項目ごとに整理され読みやすく、私の座右書の一冊です。
    苦言を呈すれば、最近のホンダという会社を見ていると、他社に比べ、社会貢献出来ているか不明です。本田氏のDNAは引き継がれているのでしょうか。

  • 著者、本田宗一郎さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。

    ---引用開始

    本田 宗一郎(ほんだ そういちろう、(1906年(明治39年)11月17日 - 1991年(平成3年)8月5日)は、日本の実業家、技術者。輸送用機器メーカー本田技研工業(通称:ホンダ)の創業者。位階は正三位。

    ---引用終了


    で、本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    HONDAの創業者が、仕事と物作りのエッセンスを語る。
    爽やかなまでの、直言エッセイ。

    「私たちの会社が一番大事にしているのは技術ではない」日本の自動車エンジンを世界的技術にまで高めたHONDAの創業者、本田宗一郎が爽やかに率直に仕事のエッセンスを語ります。
    景気の善し悪しを超えて“本物"を生むためのヒントの数々〈技能よりアイデアを〉〈責任回避会議を開くな〉〈「甘い記憶」を叩き出せ〉〈試す人になれ〉等々、一読すれば元気百倍、天才技術者の肉声エッセイ集。

    ---引用終了

    名経営者と思われる方の生きた時代を見てみたくなり、3名の方を調べてみました。

    松下 幸之助(1894~1989)
    本田 宗一郎(1906~ 1991)
    鳥井 信治郎(1879~ 1962)

  • カブから出発して四輪に進出、藤沢秀夫とともに世界のホンダを創り上げた創業社長のエッセイ

    気になった言葉は以下です。

    ・考えというものは実にいろいろな複雑な行程を経なければ自分のものになっていかないはずなのである。われわれの知恵は見たり聞いたり試したりの3つの知恵で大体できている。ためしたという知恵、これが人を感動させ、しかも自分のほうとうの身になる。血となり肉となる知恵だと思う。

    ・いろいろな社会情勢を見ても、人間というものは大事にしなければならんという。真理はわれわれの周辺にはいくらもどこにも転がっているはずである。それをくみとったか、くみとらんかだけの問題であって、徳川家康を読まなければくみとれんという問題だないと思う。だから、まず、そのくみとる力をマスターすることの方が大事だ。

    ・われわれの商売だて、今うちがいいといったって、こんなことはひとつもいいことにならんと思う。まだ悪い時が来ることだってある。ただ、そういう時でもなるほどなというだれでも納得できる真理をつかんでいくことが一番の経営の根本である。

    ・自分をおさめるにはどういう要素があるかというと、まず大づかみにいって、われわれ産業界にいる者とか、普通に生きている人間から見れば、信用とカネの二つで成り立つと思えば間違いない。

    ・カネがなければ生活をエンジョイできないし、自分自身がおもしろくない。しかし、同時に信用がなければ、いくらカネがあったって、あの野郎はカネばかり持ったって、うそつきで、いうことはあてにならんし、やることもけちくさくて、ひとつも非音のためにならんといって爪はじきにされてしまう。

    ・だから、カネがほしければ、信用を先にとることの方がほんとうだと思う。それを近道してカネだけをとろうとするものだから、信用がガタ落ちとなり、信用が落ちればカネも落とされてしまうことになる。

    ・われわれ企業家にとって一番大事なものはあくまでも製品である。製品自体が信用のおける、みんなに納得してもらえる品物をつくることを重点的に考えなければならない。

    ・要するに、企業というものは、品物と営業のしかた、経営のしかたにおいて、納得できる線がいつも先に押し出されてこそ、はじめてカネが生まれてくるのだと思う。

    ・それでは、信用とは何かといえば、一番大事なことは約束を守ることである。

    ・信用というものは、ひとつできると、信用の上にまた信用がどんどん積み重なっていって、雪だるま式に大きくなるものである。だから、信用という階段を上がるだけで、カネはあとからついてくる。

    ・信用というものは、正直さがあくまで土台となっているといえる。それともう一つ大事なことは、信用には長い時間と忍耐が必要だということだ。どんなに正直にやっても、三日坊主ではだめだ。三日くらいでできるほど、甘いものではない。

    ・現在は技術革新の時代とか技術者優遇ということで、技術が最高のもののようにいわれているが、私たちの会社が一番大事にしているのは技術ではない。技術よりもまず第一に大事にしなければならないのは、人間の思想だと思う。金とか技術とかというものは、あくまでも人間に奉仕する一つの手段なのである。

    ・われわれは、あくまでも法律によって規制すべきではなく、徳義によっていろいろなものを解決すべき人間になりたい。

    ・研究所にとって一番大切なことはその目的をはっきりさせることである。基礎研究であるか、商品の研究であるかということがはっきりしなければいけない。

    ・売りやすい品物をつくってやることがコストダウンだということを第一の条件に工場なり研究所は考えなければならないということだ。

    ・売りやすくなれば、人間は考える動物だから、はじめのうちはトントンでも、しまいにはもうかるようになる。スーパー・カブ号なんか見てごらんなさい。はじめに損だったのが、今はうちのドル箱になっている。売りやすい品物だったらそういうことになるのだ。

    ・一般的にいって、どこの会社でも能率の悪い課長ほど人をほしがる。

    ・大体モノをつくってしまってから、いくら検査したって失敗のものはもとにかえらない。だから検査しなきゃならないような品物をつくっていること自体がすでに悪い品物だということだ。

    ・大衆は品物のどこがいいかわからない悪いかわからないけれども、いいか悪いかだけは見抜く力をもっていることである。

    ・使いやすいデザインであると同時に、量産品である以上、つくりやすいということも条件である。

    ・どだい、個人プレイというのは、ほとんど排他的である。正宗も左甚五郎も排他的だ。その一人一代で終わってしまう。なかなか受け継がせることができない。おれがおれがということになる。

    ・プロテスタント・カトリックの争いとか、日本では東本願寺と西本願寺と同じ派でありながら争っている。私はその内容をよくは知らないけれども、とにかく人の道を説く宗教人が一番みにくい争いをしているところに、私は宗教の価値がどこにあるかということを疑うのだ。

    ・経営者も従業員もお互い協力しあって企業を大事にして、自分が幸福になりたいための企業であるということにめざめるべきだと思う。企業に徹するために自分が犠牲になるという考え方ではなくて、自分が幸福になるために企業をお互いに大事にしあう。そして能率を上げるということだ。

    ・人間は神様ではないから、すべてをお見通しのような器用なことは到底できない。あっちへぶつかり、こっちへぶつかり、人に叩かれたり、柱へ頭をぶつけたりしながら、手探り、足探りで前へ進んでゆかねばならない。

    ・真の輸入防止、輸出増進を図るなら、こっちの技術をまず上げることだ、向こうのものより品物をよくすることだ。

    ・私はどんな場合でも理屈なしにはやらない。私のやったことには必ず理屈がついている。だから、人から見れば危うい、自分ももちろん危い。しかし、ほかのものを選ぶよりそれが一番いいんだという、自分の理屈にはあったことを選んでいるのである。

    ・人間には、智、仁、勇を備えることをもって最高の人格と考えらえるが、経営者たるものは知恵、知識だけではだめ、仁と勇の浪花節だけでもダメ、三者が混然一体になってはじめて一級の経営者といえるのである。

    ・よいアイデアがなければ、いかに金貨の袋を抱いていても、時代のバスに乗り遅れるのは必定である。資本がないから事業が思わしくないとの声をよく聞くが、それは、資本がないからでなくアイデアがないからである。よいアイデアに国境はない。よい製品に国境はない

    ・経営の主体は、人間であって、金や組織はそれに奉仕すべきものである。金をふんだんに持っている大企業は万能であるという考え方は、一世紀前のマルクス主義と同じ考え方で、もしそれが真理ならば、今日のソニーや私の会社はありえなかったであろう。


    目次は次の通りです。

    まえがき

    歓迎したい悪口二つ
    人生は信用とカネの天びん棒
    ウサギと企業とお稲荷さん
    時間を無視した国づくり
    人づくりは「ジョーク」から
    「思想」を忘れた最低企業
    研究所は博士製造所ではない
    市場調査はあてにならない
    安ければ売れるか?
    「パーキンソンの法則」をこう考える
    デザインと芸術はどこが違うか
    技能オリンピックにもの申す
    警戒すべき投資レース
    新しい商売の基準・商業地図
    宗教は企業を汚す
    高賃金こそ国を富ます
    逆境を巻返す決断
    仕事を前進させるムードをつくれ
    自由化時代の経営学
    わが人生哲学

    解説に代えて 城山三郎

  • 技術者の鑑ともいえる本田氏だが、会社で一番大事にしているのは技術ではなく、人間の思想であり、金とか技術とかいうものは、あくまでも人間に奉仕する一つの手段である、と語っている。何より人が大事であり、いいものはいい、ダメなものはダメと自分の思っていることを飾らずズバッと発言している。読んでいてスッキリもする。
    296冊目読了。

  • 自己中心的で独創的、子供のような透明な心をいつまでも失わずにいた方と理解しました。一方、自分が実現したい事が大きくなれば大きくなるほど、組織も大きくなって自分の描いたように進まず、ジレンマを抱えて悩んでいたように感じました。

  • 古くならない、本質をついた言葉の数々

    経営者は概してパワフルで、本になるように言葉を残している人はそもそもがそういう、道理を説くのが好きな人である。ゆえに内容の好き、嫌いはあるかもしれない。
    誰しもヒントを得られる本。

  • ずいぶん古い本ですが、今読み返しても今の社会に通じる内容で、改めて本田氏の人としてのスゴさを感じます。社員が企業のために犠牲になるのではなく、生活をエンジョイするために働いて欲しいというのは、素晴らしい考え方。軽快な語り口で一気に読めました。

  • 1963年の本だけど、真理を大事にしてるだけあってほとんど古さを感じさせない内容だった。
    それこそ「信用があればいくらでもお金はついてくる」「お客さんをセールスマンにする」みたいな発想は2010年代に新時代の価値観として提唱してる人がいるレベルのものだ。
    やっぱり成功するべくしてしたんだなぁと成功した経営者の本を読むたび思う。

    戦後から自分が生まれる前って全部一緒に感じるけど、こうして本や映画を見るとだんだん解像度が上がっていくのが面白い。
    海賊と呼ばれた男の20年後であり、映画「あいつと私」の頃であり、所得倍増計画が打ち出された頃であり、田中角栄内閣の10年前であり、二十世紀少年の10年前であり、この年に生まれた人は今の60代。
    こうした時代の移り変わりを追体験しつつ、価値観の移り変わりを見ていくのが次の価値観変動に備えるために役に立ちそうだ。

  • 名言のオンパレード。
    僕は本田宗一郎さんの考え方がとても好きだ。
    60年近く前に書かれた本だが、現在と大きなズレは個人的には感じなかった。
    少し攻撃的なように思える言葉でも、どこか優しさと人情を感じる。
    特に、現代の偉人は大衆の偉人であるべきという考え方から、戦国武将などの人の命の上に立った偉人の事を全く尊敬していないというのが実に本田宗一郎らしい。
    松下幸之助さんなんかは、よく戦国武将の話をするから対照的だと思った。
    モノと人にとことん向き合ってきた、本田さんの言葉は真剣に仕事に取り組もうとしている人にはグサグサと刺さるだろう。

    心に残ったところ。
    ・成功する人は金より先に信用を押し出す。信用とは約束を守る事。嘘をつかない事。

    ・需要があるから作るのはメーカーじゃない。メーカーが需要を作り出すのだ。

    ・デザインとは流行。芸術とはいつ、誰が見てもうなづけるもの。

    ・若い人はいいものだ。過去を持たないからいつも前向きの姿勢でいる。

  • 小学校卒業の部落の赤貧の少年だった本田宗一郎さん
    とても合理的でダメなものはダメ、奥様と専務にはあたまのあがらない、それでいて人思いの方だった

    「われわれらあくまでも法律によって規制すべきでなく、徳義によっていろいろなものを解決出来る人間になりたい」
    「働くという字が、動くという字と違うところは、その左側に人べんが付くとつかないの違いであるのは、人間である以上頭を使って動け、そうすれば前進的な仕事が出来るのだということを示している
    すなわちにんべんをとった人間の能力は20分の1馬力に過ぎないが、人べんがつけばその能力は無限大の可能性をもってひろがるにちがいないのである」

    「夢はその背後に世界的視野にたった理論が裏付けになっていなければならない。どこの国に行っても通用する理論、それが若い人の夢を生む。さらにその夢が、世界市場どこに出してもひけわとらない製品をうんでゆく。
    …社是の第一条はこうだ。
    "常に夢と若さを保つこと"

    ドライブ ユア ドリームス
    この広告センテンスを読み直したり、広告デザインを学んだりしたが、こんなに社長の熱と夢がそのまま伝えられているのが改めてわかった

    「果報は練って待て」
    謝るふりしてただ進退伺いをするだけでなく、反省して待とう

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著者プロフィール

本田技研工業創業者

「2016年 『会社のために働くな』 で使われていた紹介文から引用しています。」

本田宗一郎の作品

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