うそうそ しゃばけシリーズ 5

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101461250

感想・レビュー・書評

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  • しゃばけシリーズ。若旦那が湯治に。いつもの兄や二人とも離れる中、トラブルに巻き込まれて。

    体が弱くちょっと出歩くだけでも寝込む若旦那が、今回は寝込む間も無く、騒動に巻き込まれていく。普段の緩やかだけど、ちょっと感慨深い感じとも違い、終始話が展開していく感じで、アクションもありと長編っぽい仕上がりになっている。

    それぞれ登場人物が過去と向き合ったり、抱えている問題に向き合う中、若旦那が自身について考えるシーンも多く、自分と向き合うということを問われているような気にもなった。

    実は深刻でも気楽な雰囲気を醸し出すシリーズの中で、シリアス目が多い話だが、若旦那の心情が伝わるところが特色かと思う。

  • 畠中恵「しゃばけシリーズ」5作目(2006年5月単行本、2008年12月文庫本)。
    シリーズ久々の長編、一太郎が湯治目的で箱根に行く話だ。同行するのは、仁吉に佐助、そして松之助の総勢4人に3匹の鳴家が加わった旅で、いつもの江戸の町ではなく箱根が舞台の物語に、今の箱根の地図を重ね合わせながら、どういう展開が待ち受けているのか胸を弾ませた。

    近所に出かけるだけで寝込んでしまう一太郎が箱根なんかに旅して大丈夫なのかという思いの方が強かったかもしれない。それでも仁吉と佐助が一緒で松之助まで一緒なら何とかなるかと思っていたら、船の中で仁吉も佐助も行方不明になり松之助と二人旅になってしまうではないか。これはいくらなんでも無謀だ、引き返すかと思ったらそのまま行ってしまう。きっと事情があって箱根でまた合流出来ると信じているのだが、仮に引き返すと一太郎をおいて二人が行方不明になったことを藤兵衛やおたえがどう思うかを一太郎が心配してのことでもあった。
    どんな事情があっても何も言わずに消えるのは駄目だろうと、読了した後も声を出してダメ出ししている自分に笑ってしまうのだが…。
    話の展開は最初ちょっと複雑だが、江戸で頻繁に地震が起きていることが物語の発端になっている。そして一太郎が夢とも幻想ともわからない奇々怪界な出来事に遭遇していた。それはこれから起こる箱根での出来事を暗示していた。

    小田原まで向かう長崎屋の所蔵する船の常盤丸から仁吉と佐助が消えた。一太郎と松之助は小田原から湯治先の塔之沢の宿「一の湯」まで評判の悪い雲助の山駕籠で行くことにしたのだが、ゆくゆくこの雲助の頭領「新龍」が大きく関わって来る。一の湯では湯に浸かる間も無く何者かに攫われ、一太郎と松之助は箱根の夜の山道を山駕籠に乗せられて進んでいた。攫ったのは二人の武士、柴垣勝之進と太田孫右衛門で小さな藩の藩士だった。目的は藤兵衛の持っている珍しい朝顔を奪う為の人質らしい。しかしその朝顔は既に枯れていて、種もつけていなかった。そして偶然にも山駕籠の雲助は一太郎達を乗せて来た新龍達の同じ雲助5人だった。
    道々新龍は一太郎に箱根に伝わる色んな話をしてくる。芦ノ湖の九頭龍明神の話、地下水脈の水門を縛っている朝顔の蔓の話、烏天狗の話、龍神への生け贄の話、その生け贄に村の幼い娘が捧げられたこと、その娘は山の神の娘だったという噂、怒った山の神は娘を救うと同時に神山を大噴火させ芦ノ湖の半分を埋め、村も消滅した。娘は父神の元へ行き姫神となったとのことだ。

    その姫神はお比女といい、烏天狗が守っている。実は今回の一連の騒動はお比女に起因していた。どうゆう訳かお比女が一太郎を嫌っているらしく、そのことで山神も烏天狗も右往左往していた。佃島で小田原へ向かう船に乗り換える時に仁吉と佐助の元へ山神の遣いの烏天狗と皮衣の使いの狐白孔がやって来て、お比女が一太郎を嫌っている訳を聞きに来たのだ。
    剣呑な雰囲気を察した仁吉は船には乗らず、お比女に会いに先に箱根に向かうことにした。後を佐助に任したつもりになっているが何も告げていない。全くコミュニケーションがなっていない。佐助は佐助で遣いの烏天狗を一太郎達から引き離すために烏天狗を引っ張って箱根に向かってしまったのだ。一太郎に会わすと攫われてしまいかねなかったからだ。こちらも仁吉に一太郎は任せたつもりでいる。二人のコミュニケーションは全くどうなっているのだろう。
    そういう訳で一太郎と松之助だけの箱根への旅に次から次へと危険が迫ってくるのである。

    最初の危機は侍二人に攫われたこと、次にまもなく烏天狗の一団に襲われたこと、烏天狗は佐助が現れ一団を引き付けているうちに何とか逃げのびることができたが、松之助は大怪我をする。駕籠には怪我をした松之助と孫右衛門が乗り、一太郎は自らの意思で歩くのだが、目的地の箱根宿までは16㎞の道程だ。一太郎には無茶なことで途中崖下に落ちてしまう。そこに仁吉が現れ救うのだが、箱根宿の村人と思われる一団が一太郎を探していた。何かおかしい、危険な雰囲気だ。一向は箱根宿には入らず、芦ノ湖近くの東光庵薬師堂に身を寄せる。そこで仁吉は一太郎にお比女に会わすと一太郎はお比女と話し一連の出来事を全て解明するのである。
    地震も、烏天狗が一太郎を襲ったのも、 村人達が一太郎を殺そうとしていたのも、全てお比女の精神状態の影響が起因していた。一太郎はお比女に自信を持たせるために注力しようとする。最終的には侍達が水門を縛っている朝顔の蔦を切って大洪水をもたらすのをお比女自らの神としての力で食い止めることで自信を持つことができ、全ての怪奇現象は収まるのである。

    やっと解決して一太郎達は一の湯に戻ってゆっくり湯に浸かるのだった。

  • 「しゃばけ」シリーズ第5弾は初の長編。
    まめに死にかけている若だんながなんと!湯治に出かける。
    出かける前から不穏な空気が漂っているけど
    出かけた途端、頼みの綱の手代2人がいなくなり……
    いろんな人や妖が登場し、いろんなことが起こる。
    そのいろんなことが徐々に繋がっていき、無事に
    解決されて、所々でまたまた寝込んだりしている若だんなもようやく湯治ができそうなところで終わります。
    新しく登場したお侍の勝之進と孫右衛門、雲助の新龍、山神の娘のお比女ちゃんたちもそれぞれに訳ありで、
    個性豊かで魅力的でした。
    今月、第19巻が発売されたようで
    まだまだ先は長いです。

    ………私もどれだけ不味いのかという薬は要らないけど、イケメンで頼りがいのある仁吉に世話されてみたい(笑)

  • しゃばけシリーズ第5弾
    今回は短編集ではなく長編で描かれています。

    病弱な若だんなに母が提案した「湯治に行ったら」と言う言葉。

    若だんな、生まれて初めて旅に出る!
    行き先は箱根!

    2人の手代を従えて、と3匹の鳴家を袖に入れ、いざ出発!
    したものの、次々と巻き込まれる災難にへとへと。
    手代たちもどこかへ消えてしまう。

    旅の行方はどうなる。 無事に帰れるのか。
    それより何より、無事に温泉に辿り着けるのか。

    「相手のあることは、何事も注文通りにはいかないから」

  • 若だんなが初めての旅にでる。
    私も大好きな箱根、箱根に湯治。
    一冊丸っと1つのストーリー、
    江戸時代の箱根ってどんなだったんだろう。
    一気に読みました。

  • 一 江戸通町
    二 塔ノ沢
    三 芦ノ湖
    四 東光庵薬師堂
    五 箱根神社
    六 地獄谷

    今回は長編。
    あの若だんなが旅に出る!?さて、どうなるか?
    今回もかわいい妖達が大活躍!

  • 第二弾以降の短編集とは違って1冊で1つのお話になっていました。なのでそれなりに面白く星4つ。妖の生き生きとしたところや可愛らしいところがうまく引き出された旅編になっていたと思います。

  • 「しゃばけ・若だんな」シリーズの第5弾。安定の面白さに加え、初の長編ということでじっくり楽しめる。純粋に歴史小説的なものとしても面白いのだが、人間の恐ろしさ・暗い部分も描かれていて心を動かされる。主人公である若だんなの中立的・冷静な視点が妙に馴染みやすく、自分の目を通して体験しているかのような読み心地。

  • 若旦那一太郎が家から出て箱根に湯治に行く話。 ただ湯治をする前に雲助だの侍だのに捕まってしまう。ただよくよく確認するとそれぞれに事情がある様で、わかだんな一太郎はなんとか、解決してやりたいと活躍。山の主だとか天狗とか出て来てまた箱根の山は大騒ぎ。ただ若旦那の何か世のやめ人のために自分は何をしているのだようかと思い悩み、成長して行く。久々のいい話だった。

  • 安定して面白いシリーズ。今回も面白かったー!

    解説で西條奈加が色々書いてあったのも面白かった!この人の本、雰囲気とっても似てる気がするから、仲良いのかなー?とか思ったり。毎回解説読んで思うんだけど、なーるほどそんな見方もあるんだなーと、結構解説もしっかり読み込んでます。笑笑

    解説の書き方面白いと。その人の本も読みたくなったりするんだよなぁ。ただ、やたら解説中の解説。みたいな人も結構な数いて、いやいや単純に面白いか面白くないかでいいでしょーよ。と、思わなくもないけど、解説しなきゃならんからこんな小難しいこと言ってんのかなーとかも思う。

    結構、思っても見なかったひとが解説書いたりしてると、え!このひとってこんなの読むんだ!いや、頼まれたのかもだけど?っていう楽しみ方とか、書き方で、なんか仲よさそうだなーとかもある。笑笑

    本読んだあとの付録のような解説。私結構大好きです。

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著者プロフィール

高知県生まれ。名古屋造形芸術短期大学卒。2001年『しゃばけ』で第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し、小説家デビュー。「しゃばけ」シリーズは、新しい妖怪時代小説として読者の支持を受け、一大人気シリーズに。16年、同シリーズで第1回吉川英治文庫賞を受賞。他に『つくもがみ笑います』『かわたれどき』『てんげんつう』『わが殿』などがある。

「2023年 『あしたの華姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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