- Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101461267
感想・レビュー・書評
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その病弱振りで江戸でも有名な大店『廻船問屋兼薬種問屋・長崎屋』の若だんな・一太郎。
今日は日本橋を焼き尽くす大火の煙に巻かれ、とうとう三途の川縁までやってきてしまった
懐には、どさくさに紛れてついてきてしまった家鳴りが数匹。
自分はまあ、ともかく。家鳴りが死ぬってのは有り得ない。どうにかこの子らだけでも現世に帰してやれないものか……。
考えつつ賽の河原で子供たちに混じって石を積む若だんな。
そのうち腹がすいて、袂に仕舞い込んであったお菓子を齧る。
まてよ? 腹がすくということは、まだ死んでない?
賽の河原に歩いて来る者があるということは、逆戻りできる道があるということ?
お江戸の町を舞台に大活躍する、「しゃばけ」シリーズ第6弾。
若だんなの三途の川縁冒険譚『鬼と子鬼』に、広徳寺で妖退治の法力をもつという僧の弟子となった若き修行僧秋英の災難『ちんぷんかん』、若き日のおっかさんの恋物語『男ぶり』、兄・松之助の縁談が持ち上がるなか、長崎屋の離れに迷い込み、若だんなを殺しかけた式神をあやつる謎の陰陽師『今昔』、新たに建てられた長崎屋の庭に植えられた桜の古木の精が送った愛らしい赤子“小紅”との短い春を描く『はるがいくよ』の全5編。
時は流れ、少しずつ周りが変化していく。
季節がめぐり、桜が咲き、そして散るように、人は生まれ、育ち、老い、死んでいく。
永遠のような長い命を持つ妖怪や神にとって、人間は桜のように儚い存在。
一太郎も、いつかは彼を取り巻き、慕ってくれる妖怪たちと別れる日がくるんですね。今巻の『はるがいくよ』はそんな予感に満ちていて、本当に切ない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「妖」たちが生き生きとしててかわいい!!
もう6作目なので、登場人物が安心して付き合えて、一気に読み込んじゃう。
短編集なのもいい。
解説の、『「妖怪」ではなく、「妖(あやかし)」』である本作の意味が本当によくわかるなあ。
かわいいお話でした。 -
いい意味でマンネリ化
安定感はあるのでよいのだけれども、もうひとつヒネリが欲しいところ -
畠中さんの作品はしゃばけシリーズしか読んでいませんが、毎度毎度思うのは「この方は本当に妖が好きなのだなぁ」という事。
だから、文字を読んでいるだけなのに妖たちが生き生きとしていて、やり取りが目の前にあるようで、しんみりしたりくすっとしたり。
本作は「別れ・出発」が主だったテーマのようですが「はるがいくよ」を最後に持ってくる小憎たらしさ。
読み終わった後、少し静寂が欲しいような。一時、間が欲しい。
人間の人生など高々80年ばかし。何と短く儚いものでしょう。 -
「はるがいくよ」の話は本当に泣いてしまった。すごく恋がしたくなった。一太郎と一緒に泣いた。
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しゃばけシリーズ6作目。
少しマンネリ化してきたかなぁ…と言うのが正直な印象。。
若旦那は相変わらず病弱で三途の川を渡りかけたり、かけなかったり。
だけど、変わらない様で少しずつ若旦那の心にも変化がちゃんとある。
周りの人が離れて行ったり、変化を目の当たりにしていると
自分だけが止まっていて変わらないんではないかと不安になったり、淋しくなったりしてしまうんだよね。
若旦那、応援しているよ〜! -
ほっこりするのにどこか切ない。「はるがいくよ」まさに人生の無常。
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冥土での鳴家がかわいい!
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若だんなと仁吉と佐助に会いたくて久しぶりに読みましたが、今作は
「はるがいくよ」がとてもよかったです。
いまの季節にぴったりな桜の妖が出てきます。
桜が咲いているあいだに赤ん坊から麗しい大人の女性となり、美しいまま散るように去っていく。
桜の儚さをこんなふうに表現できるなんて。素敵すぎる。 -
しゃばけシリーズ第6弾「ちんぷんかん」長崎屋が大火事に巻き込まれ、若だんなは気がつけば三途の川へ!?今回は兄、松之助の縁談騒ぎ、寛朝の弟子の算術対決、母おたえの恋、そして春に訪れた悲しい出逢いなどの5編。鳴家、お獅子などが賑やかに動き回り楽しませてくれます。最後の「はるがいくよ」が胸にじーんとくるいい話です。