ひなこまち しゃばけシリーズ 11 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101461311

作品紹介・あらすじ

長崎屋へ舞い込んだ謎の木札。『お願いです、助けて下さい』と書かれているが、誰が書いたか分からない。以来、若だんなの元には不思議な困りごとが次々と持ち込まれる。船箪笥に翻弄される商人、斬り殺されかけた噺家、売り物を盗まれた古着屋に、惚れ薬を所望する恋わずらいのお侍。さらに江戸一番の美女選びまで!? 一太郎は、みんなを助けることができるのか? シリーズ第11弾。

感想・レビュー・書評

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  • 雛小町(今のミスコン?)と『お願いです、助けて下さい』と書かれた木札を軸に5話の短編で構成されていました。
    河童の秘薬、漠等今回もハチャメチャな展開で面白かったです。
    コロナ禍で自粛が続く中なので、皆で花見酒が余計楽しそうでした。
    妖達はコロナにかからないから、密でも大丈夫だしマスク飲食しなくても良いから羨ましい(-∀-)

  • ろくでなしの舟箪笥…開かなくなった祖父の形見分けでもらった舟箪笥。しかし預かった矢先に怪異が頻発するらしく、若旦那に助けを求めてくる話。舟箪笥はからくり箪笥のこと。タイトルがポイント。

    ばくのふだ…寄席を見に行く若旦那。なんと不義を働いた武士の話を噺家が話している途中で、武士が抜刀、乱心。寄席どころでなくなる。
    その夜長崎屋に現れたのはその噺家。正体は獏だった。武士に斬りかけられた原因となった噺は何か。若旦那が推理する。微微ホラー。

    ひなこまち…江戸の町で雛人形の手本とする小町を選ぶ番付が出るという。そんな中で古着屋の着物が盗まれる事件が頻発していて、若旦那のところにいる屏風のぞきが巻き込まれる。

    さくらがり…ひなこまちの続編。怪しげな武士が若旦那がもらった河童の秘薬を欲しがる。尼になると言い出した妻に惚れ薬を飲ませたいという。
    ところがその薬はいつの間にか姿を消し、なぜか振り袖が仁吉に惚れる珍エピソード。

    河童の秘薬…ひなこまちの続編。番付からの続き。河童の秘薬を飲んだ怪しげな武士の妻におこる夢の話。ラストはハッピーエンド。

  • 畠中恵「しゃばけシリーズ」11作目(2012年6月単行本、2014年12月文庫本)。短編5話の短編集だが、最後の1話のために4話があるのだとわかる。5話は繋がっている。
    次々と一太郎の元に持ち込まれる困りごと、願いごとを解決し助ける話なのだが、もう一つ興味深いことが描かれている。9作目「ゆんでめて」でリセットされた未来がやはり少しずつ変化しているようだ。[一太郎初めての花見は飛鳥山ではなく、上野の広徳寺になり、関東河童の大親分の禰々子に対する佐助の恋心の兆しは全くなく、地震が起こるほどの大喧嘩に]と変わっているようだ。

    物語は『お願いです、助けて下さい』という木札が一太郎の元へ荷物に紛れ込んで届いたところから始まる。しかも5月10日までに救えないと間に合わないとあと数ヶ月の期限が書いてあった。

    1話目<ろくでなしの船箪笥>
    七之助の祖父の形見の船箪笥がからくり箪笥になっていて、引き出しが開かない。中に高直な物が入っていると思い込んだ親戚筋からの嫌がらせが入るがその箪笥に奇々怪界なことが起こり、七之助は一太郎に助けを求める。一太郎はからくりの謎も解き、奇々怪界な正体も解く。箪笥に入っていたのは土地の沽券で七之助は江戸の中心の土地を手に入れる。そして奇々怪界の正体は河童で結果的に一太郎は河童を助けることになる。

    2話目<ばくのふだ>
    悪夢を食べるという妖の貘が夢から逃げ出したため、お江戸では変な悪夢に満ち溢れていた。寛朝のお札で貘を捕らえてみると噺家の本島亭馬久だった。馬久は人々の悪夢の話をネタにして寄席で人気を集めていた。ネタにした話がある武家が妻を殺した話であったため、馬久は武家に命を狙われることになる。馬久は一太郎に助けを求め、一太郎は妖達に情報を集めさせて、その武家の正体を突きとめる。

    3話目<ひなこまち>
    人形問屋「平賀屋」が内裏雛の人形のモデルに雛小町選びを企画、その人形はある大名に献上されるとい言う。その大名は子がいなかった。町の娘の親達は雛小町に選ばれた娘は大名の側室に迎えられ、上手く男の子を生むことができれば跡継ぎの生母になれるという噂に踊らされていた。そして娘を着飾ろうとして、古着屋が繁盛していた。その古着屋の中に悪どい詐欺を企てる者がいて、一太郎がその企みを解き明かし、見事詐欺集団を一網打尽にする物語。
    藤兵衛が雛小町選びの東の番付けの選者に指名されたり、屏風のぞきが堀川に落ちて万事休すと思ったら、土手で乾かすと元気になったりと見どころ満載。

    4話目<さくらがり>
    一太郎は初めての花見の宴を妖達を連れて上野の広徳寺に泊まりまで了解を得て出掛ける。桜の時期は広徳寺には大名や旗本が大勢参詣する。ここで一太郎はこの物語に大きく影響する安居という武家と関わることになる。
    安居は雪柳という妻がいたが、子はいなかった。その妻が尼になって出家すると言ってるらしい。安居は妻の心を繋ぎ止めるために一太郎と関わり色々騒動を巻き起こす。
    広徳寺の一太郎を関東の河童の大親分、禰々子が訪ねてくる。1話目の<ろくでなしの船箪笥>で助けた河童のことで西の河童の親分が一太郎に礼をしたいと禰々子に河童の秘薬を託した。
    託したのは5種類の秘薬で ①惚れ薬(黒)、②三日眠らずにいられる薬(白)、③大怪我も一瞬に治る薬(赤)但し怪我の痛さは5倍になる、④どんな相手とでも話せる薬(青)、⑤幸せになる薬(黄)但しどんな薬効があるか分からず、人生を賭けなくてはならない。
    この黄色の『幸せになる薬』が次の5話目<河童の秘薬>でこの物語の謎を解くキーワードになる。
    そして黒色の惚れ薬、赤色の大怪我も一瞬に治る薬はこの4話目で使用されてその馬鹿さ加減に腹を抱えることになるのではあるが…。
    もう一人一太郎を訪ねて来たのは「平賀屋」の知り合いだと言う銘茶問屋の「文月屋」で、一太郎に雛小町選びの西の番付け選者になってほしいという。一太郎も雛小町選びの渦に巻き込まれようとしていた。この物語の謎を解くもう一つのキーワードは『雛小町選び』のようだ。
    花見の場所を決める時に鳴家がどう言うわけか飛鳥山という場所を口にしていた…。「ゆんでめて」でリセットされた未来が変わったよと言う暗示かな。

    5話目<河童の秘薬>
    安居の妻の雪柳が「長崎屋」の離れに一太郎を訪ねて来る。幼な子も一緒にいた。雪柳は安居が一太郎から貰った『幸せになる薬』を飲んだが何の変化もないので何故かと問いに来たのだ。
    幼な子は長崎屋の木戸のところに居た子で、ついて入って来た知らない子だと言う。幼な子のことを町役人に届けに行くことにして一太郎と仁吉、佐助そして雪柳も一緒に幼な子を連れて歩いていると、何かいつもと違う不思議なことばかり起こるのである。
    そうするとばったり本島亭馬久に出くわし、ここは誰かの夢の中だと言う。その人が目を覚まさない限り脱出出来ないらしい。
    どうやら河童の薬を飲んだ雪柳の夢の中だと言うことだ。『幸せにになる薬』がたぶん誰かを試していると考えられた。そして幼な子が誘拐され、『 雛小町選びを止めろ』と言うメッセージの文が届く。
    幼な子の所在を探り追っていく内に芝居小屋へと導かれ、芝居小屋の屋根の上に2匹の河童と一緒の幼な子を見つける。そして急に起こった地震で幼な子が落ちて来る。それをわが身を呈して助けに飛び込んだ雪柳と一太郎。一緒に落ちて来た木片に『お願いです、助けて下さい』と書いてあった。
    気がつくと一太郎はいつもの長崎屋の離れで目を覚ました。
    そして一太郎は今回の皆んなが同時に同じ夢の中に入ったあまりにも不思議な夢について語ったことで全ての謎が解けるのだ。

    ポイント①
    「広徳寺に現れた安居は雛人形を献上する大名。そして雪柳はその奥方。二人に子供はいたが病死している。次の子がなかなか出来ず、大名に側室を迎える噂があったために、雪柳は出家して尼になろうとしていた。」

    ポイント②
    そしてこの不思議な話の結末は次のようになる。
    「雪柳は安居から貰った河童の秘薬の『幸せになる薬』を飲む。どんな効力か分からず、人生を賭ける薬だ。この薬が雪柳と一太郎を試したのだ。二人の他仁吉も佐助も屏風のぞきも禰々子他あらゆる関係者を巻き込んだ、まるでパラレルワールドのような世界に入り込んだのだ。誘拐された幼な子は安居と雪柳の子を暗示している。雪柳と一太郎が正に人生を賭けて幼な子を救おうとしたことでその薬の効力が発揮されたことになる。
    そして二人に新たな子が出来るという結末だ。」

    ポイント③
    『雛小町選び』の背景だ。
    裏を返せば、大名(安居)の側室選びだ。雪柳を一番苦しめることになる。雛小町選びの日は5月10日だ。木札に書かれた『お願いです、助けて下さい』には5月10日の期限も書かれていた。これも河童の秘薬がもたらした一太郎への導きだろう。即ち『雛小町選び』までに人生を賭けて助けろということだったのだ。

    ポイント④
    5話目<河童の秘薬>の最終話に辿り着くまでに1〜4話が用意され、繋がるキーワードが散りばめられている。
    1話目<ろくでなしの船箪笥>は『河童を助ける』
    2話目<ばくのふだ>は『人の夢の中に入ることが出来る本島亭馬久を助ける』
    3話目<ひなこまち>は『雛小町選び』『大名の側室選び』
    4話目<さくらがり>は『河童の秘薬』『安居と雪柳』
    5話目<河童の秘薬>は上記のキーワード全てが入っている。

    少し難解な結末までのストーリーだったが、巧みに読者を推理させ、最後まで断定する答えを示さずに読者を導く物語だったが、面白かった。
    「ゆんでめて」の後の世界でまだ書かれていないのが松之助のことだ。子が出来たことになっていたが、これもリセットされたんだったらどうなったのか気になる…。

  • 自分の夢が落語で話されてたら怖い

  • 文庫発売日に買いに行って速攻読み終えておいてあれですが、そろそろ読者も作者も惰性になってきたような(苦笑)

    今回は、若だんなの元へ偶然届いた「助けてください」という木札と「雛小町選び」をきっかけに起こる騒動の連作。最近のシリーズの中ではドタバタ感が強くシリアス要素ひかえめだった印象なので、それなりに楽しくは読めましたが、謎解き要素としては相変わらず軽い。伏線がわかりやすいので若だんなより先に真相わかっちゃうので、推理をする若だんなが賢いというよりは、仁吉さんと佐助さんがバカに見えてしまう。

    ちょっと読書量が多いだけの素人がえらそうなことを言いますが、この作者は文章自体はあまり上手くも巧くもないと思っているので、キャラクターの魅力だけで牽引してきたこのシリーズで、せっかく個性的なキャラクターが揃っているのに、彼らが自由に動くというよりは、筋書きに合わせたセリフを都合よく言わされてるだけ感が強いのは非常に勿体ないと思います。

    とか言いつつ、結局この先もずっと読んじゃうんだろうけど(笑)

    「ろくでなしの船箪笥」「ばくのふだ」「ひなこまち」「さくらがり」「河童の秘薬」

  • 禰々子ねえさんの再登場が嬉しい
    力も意志も強いねえさんがいると、仁吉と佐助が本来の妖のヤバさが出ているのが面白かった

  • ある時、ふと現れた『お願いです、助けて下さい』という木札。そこから始まる。

    ・ろくでなしの船箪笥
    若だんなの友・七之助が亡くなった祖父から形見としてもらった船箪笥…何故か抽斗が開かない!

    ・ばくのふだ
    悪夢を食べる漠の物語り。漠が噺家に?

    ・ひなこまち
    美しい娘を1人雛小町に選ぶというイベントが事件を引き起こす!

    ・さくらがり
    若だんな花見に行く。もちろん妖たちも一緒…何も起こらないはずがない(笑)

    ・河童の秘薬
    河童からもらった秘薬。
    さくらがりで知り合ったお侍さんにあげるが…またまた怪奇なできごとに巻き込まれてしまう若だんな。

    ・お馴染まない一席・・・柳家喬太郎

  • いつもにぎやかでかわいい

  • 若だんなも随分しっかりしてきたもんだ。
    今回は彼が兄やたちの静止を押し切って動いたことによぅて状況がたくさん好転しました。
    いろんな事件が起こるにせよ、勝手な行動がなぜか憎めない妖たちの愛嬌と、若だんなの真っ直ぐさにとても癒されます。

  • 「助けてください」と書かれた木札に導かれるように、舞い込んだ人助け騒動に奮闘する若だんな。
    今まで兄や達に護られるばかりの立場だったけれど、今度は誰かを助けたいと大人のの男としての気持ちが膨らんでいるようです。
    最後は心にポッと灯りが灯るような若だんなの優しさと成長が感じられるあたたかいお話でした。

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著者プロフィール

高知県生まれ。名古屋造形芸術短期大学卒。2001年『しゃばけ』で第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し、小説家デビュー。「しゃばけ」シリーズは、新しい妖怪時代小説として読者の支持を受け、一大人気シリーズに。16年、同シリーズで第1回吉川英治文庫賞を受賞。他に『つくもがみ笑います』『かわたれどき』『てんげんつう』『わが殿』などがある。

「2023年 『あしたの華姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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