なりたい しゃばけシリーズ 14 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101461359

感想・レビュー・書評

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  • 畠中恵「しゃばけシリーズ」14作目(2015年7月単行本、2017年12月文庫本)。短編5話の短編集だが、5話はそれぞれの登場人物が何になりたいかどうなりたいかというテーマの話だが、最初の序章で一太郎が神々に生まれ変わったら何になりたいかを問われる話から始まっている。それは近所の年頃の似た若者が亡くなった後の話で、序章は5話目の後の話だと分かる。5つのなりたい話は成就しているのに、最後の終りの章で一太郎は自分のなりたいものが分からずにいた。神々への回答に嘘きれいごとは通らない。一太郎の正直な回答に胸が熱くなる。

    <序章>は一太郎が神々から何になりたいか問われる話。
    1話目は妖になりたい蜂蜜を作っている村の名主の話。
    2話目は人になりたかった元道祖神の菓子売りの話。
    3話目は猫に生まれ変わって猫又になった手拭い染め屋の男と猫に生まれ変わりたいと思うその番頭の話。
    4話目は親になりたいと切望してる長崎屋の若い女中の話。
    5話目は立派になりたいと思いを抱きながら、ずっと病弱でつい先頃亡くなってしまった茶問屋の跡継ぎの男の霊の話
    <終りの章>は一太郎が神々に何になりたいか答える話。

    <序章>
    一太郎が風邪で寝込んで1ヶ月が経つ。寝込む少し前に「長崎屋」の近所で一太郎と似た年頃の若者が亡くなっていた。それで何時になく藤兵衛は仁吉、佐助に庭のお稲荷様やあちこちの寺社への寄進や供え物を指示していた。仁吉と佐助は供え物を持って寺社へ向かうと一太郎の側にいられなくなるので、神様方に来て貰ったらどうかと相談し、実行してしまうのだ。いっぱいのご馳走と酒を用意して、稲荷神、大黒天、生目神、比売神、橋姫がやって来る。
    神々はお礼に生まれ変わったら何になりたいか、力を貸そうと言って、帰る時までに答えを考えておくように一太郎に言う。

    1話目<妖になりたい>
    一太郎は何か己で自分なりの方法で稼げないかと悩み考え、手荒れを治す軟膏を作ろうと決める。
    薬草を椿油に漬けて蜜蝋と混ぜ固めて軟膏を作るのだ。試作品の評価は上々、量産するには蜜蝋の安定確保が課題だった。実は長崎屋では既に蜂蜜の委託生産を上総の村にしているのだが、それを仕切っている名主の甚兵衛と言う40歳手前の男が変わり者で、蜜蝋の供給に一つの条件をつけて来た。妖になって空を飛びたいと言うのである。一計を案じた仁吉と佐助、甚兵衛を気絶させ、死んで妖になったと思い込ませたのだが…
    そこにもう一つの厄介ごとが舞い込む。寛永寺の寿真の弟子になった天狗の黒羽坊と友だった同じ天狗の赤山坊が長崎屋に現れ、飛べなくなった黒羽坊の羽を治す薬を寄越せと言って来る。そんな薬などある筈がないのだが、何を勘違いしたのか赤山坊は人質に甚兵衛を攫って飛んでいってしまう。甚兵衛は空を飛んだのだ。
    まあ結末は甚兵衛は村に帰るために人に戻してくれと一太郎に請う。一太郎は仁吉に一太郎がいつも飲んでいる薬を甚兵衛に出すように言い、飲んだ甚兵衛はまた気絶し、気がついた時は人に戻ったと思い込んで、万事蜜蝋の供給の件は解決するのである。
    赤山坊の件も一太郎は赤山坊の本音を見抜き、黒羽坊といつでも会えるように寿真に取り計らってこれも解決する。
    長崎屋薬種問屋から売り出されたあかぎれの軟膏は飛ぶように売れたらしい。仁吉は成長した一太郎に涙する。一太郎の進むべき道が見えてきたようだ。

    2話目<人になりたい>
    日本橋の料理屋「百屋」で甘いものを楽しむ“大江戸甘々会”なる自ら菓子を作って食べて互いに楽しむ4人が集まる会でその一人が離れで急死した。と思われた。倒れていたのを会のメンバーの一人である菓子司「安野屋」の主人が 見つけた。死んでいるように見えた。慌てて皆んなを呼びに行き離れに戻ると死体?はべっとりと血で濡れていて冷たかった。確かに死んでいた。医者と岡っ引きの親分を呼んで離れに戻るとどういう訳か今度は死体は無くなっていた。
    無くなった死体は会のメンバーの一人、菓子売りの勇蔵だった。残りのメンバー二人はいづれも武家で違う藩の江戸留守居役、月田と山川。どうも純粋に甘い菓子を楽しむことだけを目的に参加している訳ではないようだ。いづれも藩の贈答用の菓子を安く購入することを目的に月田は勇蔵に、山川は安野屋に近づいたのだった。
    日限の親分から状況を聞いた一太郎は勇蔵は人ではなく妖だろうと目星をつけ、妖達に「百屋」近くの川で着物を洗った人の情報と同じく近くの湯屋で勇蔵を探させた。一太郎の推察通りで勇蔵を長崎屋へ連れて来て事情をきくと、勇蔵はやはり人ではなく元同祖神で子供の守り神でもあった。よく甘い菓子などが供えられ、甘い菓子は大好きだった。それが寂れた場所になり子供達も来なくなり、同祖神は人の姿を取り、勇蔵の名を名乗り、菓子職人になろうと頑張ってる最中に殺されてしまった。かっては神だった妖ゆえ死んではいないが…
    何故殺されなければならなかったのか、誰が犯人か、血糊を付けたのは誰が何の為にか、一太郎が謎を解く。
    勇蔵は長崎屋の裏通りに子供達相手の小さな菓子の店を開くことになった。栄吉に競争相手が出来てしまったが、勇蔵は間違いなく人になった。人並みの長さの時が終わる日まで、毎日子供達にお菓子を作っていく幸せを感じていた。

    3話目<猫になりたい>
    猫又のおしろが一太郎の元へ客を二人連れて来た。手拭い染屋「青竹屋」の春一と同業の「紅松屋」の冬助だ。冬助は「青竹屋」先代の頃の番頭で分家して独立していた。実は春一は今は人ではなかった。ずっと前に先代が亡くなって跡を継いだが強盗に襲われ死んでしまった。死んだ後何回も転生を繰り返し、猫に生まれ変わった時に「青竹屋」に入り込み、おそらく20年後に猫又になれたのだろう。こうして人の姿に化けて冬助と来たのだから。
    ずっと冬助は春一の弟の夏次と「青竹屋」を支えて来たが、もう年で病にも罹っており先が長くない。手拭いの商売も行き詰まってきていて春一と相談していたところ、春一がおしろから猫又達が“猫じゃ猫じゃ”を踊る為の手拭いの入手に難儀していることを聞いた。手拭いの新しい販路の相談に一太郎に会いに来たのだ。
    一方戸塚宿の猫又の虎と藤沢宿の猫又の熊一が猫又の長を争って揉めていた。おしろはこの諍いをうまく収めれば手拭いの新しい商売が出来るのではないかと考えたのだ。そして10日後には長崎屋の離れに虎と熊一がやって来て、春一と冬助も待機させて一太郎に任せたのだ。
    虎と一太郎は以前馬久の夢の中で会っていたので知り合いだった。(前作「すえずえ」の2話目<寛朝の明日>)。上手くいくはずだった。しかし次から次へと難問が起こり一太郎を悩ますのだが、最終的には一太郎の見事な大岡裁きで猫又の長を決め、「青竹屋」と猫又の手拭いの商売は上手くまとまるのだ。
    猫又の長は虎に決まり、冬助が猫に生まれ変わったら、春一は必ず見つけ猫又になるまで一緒に暮らし、いつか揃って戸塚へ行くと虎に言う。冬助はもう病も怖くないと口にしていた。

    4話目<親になりたい>
    女中頭のおくまが長崎屋の若い女中のおようと子持ちの煮売り屋「柿の木屋」と長崎屋で見合いをさせた。おようは一回嫁いだが子を出来なかった為、離縁され長崎屋に戻っていた。「柿の木屋」の子は三太と言って3歳くらいのちょっと訳ありの子だった。実の子ではなく火事の日に川端に捨てられていたのを「柿の木屋」が養子にしたのだ。しかも今で言う発達障害のような大変な癇癪持ちだった。図らずも長崎屋での見合いの席で三太は大暴れし、おくまはこの縁談を断ろうとしたが、おようは何としても三太の親になろうと決心するのだ。
    実は「柿の木屋」も幼い頃に家事で親と捨てられて苦労して育った経験があった。それで三太には人ならず思いが強かったのだ。
    どういう訳か、おたえがおように一太郎に相談しろという助言する。おようの気持ちに寄り添った一太郎は「柿の木屋」に会いに行くのだが、一太郎は三太が妖だろうと分かっていたようだ。そして壺に書かれた絵の付喪神が抜け出たということを突き止めるのだが、どう収めるかは考えあぐねていた。
    しかしおようの気持ちを受け止めた「柿の木屋」はおようと祝言をし一緒になった。商売も上手くいっていた。
    そんな時に三太の父親だという男が現れ、近くの長屋に住み、店を手伝っていると一太郎の耳に入って来た。男の名は猪助、45〜6歳に見える。三太の父親にしては歳を取り過ぎている。しかも妖に父親がいるはずがないことを知っている一太郎達は偽の父親だとは分かるが、何のために何故嘘をつくのかわからなかった。
    実は猪助は三太の父親ではなく、「柿の木屋」の父親だったのだ。20年くらい前の家事の時、猪助は幼い息子「柿の木屋」と川端ではぐれた。必死で探したが見つからなかった。やっと見つけた息子が火事で拾った孫を守ると心に決めていた。
    しかし一太郎達以外誰も三太が妖だとは知らない。しかも壺の絵の付喪神であれば、本体の壺に戻らなけらば、いづれ消えてしまう。そんな中、三太は引き戻されるように川に飛び込み、川の底にあった壺に戻ってしまうのだ。
    三太は死んだことになった。そしてしばらくして悲しむ「柿の木屋」とおように子が出来たと言う知らせを一太郎は聞くのだった。
    前の亭主との間に子が出来なかったのは、どうも亭主の方に問題があったようだ。おようは今度こそ本当の親になれるのだ。
    三太も壺に戻り、佐助は壺の持ち主を探して戻そうと言う。三太も付喪神になるまで100年も大事にされてきたところが一番安心出来る場所なのだから。

    5話目<りっぱになりたい>
    「長崎屋」近所の茶問屋の大店「古川屋」の跡取り息子、長年病弱だった万之助が亡くなった。一太郎とは歳も近く顔見知りだったが、お互いに病弱で寝込むことの方が多いのであまり一緒に遊んだ記憶はなかった。通夜の席でその万之助が霊となって一太郎の元へ頼みごとを言いに来た。親を安心させてあの世に行きたい、明日の野辺送りまでに親の枕元に立って生まれ変わったら何になりたいかを言って安心させたいのだと言う。何になったら安心させられるかを一太郎に考えて欲しいと言うのだ。
    一太郎が「古川屋」へもう一度行くと何か物々しい雰囲気になっていた。万之助の妹のお千幸が行方不明になっていたのだ。そして手代の末三が日限のの親分の手下に渡した店の土間に落ちていた書きつけには「通夜の内に30両を出せ」と書いてあった。
    お千幸の行方不明は一挙に誘拐事件になったかに見えたが、「古川屋」の鳴家達が自分で出て行くお千幸を見ていたことは一太郎は聞いていた。でもそのことを言えないし、どうも引っ掛かることがある一太郎は頭を巡らせ探り始める。拐かしと30両の金が結びつかない。大店の跡取りとなった娘の拐かしの要求が30両は少な過ぎる。まるで30両なら通夜の内にすぐにでも用意出来ると踏んでいるようだ。もしお千幸が拐かしではなく自分で出て行ったなら、何故通夜の今なのだろうか?万之助が亡くなってお千幸が跡取り娘となると婿を取ることになる。通夜の日に婿取りが決まるとでも思ったのか、それを避けるための家出なのか?一連の引っ掛かりが繋がっていく。
    好きな男と上方へ駆け落ちしようとしていた千幸は思い留まり、「古川屋」に戻る。好きな男は糸物問屋「塩浜屋」跡取り息子の弥曽吉、以前の縁談相手だったが、万之助が亡くなると嫁入り出来なくなる。
    通夜の日にお千幸の婿取りが決まると弥曽吉に吹き込んだのは末三だった。時を焦った弥曽吉はお千幸を呼び出し、事が落ち着くまで上方に行こうとしたのだった。しかし思い留まった。そして「古川屋」に「塩浜屋」の主夫婦、弥曽吉、そして藤兵衛、仁吉、日限の親分が集まり、「古川屋」の主夫婦、お千幸、そして万之助の霊の前で一太郎が謎解きを話す。
    全て手代の末三の仕業だった。30両欲しさに誘拐事件に見せかけた末三はお縄になり、弥曽吉は弟に跡取りを譲り、「古川屋」のお千幸に婿入りすることがまとまり、万之助は生まれ変わったら何になりたいかはっきりと自覚するのだ。
    お千幸は万之助の霊を見て駆け落ちを思い留まり、末三も万之助の霊に怯えお縄になった。万之助が「古川屋」を守った、霊になって精一杯のことをしたと一太郎は話す。
    万之助は「古川屋」主人の枕元に立ち、生まれ変わったら岡っ引きになると言ったらしい。「古川屋」を守ったように今度は世の中のために役に立ちたいと。

    <終りの章>
    一太郎は神々に『生まれ変わっても、また妖達と巡り会いたい。そして また時を一緒に過ごせるようにこの離れのようなゆとりのある場所を用意出来る者になりたい』と言う。その為に商人になって一生懸命に頑張りたいと言う。

  • 人だからこそ、人でないものになりたい。
    人ではないから、人になりたい。
    あれになりたい、これになりたい。
    かと思えば、何になりたいか決められない・・・とか、出だしからヒヤヒヤしながら、楽しく、かつ、自分ももう一度目指して頑張ってみようかな、と考えてしまう勇気や元気をもらえるお話たちでした。

  •  近所で若だんなと同じ年頃の若者が亡くなった。自分がこの先(来世)何になりたいのかを若だんなは考えてみた。長崎屋でもてなされた5人の神たちが、若だんなに問う。「来世何になりたいのか」若だんなの出した答えは!?
    (2015.11 単行本読後に書いたレビューをこちらに移動)

  • 20200129読了。
    若だんなはもちろん、屏風のぞき・金次が大活躍のお話が多かったです。若だんなは、来世何になりたいのか。5つのなりたい話と、若だんなの未来のお話。
    今回も面白かったです♪

  • しゃばけシリーズ第14弾の本作は、短編5作とおなじみの構成で、本作は「○○になりたい」というタイトルの話5作でした。どの話も、摩訶不思議な話ですが謎解き要素もふんだんに盛り込まれ、なかなか面白かったですね!
    もうシリーズのストックが少なくなってきましたが、次にいきたいと思います!

  • 2019/5/22
    安定の。
    サラッと流したけど若旦那が自分の強みを生かして新しい薬を開発したのは感動よね。
    親のリアクションが描かれてなかったけど、それはそれは喜んだことでしょう。
    現代人の感覚では薬で一発当てたらそれだけで成した人で、若旦那はもう大手を振って離れで寝込んでていいんだけど、この時代はそうでもないのかな。

  • 生まれ変わったら何になりたいか。
    神から若だんなへの問いかけに対する答えを出すまでの短編集。
    今回は複数の問題を一気に解決する若だんなの機転と問題解決能力の高さが発揮された。
    短編だけど、下手なミステリーより面白い。

    妖になりたい…前の巻で婚約者ができた若だんな。これを機に長崎屋の仕事をしようと新しい薬を考えることに。薬に必要な蜂の巣を扱う甚兵衛は珍しい物を見たいという変わった人物。今度は妖になって空を飛びたいという彼の願いをに頭を悩ませていると、前の巻で僧の弟子となった天狗の黒羽坊の友、赤羽坊が現れ、妖になれる薬があるなら黒羽坊の羽も治せと詰め寄り甚兵衛を連れ去ってしまう。どうする長崎屋!?


    人になりたい…菓子の会が行われる百屋の離れで会のメンバーが倒れている…と思って人を呼びに行ったら血塗れになっている、で、岡っ引きを呼んできたら死体が消えている!謎づくめの事件の第一発見者が若だんなの友、栄吉が働く店の主人だったものだから、彼がいる店が変な噂で傾く前に事件解決に(妖達が)動く。

    猫になりたい…死んで猫又に生まれ変わった春一が、弟が継いだ店の経営を立て直す策を長崎屋に相談に来た。一方、戸塚宿の猫又達の長を虎と熊市どちらにするかを、若だんなに決めてもらおうと江戸までやって来た。戸塚の猫又達に手拭いを買ってもらいたいが、長が決まらなければ勝手はできない。どちらが猫又の長になるか、春一を行司として勝負が長崎屋にて始まる。

    親になりたい…子ができなくて離縁された長崎屋の女中が柿の木屋の主人と見合いをすることに。ただ、相手の連れ子の三太が妖であり、子供の周りには怪異が起こると噂になっていた。そんな中で三太の父親を名乗る人間の男も新たに現れる。
    見合いの行方と、怪異の原因と、偽りの親を名乗る男の正体は?

    りっぱになりたい…若くして亡くなった長崎屋の近所の古川屋の長男、万之助が霊となって若だんなの前に現れた。野辺送りまでに、夢枕で両親を安心させる言葉を残したいという。そんな万之助の通夜の前に、妹の千幸が行方不明となり、30両を要求する脅迫文が。万之助の願いや千幸の行方はどうなったか。

  • しゃばけシリーズ14弾。
    空を飛びたいから妖怪になりたいという人間。
    どうしても子供を育てる親になりたい女性。
    お菓子を作りたくて人間になりたがる神。
    など、「なりたい」というテーマで5つの短編が書かれている。
    仁吉や佐助以外の妖怪たちも大活躍。
    最近のしゃばけシリーズは他の妖怪たちの出番が増えた気がする。
    そのせいでにいやたちの活躍のシーンが減ったような・・w

  • 江戸時代を舞台に、妖(あやかし)たちが活躍するファンタジー小説『しゃばけ』。
    毎年1作品が発表されるこのシリーズを読むのが、習慣化しています。

    『すえずえ』畠中恵
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4101461341

    気がついたら第14作となる作品が文庫化されていたので、書店の平積みから一冊をレジに運んで、読み始めました。

    江戸の繁華な大通り、通町にある大店の“若だんな”一太郎が主人公。
    身体の弱い若だんなは、今回の作品でも、冒頭から寝込んでいます。

    若だんなが寝込むその離れに、日頃から集まり交流している妖たち。
    さらに加えて、神さまたちも集まってきます。

    その成り行きで、「若だんなは何になりたいのか?」という話になって・・・というはじまり。

    裕福な大店の後継として生まれたにもかかわらず、身体が弱く、店の仕事を手伝えない。
    そんな自分に、不甲斐なさを感じている若だんな。
    いったい自分には、何ができるのか?

    そんな若だんな自身と、登場人物たちの悩みが、「なりたい」というキーワードで、5つの短編として展開していきます。
    そしてそれぞれの短編で起こる騒動を、若だんなと妖たちが“謎とき”していく姿が描かれています。

    その謎ときを楽しむとともに、若だんなたち登場人物の悩みを通じ、「人は人生に何を求めているのか?」を考えながら読み進めました。

    『しゃばけ』シリーズの作品に共通しているのが、優しさと心地よさを感じる世界。
    今回も自分の心の棘を、いくつか抜いてもらえたような気持ちにさせてもらいました。

  • 妖になりたい、人になりたい、猫になりたい、親になりたい、りっぱになりたい。
    タイトル通り、それぞれの願いが若旦那を巻き込んで、長崎屋は今日も大騒動のシリーズ第14弾。

    2018年6月23日読了。
    若旦那も妖たちも相変わらずで気楽に読めます。
    そこがこのシリーズの良さ。
    ですが、本編後の「終」が、なんとなくシリーズも終盤に向かっているような気配を感じさせていて、なんだか気になります。

著者プロフィール

高知県生まれ。名古屋造形芸術短期大学卒。2001年『しゃばけ』で第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し、小説家デビュー。「しゃばけ」シリーズは、新しい妖怪時代小説として読者の支持を受け、一大人気シリーズに。16年、同シリーズで第1回吉川英治文庫賞を受賞。他に『つくもがみ笑います』『かわたれどき』『てんげんつう』『わが殿』などがある。

「2023年 『あしたの華姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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