彼岸からの言葉 (新潮文庫 み 24-6)

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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101463261

作品紹介・あらすじ

彼岸――それは人間の隠された暗部。精神科の待合室で「俺は何ともないけど、家族が行け行けってうるさいんだよ」と繰り返す老人。最大級の飴を「でかいでしょ」と誇らしげに口に含み、「アグァアガガ」と苦しんで訴える人。断るときは「やめてちょ」、驚くと「びっくりしたな、もう」、お礼は「ありがたや、ありがたや」と来る言葉のダダ漏れ男。元祖脱力エッセイスト、伝説の最高傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 宮沢さん亡くなっちゃったんですね。まだあたしが働くふりをしていたころ会社にいってまずやるのが宮沢さんのブログを読むことでした。最近ではNHKの『ニッポン戦後サブカルチャー史』ですかね。楽しく見ました。

    言葉と笑いにこだわった宮沢さんといったらあたしはこの『彼岸からの言葉』です。あっちに行ってしまった宮沢さんの言葉として永遠に残る1冊でしょう。

    だからって彼岸=あっちのことじゃなくって、ほとんどの人が気にもとめないようなちょっとした日常のズレを笑う小話集。社交辞令120%できないあたしにとっては「我が存在」を許されるバイブルのような1冊でもあります。そのなかから『彼岸のゾーン』をざっと紹介して宮沢さんをお送りしたいと思います。

    ある夏の終わり宮沢さんと友人の竹中直人さんが芝居のチラシとチケットを渡すべく高平哲郎さんを事務所に訪ねた時のお話。口下手の3人が集まった時の彼岸が酷い。長い沈黙を破ったのは竹中さん。机の上のペンを手にして「ボールペンテル細字、か」とぽつり。それに対し高平さん芝居のチラシを裏返しにして「真っ白なんだね」と。宮沢さん「ええ」と応えてから次に続ける言葉を持たずつい「ここ原宿ですよねー」とつぶやき、さらには壁のポスターを見ながら明るく「ポスターかな」。窓の外を見ていた竹中さんが「晴れてますね」と受けて「今日、二日酔いなんだよ」と返す高平さん。「じゃあ、昨日お酒飲んだんですね?」と聞いたのは誰なんだろう。さようなら。

  • このような脱力系エッセイを読んでいる場合ではないと思いつつも、現実逃避というやつで私も彼岸へ行ってしまった。本書の執筆は平成2年からのもので、バブルが弾けてからも皆が彼岸も此岸もなく生きていたように思う。それにしても、本書のほとんどが実話であるとあとがきを読んで驚いた。特に「彼岸へ」で印象的な幻覚を催す草やキノコの話だ。なお、私が最も衝撃を受けたのは、異常な早口のKが登場する「サウンド・オブ・ミュージック」であった。あと、カバー裏の著者近影の肖像がとても気になる。

  • クセのある人への観察眼が素晴らしい脱力系エッセイ

  • 古賀政男とカーネル・サンダースに吹いた。

  • 冒頭に「これは小説であり架空の話だ」ということが書かれていたため、読みはじめの1章は混乱したが、いつもの通りのライトエッセイである。

    「彼岸」は文字通りの言葉で「アッチの世界」「イッちゃってる人」を指す言葉なのだが、その説明なしの上に、文中でも「これは彼岸だろう」みたいな説明臭い使い方をされていて、この時点で☆2。

    特に1章では、戸川純、竹中直人、大竹まことなどなど、有名人と交友関係の話が固有名詞を上げるのにいっぱいいっぱいでまとまりがないのと、その「彼岸」という言葉に引きずられた文章が続き、散漫な印象が強い。

    2章からはいつものぼやきや、調べるほどに意味のわからなくなる言葉の話で楽しめるが、全体にオチが弱い。

    オチが弱い一つの原因に、1本4ページのエッセイのうち、最初の2ページにわたって描かれている、しりあがり寿氏によるイラストに、オチが書かれてしまっていたりするのだな。3~4ページ目に入れればよかったと思うのだが。

    同姓同名の人のあとに入居してしまった話など、稀有な体験の話など印象には残ったが、ちょっと不完全燃焼は否めない。

  • かなり昔に書かれた内容だったのですね。それでも今読んでも宮沢さんらしいなぁ、と。変わらない面白さが好きです。彼岸という時期は何かデタラメな事を言っても許される感じがするので、架空の話であろうとなかろうとそれはどうでも良いと思うんですよね。

  • おもしろエッセー。暇つぶしにはなるが、何がすごいのか全くわからない。だんだん苦痛になってきた。2014.9.8

  • 面白いという言葉ではまとめきれない面白さ。読んでいる最中は、思考回路がすっかり彼岸に。
    全くのフィクションではないだろうし、また、完璧なノンフィクションでもないだろうし。
    熱なんか何度も測るから上がる…というのは、はい、ごもっとも、と思いますし、葬儀の際のこととか、昔何処かで会ったことがある話等、印象が着陸強く残っているわけです。

    ぞんざいなお話を読んでからは、いちいち自分の行動が気になるようになってしまいました。

  • 私は宮沢章夫のエッセーが好きで、「牛への道」とかが好きで…。と思ってたけど、宮沢章夫のエッセーの本質的なもんはこの作品だと思った。そして、この作品はエッジがききすぎていて、私は宮沢ファンとしてはまだまだ甘いと感じた。

  • 面白い。
    繊細な言語感覚が魅力。

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著者プロフィール

1956年静岡県生まれ。劇作家・演出家・作家・早稲田大学文学学術院教授。90年、演劇ユニット「遊園地再生事業団」を結成し、1993年戯曲『ヒネミ』(白水社)で岸田國士戯曲賞を受賞、2010年『時間のかかる読書』(河出文庫)で伊藤整文学賞(評論部門)を受賞。著書に『牛への道』『わからなくなってきました』(新潮文庫)、『ボブ・ディラン・グレーテスト・ヒット第三集』(新潮社)、『長くなるのでまたにする。 』(幻冬舎)、『東京大学「80年代地下文化論」講義 決定版』(河出書房新社)など多数。

「2017年 『笛を吹く人がいる 素晴らしきテクの世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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