- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101473215
感想・レビュー・書評
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殺人犯の書いた本というのは意外と少ない。あったにしても、あくまでも殺人犯として書かれた手記のようなもので、作家として書かれた本は少ない。
見沢知廉は極右として活動していたが、近しいところの鈴木邦夫が90年代サブカルシーンで活躍していたように、見沢の筆致もその頃の匂いを放つ。
サービス精神は旺盛な文章で、ただそれは当時のサブカル読者との距離の近さ、共犯関係が成立しているからで「このようなことを書けば喜ばれるだろう」という推測の精度が高かったからのようにも思える。ちなみに文庫の解説は香山リカである。
著名犯罪者の塀のなかでの様子も書かれるが、それ以外の部分もおもしろかった。巻末には千葉刑務所の受刑者への案内、ルールなどが書かれた書面なども転載されている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2021/04/11
2021年8冊目。
自分では知り得ることのない刑務所内の人々、仕組みを知る事ができ、楽しみながら読めた。これが現代社会でも大差ない形で存在してるんだもんなぁ…罪人の扱いは気にしないけど、前時代の負の遺産って感じするよな
終始、見沢氏のナルシシズム全開の文体には辟易する。 -
あまりにも普段の生活とかけ離れた生活について、たくさん驚いた。
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100殺!ビブリオバトル No.33 夜の部 第5ゲーム [チャンプ本!]
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留置場、拘置所を経て刑務所で12年過ごした体験記。有名事件の犯人、正気ではない言動、派閥や駆け引きなど、知られざる刑務所内空間の実話。
今読むと、昔のことゆえ、そういえば聞いたかも程度の事件ですが、発刊当時大事件の有名犯人たちだったことが伺えて、話題になったのも理解できます。 -
ドストエフスキーから花輪和一まで獄中記というのは面白いものだ。まあ、犯罪者の懲罰を面白がってはいけないのだろうが、その非日常性と否が応にも深まる思索が独自の面白さを生み出す。
そう言う意味では、非日常性の叙述はボリューム十分。ほんの二十年前まで(ひょっとすると現在も?)、犯罪者や精神病患者(往々にして警察・検察に騙されて冤罪を押し付けられる)に対する非人道的な懲罰が延々と与えられているのかと思うとゾッとする。思索の独自性というか、間違ったものを客観的な視点から眺めて対照するユーモアは今一で、あとがきにも触れられている安部譲二の方が一枚も二枚も上手か。 -
ほとんどの人にとっては一生縁のない「刑務所」。怖いもの見たさもあってこの手の本はそれなりにニーズがあるのでしょう。この本の特徴は粗暴犯でも経済犯でもない、いわば思想犯による刑務所レビューであることです。左翼活動から右翼に転向、スパイに対する殺人容疑で逮捕された著者による有名無名の収容者の描写はなかなか生き生きとしておもしろかったです。(お勤めしている人からしたらそれどころじゃないんでしょうけどね。)
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何度も読み返して、三島由紀夫の隣に。
図書館には閉架書庫。青学のインテリ、
塀の中を知るのに、安部譲二の
塀のなかのよりは、遥かに、凝縮されてた。
自殺した。 -
新右翼団体のリーダーにして、イギリス大使館火炎ビンゲリラ事件及びスパイ粛清事件の実行犯。懲役12年を満期まで勤め上げた筆者による獄中体験記。
凶悪犯ばかりを収監している千葉刑務所の日常……なんてそうそう垣間見れるものじゃない。単純な好奇心に背中を押されながら一気読み。
小説『調律の帝国』で語られたような「絶望・恐怖」は殆ど姿を潜め、囚人同士の人間関係や個人のキャラクターのようなものが前面に押し出されており、ああもうコイツしょうがねえなあ、みたいなほのぼのさすら漂う。
しかし、塀の向こうの彼らにほのぼのしちゃうって事は、囚人達が「特殊」な人間などではなく、結構どこにでもいるニイちゃんやオッちゃんであるという事の証左。
自分の身の回りにある何かが、ある時突然“ラスコーリニコフの斧”になったとしたら。
そんな薄ら寒い想像すらしてしまうのも、筆者の「異常に」冷静な観察眼と筆致の為せる技か。
巻末の参考資料「受刑者の生活心得」「守らなければならないきまり」等も興味深い。 -
テレビ等で名前を知ってる受刑者の話や囚人達のエピソードはオモロイし獄中の話も興味深い。楽しめたけど被害者が存在すると思うと少し複雑な気分になった。 とりあえず捕まる様な事は一生しないでおこうと思う。他人事やから暢気に読んでられたけど我が事やと考えると中に入りたくないわ。