作品紹介・あらすじ
戦後45年目の夏。高校2年生のゆかりの伯母は空襲で焦げた電柱の前で、見失った我が子を待ち続けていた。夏休みの課題のため、ゆかりは伯母の戦争体験を聞こうとするが父の勇太から猛反対を受ける。昭和20年3月10日、あの炎の夜に何があったのか。伯母の交通事故をきっかけに父はようやく口を開く――。東京大空襲の語り部が戦禍の記憶を今に伝える長篇小説。『戦争と青春』改題。
感想・レビュー・書評
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良くも悪くも授業の教材のような優等生的な内容で、小中学生向けの東京大空襲のお話、という印象。東京大空襲という主題を優先しているためか、登場人物たちにステレオタイプ感があって、それが多くの児童向け戦時作品と似たような印象を与えているような気がしました。
なので、当時の東京がどのような状況だったのか、在日朝鮮人も暮らしていたこと、何より東京大空襲ではどのようなことが起こっていたのかなどを知るには良かったと思いますが、ストーリー的な新鮮さはちょっと薄く感じてしまいます。
ひとつだけ、咲子の悲しい人生には同情を禁じえず、もし彼女が幸せを感じながらこの世を去って行く姿があれば、印象は少し違っていたかも、と思います。
著者プロフィール
1932年東京都生まれ。12歳で東京大空襲を体験。ルポルタージュ作品『東京大空襲』(岩波新書/日本ジャーナリスト会議奨励賞)がベストセラーになる。1970年「東京空襲を記録する会」を結成し、『東京大空襲・戦災誌』(菊池寛賞受賞)を編纂。2002年江東区に「東京大空襲・戦災資料センター」を開館。 東京空襲の語り部として、未来を担う世代に平和を訴え続けている。
「2021年 『紙芝居 三月十日のやくそく』 で使われていた紹介文から引用しています。」
早乙女勝元の作品