絶対音感 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.51
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本棚登録 : 572
レビュー : 59
  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101482231

作品紹介・あらすじ

「絶対音感」とは音楽家に必須の能力なのか?それは音楽に何をもたらすのか-一流音楽家、科学者ら200人以上に証言を求め、驚くべき事実を明らかにする。音楽の本質を探る、ベストセラーノンフィクションの文庫決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 一時期このことに非常に興味を持って考えたことがあった。
    相対に対する絶対
    絶対という強力なイメージを持った魔の言葉
    音楽を言葉で語るのことは本当に出来ないのだろうか。

  • 本書は、若き日のパステルナークと、彼の音楽の師であったスクリャービンとの対話を記すことからはじまります。パステルナークに音楽の道を断念させたものは「絶対音感」でした。その神秘的な能力を与えられなかった者は、そのことに苦しみ、与えられた者は人びとの好奇の視線を向けられて苦しむことになります。こうした事実が、絶対音感について語る者の口を重くしてきました。著者は本書を執筆するにあたって百人の音楽家たちに質問状を送ったものの、回収率は5割で、なかには白紙無記名で送り返してきたものや、あなたはなにもわかっていないという手紙が添えられたものもあったといいます。絶対音感を取り巻くこうした厚い雲を晴らすことが、本書の目標の一つだといってよいでしょう。

    絶対音感を追求していくなかで著者は、戦前からの日本の音楽教育にひそむ問題にぶつかり、音楽と人間の関係をめぐる大きな謎を前にしてたじろぐ脳科学者たちの姿を知ることになります。最終章は、五嶋みどりと彼女を取り巻く家族とのかかわりをえがき、あらためて人間にとって音楽とはなにかと読者に問いかける内容になっています。

    「文庫版あとがき」で著者は、「本書は絶対音感を礼賛したり否定したりする本ではありません」と書いていますが、こうした断り書きがなくても絶対音感について人びとが語りあい、音楽と向き合うことのできる状況を、著者は願っていたのかもしれません。

  • ノンフィクションの地道さ、堅実さ、らせん状に深まっていく真相。
    こういう仕事をちゃんと待って、評価していくことが本当に大事だと思う。
    当時、きっとすごく読まれたであろうけど、
    最後まで読み切れなかった人もいるんじゃないだろうか。
    ひとつの疑問やイメージから、丁寧に文献に当たり、当事者の声を聞いていく。
    たどっていく道筋の中に、ぼんやりと「当たり前」と思っていたことに出くわしたり、
    そのたびに、最初と同じようで違う場所から同じものを見る視点が加わったり。
    絶対と相対、能力と修練、技術と表現力、環境や人間の成長の時期、
    物理的な楽器というものを通じて生まれる誤差、
    音を文字として読める力と、文字では読み切れない情感の範囲。
    コンピューター(今ならAIか)の限界と、
    人間の能力の、取捨選択における膨大さと何を選ぶかという早さの凄さ。
    いろいろな要素が、調べる中で目の前に出てきて、
    改めて、ここまで気付かなかった不思議に直面する。
    ものを調べるってそういうことで、
    行きつく先も、自分の予想なんてどんどん超えて止まらなくて。
    この本1冊がここで終わっても、
    まだまだ追及していくテーマ、新しい方法、視点は日々生まれていく。
    でもこの地道に歩いていくしかない道にしびれを切らす人は多いだろう。
    分からない人は「絶対音感」というお墨付きだけもらえれば
    あとはすべて上手くいくと勝手に合点してもう次へ行く。
    だますのなんて簡単だ。
    学ぶ醍醐味、自分の頭のスペースが一気に開けていく快感、
    自分で掴まなければ得られない充実感と実感、
    その人にしかたどり着けない答え。
    それを知ることで、自分がかかわらないいろいろなものに対しても、
    すぐに答えが出ないことが分かるし、
    一面からだけでは見えないことが分かるし。
    判断を保留にしたまま余裕をもって考え、
    出た結果を大切に大事にできると思うんだけどね。

  • 正直に言って、焦点がぼやけてるというか、結局何が言いたいのかが良く分からない本だった。

    特に最終章がこの本に入っている理由が謎。

    私がノンフィクションという分野を読み慣れていないのが原因なのかなー。

  •  この本が出るまでまったく聞いたことがなかった「絶対音感」って言葉だけど、そのスジでは超がつくほど有名だったんだね(゚д゚)!
     なんと 戦前から(゚д゚)!

     霊能力やESPっぽくて「自分にもあったら面白いかも」なんて思ってたけど、本書を読み進めていくうち そんな大したもんでもないことに気がついた( ´ ▽ ` )ノ
     色で言えば、赤を赤 白を白と見分けるくらいなもんで、大枠さえズレてなきゃ 素人にはぜんぜん必要ない能力じゃん( ´ ▽ ` )ノ
     味で言えば、ワインのテイスティングとか( ´ ▽ ` )ノ
     
     絶対音感ブームの火付け役でありながら 内容はむしろその熱を冷ますもの、という皮肉な結果になってる面白い本( ´ ▽ ` )ノ

     終わりのほう、テーマに直接関係のない五嶋みどり&龍姉弟のミニ伝記が差し挟まれているけど、これはこれで面白かった( ´ ▽ ` )ノ
     こんな映画みたいなエキセントリックな家族、本当にいるんだね( ´ ▽ ` )ノ
     芸術が人を狂わせるのか、狂った人が芸術に囚われるのか?……人類永遠のテーマだ( ´ ▽ ` )ノ
     独立した評伝として長編化すればいいのに( ´ ▽ ` )ノ


     しかしまあ、読みづらい文章だったな(´ェ`)ン-…
     持って回った表現が多いし、時として冗長……まるで翻訳作品みたい(´ェ`)ン-…
     あとがきを見たらごくごく普通の文章だったから、「あれが作者ほんらいのスタイルではなく、わざとああいう書き方をしたんだ」と気づき 改めてびっくり(゚д゚)!
     ひょっとして、あらかじめ外国語翻訳を前提として変則的な書き方をしたんだろうか?……(´ェ`)ン-…

     取材協力者・参考文献の長大なリストには、ただもう頭がクラクラ……( ゚д゚ )

    2019/01/13

  • 絶対音感という言葉の意味について、また、音律や和音について、ずいぶん自分が誤解していたことがよくわかった。
    非常に多くの人に話を聞き、よく調べて書いているのがわかる。

    「絶対音感さえあれば音楽家になれるのか」という問いが発展して、最後は「音楽って何だ」という話になっている。
    それは本来のテーマからすれば「脱線」かもしれないが、絶対音感を考えていくと、どうしてもそこに行ってしまうのかも。

  • オリジナルは1998年刊。前々から評判は知っていたが、テーマへの興味がイマイチで読んでいなかった。このたび著者の新刊を読むにあたって予習的な気持ちで手にとった。最初のうちは「このテーマでどこまで書けるのか?」と思ったが、日本の音楽教育史、認知科学、現代のクラシック音楽の一断面まで、絶対音感をキーワードに話は広がっていく。著者がわりと表に表れてくる書きぶりだが、要所要所は抑制が効いて読みやすい。認知科学的なくだりなんか、感覚の相対性を強調するあたり一般のノンフィクションとしては先駆け的な気がする。

    ・固定ド唱法と移動ド唱法。専門教育は固定ドで、学校は移動ド。絶対音感があるなら前者しかないが、後者の方が相対音感だけだと馴染みやすいと。

    ・440ヘルツがA音というのが「一応」の基準とされているが、オケによって微妙に違う。高いほうが艶が出る、インフレピッチ。時代によっても違い、モーツァルトの頃は422だった。

    ・周波数比率が2対1のオクターヴや、3対2(完全5度)、4対3(完全4度)を心地よく感じるのは生得的な制約。哺乳類では同じらしい(→周波数が最小公倍数でキレイに重なるのがよい?)。その生得的な制約を分割して音階をつくる。→音階と音律の違いよく分からず

    ・オクターヴを均等に12分割した平均律。いまのピアノはたいていこれ。純正律と比べると3度や5度は少しにごって響くが、その濁りはどの音階でもバラつきがないため、無調の現代音楽などには適する。いまは純正律やピタゴラス音律よりも平均律が心地よく聞こえる学生が多い。日ごろ接する音楽の影響か。

    <blockquote>自分の持つ絶対音感に違和感を感じた時点で、それが「わが家のA音=440ヘルツで調律されたピアノでついた平均律の絶対音感」という極私的なものだと、彼らは気づいたのだ。</blockquote>

    ・「a」「i」「a」と個別に発音したものをつなげても「aia」とは聞こえない。「aia」とつなげて発音したものを機械的に分割しても「a」も「i」も「a」も見つけられない。聴覚とは時間的な変化につよく依存した感覚である。

  • 絶対音感、を追いながら
    音楽教育の歴史、軍事利用まであったとは
    わが子の絶対音感習得に奔走する親
    絶対音感神話、指導者のジレンマ、
    いつの間にか、ヒトの耳、脳、を経て、音楽とは、
    そして科学者の挑戦へ、まで。
    音にラベリングできる技術だけではなく
    そのつながり、強弱、リズム、総合的に
    創り上げ、奏で、聴き、音を楽しむと書いて音楽。
    いい耳を持ちたいです。

  • 広さも深みも網羅した体系的な本。絶対音感とは、に終始しないからこそ、音楽とは、という本質に迫る部分があると思う。(物理量の追求に終始してたら音楽としては非常にナンセンスだよな、という説得力があるし、そこに好感が持てた)
    絶対音感とは、という点に関しては本のなかにも引用がある「あると便利でどっちつかず、時には厄介」という旨が語弊ないかなと思うし、それ以上踏み込みたい人は読もうねって薦められる本。
    あと七章にあるバーンスタインの引用が音楽とは、という語りとして非常に優れていると思う

  • 何故か小説と勘違いしてたが、絶対音感をテーマにした音楽家たちのエピソード交えた専門書のような印象。
    必ずしも絶対音感を持つ人が優れた音楽家、と言うわけではないということだ。
    そうだろうな。私も趣味でバイオリンを弾くが、譜面は早く読めるようになりたいが、絶対音感は特に羨ましいと思わない。まぁホントに趣味だからね。
    五嶋龍くんって家族中で有名音楽家だったのね。いつか演奏を聴きに行きたいな。

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著者プロフィール

1963年生まれ。兵庫県神戸市出身。関西学院大学法学部卒業。科学技術と人間の関係性、精神医療などを取材。著書に、『絶対音感』『星新一 一〇〇一話をつくった人』『セラピスト』(以上、新潮文庫)、『青いバラ』(岩波現代文庫)、『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』(岩波新書)、『れるられる』(岩波書店)、『理系という生き方 東工大講義 生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか』(ポプラ新書)、『未来への周遊券』(瀬名秀明との共著)、『辛口サイショーの人生案内』(以上、ミシマ社)など。

「2019年 『胎児のはなし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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