銀婚式 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101484198

作品紹介・あらすじ

証券会社のNY本部で多忙をきわめていた高澤は、妻との関係が壊れ離婚。会社も破綻する。再就職先で直面した、華やかなキャリアなど通用しない中堅損保の厳しい現実。再び転職した地方の無名大学で、都落ちの寂寥感に沈む高澤の前に現れたのは、学部長秘書の清楚な女性だった……。低迷する日本経済を背景に、もがきながら生きるビジネスマンの「仕事と家族」を鮮烈に描き、万感胸に迫る傑作

感想・レビュー・書評

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  • 文章が秀逸。証券会社のエリートビジネスマンの青年期から壮年期を淡々と描いている。淡々と…なのだがなかなかの紆余曲折があり先が気になり一気読み。小説なんだけれどちょっとリアリティあり「へ〜!」と感心してしまった。想像していたエンディングとは違っていたけれど、それすらも感心。良い読み物でした。

  • 主人公と同じ世代を生きた身として、様々なシーンで共感できました。
    じんわり感動。
    一気に読みたくなる面白さは、30年前に読んだ「女たちのジハード」を再読したくなります。

  • 「男の本分は仕事」 それは幸せな人生ですか? 歳月を経て、夫婦がたどり着いた場所。働くとは、結婚とは、幸福とは-。激動する時代の「家族」の物語。

  • 1人の平凡な男性が、挫折や苦労を味わいながらも、ひたすら人生に対し真剣に向き合って生きる姿を描いた小説ですが、サスペンスでも推理小説でもないはずなのに、なぜか、あっという間に読み終えることができました。

  •  篠田節子さんに魅せられての二冊目です。
    大いに笑わせて考えさせられた、一冊目『百年の恋』とは、対照的な物語をリアリティでグイグイ引っ張てくれる読み応えのある傑作です。
    篠田節子さんに更に惚れました。


     高澤修平の順調と思えた人生に、離婚、何度かの転職、息子の受験の失敗、新たな恋の難しさ、介護、と荒波が次々と押し寄せる。
     だが、この男性、仕事に、人に、実直でいて誠実なので、無職になっても、鬱になっても、葛藤の中、助けてくれる人が不思議と現れる。 そんなシーンに何度も涙する。
    そして、彼のような誠実なサラリーマンがこの世の中を支えているのだと、また胸が熱くなる。

     高澤たちの『男の本文は仕事だ』が価値観の時代を懐かしく読み、我が夫婦に想いを馳せる。 高澤夫婦と差して変わらず、当たり前のように色々なことがあったなと。 無我夢中で生きてきたなと。

     高澤夫婦は、離婚してしまったのは残念だが、若い頃は、互いに幼く未熟なもの、本物の夫婦になるには年季がいるのだと想う。 我が夫婦もまだまだですが。
     もしかすると、歳を重ね、枯れ始めて、初めて内面の成熟期を迎えるのかもしれない。

     最後に、題名の『銀婚式』についてだが・・・女性の台詞に効果的に登場する。 最後まで読み終えた時、その思いがじわじわと心に広がるニクイ演出である。



     

  • 平成のサラリーマンの挫折とロマンを描く作品…かな(笑)

    花形部署にいたサラリーマンが仕事一辺倒で家族を失い、バブル崩壊を経経し、新しい職場で苦労しながらも信頼を得て、若い女性とちょっと恋愛関係になったりして、結局は別れた奥さんとイイ感じで収まるという話。
    あっさりとまとめると、こんな感じ。
    身も蓋もない説明になってしまうのは、最後に別れた奥さんとイイ感じになって終わるところが好きではないから。

    とはいえ篠田節子さん、保険会社の代理店制度や地方の学生が集まらない私立大学の問題点などが描かれており面白いのです。
    キラキラしたイメージのある海外駐在も、現実は体調を崩して帰国してしまうご本人や家族も実際にあります。
    鬱と間違えてしまう甲状腺の病気とかリアルなんですよね。

    後半の介護保険制度については、お得意の分野。
    「きっとこれまでに介護に関わったことのない、自分のような男たちが机上で練ったプランに違いない」と主人公に語らせ、介護保険制度をぶった切り痛快です。

  • 一見普通の人の普通のおじさんの地味なストーリー

    …なんだけど、結構恵まれている。

    きっとそんなに都合良く仕事決まらないし
    ましてや教授なんてなかなかなれないし
    別れた妻とまた…なんて展開は
    現実の女なら別れた旦那となんて嫌だと思うし。

    けど、なかなかジンワリくるものがあって
    楽しかった。

    将来自分も孤独を味わう事は確実なので
    こういう話を読むと少し胸が苦しくなる



  • やっぱり上手いなぁ〜篠田さん‼︎
    ミステリーのような、とんでもない事件やどんでん返しはないけれど、本人にとっては『大事件』であることの繰り返し。このお話は、歳をとって中高年になってから読んでこそ、面白いと思う!
    最初はちょっと鼻持ちならないエリートに感じた高澤も、読んでいくうちに、その必死さ、真正面から頑張り、もがいていくところが、私は好感が持てました。高澤の人生を速回しで一緒に体験した気分です。
    なぜ「銀婚式」ってタイトル?と思って読んでいたけれど、ラストはしみじみ…。

    個人的には、女子大生が、とんでもないことに足を踏み入れそうになるのを、素早い英断で止めたエピソードが印象深かった。(本当に世間には酷い奴がいる)

    人生って、長いよね…。一つ解決したと思っても、また次のハードルがあり、悩みは絶えない。私の好きな言葉で『人間万事塞翁が馬』ってあるけど、本当に、良いことの後には悪いこと、辛いことの後には楽しいこと……と、繰り返しなのが人生だと思う。それでも、死ぬまでは生きていかなきゃならないものね…。

    印象に残ったところを少し…。
    ーーーーー
    自分にもこんな根拠のない自信を抱いていた時期があった、と高澤は思い出す。長すぎるほどの未来を抱えて、少しの恐れも抱かず、努力すれば道は開けると無邪気に信じこんでいた人生の夏は……

    表面的な学力で測れない知性というものが存在することを改めて知らされ、彼らの、ひょっとすると持っているかもしれない途方もない可能性に思いをはせる。

    人間、死んだら二度と生まれてこないんだから。

    身辺の年寄りたちが、季節が移り変わるように相次いであちらの世界に旅立ち、どこか観念的に捉えていた自分自身の老いと死を身近なものとして意識するようになった。

    人生、うまくいかないからおもしろい。

    何もかも筋書き通りにいくはずもない。定められたレールを踏み外すのが、必ずしも悪いこととは限らない。
    ーーーーー
    篠田節子さんの作品のなかでは、地味、ともいえる作品かもしれませんが、私は好きでした(^^)

  • 『銀婚式』というタイトルが

    読み終えた後になって
    じんわりと
    心に沁みてくる一冊。

    45歳以下には
    退屈で理解できない
    味わいかなーと。

    ひとりの企業人の半生を
    淡々と描いていて

    離婚や転職などの
    転機はあるものの

    それほど
    波乱万丈というわけでもなく
    どんでん返しがあるわけでもなく

    でも 同じ組織人として
    身につまされたり
    共感したり

    気がついたら 一気読みでした。

    もう 若くはなく
    ちょっと くたびれていて

    いい大人なのに
    悩んだり 躓いたり

    でも 確固たる信念を持った
    少し不器用な

    そして
    そんな自分を俯瞰して
    思わず笑ってしまえるような
    健全なユーモアを持った男性

    が 主人公の作品って
    なんか いいですよね。

    リアリティも大切。

  • 華々しい学歴は、社会に出た後にその一生を保証するものではなかった。それでも身に付けた自助努力の精神は、人生のどん底を経験したとき、破滅の淵に転がり落ちる寸前で、何とかもちこたえ、はい上がるチャンスを与えてくれるものになるだそうと高澤は信じている。

    最敬礼されて事務所を出てふと振り返ると、まだ見送っている錦城の姿がある。
    濃霧が晴れて視界が開けたような気がした。
    「人生、うまくいかないからおもしろい」
    父の残した言葉が、よみがえる。
    何もかも筋書き通りにいくはずもない。定められたレールを踏み外すのが、必ずしも悪いこととは限らない、と息子のことを思った。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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