極: 白瀬中尉南極探検記 (新潮文庫 つ 13-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (676ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101488035

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  • 今から約100年前、明治45年に日本人として初めて南極大陸の地に足を踏み入れた白瀬 矗(のぶ)。南緯80度線の突破はアムンゼン、シャクルトン、スコットに続く世界で4人目の偉業だった。

    本書は、極地探検に一生をかけた白瀬の数奇な運命を縦糸にして、千島・占守島の開拓事業、南極探検隊や大隈重信・児島源太郎といった明治の重鎮たちのエピソードを織り交ぜるなど、重厚で深く読み応えのある探検小説となっている。

    無計画で非科学的、資金・装備の不足、そして海上に漂う落ち葉のような開南丸の貧弱さは、南極まで約1万4千キロに及ぶ航海の行く末を、否が応にも不安にさせ、加えて白瀬隊長は政府の方針や現地調査の有用性にはあまり興味がなく、南極点到達だけを目指すがゆえの独善的で直情的な態度が、周りとの軋轢を生んでしまう。

    しかし白瀬隊長は己の情熱だけを武器に南極にアタックしていく。その気合&根性のゴリ押し精神に、気骨ある明治人の勇敢さを感じて、非常に感動してしまう。
    また、他の隊員たちも彼と同じくらいに熱い男たちで、南極大陸を発見すれば“万歳”、陸地を見れば“万歳”、他の船を見れば“万歳”と事あるごとに“万歳”を叫び、マグロを釣れば大騒ぎ、酒を呑めば気炎を吐き、橇犬が死ねば悲嘆に暮れ、ニュージーランド(新西欄)の淑女を見ればひどく赤面してしまうなど、人間味あふれるいいヤツばかりで憎めない。

    白瀬や同行した人物たちが書いた書物に対する緻密な分析も鋭く、アムンゼン、スコットたちの探検行や世界の探検情勢にも触れているなど、ドキュメンタリー小説としても十分楽しめた。

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