桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 217
  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101492216

作品紹介・あらすじ

ひとりの週刊誌記者が、殺人犯を捜し当て、警察の腐敗を暴いた…。埼玉県の桶川駅前で白昼起こった女子大生猪野詩織さん殺害事件。彼女の悲痛な「遺言」は、迷宮入りが囁かれる中、警察とマスコミにより歪められるかに見えた。だがその遺言を信じ、執念の取材を続けた記者が辿り着いた意外な事件の深層、警察の闇とは。「記者の教科書」と絶賛された、事件ノンフィクションの金字塔!日本ジャーナリスト会議(JCJ)大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  •  1999年に起こった女子大生刺殺事件。一人の週刊誌の記者が警察に先んじ犯人を特定し、警察の不祥事を暴いた様子を記録したノンフィクション。

     まず普通の読み物としても抜群に優れていると思います。第三者として描くのではなく、記者の方の一人称として描かれているので、記者の方が実際に感じた思い、苦悩というものが伝わってきます。そして事件解明の経過も、そこらの小説よりもドラマチック!(本来の事件解決はそうあるべきではないものだとも思うのですが…)

     でもやはりこの本の真の役割は、清水さんが被害者の方から受け取った「何か」を僕たちも受け取ることなのだろうと思います。実際読み終えたとき、自分の心の中にも何か言葉にできないものが残りました。

     最近大学の関係で報道関連の本を読むことが多いのですが、その病理がこれ以上ないくらい顕れた事件だったのだなあ、と読んでいて思いました。真実を追求し、権力を監視するはずのジャーナリズムがこれほどまでに警察にいいように踊らされ、果てには被害者を二度、三度にわたって貶めてきた責任はやはり重いと思います。そして警察の不祥事が明らかになってからでも、結局被害者側の側につかない姿勢にも落胆の気持ちが浮かんできます。

     警察もやはり組織の人間なのだな、という感想も持ちました。当時はストーカーがまだ一般的な概念でなかったとしても、あまりの対応の鈍さ、果ては責任を逃れるための工作の数々は正義を守る姿などはなくひたすら組織を守ろうとしている姿が見えました。

     自分たちが普段絶対だと思っているものは、必ずしもそうではない、ということを教えてくれた本でした。この本に関しては「読んでほしい本」ではなく「読むべき本」だと自信を持って言えます!

  • これは本当に皆さんに読んで頂きたい。

    「相棒」「踊る大捜査線」「ストロベリーナイト」「アンフェア」
    といったような警察ドラマを見ていて、警察という組織は
    関係者、関係者の家族を守ることを最大のミッションとし、
    その余力で市民を守るものだ。
    と私の中で定義をしていました。

    だって、どのドラマを見ても警察内部、特にトップクラスの方々は
    もはや悪人のように描かれているのだから。
    ここまで多くの作品でそう描かれるということは、
    実際の警察もそういうものなんだろう、という
    定義をしていたのですが。

    本当に警察が事実をゆがめ、1人の女性を死に追いやった。

    余りにも嘘だろう、という事実が続いていくために、
    まさに小説のような展開を見せていきます。

    ページをめくる手を止められない本でした。

    警察の中でも、詩織さんの録音したテープを聞き
    「これは恐喝だよ恐喝」と言ってくれた若い警官は、
    正義感を持って仕事をしていたのだと思います。
    事件がこのような展開になり、後悔したのではないかと思います。

    マスコミの中でも、多くが警察の言いなりの報道をしているのを見ると、
    「正義」というのは組織、団体に属するものではなく、
    あくまでも個人に宿るものなのだと痛感されました。
    この本で出てくる信頼できるものはすべて「人」です。
    組織、団体、会社ではありません。

    自分が事件に巻き込まれたことを考えると、
    こちらに出てきた人をメモしておこう、という気持ちになりました。

    文庫版に収録された「補章」のメッセージで号泣させられ、
    たとえこの後清水さんや、清水さんのご家族が大変なことに
    なりそうでも、清水さんには「正義」をもって報道を続けて頂きたい、
    と思った矢先、文庫版あとがきの最後1ページで本当に
    衝撃を受け、涙が止まらなくなりました。

    そんな清水さんは、この事件の後も様々な事件を
    追っています。
    去年の年末に、「殺人犯はそこにいる」
    という本が出版されています。
    清水さんの活動を後押しするためにできることは
    一人でも多くの方に、知っていただく、読んでいただくことかな
    と思います。是非、読んで頂きたいと思います。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「その余力で市民を守るものだ。」
      何と言うか、、、恐ろしいコトです。
      「文庫版に収録された「補章」のメッセージで」
      早く読まなきゃ、、...
      「その余力で市民を守るものだ。」
      何と言うか、、、恐ろしいコトです。
      「文庫版に収録された「補章」のメッセージで」
      早く読まなきゃ、、、実は予約中。
      2014/04/21
    • ヒロセマリさん
      nyancomaruさん、是非時間のある時にお読み頂きたいと思います。止まらなくなってしまいます。
      nyancomaruさん、是非時間のある時にお読み頂きたいと思います。止まらなくなってしまいます。
      2014/04/21
  • 本読みならば、読まなければならない本があると思う。
    これは、そういう1冊。

    ひとりの週刊誌記者が、殺人犯を捜し当て、警察の腐敗を暴いた。

    埼玉県の桶川駅前で白昼起こった女子大生猪野詩織さん殺害事件。
    彼女の悲痛な「遺言」は、迷宮入りが囁かれる中、警察とマスコミにより歪められるかに見えた。

    だがその遺言を信じ、執念の取材を続けた記者が辿り着いた意外な事件の深層、警察の闇とは。

    詩織さんの死後に自宅に届いた、つくば万博のときに未来の自分に宛てて書いたた手紙に思わず落涙。。。

    上尾署の対応と隠匿、隠蔽工作には驚愕。
    更にその続く事件にも・・・。

    「記者の教科書」と絶賛された、事件ノンフィクションの金字塔!

  • 途中、ちょっと読むのが辛くなりましたが読み始めたらするすると読んでしまいました。確かに一時期、犯罪被害者を貶めるような報道が続いた時あったよなぁ。よしんば被害者が売春婦だろうがホームレスだろうが被害にあったという一点だけを報道するべきであってその人の過去や人物像とは本来事件は関係ないものだよな、と改めて思いました。大体、人格や来歴と刑事事件が結び付けられるのであればとっくの昔に犯罪被害者になってなきゃおかしいような人はもっと他に居るはずだし。

    それにしてもこういう、粘着気質の話が通じない人に見染められちゃった場合、どうしたらいいんだろう?警察は及び腰だし、なんせ話が通じないから法的機関に訴えてもなぁ…という感じだし。
    暴力に暴力で対抗するわけにもいかないし(大体普通の人はそんなツテが無いし…)ボディーガードを雇うにもお金が無いと無理だろうしなぁ…。

    出会った時はそんな人だと思わなかった、という言葉がすべてのような気がする。でも犠牲になられた方が運が悪かった、で終わらせてもイカンのですよね。それこそが彼女が後に残した遺言だろうと思うから。

    そして警察の保身には吐き気を覚えますね。一人一人、個人的にはそんな悪い人ばかりじゃないと思うんだけど組織になるとどうしてこうも、固まってしまうのか。今も政府要人の知り合いだか友人だかという繋がりで極端なぐらい優遇措置を取ろうとする公的組織が問題となっておりますが… なんでこうなっちゃうんだろう?とホゾを噛む思いです。もっと自分の仕事に誇りを持とうよ、公務員!と言いたい。出世や保身を考えるばかりではなく誰のための、何のための組織なのだという事をもう一度考え直してほしいものです。

  • この事件を通して、当時、写真週刊誌FOCUSの記者であった著者が追ったものは、ストーカー殺人の犯人そのものと、被害者の求めに応じず、事件後も適切な対応を行わなかった警察組織の暗部、このふたつです。

    ストーカー事件における主犯者の異常性と卑劣さ、そしてもう一方では著者によって「人間がいない」表される、とある警察組織の事なかれ主義や出世主義による改ざん、隠蔽、無神経さ。二つの問題それぞれを通して、本書には見るべきところが多々あります。また被害者の遺族に対しては不謹慎にあたるかもしれませんが、ミステリー要素も含む読み物としても非常によくできいます。

  • 18/5/20読了。

    最後の数十ページを近所の公園で読んだ。
    日曜日ということもあり、目の前ではたくさんの子供と両親が遊んでいる。追いかけっこをしたり、滑り台をしたり。

    私は涙が止まらなかった。
    詩織さんやご家族に同情したからではない。
    彼らが抱えている感情は、私ごときに同情できるような単純なものではないはずだ。

    あれだけのことをされているのだから、どこか遠くへ逃げれば良かったのだ、という人がいるかもしれない。

    でも、詩織さんとご家族はそうしなかった。
    きっと信じていたのだ。
    日本という国を、警察という組織を。
    大好きな家族との思い出が詰まった上尾という街を。

    人は、やはり誰かを何かを信じることで強くなれるのだ。


    事件から19年が経つ。
    そろそろ実行犯も出所するのだろう。
    とにかく悔しくてたまらない…

  • 1番の頼りどころである警察がこんなんじゃあなぁ。。
    この地域に住む方々が不憫でならない(´ω`)
    この方の他の本も読んだけど、記者としてだけじゃなく本当に人間的にも素晴らしい方なんだろうなぁと思う。
    ハムスターへの想いからも伝わる。

    被害者の方は本当に怖かっただろう。こんなことになってしまったときのための警察なのに。この男に出会ったことやこの地域に住んだことが本当にかわいそう。

    あと簡単な言い方かもしれないけど、清水さんの本は本当に読みやすい。
    難しい言葉や漢字を使ってなくて(´ω`)

  • ストーカーとは全然関係ないが
    最近、ネット詐欺被害に合いそうな奴の
    とばっちりを受けてしまった。

    それで、警察に付いて行って
    話を聞いてもらったんだが…

    ま~ほとんど警察は役立たず…(笑)
    こっちは単なるイタズラ被害だから
    そんなに問題視しなかったが。

    警察ってところは
    犯罪を未然に防ぐのではなく
    犯罪が起きた後の事後処理機関
    それでしかないんだなと…

    犯罪者を出さないなんて価値観もない
    加害者と被害者が出てはじめて
    重~い腰を上げる。

    この本を読んでいると
    それがよーく分かります。

  • 遺言
    「詩織さんは、小松と警察に殺された...」
    徐々にその意味が分かるにつれて、恐ろしさに胸が震えた。

    清水氏の作品を読むのは、3冊目だが、本作もノンフィクションだけが持つ「真実の力強さ」に圧倒された。
    過度な表現ではなく、まさしく読む手が止まらず、一気に最後まで読まされた。

    様々なストーカー被害に遭いながら、警察に訴えてもその対応は進まず、そして、貴重な命を奪われてしまった詩織さん。

    清水氏の取材にかける執念とは、そして、被害者の無念、清水氏が受けたバトンとは、、、

    また、私事とはありますが、あとがきにある清水氏の娘さんの訃報に、涙がこぼれました。

    最後に、被害者の父である憲一氏の言葉が心に残ります。

    「この事件の真実を求める多くの人たちに、この事件がどのようなものだったのか、また、報道を志す人々に、報道する人間が真に持つべき姿勢とはどのようなものか、この本を手にする事で分かって頂けると信じ、心から願っている。(平成16年1月)


  • テレビで何度か映像化しているのを見ていたので、作品自体に新鮮な驚きはないが、桶川ストーカー殺人事件は、当時FOCUSの記者であった作者がいなかったら、全然別の結果を招いたかもしれないと思うと、ゾッとする。
    そもそも、この事件には2つの要素がある。
    猪野詩織さんが殺害されたストーカー殺人と、上尾署の隠蔽。
    今作では、悩みながらも、諦めずに取材を続けた作者の執念にただただ脱帽…
    来年で事件から20年。
    その間にストーカー規制法が施行された。
    今、殺害された時と同じ年齢の女子大生は、この事件を知らないかもしれない。
    1人の女子大生の死が世の中を大きく変えたことを、リアルタイムで報道を見ていた私達は風化させない義務があることを忘れないでいたい。

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著者プロフィール

昭和23年生。皇學館大学学事顧問、名誉教授。博士(法律学)。
主な著書に、式内社研究会編纂『式内社調査報告』全25巻(共編著、皇学館大学出版部、昭和51~平成2年)、『類聚符宣抄の研究』(国書刊行会、昭和57年)、『新校 本朝月令』神道資料叢刊八(皇學館大學神道研究所、平成14年)。

「2020年 『神武天皇論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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