- Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101492223
作品紹介・あらすじ
5人の少女が姿を消した。群馬と栃木の県境、半径10キロという狭いエリアで。同一犯による連続事件ではないのか? だがそのうちの1件「足利事件」は“解決済み”だった。冤罪の背後に潜む司法の闇。執念の取材は“真犯人”の存在を炙り出すが……。知られざる大事件を明るみに出し、日本中に衝撃を与えた怒りの取材記録。「調査報道のバイブル」と絶賛された傑作、待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
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「桶川ストーカー殺人事件・遺言」の著者でもある清水潔さんが書いたノンフィクションである。
清水さんは2007年より「足利事件」の追跡を開始し、確定していた無期懲役囚・菅谷さんは冤罪ではないかとの疑問を持ち、捜査の矛盾点や謎を継続報道。DNA再鑑定をすべきだと提起し続けた。
2009年、日本初のDNA再鑑定により犯人のDNAとの不一致が判明。
菅谷さんは釈放された。
清水さんは文藝春秋において数ヶ月にわたりレポートを掲載。
菅谷さんの釈放時にも迎えのワゴン車に同乗していた。
何故こんな冤罪事件が起きたのか。
清水さんはひとつひとつ丁寧に検証し、自身で取材をしながら真実へと迫っていく。
「ルパン」と呼ばれる真犯人。
実は清水さんによってすでに警察には情報が流されている。
しかし、少しも事件解決に向けた捜査は進展していない。
これは何を意味するのか?
警察の威信とは何だろう?
人間がすることだ。科学捜査における信憑性も時代とともに変化する。それは仕方のないことだろう。
だが、間違いに気付いたときにどう対応するのか。
そこにすべてがかかっている。
腐った組織は隠蔽工作に走り、自浄力のある組織は反省すべき点を反省し二度と同じ過ちを繰り返さないよう努めるだろう。
はたして警察はどちら側の組織なのだろうか?
清水さんを突き動かしているのは「怒り」なのだと思う。
突然奪われた未来、冷酷な犯人によって断ち切られた未来。
残された家族の慟哭など犯人は理解できない。できないからこそ、こんなにも残酷なことができるのだ。
「ルパン」もこの本を手に取って読むのだろうか?
せめてほんの少しでも後悔の念があるのなら、逃げきろうなどということは考えないでほしい。
罪を犯した者は相応の罰を受けるべきなのだから。
清水さんの思いは「あとがき」に詰まっていた。
大抵のことなら取り返しがつく。何とかなる。やり直せる。私はそう信じて生きている。
だが「命」だけは違う。唯一無二。
どれほど嘆こうが取り戻すことなどできない。
一日も早く真犯人が逮捕され、真実が明らかになるよう願っている。
けっして許してはならない悪もこの世にはあるのだから。
【足利事件とは?】
1990年5月12日、足利市にあるパチンコ店の駐車場から女児が行方不明となる。
翌朝、近くの渡良瀬川の河川敷で遺体となって発見された。
犯人として菅谷利和さんが逮捕され、起訴され実刑が確定して服役していた。
しかし、遺留物のDNA型が再鑑定により判明。
再審で無罪が確定した。
【北関東連続幼女誘拐殺人事件とは?】
・1979年8月
足利市の八雲神社境内で遊んでいた近所の5歳女児が行方不明となる。
6日後、渡良瀬川近くで全裸でリュックサック詰めにされた状態で遺体となって発見される。
リュックサックは市内業者の特殊仕様によるもので数十個しか販売されていない。
・1984年11月
足利市パチンコ店より5歳女児が行方不明となる。
1986年3月8日、自宅から1.7km離れた場所で白骨死体として発見される。
・1987年9月
群馬県新田郡尾島町で8歳女児が自宅近くの公園へ遊びに出かけたまま行方不明となる。
1988年11月27日、利根川河川敷で白骨死体の一部が発見される。
・1990年5月(足利事件)
詳細は上記にて記載
・ 1996年7月
群馬県太田市のパチンコ店で4歳女児が行方不明となる。
未だに何も発見されておらず失踪事件となっている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
Twitterでよく目にし、政治や社会問題に対しての発言が「とても信頼の出来そうな人だ」という印象を受けていたある記者が、「文庫X」の著者だと知り、しかもその内容があの足利事件に迫ったものだと知り、絶対読んでみようと思った。
読んでみて、この国はこんな理不尽なことがまかり通っているのかと本当にがっかりしたし、自分の住む界隈の事件なのに何も知らずに生きてきたことへの焦りを感じたのと同時に、自分がどんな立場になろうと小さい声に寄り添うことを第一に真相へとせまっていく覚悟のあるこの記者に心底敬服した。Twitterで受けた印象は間違っていなかった。
実際に「ルパン」は捕まっていないし、飯塚事件は死刑執行されてしまっている。だけど、この清水記者の血のにじむような調査報道は、こうやって日本中に広まっているわけで、何かしら影響を与えていくに違いないと信じたい。
そして何よりこの本を読む一番のきっかけとなった「文庫X」の発案者の書店員さん、すごい。大成功ですね。 -
殺人犯はそこにいる (新潮文庫 し 53-2)
(文庫X)
著者:清水潔
上記の表紙ではピンとこない方が多いかもしれない。
ここ数か月の間に本屋に行った事がある方はこちらの表紙は見た事があるのでないだろうか?
ある書店員が本書をアピールするためにはどうしたらよいのか考えて行き着いた。
皆に読んで欲しい。
手に取って欲しい。
知って欲しい。
書かれているようにこれは小説ではない。
元の表紙では読んでくれない読者が多いのではないか。
私もその一人になっていたと思う。
この表紙だったからこそ手に取って読む気になった。
立ち読みもせずどんな内容かも知らずにそのまま購入して読んだ。
500P以上もありノンフィクションでありながら一日で読みきった。
それだけ引き込まれた。
心が揺さぶられたとか衝撃的だとかそんな表現では生温い。
愕然としたし憤りを感じたしもっと単純に著者の調査報道をする姿勢が凄いと思った。
本来報道とはこうあるべきでこうであって欲しいと切に願う。
本書は4名の幼女誘拐殺人事件と1名の幼女誘拐事件について記者が事件を取材し現時点で書ける範囲を書いている。
書ける範囲と書いたのはまだ事件は終わっていないからである。
警察のあまりに杜撰な捜査。
警察、検察、裁判所。
国家権力のあまりに杜撰な体制。
組織の都合のみ優先とするあまりに傲慢な態度。
人の命がこんなにも軽く扱われていることに唖然とした。
これはドラマや映画ではない。
本当にあった出来事でありそれは今も継続している。
目を背けず向き合わなければいけない。
何が出来るのか分からないし何が出来るわけでもないかもしれないが、まずは知る事から始まる。
報道機関や記者の見方が変わった。
本編及びあとがきを読めばその意味が分かると思う。
私もこの書店員のように多くの人に読んでもらいたい。
読んで事実を知るべきだと思う。
幼い子の命が奪われた。
何故それを解明しようとしないのか。
そこにはもう戻ってこない被害者がいる。
被害者遺族がいる。
そして加害者、犯人がいる。
しかも塀の外に。
近くにいるかもしれない。
それも平然と。
逃れている殺人犯がいる。
逃している殺人犯がいる。
「殺人犯はそこにいる」 -
書店員さんが、より多くの人に読んでほしいということで表紙を隠し「文庫X」という形で本屋さんに並んでいた本書。
読み終えて思ったのはやはり、ひとりでも多くの人に読んで、知ってほしいということでした。
TVやネットから日々流れていく情報量が多すぎて、何となく事件というものが軽く感じられるようになってしまった気がします。でもこうして活字で読むことによって、よりリアルに事件を知ることが出来る。
筆者である「清水潔」記者の執念。ここまで調べて追及して書くということがどれほどのことか。
この事件のことは当時ニュースをみて知っていました。同じ年頃の姪がいたので、気にしてみていた事件でした。それでも私の中では「連続女児誘殺人事件・犯人逮捕」で「終わった事件」でした。
しかしそれは、警察やマスコミによる「操作された情報」だったのですね。
ここ数年私はマスコミの情報はすべてが事実ではないと感じ、そのまま信じないことにしています。
TVドラマや映画でも、警察や裁判所の「正義」にたいしての揺らぎを取り上げるものが多くなっています。
それらが真実であるならば、私たち一般人は何を信じ誰を頼り暮せばよいのか・・・。
冤罪で牢獄生活をさせられた人がいる。人生を台無しにされた本人とその家族に誰がどんな償いをしてくれるというのでしょうか?
真犯人がほかにいるのに、捕まえることも牢獄へ送ることもしてくれない警察、裁判所、国に対して被害者の家族は何を信じどう生きてゆけばよいのでしょうか?
そして何より被害者の幼い子供たちの未来を奪った犯人が今も普通に生活をしているという事実はどう解釈をすればよいのでしょうか?
この事件に本当の意味での結末はあるのでしょうか?
せめてこの本が、この国が住みよい平和な国であるための一石になることを願います。 -
ふぅ…。
疲れた。
昨年話題になった「文庫X」、ずっと気になっていた1冊をようやく手に取れた。
前半・・・・。
仮にフィクションであったとしても良くできてるなと思える位の臨場感と疾走感とドラマティックな展開。
筆者の執念の取材が、人を動かし、世論を動かし、霞ヶ関までをも動かし…まさしく“日本を動か”していく様は、痛快だった。
それが、フィクションどころか紛れもないノンフィクションなのだから、心に響く。
足利事件の冤罪証明は、文字通り清水さんの存在なくしては成り得なかっただろう。
後半・・・・・。
本を読んでいて気分が悪くなってきた。
筆者の言うところの「当局」の人達のあれやこれやな隠蔽作業、取り返しのつかない事実…。
読んでて気持ち悪くなって来るほどの現実の重さ、社会の抱える闇…。
★5つ、10ポイント。
20180606新。
※「文庫X」という売り出し形態を考え出した某書店員のアイディアに感謝。
体調崩しそうになりながらも、読んで良かったと思える一冊。「文庫X」が話題にならなかったら、きっと手に取ることは無かっただろうから。
※もっともっと、ひとりでも多くの人に読んでもらいたい一冊。 -
わたしは想像してみた。ある日、身に覚えのない事件のことで突如として逮捕されてしまうことを。取調室で何時間にも渡ってお前がやったのだろうと責め立てられ、認めるまで食事も、眠ることさえ許されない場面を。
果たして自分はやっていないと貫けるだろうか。
そして、自分や身近な大切な誰かがそのような局面に出くわすことは本書を読む限り、ないとは言えないのだ。
本書は足利事件を追い、それを連続幼女誘拐殺人事件だと断定し、そして真犯人を追うノンフィクションだ。
当時の報道はテレビで観た記憶がある。
犯人として服役していた菅家さんの無実が証明され、釈放された映像はよく覚えている。だがその裏側にこのようなことがあったとは。
わたしはノンフィクションを読むときには文章に書かれたものをそのまま飲み込むことはなるべくしないようにしている。書き手がいる以上そこに書き手の想いが入ってしまうであろうし、物事を一方からしか見ないことは危険だと思っているからである。
本書については特に、身内に警察関係者がいるので気をつけて読み進めた。
それでも、読みながら怒りや焦りを抑えきれずにいた。
こんなことが現実に現代の日本で起きているのか。
著者である清水さんは何度も繰り返し訴えている。これは警察の捜査への批判ではない。冤罪の恐ろしさを訴えるための文章ではない。ただただ、幼い少女たちの命を奪い、遺族の悲しみを、冤罪で捕まった人の人生を踏みにじり、未だに野放しになっている真犯人を捕まえてほしいだけなのだと。
清水さんは独自の取材でおそらく真犯人はこの人だと割り出し、捜査当局へ情報提供を行っている。
にもかかわらず、未だ未解決事件であるということが恐ろしい。
もちろん安易に逮捕はできないであろうと思うが、捜査が進展していないことが恐ろしいのだ。
今ではDNA鑑定の精度も当時の比ではないほどに進歩しているであろうに、再調査すら恐らくはなされていない、もしくはされてはいるが放置されているのである。
多くのマスコミ関係者、警察関係者、司法を扱う人々に、そして一般市民にも読まれるべき1冊だと心からそう思った。
1日も早く、真犯人が捕まることを、そして遺族や冤罪で人生の多くの時間を刑に服してきた菅家さんが心休まる日が来ることを祈るばかりである。
そしてこのような本をしたためることを決断した清水さんには賞賛と尊敬の念をおくりたいと思う。 -
読みながら憤り、驚き、やるせなくなり…様々な感情が渦巻いた一冊であった。
群馬と栃木の県境で起こった、いたましい少女連続殺人事件。不可思議な未解決事件に疑問を持った、ジャーナリスト清水氏の執念の取材により明らかになっていく、衝撃の事実にただただぞっとした。
いつ、どんなきっかけで、自分が犯人にされるかわからない。
冤罪の構造。こんな杜撰な取り調べが、まさか現代でも行われているなんて。何が正しいのか、何を信じたらいいのかわからなくなる。自分の価値観が一瞬にして崩れ去るのを感じた。
この一冊に詰め込まれた情報量は相当なものだが、それでも、ページを捲る手を止められなかった。あまりの理不尽さに怒りが収まらなくなりながらも。読了後、もう一度読み直したときは、抑えていた悲しみが一気に溢れ、涙が止まらなかった。こんなことが本当にあっていいのかと。そして、どうして清水氏がここまで全てを投げ打った取材をするのか、その理由を考えると、あまりに辛すぎた。
こんな腐った世の中に絶望を一瞬感じたけれど、救いは、己の身を顧みずに真実を追求し続ける、清水氏のようなジャーナリストの存在だ。そして、とあるムーブメントにより本書を購入し、感銘を受けた読者が大勢いるということ。私もその一人だ。この本を読んで本当によかった。更に多くの人が本書を手に取って、世を変えるきっかけになってくれればいいと切に思う。 -
ノンフィクション。
いてもたってもいられない。現在進行形の本。殺人犯を捕まえるための本。子どもを助けるための本。ひとりでも多くの人が読むことで、子どもを救い出せるかもしれない本。本が売れることが警察を動かす力の一押しにきっとなる本。
こんなに誰彼かまわずすすめてまわりたくなる本は、初めてです。 -
警察や検察のメンツは人の命よりも重いのか…警察と検察に対する不信感が募り、冤罪事件に対する恐怖を感じた衝撃的なノンフィクションだった。
本書は日本テレビが行った報道特番プロジェクト『ACTION 日本を動かすプロジェクト』の裏側を描いたノンフィクションである。テレビの放送も興味深く観たのだが、番組の裏には、これほどの綿密な取材調査とドラマがあったとは知らなかった。
群馬県と栃木県の県境で起きた5人の幼女誘拐殺人事件。その中の一つの事件である足利事件は警察に検察による怠慢と隠蔽工作により冤罪事件となる。この事件が足枷となり、5つの事件は長らく線で結ばれることはなかった。この5つの事件の関連性に着眼し、丹念な取材調査で同一犯人によるものという結論を導きだしたのは日本テレビ記者だった…
そして、辿り着いた結末は… -
これ当たりだなハマったわと思いながら読む時はいつも、数時間でああもっと読みたいのにもう半分過ぎちゃった、となるのだが、これはそのテンションでもまだ半分に満たないペースで意外だった。それほどかみしめて読んでいた、何もかもずっしり重かった。後半も飽きないどころか展開は続き、残りページが減っていく寂しさに気づかないふりしてもっと先に進みたくて、同時にいろんな思いが沸き起こってきて止められなかった。
足利事件の裏側を放映していたテレビを見るともなく見ていて、そんなことある?!とググったら、番組で取り上げ続けたことがきっかけで再審とあり、著者の名前のリンクを見て読まないわけにいかないと直感した。右から左へ受け流していたなんとなくの情報、その奥にこんな大闇があったとは。ボキャブラリーなさすぎてイラつくイマドキの若者ばりに「ヤバい!」を連呼をしたっちゅーに。むしろ多くの若者にこれ読んで本来の意味で連呼して欲しいわ。警察どころの話でなく、国家が、日本が、もう闇が深すぎる。人間は愚かだけど、できることもきっとある。
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