三島由紀夫の世界 (新潮文庫 む 9-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (598ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101497112

作品紹介・あらすじ

破れた初恋が、その生涯に落した長い影。「仮面」の創造と「他者」への転生の足跡。そして、死を賭してまで世に訴えたかったこと…。生前の深い交友を絶妙の通奏低音としつつ、創作や評論、ノート、書簡等、あたう限り三島由紀夫自身の言葉にもとづき、類いなき文学者の全体像を精緻に浮びあがらせる。スキャンダラスな曲解、伝説の数々を払拭し、「三島論」の期を画した決定版評伝。

感想・レビュー・書評

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  • ろくに三島由紀夫の著作を読まずに、本書をよんでしまったのは良くなかった。

     ただ三島が右旋回していくさまに、友人である著者や周囲の人間は随分戸惑ったことだろう。書中には小林秀雄を引っ張り出して思いとどまらせようとしたことが紹介されている。
     多分他にもそんな“忠告”めいたものを三島はたくさん受け取ったのかもしれない。そして思っただろうか、なぜ自分の本気を信じてくれないのか、焦燥を理解してくれないのだと。
     軋轢はひどくなり、しまいには著者自身、絶縁状態というほど溝は深まった。最後に「頭の中の攘夷をする必要がある」と言われ、血走った目で見据えられた著者の心持ちを想像する。自分を否定する友人の姿に、取り返しのつかないほど遠くへ行ってしまったことを嫌というほど感じたことだろう。つらいことだ。

     三島がその行く末に絶望した日本の、そのなれの果ての姿、三島言うところの「無機的で、からっぽで、ニュートラルで、中間色の、富裕な、抜目がない、ある経済的大国」に今の私は住んでいることになるだろうか。終わりの経済大国は怪しくなっているけども。
     三島の絶望に唱和することは容易い。しかし、それでよいのだろうかという反対したい気もある。

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著者プロフィール

評論家。筑波大学名誉教授。1929年生。東京大学大学院文学研究科仏語仏文学専攻〔59年〕博士課程修了。94年没。大学院在学中から文芸評論家として活躍。58年には遠藤周作らと『批評』を創刊する。ナチズムに対する関心から、61年アイヒマン裁判傍聴のためイスラエルへ赴く。62年にはアルジェリア独立戦争に従軍取材。立教大学教授などを務めたのち、74年筑波大学教授。著書に『アルジェリア戦争従軍記』『死の日本文学史』『評伝アンドレ・マルロオ』『帝王後醍醐 「中世」の光と影』『三島由紀夫の世界』など。

「2018年 『新版 ナチズムとユダヤ人 アイヒマンの人間像』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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