灰色の虹 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (730ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101499130

作品紹介・あらすじ

身に覚えのない上司殺しの罪で刑に服した江木雅史。事件は彼から家族や恋人、日常生活の全てを奪った。出所後、江木は7年前に自分を冤罪に陥れた者たちへの復讐を決意する。次々と殺される刑事、検事、弁護士……。次の標的は誰か。江木が殺人という罪を犯してまで求めたものは何か。復讐は許されざる罪なのか。愛を奪われた者の孤独と絶望を描き、人間の深遠を抉る長編ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 2人の出会いから事件に至るまでの様子でも、無口ながら雅史の誠実な様子が伝わってくる。
    冤罪の恐ろしさと、雅史や家族の無念さ。
    読んでいて辛くなった。

  • 身に覚えのない殺人罪で刑務所にまで送られた江木雅史。彼は自分を冤罪に陥れた刑事に検事、弁護士、そして裁判官への復讐を誓う。殺人を犯してまでも復讐を成し遂げようとした江木の真意とは…。

    キーワードは“灰色”。灰色のウィンドブレーカーに、灰色の空、灰色の心、灰色の虹、そして灰色の世界。
    無実の罪で逮捕されてから、江木雅史を取り巻く環境は、全てが灰色に変わってしまった。
    こんなに不幸な人、いる?と何度も本を閉じて考えてしまうほど、気の毒な主人公。冤罪がいかにして作られるのか、よく分かった。だが、刑事も、検事も、弁護士も、裁判官も、皆それぞれの「正義」を信じて任務を遂行していたことは間違いない。では、誰が悪いのか? 実は、彼らの誰も悪くはない。それは犯人に仕立て上げられた江木雅史自身もそうだ。本書に出てくる人物の誰もが悪人ではないが、1人の無実の人間の人生を破壊したことも間違いない。それをキーワードの“灰色”で表現している気がする。
    貫井徳郎さんらしく、ストーリーに救いはないものの、最後まで母の愛だけは確固たるものとして存在していたことがありがたかった。

  • こんな理不尽なことはあってはならないけど人感情や思い込みが必ずある。と思います。
    威信?信頼?誇り?
    あくまでも個人的に「面子を守ることが仕事だと思っている人が多すぎます」と思います…

  • 冤罪ってこんな風にして出来上がるのかなぁと思いました。いい加減な目撃者。目撃しても、段々とどこまでが真実なのかわからなくなっていく。人間の記憶なんていい加減なものだと思いました。

  • 「冤罪」と「復讐」いう重いテーマでした。
    「冤罪」が発生するきっかけや、仕組みが刑事、検事、裁判官、弁護士、目撃者を通して描かれています。
    強い正義感や責任感をもって希望した職業に着いた人達が、慣れや思い込み、メンツを気にして取り返しがつかないミスを発生させる怖さを感じました。
    私達も仕事のミスの原因の大半は、きっとこうに違いないと言う「思い込み」であることを経験上知っています。だからこそ、組織としてのチェック機能、他者の意見が重要なのですが、そう言った機能がない、また言えない空気感が暴走させてしまったのではと感じました。

    こうなってしまうと犯人にされた人には底知れぬ絶望感しかなく、江木や両親、姉弟、婚約者達に感情移入してしまうほど心理描写が詳細に描かれています。
    特に子供を最後まで信じる母親の言葉には涙が溢れました。

    ただ一つ、疑問に感じたことは、山名刑事も、この事件の関係者が次々に死亡しているのはきっと犯人は「江木に違いない」と証拠もなく「思い込み」で捜査を始めたことです。
    これも一歩間違えれば、と思いながら読んでました。

    「復讐」は許されるものではありませんが、「冤罪」と結びつけ、考えさせられる作品になっています。
    おすすめしたい本の一冊です。

  • 冤罪について深く考えさせられる作品。他人事とは思えない気がする。

  • 最後まで気分が沈みっぱなし貫井作品の真骨頂。

  • 相変わらず救いようがない
    ラストでタイトル回収はやっぱり貫井さんだなと
    重い話は好きやけど読み進めるのがわりとしんどかった
    この人の本は真犯人がわからんくてもやもやとかそんなんじゃなくて結末に至るまでに考えさせられたことが大事なんやと思う

  • 冤罪と復讐を題材にしたミステリー。復讐する側だけでなく、される側の人物像も詳細に描かれているところが、現実感を持って読み込ませることにつながってますね。というか、冤罪ってこわいですねぇ、小説、フィクションとはいえ、日本の司法制度の偏りをリアルに感じさせて、なんかそら恐ろしくなってしまった。

  • 救いも希望もなく哀しいお話だけど面白かった。
    でも結局真犯人は誰だったの?とか、どうやって殺してたの!とか、裁判官死んで嫁はどうなった?とか、疑問は多々残ったままです。スッキリしないなー。
    でも復讐モノは好きです。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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