知らない映画のサントラを聴く (新潮文庫nex)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 90
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101800028

作品紹介・あらすじ

これは恋か、贖罪か。圧倒的恋愛小説。錦戸枇杷。23歳。無職。夜な夜な便所サンダルをひっかけて“泥棒”を捜す日々。奪われたのは、親友からの贈り物。あまりにも綺麗で、完璧で、姫君のような親友、清瀬朝野。泥棒を追ううち、枇杷は朝野の元カレに出会い、気づけばコスプレ趣味のそいつと同棲していた……! 朝野を中心に揺れる、私とお前。これは恋か、あるいは贖罪か。無職女×コスプレ男子の圧倒的恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりの竹宮ゆゆこを読んだ。
    ラノベの中ではもっとも注目している作家だが、クライマックスにもっていく手腕が特に良い。
    この作品は他の作品よりは大人し目であったが期待は裏切らなかった。大きな謎が未解決なんだけど。

  • 派手な要素はないのに、ダメダメな人間しか出てこないのに、
    なんだか分からないけれど、
    妙に惹かれる。
    人に説明しようとするとうまく言葉にできなくてもどかしいけれど、
    なぜか、読み終わってもずっと忘れられず胸に残る一冊というのが
    年に数回ある。
    それは本読みには幸福な出会いであり、
    読書の醍醐味と言えるだろう。

    僕にとってのそんな一冊がコレ。

    まず、センス抜群の表紙のイラストとPopなレイアウトに一目ボレ。
    手に取らずにはいられないその表紙の素晴しさよ。
    CDならジャケ買い間違いなしだろう。
    そして『知らない映画のサントラを聴く』という
    吸引力に優れインパクトあるタイトルをひとたび読んでしまえば最後。
    いったい中身はどんな話が書かれているんだろうと気になって仕方がない。
    (ハートを射抜く小説タイトルに送られるネーミング大賞なるものがあれば、大賞候補筆頭に挙げたいくらいの秀逸なタイトルだと思う)


    ストーリーは幼馴染みの親友、清瀬朝野(きよせ・あさの)を亡くした引きこもりニートな23歳の女性、錦戸枇杷(にしきど・びわ)が
    朝野の元カレであるセーラー服を着た変態男の昴(すばる)に出会い、
    もがき苦しみながら
    なんとか再生し自立していく物語。

    独特な感性が光る軽妙な文体と突き刺さる巧みな心理描写、
    映像喚起力に優れたキャラたちが織り成す
    生き生きとした会話劇を武器にテンポ良く描いていく。

    冒頭にも書いたようにこの小説、
    劇的な展開はないにも関わらず、
    全編まるで韓国映画のような
    ワケの分からないパワーに満ち溢れていて、
    なぜか読んでるうちにどんどん引き込まれていく不思議(笑)

    親友の不可解な死を発端に、
    立ち止まり回転することを止めた枇杷が
    この世の理である『回転力』に気付き、もう一度走り出すシーンは
    小難しい理屈なんかぬきに
    ストレートに胸を熱くする。
    (そうそう、このワケの分からない疾走感にうち震える感覚こそが竹宮作品の特徴であり、小説という表現がもたらしてくれる魔法なのだ)

    たとえ目的地から真逆の方角へ
    走っていたとしても、
    力一杯の逆走ぶりが、
    その愚直で不器用なまでの生き方こそが、
    結局最後には人の心を打ち、突き動かしていく。
    (そう、読む者に魔法を見せてくれる)


    思春期のある期間、本当は誰もが中二病だったのだ。
    近所のワルガキも先生も、
    父や母や政治家もあいつもあいつもみんな。
    強くなくてもいい。挫折を繰り返してもいい。
    ダメダメな枇杷や昴が主人公だからこそ、同じ苦しみに立ちすくむ多くの読者を救えるのではないのか。
    ラノベであっても漫画的であろうとも無問題だ。
    わけの分からない物語に救われる気持ち、
    なんだか分からないけれど読めば惹かれるその感覚。
    それこそが本来の読書の醍醐味ではなかったか。

    読むことで、読者がほんの一歩だけでも、前に進んでみようと思えるような、そんな作品なので、
    誰かを亡くした人、ニートの人、引きこもりの人、後悔をずっと引き摺ったままの人、
    すべての諦めの悪い挑戦者たちへ
    強くおすすめしたい。



    追記。
    僕自身、偶然にも枇杷と同じ23歳の頃、
    ボクサー仲間で高校時代からの無二の親友を事故で亡くしているので、
    枇杷が苦悩するシーンは本当に切なくて胸が痛くて読み進めるのが大変だったのだけれど、
    23歳のあの頃にこの小説があれば
    僕にとって永久不変のバイブル本となったのは間違いない。
    それでも大人になった今、この作品と巡りあえることができて本当に良かった。

    朝顔を美しく咲かせるのは、
    朝の光ではなく、夜の闇なのです。
    世界はいつでも変わりうる。
    そう信じきれた時、すべてのマイナスがプラスへと変わり、
    人生は初めて動きだすのです。

    ダメダメな先輩を代表して
    昔、どこかの校長先生が言っていた言葉を
    枇杷と昴に贈ろうと思う。

  • なんて素敵な主人公なのだ。すべてに捨てられてもしぶとく明るく生きていこうとしている。何も持たなくても笑顔と心の強さがあれば人は生きていけるのかもしれない。人と繋がれるのかもしれない。この主人公に襲いかかった悲しみは計り知れなけど、それでもこの主人公に幸せになって欲しいと、僕は心から願わずにいられない。

  • それならここに現れて、走り出したこの命を止めてみろよと枇杷は思う。現れてくれよ。目の前に。
    綺麗な終わり方。魂を燃焼させるような熱さがたまらない。恋愛小説らしからぬ紛れもない恋愛小説。

  • この本は私の人生に影響を与えた10冊の中の1冊です。その時まで親の影響で赤川次郎や東野圭吾、浅田次郎などミステリーやサスペンスしか読んでこなかった私が初めて出会ったいわゆる青春小説、ラノベに近い小説でした。表紙が擦り切れているぐらい何度も何度も読みました。昴と枇杷の掛け合いや関係性、2人ともこころに弱い部分を抱えていて、しかもその弱さは同じ根源からきているもの。それをどう乗り越え、どう生きていくのか。これは罪?と問いかけるラストシーンはもはや爽快でした。恋自体に罪なんてあるわけない。そう思える一冊でした。

  • 途中でつまらなくなっちゃうかも、と思って読み続けて、また展開が上がってきて、少し微妙になってきて、となんだかんがで読み終わったら、まぁまぁ良かったかも?と思える自分の中では珍しい一冊。

  • 面白かった!枇杷と昴、枇杷と朝野の掛け合いのテンポ好き。
    小説のテーマのひとつが回転なんだけど、ラストまで読むと冒頭のシーンに繋がってまた物語がまわりだすって構成すごい!!
    作者の他の作品も読んでみたくなった。

  • 相変わらず愉快なモノローグと流麗な情景描写が健在な竹宮マジックにぐいぐいと引き込まれましたが、タイトルは今一つ内容とそぐわない感じが拭えませんでした。読後の清涼感はあるものの「砕け散るところを~」超えはしなかったような。

  • 23歳、無職。
    大切な大切な存在を失い
    後悔にまみれた(でも自堕落な)生活を送っている

    そこに現れたのが、親友の元カレ。しかもセーラー服のコスプレつき!

    軽快な文章で一気読み。
    お互いの傷を舐め合うような関係って
    しんどくないのかなぁと思いつつ。。。

    昴のキャラがいい。

  • 面白かった!!漫画読んでるみたいなテンポでスイスイ読めた!
    内容もとっても素敵でずっとニコニコしながら読めた!元気になれるお話やった!
    タイトルも、ここから来てるんかぁって分かった時の爽快感!!めっちゃ面白い、
    竹宮さんの他の本も読みたい。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『心臓の王国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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