いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)

著者 :
制作 : 越島 はぐ 
  • 新潮社
3.46
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本棚登録 : 2528
レビュー : 281
  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101800042

感想・レビュー・書評

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  • 『いなくなれ,群青』というフレーズは物語の核心であって,主人公の心の叫びであって,表題であって,なによりこの本を手に取った時に最も強く惹かれた部分であった.
    このあまりにも詩的な表現は,物語全体を流れる雰囲気を表すのにこの上なく相応しいように思える.

    「人が成長する」ということを「なにかを捨てていく」ことと捉える視点を孕んだこの物語は,自分の中にあった「大人になってもいまのままの自分でありたい」というぼんやりとした思いを強く意識させるのに十分な主張の数々を含んでいて,ふとした文章にハッとさせられることも度々あった.

    静かで劇的で,心地のいい物語だった.

  • ■この物語はどうしようもなく、彼女に出会った時から始まるーー。

    11月19日午前6時42分、僕は彼女に再会した。誰よりも真っ直ぐで、正しく、凜々しい少女、真辺由宇。あるはずのない出会いは、安定していた僕の高校生活を一変させる。奇妙な島。連続落書き事件。そこに秘められた謎......。僕はどうして、ここにいるのか。彼女はなぜ、ここに来たのか。やがて明かされる真相は、僕らの青春に残酷な現実を突きつける。「階段島」シリーズ、開幕。

  • 現実世界のミステリー小説かと思ったら、ファンタジー要素がたくさんつまった物語であった。著者の思惑通り!?、途中まではそれに気づかなかった。最後の最後に、なんだ、そんな話か(笑)と思ってしまったけど、七草と真辺由宇の心情描写が素晴らしかったので星5つ。

  • ○どうしようもなく、君に出会った時からはじまるこの物語が好き。
    七草は、四日分の記憶がない中で階段島にたどり着いた。
    階段島は、「捨てられた人たちの島」だ。「自分が失くしたものを見つけなければ、出ることができない」のだという。
    その階段島に、幼馴染の真辺由宇が来た。
    真辺は納得できないことが嫌いだ。学校の先生から説明された、「少しずつここで納得を見つけるのだ」ということにすら、納得がいかない。
    そんな七草と真辺が、周りのみんなにヒアリングをしながら、なぜこの島を魔女が作ったのか、どうやったらこの島から出ることができるのかを調べていく。

    トクメ先生、タクシーの運転手、郵便局の時任さん、遺失物係、相原大地くん、謎の星と拳銃の落書き、堀、配電塔の中田・・・そして、七草と真辺。
    誰と誰が、何を結ぶのか?
    七草と真辺の過去に何があり、なぜここで巡り合うことになったのか?
    謎が謎を呼び、謎のままでしばらくあり続けるこの物語は、最後に急き立てられたかのように、七草の口からいろいろな謎が語られる・・・!


    階段島とは何だっただろう。
    そこに込められた真実を七草と真辺が解きほぐしていく様はとても青春小説であった。真っすぐすぎて正しくありたい真辺と、自分の意思を選び続ける七草。
    この物語の特徴は、真実とは何か、わからなくなること。
    何がオモテで何がウラなのか。失くしたものとはなんだったのか?
    いなくなってほしかったものはなんだったのか?

    群青とは?
    小説の中では、七草は落書き「ピストルスター」を昔、父親から見せられた記憶がある。吸い込まれそうな群青色の、その夜の空に浮かぶきれいな星たち。
    きれいな星たちがそれ単独で主張し合っている姿を想像すれば、それがあまりに哲学的な真辺の姿と重なっていく七草も想像に難くない。

    階段島の意味が理解できた最後に、七草の物語が真辺と出会った時からどうしようもなく始まったことだって、悲しい結論が待ち受けたことだって、理解できて、どうしようもなく、悲しかった。
    でも本人たちが思いのほか前向きにこの結論に取り組もうとしている姿に、心打たれる。

  •  この世界と似ているけれど、この世界とは異なる世界。
     そんな世界観の小説が好きだ。三崎亜記の小説が特に。

     (この世界はどこだろう。さっきまでは公園を歩いていたはずなのに、気が付いたら港にいた)

     小説が始まる雰囲気が良い。

     (ここは捨てられた人たちが集められた町です)

     そうか、世界が違うのか。
     最近乱発乱造の異世界モノとも違う、少し不思議(SF)な違う世界。
     元の世界に帰るためには、失ったものを見つけなければならない。
     捨てられた人が現れ、逆にいなくなる人もいる。

     そんな生活を続けていく中で、一人の女子がこの世界にやってきた。
     純粋なまでに真っすぐなそいつを、俺は知っている。

     この島には魔女が住んでいる。魔女はすべてを知っている。

     なぜ捨てられたのか、
     何を失ったのか、

     それを見つけなければ、この島から出ることはできない。

  • 表紙とタイトルに惹かれて購入。どこにもいけないものがある、この言葉の通り階段島にいる人々は何者かによって捨てられてこの島にいる。どうしてこの島に来たのか、落書き事件の犯人は誰なのかを主人公たちが解明していく青春ミステリー。ミステリーよりもファンタジーよりな作品で、透明感があり詩的な文章にとても引き込まれました。魔女の正体などの謎が残っているので、第2弾に期待です。

  • ミステリーとあったけど非現実な設定で静かに青春してる少年少女たちの話
    日常的じゃない日常を変だと感じないで受けいれてる島民にひどく憧れてしまう。
    ラストは欠落したものを自分の良さとして受け入れると誓った2人が印象的でした。

  •  「捨てられた人」が迷い込むとされる階段島という場所を舞台にした話。島は不思議な力で外と隔たれており、失くしたものを見つけないと島の外には出られないとされている。
     主人公の七草は島の外に出ようとも思わず島で平穏な生活を送っていた。しかし、幼馴染みの真辺が島に現れたことで、徹底的な理想主義者である彼女とともに島を出る方法を探すことになる。
     ネガティブで大抵のことを諦めてしまう七草と、常に正しいと思うことに対して全力を尽くす真辺という対照的な二人の組み合わせが面白かった。
     どんどんページを捲って積極的に続きを読みたくなるような話ではないが、読んでいていろいろな欠点を抱える登場人物たちに惹かれた。

  • なくしものを見つけないと出られない島。安らかな生活。山の魔女。再会する彼女。彼女はどこまでも真っ直ぐでどこまでも正しい。世界は美しいと信じている。彼女=真辺はいつだって清らかで、いつだって誰かを敵にする。自覚なく、言の葉の刃で。

    言葉は不完全である。何もかも伝えられるとは限らない。

    学校が怖いのにどうしようもなく教師でいることから離れられなくて仮面をつけている先生。言葉が苦手で手紙を書く女の子、ゲーム音楽を聞いていないと耐えられない男の子、どこか欠点のある彼らが果てしなく愛おしい。

    なくしたものを見つけるまでの理想郷、緩やかに流れる時間、世界と繋がっているのに世界から忘れ去られている。何にもとらわれず日々の暮らしには困らず、世界から忘れられて仲間と過ごす。ある意味理想郷に思えた。

    空気が非常に良い。真辺の纏う空気と七草の語り口がごく自然でそこに当たり前にあって。世界にいると脆くて生きていくために色々なものを捨てていかなきゃいけない。私がなくしたものもこうしてどこかでひっそりと生きているのならば、どこか救われる気がする。

    主人がなくしものを拾うまで待つ身としては救われるところじゃないのかもしれないけど、何も知らなければ幸せに暮らしていける。それは優しさだ。

  • 理想の愛の物語。悲しくて、それぞれ頑固さを持った人々がその芯をも揺るがしながら、それでも希望に向かう強さを持っていた。自分の欠陥も他人の欠陥も全部認めて愛したいって思うけど、そんなの理想論って鼻で笑う自分がいて、その感情は確かに一般的に正しいのだろうけど、自分の中の正しさをこそ信じていける強さが欲しいと思う。

著者プロフィール

徳島県出身。グループSNE所属。2009年に『サクラダリセット CAT,GHOST and REVOLUTION SUNDAY』で、角川スニーカー文庫よりデビュー。若者を中心に人気を博し、シリーズは7冊を数える。他著作に「つれづれ、北野坂探偵舎」シリーズ(角川文庫)、『いなくなれ、群青』(新潮文庫)などがある。

「2017年 『ベイビー、グッドモーニング』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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