スキュラ&カリュブディス: 死の口吻 (新潮文庫nex)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101800073

作品紹介・あらすじ

ねぇ、私を殺せる? 背徳の新伝奇ミステリ。初夏。街では連続変死事件が起きていた。まるで狼に喰い千切られたような遺体。流通する麻薬。恍惚の表情で死んでいく少女たち……。自らも死を求める高校生・此花ねむりは同級生の失踪をきっかけに事件を調べ始める。だが、そこには5年前の殺人事件に繋がる驚愕の真実が隠されていた――。性(エロス)と死(タナトス)、その果てに垣間見える少女の戦い。逸脱者たちが繰り広げる戦慄の新伝奇譚。

感想・レビュー・書評

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  •  狼に喰い千切られたかのような少女の遺体が連続して見つかる。美しい金髪の少女”此花ねむり”は鈴原楓という少女との出会いをきっかけに事件とそれに関連しているとみられる薬物について調べ始める。

     相沢さんの作風は日常の謎と丁寧な少女の描写の印象が強かったですが、今作は耽美で背徳的、そして官能的な面もある伝奇。今までの作風と全く違う作品ながら、
    少女たちの恍惚としたシーンの筆力がかなりのもので、相沢さんはこんな作風でも書けるのか、と意外に思ったとともに多才な方なんだな、と思いました。

     ミステリとしては展開が急な印象は受けましたが、この作品はミステリというよりも、上にも書いたように耽美で背徳な伝奇として、
    そして何よりも真相に近づくにつれ明らかになってくる逸脱者たちの絶望と孤独、かすかな希望を描いた物語のように思います。

     そうした絶望や孤独は今までの相沢さんが描いてきた普通の少女たちの抱えてきたものと、どこか似ているようにも思います。

     そのため相沢さんの新境地を開いた作品でありながらも、しっかりと相沢さんらしさを残した物語だと個人的には思いました。

     話としてはこの本でまとまっていますが、その後について明言されていない登場人物もいて、続編もあり得そうな雰囲気なのでぜひとも期待したいところです!

  • 面白かったです。
    ダークな世界に美しい人々…人外の。
    人外だから美しく生まれつくのか…?
    でもそれを受け入れて楽しむ人と、悩み続ける人と。
    ちょっと、どころじゃなく百合なのもいいです。
    あなたがいるから生きていく、って強い想いです。素敵でした。

  • 耽美的、背徳的でちょっと官能的な伝奇ホラーサスペンス。猟奇殺人、都市伝説、少女たちに広まる麻薬など怪しい要素満載。そして美少女も満載。百合百合しさも満載。
    怪事件を追いかける物語としては焦点が分散してしまっていて、吸引力は低め。ただ、そもそも怪事件が起こる舞台設定なだけで、怪事件を解き明かす物語ではないのかもしれない。
    自分は、非日常的な伝奇もの舞台の中で、それこそ特殊な事情を持つ主人公の少女の苦悩が描き出されていく物語として読みました。少女の友人への想い、死への渇望と葛藤、孤独、不安がぐさぐさと感情を刺激してきて、ほんと痛ましく愛おしいです。
    この本は、少女たちへの感情移入ができるかどうかで読んだ印象がかなり変わってきそうですね。
    世界観は好み。伝奇もの好きですし、すっと作品世界にはまれました。
    ちょっとしか出ない印象的な人物もいましたし、この世界観でまた作品が出るなら読みたいです。探偵さんメインの話も期待。

  • 【内容紹介】
    ねぇ、私を殺せる? 背徳の新伝奇ミステリ。初夏。街では連続変死事件が起きていた。まるで狼に喰い千切られたような遺体。流通する麻薬。恍惚の表情で死んでいく少女たち……。自らも死を求める高校生・此花ねむりは同級生の失踪をきっかけに事件を調べ始める。だが、そこには5年前の殺人事件に繋がる驚愕の真実が隠されていた――。性(エロス)と死(タナトス)、その果てに垣間見える少女の戦い。逸脱者たちが繰り広げる戦慄の新伝奇譚。

  • 何かに食いちぎられたような少女の遺体が残された現場と、血溜まりだけが残って遺体が無い現場。そんな少女達の連続変死事件が起きている街で、死を求める高校生・此花ねむりと同級生の鈴原楓の出会いを切っ掛けに始まる伝奇ミステリ。心に埋められない隙間を抱える少女達の心の交流を描く作品でもありました。エロティックでグロテスクなダークファンタジーですが、多感な少女達の心情が透明感とリアリティをもって紡がれており、さすが相沢作品と思います。

  • 偶然のように出会った楓とねむりは、お互いに必要な存在となっていく。でも、ひよりには絶対に言えない秘密があった。一方、二人が通う高校の周りで、不可思議な死が連続していた。
    ホラーで、官能的で、猟奇的。でも、自分の内面を見つめる自省的な面もあって、単なるホラーでもない。

  • 好きな作家さんだけど、これまでの著作とはだいぶ世界観が違います。伝奇物は好きだけど、これは普通かな。題材が同じでも、もう少し料理の仕方が違ったら、印象は違ってたかなと思う。

  • 思ってたほどの怖さはなくグロさも少ない。百合の要素もあるけど足りない。

  • 狼に食い千切られたような連続少女変死事件を少女と暮らす女性探偵が追う中、友達になった楓を食べたくて苦悩する和洋折衷の人形的美少女の此花ねむり視点の想いが切々として異形なのに難なく寄り添えてしまえて切ない。楓との相愛が尊い。死の恍惚他ナチュラルでいて濃密で凝縮されていて、艶やかで目映く耽美。堪能した。

  • 2017.3.18読了 27冊目

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著者プロフィール

1983年埼玉県生まれ。2009年『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。繊細な筆致で、登場人物たちの心情を描き、ミステリ、青春小説、ライトノベルなど、ジャンルをまたいだ活躍を見せている。『小説の神様』(講談社タイガ)は、読書家たちの心を震わせる青春小説として絶大な支持を受け、実写映画化された。本作で第20回本格ミステリ大賞受賞、「このミステリーがすごい!」2020年版国内編第1位、「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング第1位、「2019年ベストブック」(Apple Books)2019ベストミステリー、2019年「SRの会ミステリーベスト10」第1位、の5冠を獲得。さらに2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補となった。本作の続編となる『invert 城塚翡翠倒叙集』(講談社)も発売中。

「2022年 『medium 霊媒探偵城塚翡翠(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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