ここで死神から残念なお知らせです。 (新潮文庫nex)

著者 :
  • 新潮社
3.26
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本棚登録 : 835
レビュー : 103
  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101800226

作品紹介・あらすじ

「私、死んでいるの?」「はい。ご愁傷様です」梶(かじ)真琴(まこと)が、喫茶店で耳にした不可解な会話。それは、保険外交員風の男が老婦人に契約書のサインを求めている光景だった。漫画家志望で引きこもりの梶が、好奇心からその男を追及したところ、死んだことに気づかない人間を説得する「死神」だと宣(のたま)う。行きがかり上、男を手伝う羽目になったのだが──最期を迎えた人々を速やかにあの世へ送る、空前絶後、死神お仕事小説の金字塔!

感想・レビュー・書評

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  • 若い人にも、私のような平均寿命をとっくに半分以上過ぎた人にも読んでほしい作品。

    私がこの10数年読んできたのは榎田ユウリ作品より榎田尤利作品の方が圧倒的に多いのだが氏の作品は読むと必ず何かメッセージを残してくれる。
    この作品は終始「人は必ず死ぬのだよ」と繰り返す。人は死ぬのは当然の事だし、自然の理で誰も抗うことも覆すこともできない事実だ。
    しかし死が10年先か1年先か、明日か、1分後なのか。誰も分からないのに自分の事だと思っていない。それは多分ずっと先の事だと私達はなんとなく思いこんでいる。いや、思いたいのだ。できれば死の瞬間まで自分の死には触れずにいたいのだ。(たとえ墓や葬式の心配はしても)
    必ず来る自分の死を受け入れられないから、生きることも中途半端なのだ。したい事、しなくてはいけない事を怠惰に先延ばししている内に死は目の前に迫っているかもしれないのだ。
    主人公の梶は最後の最後で生き抜いたのかもしれない。それは死神の気まぐれだったのか死神の上司の采配だったのか。色々想像できるけれど、ラストのエピソードがなかったとしても私は梶はちゃんと生きたのだ思うことができた。
    梶は死神の手伝いをしながら人の死に向き合い、自分を慈しんでくれた人達の思いを受け取っていた事を知り、死んでいたけれど生き抜いたのかもしれない。そう思う。だから読み終わって、ひどく切ないけれど救われた思いがするのだと感じた。

  • 人間として生きる意味と覚悟を改めて認識させるところあり、ハートウォーミングなところもあり、で凄くおもしろかった。

  • タイトルのインパクトと表紙のイラストにつられて手に取り、立ち読みをはじめようとしたものの、一ページ目を読み終わる前にレジに直行していた。
    これは立ち読みじゃもったいない。
    大概、一目見ていいにおいがするとか、すごく気になると思った本にはずれはない。
    こういう「出会う本」は買っておいて損はない。
    実際、時間がないなかでもバスの中、歩きながらでも久しぶりに紙媒体の本の読書を楽しんだ。それくらい、気になって仕方がない内容だった。

    死神が出てきてそのお仕事を手伝う話。
    ありそうで、きっとある。
    で、頑固なおばあちゃんが出てくるあたりから、これ、主人公……とか脳裏をよぎり始める。
    おそらくそうだ。きっとそうだ。
    世に著されている死神モノといえばやっぱその流れだ。
    でも、じゃあその定石を踏襲しつつどう着地して見せてくれるのか?
    そこがもう作者の腕の見せ所だ。
    期待してしまう理由は、一つには死神のドライな人を食った性格。
    え、そこまでずばずば言っちゃうの? ってことまでずばずば言うけど、厭味ったらしくはない、というか、嫌味のつもりでいってるシーンもあったかもしれないが、作中にもあったではないか、「人は『言いたいこと』しか言わないんだよ。『言うべきこと』じゃなくて『言いたいこと』ね」と。
    『言うべきこと』は耳が痛いことなのだ。
    それを死神は歯に衣着せずはっきりと言う。笑顔で。
    そこが人間と死神の違いだ、と言わんばかりに。
    ちゃらんぽらんな風を装っていても、彼は揺らがない。

    一方の主人公はダメオタブサニートで、食えもしない夢ばかり見ている。いや、夢を見ることすらもうあきらめかけている。夢はもう言い訳になってしまっている。
    言うべきことから目をそらし、言われるべきことから耳を塞ぎ、一人殻に閉じこもっている。
    ああ、私がここにいる……(苦笑)
    この主人公、私だよ。
    アラサーの読者のうち、この本がしみた人間はきっとこの食えない夢を言い訳にしている主人公にすごく共感したはずだ。
    たとえ定職についていたとしても、諦めたもの、諦めきれずにいつかいつかと燻るものが胸の奥に閊えたまま、大人にならざるを得なかった=夢とは別の定職についてしまった人なら、きっと苦い思いで主人公を生暖かく己に投影することになるだろう。

    技巧的なことを言えば、この本はまさに新潮NEX文庫の想定対象者向けに書かれており、ピンポイントでうまく心の傷を甘く抉ってくる。
    エピソードやゲストの配置も絶妙で、「言いたいこと」を軽くジャブで、続いて少し強く、そして打ち込むように、と見事にゲストの傷と事件が絡み合いながら主人公を成長、いや、むしろ主人公に気付かせていく。
    死神と主人公の掛け合いに引き込まれつつも、そんなプロの小説家の技巧に軽く胸奥に焦げ付くものを感じつつ(←)あっという間に一冊を読み終えた。

    終わりのページが少なくなるのがこれほどもったいない、さみしいと思う本もまず少ない。
    でも、確かに定石を踏みながらこれほどまでに心を甘く抉ってくるからこそ、……なぜか押入れからお宝を取り出してゴミに出す準備をしているところに目頭の熱さを持っていかれるという、いや、場面というか、主人公のモノローグにね、持っていかれたんだよ。なにもエロゲ処分する童貞を憐れんだわけじゃないんだから。

    そんなわけで、タイトルのふざけ具合と絶妙な掛け合いのふざけ具合がまたおいしいのだけれど、人生を考えさせられる系の物語としてはふと若かりし日のマイバイブル「カラフル」を思い出したりして、この本はその隣に並べて第二のバイブルとしようと胸に押し抱いたところです。

    「明日はあると思うな、やりたいことがあるなら今日やれ、今日」
    そんな梶君の声が聞こえてくるようです。

  • 面白かった。
    死神が変に同情的でもなく、いい具合にドライで、そのドライさが作品をピリッとさせてたとおもう。主人公の最後は想像できたけど、続きも読みたい!のに図書館にない。。。

    2019.3.8
    40

  • キャラ設定が分かりやすくていいですね。脳噛ネウロをちょっと想起。量が多いけどガブガブ読める文章でした。大きな仕掛けもありそれがシリーズ次作ではどう展開されてるのか楽しみ。

  • 登場する死神はイマドキ風なノリで、ライトにテンポよく読み進められるも、そこはやはり死神、“生”と“死”については真理や事実をドライに甘い考えをばっさり一刀両断に。まさに正論なので時を漫然と過ごしている我が身としては耳が(目がw?)痛い。死を扱ったにしては単純にお涙頂戴にもならず、なかなか良かったと思います。

  • 榎田さん+とれしばさんとか私得!
    もともと榎田さんは読みやすいけれど、そんなにボリュームもないとはいえ、通勤行き帰り一回で読み終わるという…。ストーリー展開の肝にちょっと触れますのでご了承下さい。

    いやあーオチがね。「やっぱりそうなのかなぁそうなのかなぁ。あああやっぱり!?やっぱりかあああ!ってえ!?あ、そうなのか…ってえ!?!?」という二段返しでね。本編もするすると読めますけど、終盤からのひっくり返しひっくり返されの展開はもう「そうきたか!」っていう。
    編集さんの言葉ではないけれど、死神のキャラが立っているのでね、不定期でもシリーズになりそうですよね。恐ろしくさっくり読めるので、そこまでキャラクターの掘り下げとかは無いですが、榎田さんの押し付けがましくない程度の泣ける感じとか、テンポの良さとか、ちょっとずつ良いとこ取りで楽しめる感じなので、本を読むのが苦手な人でもお薦め出来そう。榎田さんの良さの真髄を知るには現在またまた新装版刊行中の「魚住くんシリーズ」だと思いますが…って閑話休題。
    「崩壊」あたりの描写はちょっと「幽霊詐欺師シリーズ@黒史郎」の雰囲気を思い出す。あそこまでぐちゃぐちゃどろどろは全然書いていないけれど、方向性として。人の死を、物質としての行く末も正面に据えている感じが。なんとなく。そこだけはもしかしたら少し苦手な人がいるかもしれないけれど。

  •  イケメン死神の余見透が活躍するシリーズ第1弾。
     死神というと、死の直前に迎えに来るというパターンが一般的だが、本作では死んだことに気づかない人に「死」を認めさせるという従来の死神観からは隔絶されている。
     死を認識できない死体が生きていた時の惰性で勝手に動いたりと設定は突拍子もなく、さらに死神自体も毒舌キャラなので、全体としては何となく軽い感じが否めないが、時々考えさえられる場面に出くわす。そのテーマが意外と重く、刺さってきて思わずそうだよなと改めて考えてしまう。
     軽く読めるけれど、意外と奥の深い作品という気もする。

  • とても読みやすい文章で、分かりやすく面白いです。

    導入の仕方は、主人公になる梶くんの語り口調で、感情移入しやすく、主人公が「典型的なオタク像」そののの人物だと把握しやすいけれど、ちょっとくどい。

    短編が3つほど重なり、大きな物語を構成するような形になって、その起承転結さはとてもスムーズ。

    【死】や【人との関わり】に関して、
    『死神』というファンタジーな登場人物を置くことによって、自分が考えている以上に多角的に考えることができます。

    典型的なオタクで、死に関して、人との関わりについて、そっぽを向いていた梶くんが、
    死神と行動することにより「人間らしさ」「人間らしい思考」「人間らしい行動」を取るようになるところに、物語として、読者に訴えたい部分を感じることもできます。


    ここからネタバレ含みます。


    どんなに鈍感な人でも、最後の物語が始まった時に、梶くんの状態に気付きます。
    もし梶くんが起きたその朝の状態が、伏線なのだとしたら、伏線が分かりやすすぎますね。

    写真を撮った時に、2人ともピンボケする、という部分があまりに予定調和で「え!そんな!」とはなりません。


    そして実際に梶くんの命が途切れるシーンでは、死神が少し梶くんに対して優しさを見せます。

    途中途中の短編になる物語の中で、少しずつ死神が優しさを見せていたならば『実は優しい死神で…』という物語もありだけど、
    とことん死神は死神として行動していたのだから、最後の梶くんに見せる優しさは、余分だったように思います。

    送信したかしてないか、は読者に想像させた方がスマートだったな。


    そして、最後の『実はマンガ落ち』が蛇足に感じました。

    描いてる漫画が本当は梶くんの過去の話で…と展開されるならまだ良しだけど、そうでもないし、
    そのくせ、それまでの出来事はマンガの中だったのに、死神の風貌に似ている人物を登場させるし…

    漫画家梶さん、の描いた漫画が、シリーズの何か重要なところになるなら、最後も蛇足ではないのだろうけど、さて、今後のシリーズにどう続くのかな?


    という私の感想でしたが、文章がまずいわけでもなく、読みにくいわけでもなく、題材は面白いので、シリーズを読むのが楽しみです。

  •  2015-09-22

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著者プロフィール

榎田ユウリ(えだ ゆうり)
東京都出身の小説家。 一般小説を書く時は「榎田ユウリ」名義、BL小説を書く時は「榎田尤利」名義と使い分けている。
2000年『夏の塩』でデビュー。榎田尤利名義では「魚住くん」シリーズ、「交渉人」シリーズが代表作。
榎田ユウリ名義では、2007年から始まる「宮廷神官物語」シリーズ、「カブキブ!」シリーズ、「妖琦庵夜話 」シリーズ、「死神」シリーズなどが代表作となる。

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