ここで死神から残念なお知らせです。 (新潮文庫nex)

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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101800226

作品紹介・あらすじ

「私、死んでいるの?」「はい。ご愁傷様です」梶(かじ)真琴(まこと)が、喫茶店で耳にした不可解な会話。それは、保険外交員風の男が老婦人に契約書のサインを求めている光景だった。漫画家志望で引きこもりの梶が、好奇心からその男を追及したところ、死んだことに気づかない人間を説得する「死神」だと宣(のたま)う。行きがかり上、男を手伝う羽目になったのだが──最期を迎えた人々を速やかにあの世へ送る、空前絶後、死神お仕事小説の金字塔!

感想・レビュー・書評

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  • うっすらと場面は覚えている。
    ただ死神が、死神死神し過ぎてる感があった。(言いたいだけのフレーズに聞こえますが、そんな感じでした。)

  • 漫画家志望の引きこもりニート、梶は行きつけの喫茶店で老婦人と男との奇妙な会話を耳にする。保険の契約かと思ったそのやり取りは死んだ事に気づかない婦人とその立場を納得させる死神との会話だった。死神に気付かれ梶は半ば強引に死神、余見の納得業を手伝う羽目になる。美形で軽〜い余見だか発言や行動は死神視点で容赦ない。駄目人間な梶の振り回されっぷりがご愁傷様と上から目線で読んでいたけどお約束の展開に入ってからは何故か色々染みてきた。明日が来る事を当たり前だと胡座をかかずに日々より良く生きていこうと思った。ただラストがやや蛇足かなぁ。少し前で畳んだ方が好みかも。

  • 世界が滅びる物語(他の著者の作品)の次は、死神の出てくる話へ…
    滅びるとか死ぬとか、潜在的に気になっている…??
    年末だなあ…(いや、年末関係ある…??)

    榎田ユウリさんの作品は先に「妖き(変換されないのでひらがなで)庵夜話」を読みきっており、そちらが落ち着いたダークなお話だったのでその文章のイメージのまま、本作も手に取った。
    しかし本作は、文章量はやや多めなものの文章の「軽さ」がすごくて、そのギャップに驚いた。

    とは言うものの、軽さがあるということは結構読みやすい、ということでもあり、ものの2時間かからないくらいで読み終わることができた。
    要は半引きこもりの梶が、いきつけの喫茶店で死神が老婆に契約書にサインを迫るのを目撃してしまい、その死神から仕事を手伝わされるようになってしまう…という、パターン的には“よくある”話。
    しかし梶が死神の仕事を手伝わされるようになる理由が、そのくだりを読んでいるときは今ひとつ腑に落ちなかったのだが(死神は全然、助手を必要としているようには見えなかったし)、オチまで読むと一応「そういう理由だったのか」とはなった。
    でも「そういう理由」なのかとおもったら、今度は「なぜ梶はこのオチまで“保っ”たのか…?」という疑問が出てきてしまった。
    それに対するこたえは、オチの次に出てきた大オチを読むと、一応の説明はつくのだが…、この話をこの大オチで包むことが、ちょっと安易に感じてしまった。
    なぜならば、この大オチが許されるならば、それ以前の話は本当に「何がおこってもいい、何でもアリ」になってしまうからだ。
    (ネタバレせずに書くと、感想がすごいふんわりしててわかりにくいな…)

    オチのところは、後半を読んでいると察しがつく。
    大オチについては「それってアリなの…?」という気持ちにはなる。
    妖き庵夜話のような緻密な構成が好きなので、こちらのシリーズは1巻を読んだ限りでは、うーんとなってしまったのだった。

  • 若い人にも、私のような平均寿命をとっくに半分以上過ぎた人にも読んでほしい作品。

    私がこの10数年読んできたのは榎田ユウリ作品より榎田尤利作品の方が圧倒的に多いのだが氏の作品は読むと必ず何かメッセージを残してくれる。
    この作品は終始「人は必ず死ぬのだよ」と繰り返す。人は死ぬのは当然の事だし、自然の理で誰も抗うことも覆すこともできない事実だ。
    しかし死が10年先か1年先か、明日か、1分後なのか。誰も分からないのに自分の事だと思っていない。それは多分ずっと先の事だと私達はなんとなく思いこんでいる。いや、思いたいのだ。できれば死の瞬間まで自分の死には触れずにいたいのだ。(たとえ墓や葬式の心配はしても)
    必ず来る自分の死を受け入れられないから、生きることも中途半端なのだ。したい事、しなくてはいけない事を怠惰に先延ばししている内に死は目の前に迫っているかもしれないのだ。
    主人公の梶は最後の最後で生き抜いたのかもしれない。それは死神の気まぐれだったのか死神の上司の采配だったのか。色々想像できるけれど、ラストのエピソードがなかったとしても私は梶はちゃんと生きたのだ思うことができた。
    梶は死神の手伝いをしながら人の死に向き合い、自分を慈しんでくれた人達の思いを受け取っていた事を知り、死んでいたけれど生き抜いたのかもしれない。そう思う。だから読み終わって、ひどく切ないけれど救われた思いがするのだと感じた。

  • いずれくる死の前に、生を全うする生き方をする。
    内容はラノベっぽくソフトで時折笑える描写もあるけど、伝ったのはそれで。
    すんなりと物語に入っていける読みやすさがありました。
    近頃重い作品が多かったから、たまにはこういうのもよかった。
    終わりくらいに2人のイラストが挿入されているけど。
    確かにこれは死神顔だわ(笑)

  • 死ぬということについてちょっと考えさせられたなあ。

  • 人間として生きる意味と覚悟を改めて認識させるところあり、ハートウォーミングなところもあり、で凄くおもしろかった。

  • タイトルのインパクトと表紙のイラストにつられて手に取り、立ち読みをはじめようとしたものの、一ページ目を読み終わる前にレジに直行していた。
    これは立ち読みじゃもったいない。
    大概、一目見ていいにおいがするとか、すごく気になると思った本にはずれはない。
    こういう「出会う本」は買っておいて損はない。
    実際、時間がないなかでもバスの中、歩きながらでも久しぶりに紙媒体の本の読書を楽しんだ。それくらい、気になって仕方がない内容だった。

    死神が出てきてそのお仕事を手伝う話。
    ありそうで、きっとある。
    で、頑固なおばあちゃんが出てくるあたりから、これ、主人公……とか脳裏をよぎり始める。
    おそらくそうだ。きっとそうだ。
    世に著されている死神モノといえばやっぱその流れだ。
    でも、じゃあその定石を踏襲しつつどう着地して見せてくれるのか?
    そこがもう作者の腕の見せ所だ。
    期待してしまう理由は、一つには死神のドライな人を食った性格。
    え、そこまでずばずば言っちゃうの? ってことまでずばずば言うけど、厭味ったらしくはない、というか、嫌味のつもりでいってるシーンもあったかもしれないが、作中にもあったではないか、「人は『言いたいこと』しか言わないんだよ。『言うべきこと』じゃなくて『言いたいこと』ね」と。
    『言うべきこと』は耳が痛いことなのだ。
    それを死神は歯に衣着せずはっきりと言う。笑顔で。
    そこが人間と死神の違いだ、と言わんばかりに。
    ちゃらんぽらんな風を装っていても、彼は揺らがない。

    一方の主人公はダメオタブサニートで、食えもしない夢ばかり見ている。いや、夢を見ることすらもうあきらめかけている。夢はもう言い訳になってしまっている。
    言うべきことから目をそらし、言われるべきことから耳を塞ぎ、一人殻に閉じこもっている。
    ああ、私がここにいる……(苦笑)
    この主人公、私だよ。
    アラサーの読者のうち、この本がしみた人間はきっとこの食えない夢を言い訳にしている主人公にすごく共感したはずだ。
    たとえ定職についていたとしても、諦めたもの、諦めきれずにいつかいつかと燻るものが胸の奥に閊えたまま、大人にならざるを得なかった=夢とは別の定職についてしまった人なら、きっと苦い思いで主人公を生暖かく己に投影することになるだろう。

    技巧的なことを言えば、この本はまさに新潮NEX文庫の想定対象者向けに書かれており、ピンポイントでうまく心の傷を甘く抉ってくる。
    エピソードやゲストの配置も絶妙で、「言いたいこと」を軽くジャブで、続いて少し強く、そして打ち込むように、と見事にゲストの傷と事件が絡み合いながら主人公を成長、いや、むしろ主人公に気付かせていく。
    死神と主人公の掛け合いに引き込まれつつも、そんなプロの小説家の技巧に軽く胸奥に焦げ付くものを感じつつ(←)あっという間に一冊を読み終えた。

    終わりのページが少なくなるのがこれほどもったいない、さみしいと思う本もまず少ない。
    でも、確かに定石を踏みながらこれほどまでに心を甘く抉ってくるからこそ、……なぜか押入れからお宝を取り出してゴミに出す準備をしているところに目頭の熱さを持っていかれるという、いや、場面というか、主人公のモノローグにね、持っていかれたんだよ。なにもエロゲ処分する童貞を憐れんだわけじゃないんだから。

    そんなわけで、タイトルのふざけ具合と絶妙な掛け合いのふざけ具合がまたおいしいのだけれど、人生を考えさせられる系の物語としてはふと若かりし日のマイバイブル「カラフル」を思い出したりして、この本はその隣に並べて第二のバイブルとしようと胸に押し抱いたところです。

    「明日はあると思うな、やりたいことがあるなら今日やれ、今日」
    そんな梶君の声が聞こえてくるようです。

  • 『大きな声じゃ言えないけどね、僕、死神。ふふ』余見透【死神】キャラクターが素晴らしい!『残念ですが、あなたはもう死んでます』心の中にしまっておきたい所にズカズカ遠慮なく入ってくる余見透【死神】。でもなんでかな救われるんだ。心の重たさが軽くなるんだ。大切な事を気づかせてくれた。【死】に触れることは【生きる】ということを教えてくれる。軽い気持ちで読んだけど心にしっかり残った読了後。子供にもいつか読ませてあげたいそんな本だった。続きも読もう。

  • 猫背で覇気のない外見、子どもの頃には「死神」とあだ名されたこともある梶。
    仕事もせず、ぼんやりと行きつけの喫茶店に出向くと、保険外交員風の男が老婦人に契約書のサインを求めている光景を目にする。
    男は、死んだことに気づかぬ人間を説得する「死神」だという。
    最期を迎えた人々を説得してあの世へ送る、対人スキルの低い梶は、強引に死神業の手伝いに駆り出され、自分の弱さと向き合うハメに。

    元看護師で、自分の状況を冷静に判断しつつ、まだ逝けない老女。
    交通事故にあって、あちこち不自由になっても明日の結婚式に出ようと奮闘する男性。
    梶自身の家族関係、隣人の不穏な様子、じっとりと不幸な種があちこちにあって、グロテスクな場面もあり、決して気持ちの良いお話では無いんだけど、希望を持ってしまう。
    もしかしてこれ、あれか、と途中から思って読んだら、やっぱそうか!
    でもいつから?あれ?

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著者プロフィール

東京都出身。おもにライトノベルにて活躍する気鋭。代表作は「カブキブ!」シリーズ、「魚住くん」シリーズ(角川文庫)、「妖き庵夜話」シリーズ(角川ホラー文庫)、「宮廷神官物語」シリーズ(角川書店ビーンズ文庫)など。榎田尤利名義でも著書多数。

「2023年 『妖奇庵夜話 千の波 万の波』 で使われていた紹介文から引用しています。」

榎田ユウリの作品

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