月桃夜 (新潮文庫nex)

著者 :
  • 新潮社
3.53
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本棚登録 : 172
感想 : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101800523

作品紹介・あらすじ

この世の終わりならふたりの全てが許される。奄美の海を漂う少女の元に、隻眼の大鷲が舞い降り、語り始めたある兄妹の物語。親を亡くし、一生を下働きで終える宿命の少年フィエクサと少女サネン。二人は「兄妹」を誓い、寄り添い合って成長したが、いつしかフィエクサはサネンを妹以上に深く愛し始める。人の道と熱い想いの間に苦しむ二人の結末は――。南島の濃密な空気と甘美な狂おしさに満ちた禁断の恋物語、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 第21回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
    作者の遠田潤子さんのデビュー作です。

    ファンタジーは苦手だと思っていましたが、最後まで読んで大変よかった作品です。

    今、現在の「海のはなし」では奄美の海でひとりで船を漕いでいるマブリ(魂)が抜けかかっている状態の茉莉香に鷺が空からやってきて話をします。

    そして「島のはなし」は鷺が茉莉香に話した天保の時代の薩摩のとある島の血のつながらない兄妹の話です。
    兄のフィエクサはみなしごで、二つ年下の4歳の娘サネンが慈父(ジュウ)を亡くしたのを引き取って、妹とすることを山の神に誓います。
    みなしごだったフィエクサは自分のそばに人がいる。ただそれだけのことが嬉しくて泣いてしまいます。
    フィエクサとサネンは貧しい身分のヒザとヤンチェの子供でしたので毎日働きづめの生活でしたが、フィエクサはアジャという老人から碁を打つことを教えられめきめきと腕を上げます。
    フィエクサは、ある時サネンの罪をかばって左眼を失ってしまいます。
    サネンは年頃になり、たいそう美しい娘になりヤマトの正木和興という申し分のない男からアンゴ(嫁)に来て欲しいという話がでます。
    フィエクサはサネンはアンゴになど行ってはならぬと言いますが、サネンは正木に碁を打つために兄を船に乗せてくれるのならと言い出し、申し出を受けようとしますが…。



    以下、思い切りネタバレ含みますのでご注意ください。


    フィエクサとサネンの兄妹愛は悲恋でした。
    血がつながっていないのだから現代だったら、何とでもなったろうにと思います。
    山の神に誓いなどたてなければよかったのに。
    フィエクサという名の通り鷺と化して海をさまよい、サネンの再生を待つフィエクサ。
    なんとも、もの哀しい終わりでした。

  • ★3.5

    日本ファンタジーノベル大賞受賞のデビュー作。


    この世の終わりならふたりの全てが許される。
    奄美の海を漂う少女の元に、隻眼の大鷲が舞い降り、語り始めたある兄妹の物語。
    親を亡くし、一生を下働きで終える宿命の少年フィエクサと少女サネン。
    二人は「兄妹」を誓い、 寄り添い合って成長したが、
    いつしかフィエクサはサネンを妹以上に深く愛し始める。
    人の道と熱い想いの間に苦しむ二人の結末は――。


    死んでもいいと思い、運命を任せようと奄美の海でカヤックに乗り
    パドルを捨て漂っていた茉莉香。
    しかし、夜の海で苦しんで死んでいくのが怖い怖いと震えている時、
    カヤックの艇首に大きな鷲が止まった。
    鷲は江戸時代の家慶公の時代からずっと海を飛び続けていると言う。
    江戸時代の奄美の史実に基づいた緻密な歴史の描写。
    そこに生きる人々の姿が描かれていた。
    ファンタジー小説と言われていますが、歴史小説を読んでいる様だった。
    知らなかった。知らなかった。
    奄美にこんな歴史があったなんて…。
    まるで奴隷制度だ。こんな過酷な歴史があったんですね。

    200年前の奄美の血の繋がりはない兄妹のお互いを想う気持ち故の苦しみ。
    そして、現代の自分の為に兄が苦しんで死んだ。
    あれで良かったのかと迷い迷っている妹の兄への愛。
    現代はともかく…200年前の神に誓った兄妹の互いを想う気持ちは、
    とても切なく、とても哀しく、とても哀れで可哀相。
    あまりにも哀しいお話なので読んでいて辛かった。

    時代は違えど、200年前と現代考え様によっては似ている。
    富める者はドンドン富。貧困にあえぐものは負の連鎖でいつまでも抜け出せない。
    「おまえも一粒の椎だ」
    誰かが必ず拾ってくれるって言いたかったのかな。
    希望を与えてくれようとしたのかな。

    哀れな鷲を思い、この世のおわりが来ることを願った…。

  • 魂の交わりを感じた、一冊。

    苦しみとせつなさ溢れる遠田作品、良かった。

    200年前の奄美の歴史を背負った遠い遠い"許されぬ愛”が時を旅して、夜の海を漂うカヤックの上で幻想的に交錯していく。

    静かな夜の波の音、サネン花の香り、砂糖黍の甘さ…想像が五感を刺激してくる。

    苦しみ、せつない想い、神に誓った愛を心で味わい、そして何よりも 貪る、喰らい尽くしてやる…という遠田さんの、心の底を奮い立たせるような言葉の美を味わい尽くした。

    愛よりももっともっと深い…魂の交わりなるものを感じる余韻が続く。

    • まことさん
      くるたんさん。こんにちは。

      『月桃夜』も読まれてたんですね!
      これは、哀しい話だったけど、よかったですよね。
      魂の交わり…そうかも...
      くるたんさん。こんにちは。

      『月桃夜』も読まれてたんですね!
      これは、哀しい話だったけど、よかったですよね。
      魂の交わり…そうかもしれないですね。
      現世では、実らなかったけれど、来世では、二人の魂が一緒になれるといいですね。
      2020/11/28
    • くるたんさん
      まことさん♪こんにちは♪

      これが遠田さんのデビュー作品だったんですね。
      奄美の歴史がまたせつなさに拍車をかけていましたね。遠田さんのファン...
      まことさん♪こんにちは♪

      これが遠田さんのデビュー作品だったんですね。
      奄美の歴史がまたせつなさに拍車をかけていましたね。遠田さんのファンタジーも良かったです♪
      2020/11/28
  • 遠田潤子さんデビュー作。
    当然、私も本作を初めて読んで、出会った。

    ファンタジーノベル⁉︎………とんでもない。
    でも、この作品が出されたら、脇に置くことはできなかったでしょう。

    あまりにも前に読了したので、細かいことは書けないけれど、とにかく衝撃的な力で、読書を中断しても頭の中がぐるぐるとこの作品世界に塗り潰され、苦しいままで最後まで読まされた。
    読み始めると離れられない、この人の作品の魅力がはっきり刻まれた。

    たしかこんな装丁ではなかった、黒々としたハードカバーだった記憶があり、このふわふわしたイラストの文庫版のところに感想を書きたくなくて放置していたけれど、読書記録として本作を抜けたままにしてはいけないと思い直し、書き込みました。

    …と書いたあと、記憶にあった装丁の本を登録できたので、感想もお引越しします。

  • ああ、これはすごい。すごい力を感じる。
    フィエクサとサネンが気になって、島の話だけ先に読み漁ってしまった。
    山の神の神さまらしさがまたいい。
    言葉が神を形作る。存在させる。言葉がまだ大義を持つ世界。
    二十三日月の有明三日月の設定がまたいい。
    表紙のイラストがまたそそる。
    海上の夜明けの清々しさよ。

    多崎礼の「煌夜祭」を思い出した。

    2/14追記
    ようやくちゃんと一から十まで通して「月桃の夜」を読み終わって、まだ心が持ってかれてる。何度も途中からとか読み返しても、ブランクなくその時点から物語に入り込める。それってすごいことだと思う。何回読んでもラストが希望に満ちているけど切ない。あんなに明るく世界の終わりを望んでしまうくらいのかつての絶望を思うと。
    できることならアニメじゃなく役者さんの映画で見たい。目の前に浮かぶ映像を現実のものとして見てみたい。肉体を持ったフィエクサの姿を見てみたい。

    それにしても、一冊通して読み終わると、同抑揚や発音をつけていいかわからなかった奄美の言葉が違和感なく聞こえてくる。訪れてみたくなる。

    何て愛しさのこみあげてくる一冊だろう。
    何度読み終えても手元の本棚から移す気になれない。

  • デビュー作だったのかぁ…
    禁断の恋物語、なるほどね。

  • 面白かったです。
    旅先の鹿児島で読み終わりました。
    夜の海をひとり漂う茉莉香に、片眼の大鷲が語る、フィエクサとサネンという兄妹のお話。
    ヤンチュやヒザという奴隷制度のようなものはこのお話で初めて知りました。こんなことがあったなんて。
    血は繋がってない兄妹だけれど、フィエクサはサネンをそれとは気付かず愛するようになり、そのことが悲劇を引き起こしてしまう。
    残酷ですが、それからの「この世の終わりで会いましょう」がとても美しかったです。
    フィエクサは大鷲になり、空を飛び続けながら、この世の終わりを待っている。ずっと。
    茉莉香とその兄のお話はちょっとピンとこなかったのですが、茉莉香も兄を貪るためにまた生きることにしたのは良かったです。
    ひたひたと暗い、南の島の夜の空気が好きでした。

  • 奄美の海をカヤックで漂う少女のもとへ降り立った大鷲。隻眼の大鷲は、かつて奄美の島にいた兄妹の物語を語り出す。
    …一生を労役に費やすしかない運命のもとに生まれた「兄」が、親を亡くしたばかりの「妹」と出会って、濃く強い絆を育んでいき、さだめから逸脱していく「憐れな」いきざまを。
    現代を舞台にした近作を先に読んでいたので、幻想味のある設定が逆に目新しく感じた作者のデビュー作ですが、重い運命を背負い、それでもあがいて生きようとする人々を描いているという意味では作風が一貫しているとも感じられた物語でした。

    大きな柱となるテーマは兄妹間の愛情であり、それがゆえに兄妹は過酷な結末へと至ってしまうのですが、兄の熱情と妹の真摯な慕い方はどこか同じようでずれてもいるように感じられて、そこが男女の違いなのかな、と思えたりもしました。
    だからか、この世の終わりにまた出会えたなら、という願いが、とても痛々しく哀切な祈りのようにも受け取れたのです。再会できたときに、受け止めてくれるだろうか、抱かれてくれるだろうか、という真摯な叫びのようにも思えたのですね…個人的な思い込みかもしれませんが。

    現代パートの少女のラストのくだりはなかなか強烈で、突然昂ぶったな…という怖ろしさを感じましたが、概してくすぶりつづけた熱情は、一度灯ると業火のようになるもの、なのかもしれないですね。

  • 序盤のなんとも都合のいい会話の進め方で
    読み始めの印象は酷く悪かったのだけれど、
    終盤以降はぐっと締まって引き込まれた。

    奄美が舞台だが、陽気な南国イメージではなく、
    湿気が多くて陰鬱とした、まとわりつくような
    不穏さに覆われている。

    そして神たちが良いキャラをしている。
    神、悪神は現代においてどこにいるのだろうか。
    言葉で、願いで縛るのならば、縛られて欲しい。

    希望を持って終末を待ちわびる、
    最後の数ページ、物語の着地の仕方が清々しかった。

    ちなみに作中には時代を変えて
    3組の兄弟(1組はただの幽霊)が登場するが、
    現代の兄弟、お前たちだけはダメだ。
    歪んでいる。
    もう少し、他になかったのかな、と思う。

  • まぁ帯や裏表紙のあらすじ見て興味もって買うことは少なくないのだけど、最近のネタバレ感というか、8割くらい内容でてますやん的なのはなんともならんのかなぁ。読んだあとにもう一回見ると、なんとなくがっかりする…

    フィエクサとサネンの絆の深さを示すための、前半は若干長いな~とは思ったけど、中盤過ぎからの疾走感はグッときた。
    でもどう足掻いても幸せになれないんだなぁ…。時代が、若さが、執着が、家が、間違って捻れて。故の、憐れで愚か。
    茉莉香だけが、唯一の救いなのかもしれないけど、彼女もまた、これから戦っていかなければいけない人生であるのだし。
    救いはない。けれど光はある。

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著者プロフィール

遠田潤子(とおだ・じゅんこ)
1966年大阪府生まれ。2009年『月桃夜』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。12年、『アンチェルの蝶』で大藪春彦賞候補、16年『雪の鉄樹』で本の雑誌増刊『おすすめ文庫王国2017』第1位、17年に『冬雷』で「本の雑誌 2017年上半期エンターテインメント・ベスト10」第2位、第1回未来屋小説大賞受賞。同17年『オブリヴィオン』で「本の雑誌 2017年度ノンジャンルのベスト10」第1位。2018年、『冬雷』で日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門候補、’20年『銀花の蔵』が直木賞の候補作に。人間の抱える理不尽に迫る、濃密な世界を描く。

「2022年 『人でなしの櫻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

遠田潤子の作品

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