渦森今日子は宇宙に期待しない。 (新潮文庫nex)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101800592

作品紹介・あらすじ

私は、私であること、諦めないでいたい。渦森今日子、17歳。女子高生で、アイスが好きな、宇宙人。最後で「え?」となったかもだけど、私も、私の友達(岬ちゃん、柚子ちゃん)も、そんなことは気にせず、部活動、体育祭、夏合宿、と毎日を突っ走る。でも、なんだろう。楽しいのに、面白いのに、もやもやする。私が女子高生だから? それとも、宇宙人だから? この“痛み”に、答えはあるの――? ポップで可愛い、青春小説の新地平。

感想・レビュー・書評

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  • 皆が当たり前のように通る季節を当たり前に通ることが出来なくて、どうしてイマなんだ、決めてしまうことにそんなに意味があるのか、と悩める時期でした。まるで一生を抱えたかのように狭き一つの道を進んで行った同志達は、今何人その夢を叶えられたのだろうと考えます。あの季節はもう戻らないけれど、決してあの頃が全てではなく、大人になればそれだけキラキラしたものにも出逢える。苦しいとき、あの時踏ん張れたということ、それが生きていく上での自分にとっての支えになるのだと思います。

  • 主人公は地球で女子高生をやっている宇宙人。でも普通に地球人と同じ生活をし、普通の高校生となんら変わらず友人との関係や進路について悩んだりしている。奇抜な世界設定や特殊能力が幅を効かせるのでもなく、いわゆるキャラクター小説でもない。誰もが思春期に持つ現状や将来に対する漠然とした不安を描きだすことに主眼を置いた青春小説である。ただ、会話文がコミカルで量も多く、地の文も大方が主人公の心の中のツッコミといった具合。なので、ライトノベルと普通の小説の中間くらいの位置付けか。

    私はとても面白く読めた。「覚悟」についての主人公の気づきは私にとっても有益な学びであった。登場人物たちの希望進路はバラバラだが、どれもそれぞれ自分固有の価値観を反映していて面白い。個人個人を尊重する空気が物語には流れていて、それが気持ちいい。あとがきには「青春とは何か」ということに対する著者の考えが書かれていて、これが実に素晴らしい。私にはキラキラした青春なんてなかったし、青春とは何なんだろう?とずっと分からないでいたが、初めて納得できそうな答えに出会った。これは衝撃だった。物語はあとがきのための前菜だったのではないかとすら思える。小説の核にある想いが著者自らによって語られていて、読後の味わいを一段と深められるようになっている。

    最後に少し客観的なレビュー。著者の感性の鋭さや言葉の展開力、選択眼は唯一無二だと思っているが、詩やブログに比べると本作ではその個性が薄まっている。しかし、それは小説という形式との相性の問題だろう。彼女の表現は、自分の中に潜む感情を自分のものとして短い文章という形に放出するとき最大限いきるのだと思う。長い文章に物語を構築し、創作人物を通した形で心情を表現するのは相性がベストではないのだ。とはいえ、彼女の感性や価値観は存分に反映されているし、詩に比べて小説の方が伝えたいことが分かりやすくなっているのはメリットである。最果タヒ入門用、もしくは彼女の世界観が好きな人にお勧めする。

  • 独特の文体。結構好きかも、みたいな?
    主人公が宇宙人で女子高生という設定だけど
    違和感?無く読める。

  • 高校生をやっていたあの頃の、名前のない感覚を言語化されていて、追体験して懐かしい気持ちになった。
    最果タヒの作品に触れたのはこれが最初だけど、ほかの作品も読みたくなった。

  • 詩人であり小説家であり、最近はAlexandrosの「ハナウタ」に参加したりの最果タヒが、女子高生であり宇宙人の渦森今日子の日常を描いた作品。
    宇宙人である事も女子高生である事も、どちらも特別な事だしそれ程特別な事では無い。
    覚悟を持って何かを決断する事って、何にせよ大事だよね。

  • ストーリーはそれなりだが、間々に短い簡易なフレーズで核心を突いてくる最果節が散りばめられていて読んでいて飽きない。
    最後のあとがきが著者の書きたかった主題なのだと思う。

  • 十七歳の女子高生として友達と過ごす宇宙人の呑気な日常が、つらつらと喋るみたいな独特のポップさのとても個性的な文章で彩られていて、はじめは構えたけれどすぐに馴染んだ。秘密を知りながら気にせず受け入れている友達と、オカルトに憧れる部長、体育祭に夏合宿。良い意味で普通に過ごす独特の瑞々しさ。楽しかった。

  • 彼女たちは地球人だけど女子高生だから理屈が欠損していて、そうしてそれがかわいらしさになるギリギリの年齢だった。ああ、このまま大人になるとかわいいどころか痛々しいばばあになるだなんて、こうあうのって現代社会の闇よね。どうしてそんなにかわいさの定義が主語によって変わっていくの。罠っぽい。

    今の自分にできること、叶えられるレベルの夢だけ見て、そうして目標をどんどん小さくしていく。身分相応なんて言葉で言ってしまえば利口に思えるけど、結局、夢を見ていないのは柚子ちゃんのほうだ。東京に出てどうするの。なんでもあるけど、でも、夢は売ってない。できる範囲で、可能なレベルで、努力が必要にならないように夢を見るのは一番、不自由に見えた。もし最高の能力があったら何になりたい?私は、柚子ちゃんがなりたいものはなんなのか、ただ友達だから知りたい。原宿に住んでなにしたい?どういう大人になりたい?ワクワクしながら話したかった。そうしたほうが楽しいって、絶対そう思うから。

    夢は簡単に私たちを裏切って、たぶん、ほとんど叶わずに終わる。なんとなく、それはわかる。でも、それって結構どうだっていいことなんだね。決めちゃったらわかる、叶えるより、なにより、諦めないでいたいと思う。

    私は、私であること、諦めないでいたい。

    最後の夏だもんね。なにもかも、がんばりたいね。やりたいこと、諦めなくないこと、好きなもの。たとえ失敗したって、くじけたって、彼らは私にとって特別。それはきっと、変わらない。今がそれを保証してくれる。

    2018.10.16

  • 渋谷のジュンク堂で特集を組んでいた中原中也賞受賞の詩人、最果タヒの小説。
    宇宙人が女子高生というとんでもない設定ながら、軽妙なテンポと会話で最後まで一気に読了させてくれた。
    17歳はなにをしたいか?なにになりたいか?わからないまま、このままじゃだめだという焦りに追われている。
    たしかに若い頃はそうだったが、いい歳になった今でも、同じ焦りを持っている。多分、死ぬまで同じなんだろうな。

  • 女子高生青春系、かと思ったら主人公が宇宙人という特殊な設定。しかも日常に溶け込んでふつうの女子高生をしている。アイスが硬すぎて愚痴る宇宙人というのを初めて見ましたけど違和感はありませんでした。宇宙人だけど友人との関係や恋愛やふつうに進路に悩んだりしてておもしろかったです。最果先生らしいことばや節回しが軽快でリズミカルで心地よかったです。

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著者プロフィール

最果タヒ(Tahi Saihate)
1986年、神戸市生まれ。2008年、『グッドモーニング』で中原中也賞を受賞。2015年、『死んでしまう系のぼくらに』で現代詩花椿賞を受賞。詩集に『空が分裂する』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』『愛の縫い目はここ』、小説に『星か獣になる季節』『かわいいだけじゃない私たちの、かわいいだけの平凡。』『渦森今日子は宇宙に期待しない。』『少女ABCDEFGHIJKLMN』『十代に共感する奴はみんな噓つき』、エッセイに『きみの言い訳は最高の芸術』、対談集に『ことばの恐竜』がある。最新詩集に、2018年9月刊行の『天国と、とてつもない暇』。

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