渦森今日子は宇宙に期待しない。 (新潮文庫nex)

著者 :
  • 新潮社
3.72
  • (18)
  • (19)
  • (26)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 359
感想 : 32
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101800592

作品紹介・あらすじ

私は、私であること、諦めないでいたい。渦森今日子、17歳。女子高生で、アイスが好きな、宇宙人。最後で「え?」となったかもだけど、私も、私の友達(岬ちゃん、柚子ちゃん)も、そんなことは気にせず、部活動、体育祭、夏合宿、と毎日を突っ走る。でも、なんだろう。楽しいのに、面白いのに、もやもやする。私が女子高生だから? それとも、宇宙人だから? この“痛み”に、答えはあるの――? ポップで可愛い、青春小説の新地平。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 皆が当たり前のように通る季節を当たり前に通ることが出来なくて、どうしてイマなんだ、決めてしまうことにそんなに意味があるのか、と悩める時期でした。まるで一生を抱えたかのように狭き一つの道を進んで行った同志達は、今何人その夢を叶えられたのだろうと考えます。あの季節はもう戻らないけれど、決してあの頃が全てではなく、大人になればそれだけキラキラしたものにも出逢える。苦しいとき、あの時踏ん張れたということ、それが生きていく上での自分にとっての支えになるのだと思います。

  • めっちゃくちゃ面白かった!出てる子みんな可愛い。高校生ってこんな感情持ってたなぁって、懐かしい甘酸っぱい気持ちになりながら読んでいた。大人にはない、残酷で透明な美しい純粋さ。これ、高校生の時に読めたら幸せだなぁ。最果さんの言葉はやっぱり心地よくて、フッと心に落ちてくる。詩もかけて小説もかけてすごいなぁ。高校生って、いいね。

  • 主人公は地球で女子高生をやっている宇宙人。でも普通に地球人と同じ生活をし、普通の高校生となんら変わらず友人との関係や進路について悩んだりしている。奇抜な世界設定や特殊能力が幅を効かせるのでもなく、いわゆるキャラクター小説でもない。誰もが思春期に持つ現状や将来に対する漠然とした不安を描きだすことに主眼を置いた青春小説である。ただ、会話文がコミカルで量も多く、地の文も大方が主人公の心の中のツッコミといった具合。なので、ライトノベルと普通の小説の中間くらいの位置付けか。

    私はとても面白く読めた。「覚悟」についての主人公の気づきは私にとっても有益な学びであった。登場人物たちの希望進路はバラバラだが、どれもそれぞれ自分固有の価値観を反映していて面白い。個人個人を尊重する空気が物語には流れていて、それが気持ちいい。あとがきには「青春とは何か」ということに対する著者の考えが書かれていて、これが実に素晴らしい。私にはキラキラした青春なんてなかったし、青春とは何なんだろう?とずっと分からないでいたが、初めて納得できそうな答えに出会った。これは衝撃だった。物語はあとがきのための前菜だったのではないかとすら思える。小説の核にある想いが著者自らによって語られていて、読後の味わいを一段と深められるようになっている。

    最後に少し客観的なレビュー。著者の感性の鋭さや言葉の展開力、選択眼は唯一無二だと思っているが、詩やブログに比べると本作ではその個性が薄まっている。しかし、それは小説という形式との相性の問題だろう。彼女の表現は、自分の中に潜む感情を自分のものとして短い文章という形に放出するとき最大限いきるのだと思う。長い文章に物語を構築し、創作人物を通した形で心情を表現するのは相性がベストではないのだ。とはいえ、彼女の感性や価値観は存分に反映されているし、詩に比べて小説の方が伝えたいことが分かりやすくなっているのはメリットである。最果タヒ入門用、もしくは彼女の世界観が好きな人にお勧めする。

  • 宇宙人というと特別で珍しい気がしてしまうけれど放課後にアイスを食べたり部活動で合宿に行ったり進路に悩んだり焦ったり。とても普通で退屈なほどの日常。でも精神的に参っていた十代を送った私は凡庸さをとても切り捨てられない。沢山の女の子の中から友人と呼べるほど何かを共有できる人がずっと居なかった。もし十代に戻っても生身の他者に怯えるばかりだろう。やはり普通は凄いと少しだけ淋しい気持になってしまう本だった。

  • 2017/05/01 読了。

  • 独特な世界観で 最初はつまらないな、
    と思ってしまったが、読めば読むほどハマった作品

  • 宇宙人の渦森今日子の女子高生な日々。
    期待しない、ぽやぽやモラトリアムな日常。一応、地球への探査船に乗ってきたからには何かを調べてるんでしょうけど、そのうちに地球の生活が楽しくなったみたい。
    もう一人の宇宙人・須磨さんがズレてて好きです。今日子は7年もいるし年齢も女子高生と同じだから溶け込んでるけど、須磨さんは来たばかり?っぽいですし年齢も3桁。かわいい。
    夏合宿の展開は宇宙っぽい。乗ってきた探査船が7年間、今日子を待ち続けてたなんて…気の長い話だ。でも帰らなかったことで、今日子の進路は決まったし(NASAはたいへん)モラトリアムも終わり。
    西島大介さんの絵でみんなわちゃわちゃしてたなぁ。

  • 途中までつまんないかな?って思ったけど最後まで読んだら楽しかった!最果タヒさんの本ってあとがきが深い、あとがき読んだら更に自分の中でしっくりきた

  • 息つくひまなく、リズムとともに読んだ。
    今は今として懸命に生きる❗️今はいつの日かのための練習じゃないんだから。どんなに、自分が不甲斐なく思えても、自分であることを諦めない‼️
    新感覚のリズム感で書かれてはいるけど、強い深いメッセージ。(*^^*)v

  • ポップでリズミカルな青春作品。

    進路についての悩みって人それぞれで、
    乗り越えなきゃ行けない壁で、、、
    あの時の気持ちを思い出しました。

  • 最果タヒという名前がちょっと抵抗感あるじゃないですか、なんかね、手首切っちゃう系かなというかね。だから自分が読む感じの作家とも思ってなかったんだけど古本屋さんで見かけて、これが参考にしてるブックリストに載ってる作家の作品だったので買いました。タイトルがライトノベル風なんで抵抗もありつつ。最果タヒってこないだ町田康と対談してたな、というのも少し信頼に繋がる部分もあったしね。深くはないけどストレートにライトノベル風青春小説という感じで瑞々しくて面白かったと思います。いい時間を過ごさせてもらいました。いい読書体験になりました。本業の詩集とか他の小説なんかを読むこともやぶさかではないかなと思っています。

  • 独特の文体。結構好きかも、みたいな?
    主人公が宇宙人で女子高生という設定だけど
    違和感?無く読める。

  • 高校生をやっていたあの頃の、名前のない感覚を言語化されていて、追体験して懐かしい気持ちになった。
    最果タヒの作品に触れたのはこれが最初だけど、ほかの作品も読みたくなった。

  • 詩人であり小説家であり、最近はAlexandrosの「ハナウタ」に参加したりの最果タヒが、女子高生であり宇宙人の渦森今日子の日常を描いた作品。
    宇宙人である事も女子高生である事も、どちらも特別な事だしそれ程特別な事では無い。
    覚悟を持って何かを決断する事って、何にせよ大事だよね。

  • ストーリーはそれなりだが、間々に短い簡易なフレーズで核心を突いてくる最果節が散りばめられていて読んでいて飽きない。
    最後のあとがきが著者の書きたかった主題なのだと思う。

  • 十七歳の女子高生として友達と過ごす宇宙人の呑気な日常が、つらつらと喋るみたいな独特のポップさのとても個性的な文章で彩られていて、はじめは構えたけれどすぐに馴染んだ。秘密を知りながら気にせず受け入れている友達と、オカルトに憧れる部長、体育祭に夏合宿。良い意味で普通に過ごす独特の瑞々しさ。楽しかった。

  • 彼女たちは地球人だけど女子高生だから理屈が欠損していて、そうしてそれがかわいらしさになるギリギリの年齢だった。ああ、このまま大人になるとかわいいどころか痛々しいばばあになるだなんて、こうあうのって現代社会の闇よね。どうしてそんなにかわいさの定義が主語によって変わっていくの。罠っぽい。

    今の自分にできること、叶えられるレベルの夢だけ見て、そうして目標をどんどん小さくしていく。身分相応なんて言葉で言ってしまえば利口に思えるけど、結局、夢を見ていないのは柚子ちゃんのほうだ。東京に出てどうするの。なんでもあるけど、でも、夢は売ってない。できる範囲で、可能なレベルで、努力が必要にならないように夢を見るのは一番、不自由に見えた。もし最高の能力があったら何になりたい?私は、柚子ちゃんがなりたいものはなんなのか、ただ友達だから知りたい。原宿に住んでなにしたい?どういう大人になりたい?ワクワクしながら話したかった。そうしたほうが楽しいって、絶対そう思うから。

    夢は簡単に私たちを裏切って、たぶん、ほとんど叶わずに終わる。なんとなく、それはわかる。でも、それって結構どうだっていいことなんだね。決めちゃったらわかる、叶えるより、なにより、諦めないでいたいと思う。

    私は、私であること、諦めないでいたい。

    最後の夏だもんね。なにもかも、がんばりたいね。やりたいこと、諦めなくないこと、好きなもの。たとえ失敗したって、くじけたって、彼らは私にとって特別。それはきっと、変わらない。今がそれを保証してくれる。

    2018.10.16

  • 渋谷のジュンク堂で特集を組んでいた中原中也賞受賞の詩人、最果タヒの小説。
    宇宙人が女子高生というとんでもない設定ながら、軽妙なテンポと会話で最後まで一気に読了させてくれた。
    17歳はなにをしたいか?なにになりたいか?わからないまま、このままじゃだめだという焦りに追われている。
    たしかに若い頃はそうだったが、いい歳になった今でも、同じ焦りを持っている。多分、死ぬまで同じなんだろうな。

  • 女子高生青春系、かと思ったら主人公が宇宙人という特殊な設定。しかも日常に溶け込んでふつうの女子高生をしている。アイスが硬すぎて愚痴る宇宙人というのを初めて見ましたけど違和感はありませんでした。宇宙人だけど友人との関係や恋愛やふつうに進路に悩んだりしてておもしろかったです。最果先生らしいことばや節回しが軽快でリズミカルで心地よかったです。

  • 2017/12/29購入
    2018/5/17読了

全32件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

最果タヒ(Tahi Saihate)
詩人。一九八六年生まれ。二〇〇六年、現代詩手帖賞受賞。二〇〇八年、第一詩集『グッドモーニング』で中原中也賞を受賞。二〇一五年、詩集『死んでしまう系のぼくらに』で現代詩花椿賞を受賞。その他の主な詩集に『空が分裂する』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(二〇一七年、石井裕也監督により映画化)『恋人たちはせーので光る』『夜景座生まれ』など。作詞提供もおこなう。清川あさみとの共著『千年後の百人一首』では一〇〇首の現代語訳をし、翌年、案内エッセイ『百人一首という感情』刊行。エッセイ集に『きみの言い訳は最高の芸術』『もぐ∞【←無限大記号、寝かす】』『「好き」の因数分解』、小説に『星か獣になる季節』『少女ABCDEFGHIJKLMN』『十代に共感する奴はみんな嘘つき』、絵本に『ここは』(絵・及川賢治)、対談集に『ことばの恐竜』。

「2021年 『神様の友達の友達の友達はぼく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

最果タヒの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
米澤 穂信
宮下奈都
米澤 穂信
最果タヒ
三浦 しをん
森見 登美彦
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×