砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101800653

作品紹介・あらすじ

死んだのは、二人。その死は、何を残すのか。大学受験を間近に控えた濱田清澄は、ある日、全校集会で一年生の女子生徒がいじめに遭っているのを目撃する。割って入る清澄。だが、彼を待っていたのは、助けたはずの後輩、蔵本玻璃からの「あああああああ!」という絶叫だった。その拒絶の意味は何か。“死んだ二人”とは、誰か。やがて玻璃の素顔とともに、清澄は事件の本質を知る……。小説の新たな煌めきを示す、記念碑的傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 竹宮ゆゆこの傑作ラブストーリー。

    僕が読んだ竹宮ゆゆこの作品はこの作品で3作目。

    思えば昨年まで竹宮ゆゆこのことは1ミリも知らなった。

    今年の2月に書店の新刊コーナーで初めて竹宮ゆゆこの作品
      『いいからしばらく黙ってろ!』
    を見たのが竹宮作品との初遭遇である。

    なんという攻撃的な題名だろうか、そしてこの表紙。超絶美少女とは言い難い女の子が何かを叫んでいるところを描いた表紙絵。

    『竹宮ゆゆこ』?うん知らない。
    『とらドラ!』『ゴールデンタイム』の作者?
    両作品とも、まったく聞いたこともない・・・。

    だが、何となく惹かれた・・・。
    あらすじも読まず、レビューも見ず、完全ノー前知識での購入。ありえない。だが・・・。
    これが僕が初めて本をジャケ買いした瞬間である。

    が、ページをめくり読み始めてみると・・・。
    なんだこれ!?めちゃくちゃ面白い。
    文章のセンス。キャラクターの秀逸さ。そしてセリフの面白さ。

    抜群である。
    もう、はまってしまった。

    そして二作品目の
      『知らない映画のサントラを聴く』
    も素晴らしかった。というか最高に笑わせてもらった。

    では、3作品目の本作はどうだろうか。

    今まで読んだ2作品はちょっとダメな女の子がどちらも主人公であったが、本作の主人公は男子高校生だ。

    主人公の男の子がたまたま目にしたいじめの場面。
    高校一年生の女の子をよってたかってクラスメイトがいじめている。正義感の強い彼はその子を助ける。
    そこから恋が始まっていくのだ。

    こういうふうにストーリーを描いてしまうと面白くもなんともないのだが、竹宮ゆゆこの筆にかかるとこの面白さが際限なく広がっていく。
    この竹宮ゆゆこはたぶん天才だと思う。面白い文章を書くことについては。

    文章だけを読んでただ愉しいと思える作者って僕にとっては数えるくらいしかいなくて、その筆頭は村上春樹なんだけど、この竹宮ゆゆこも間違いなくその一人にはいってくる。

    本作は最近映画化もされたようだが、このストーリーだけを映像化してもどうなんだろう?面白いんだろうか?

    村上春樹作品を映画化してもまったく面白くないのと同じように、本作を映像化してももしかしたらあまり面白くないのかもしれない。

    面白い文章は、読んでこそその面白みが分るのだ。

    だまされたと思って僕が今まで挙げた竹宮ゆゆこの3作品のどれか一つでも読んでみると分かるだろう。
    文章で楽しむべき小説は映像化してはならないのだということを。


      

  • 【孤独、そして終わらない愛】娘のレビュー

     物語の本編は、高校生(3年)の濱田清澄と(1年)蔵本玻璃の出会いから始まります。学年一の嫌われ者である玻璃に対するいじめをみた清澄は、彼女を救い出そうとあらゆることをします。

     共に時間を過ごしていくうちに、互いの優しさや美しさの魅力に気づき、2人の距離はぐっと縮まります。

     ところが、玻璃には打ち明けられない秘密がありました。それは父親から暴力を受けていること。そして数年前に祖母を沼に埋める手伝いをさせられたことも話します。

     清澄は父親から玻璃を救うべく行動に出ましたが、逃げようと思ったところで2人は父親に見つかり、ゴルフクラブで殴られてしまいます。しかし最終的には、清澄が玻璃の父親に殺されかけるところで、玻璃が父親をゴルフクラブで殴り殺したのでした。

     本編はできるだけ簡潔に要約してみましたが、この本には叙述トリックがあります。本編前のエピソードの「俺」が清澄の息子(真っ赤な嵐)であることです。玻璃と真っ赤な嵐の会話は、まるで恋人同士のようにかかれており、読者を惑わせるトリックでした。

     恋愛から愛へ繋がる物語と思いきや、終盤で一気にサスペンスともいえる展開になり衝撃でした。清澄と玻璃の愛が真っ赤な嵐に伝わっていることが感じられ、最後は心温まると思います。個人的には玻璃の父親がサイコパスであったこと、玻璃の母親は家を出て行ったのではなく父親に殺されていたこと、また、殺害時の描写が衝撃で読後少し怖さが残ってしまいましたが。(;´Д`)

    春公開の映画見に行きたいと思っています。是非。

    オススメ年齢 高校生以上

  • '22年7月12日、Amazon audiblにて。今迄、全く知らない作者さんでしたが…題名にひかれて、聴き始めました。

    前半の、甘酸っぱい(どちらかというと、僕には酸っぱ味が強い)話に、苦虫を噛みながら…後半は、サスペンスフルな展開で、楽しませてもらいました。なんだか、道尾秀介さんの「光媒の花」の中の、「冬の蝶」を、思い出しました。あれも、胸が潰れるような話だったな…

    タイトルが魅力的で、凄いなぁ、と…逆に、このタイトルが、この本の、一番の魅力かも(。•́︿•̀。)ファンの方々、ごめんなさい。否定では、ありません。

    全体として、面白く聴き終えました。直近でイヤミスを2冊、聴いていたので…こういう「甘!酸っぱい」話も、良いですね!ありがとうございました⊂(◉‿◉)つ

  • 1回目は2017年3月5日読了。冒頭近くの「あああああ」は覚えていたけど、映画化されたのにあとを全く覚えてなかったので、再読。2021年8月14日に2日で読了。
    清澄と玻璃の「君とど」的なラブストーリーとして始まるが、次第に不穏な空気になり、ラストは怒濤の展開。冒頭の語り手の「俺」が、本編の主人公ではない、わざとひねりを加えてたことには、1回目に気づいてなかったかも。

  • 誰かが自分を大事に思ってくれることは、全然当たり前ではない。
    『ある』のが『難しい』から『ありがたい』のだ。
    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    ヒーローに憧れる真っ直ぐな清澄は、いじめられているところを助けたきっかけで、玻璃(はり)と心を通わせるようになる。
    一度チャンネルが合えばよく喋る素直な可愛い子だった。
    UFOはいます。
    母の行方不明もいじめもあれもこれも全部UFOのせいだから諦めるしかない。でも先輩が、、ヒーローが教えてくれた。強くなりたい。
    「先輩を信じます」と言った玻璃を守りたい。
    玻璃に惹かれながら秘密に気づく。
    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    大きな暗闇のUFOの正体。ここから一気にサスペンス。怖かったー。違和感とかすっ飛ばして知りたくて!どんどん先に進んでしまって。ん?
    完璧に騙されました。

    玻璃に全部、俺の未来も全部、全部あげたかった。

    真っ直ぐな愛の物語にグッときました。

    2021. 4月映画公開✧*。



  • 『砕け散るところ見せてあげる』タイトルからして引き込まれる。

    本作のあらすじに
    「死んだのは、二人。その死は何を残すのか。」
    と記載されており、読みながら、この人とこの人だろうなと予想していたら、まんまと裏切られた!
    でも話は続きがあって、このキャッチコピーの意味は二重にあるんだなとわかった。
    だから、自分の勘も外れてはないものの、カタチが違っているので、本当によく出来た話だと思う。
    高校生でここまで愛せるなんて凄い。
    でも発想が未熟で、もっと他の方法なら違う結末がなんて安全な予防線を張っているわたしはつまらない大人なのかな…
    あと、UFOの下りは分かりにくいから要らないと思う。
    珍しい青春小説だと思った。

  • ちょっと他には類を見ない読了感だった……
    読み終わって「???」の中、ここで皆さんの感想を見て、「!!!」となり、最初から見直して、
    更にこの本を好きになりました。
    しばらく世界観から抜け出せない。。
    今、夜中だけど、なんか物凄く切ないし
    自分の命が愛しく感じるというか……
    罪悪感をUFOに例えるなんて、ホント凄い。
    これ、映像化されてるみたいですが、
    今の胸にあるその物語をそのまま存在させたくもあり……映像観たい気もしたり……

    自分も愛の背景から生まれてる、私の細胞の最小に父や母がいる……あまりそういう発想はなかったけれど、涙が出ました。

    UFOが砕け散ると、愛だけが遺る。
    凄く青々しい正義感かと思いきや、めっちゃ期待を斜め上に裏切られた感じ。

    驚いてます。
    私は凄く好きな1冊です。

  • これは勢いがあって一気によませます。すっごくテンポがよい。
    帯には、「ラストの1文を理解すると泣ける」とかいてあるが、わからないので泣けない。
    大変悔しい。
    20160630

  • この題名はこの小説のどの部分を指しているんだろう、とずっと考えながら読む。若者向けだろうけど、60才過ぎた私が読んでもなにかすがすがしさを感じる。ちょっとつらい部分もあるけど。

  • 最初は半ドンに疑問後半のお父さん来るからねで疑問。読み終わったあと一回混乱。最初と最後だけ読み返してようやく理解。そういうことか!ってわかった時とても達成感があった。いじめはもちろんもう1つの問題、UFO問題も結構シリアス。展開がくるくるでドキドキした!

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著者プロフィール

作家

「2023年 『心臓の王国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

竹宮ゆゆこの作品

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