カカノムモノ2: 思い出を奪った男 (新潮文庫nex)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101801230

感想・レビュー・書評

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  • 人の心の穢れを呑まなければ、人間の姿で生きられない『加加呑む者』浪崎碧の物語、第2巻。

    穢れを呑むために近づいた『濁り人』が目の前で命を落とす場面に遭遇し、心のバランスを崩してしまった碧。そのことが原因なのか、穢れをうける盃となる鏡もひび割れてしまった。
    鏡を修復、もしくは作り直す事ができるのは、加加呑む者のための神具として鏡を作り続けてきた鏡師・日名一族の長である日名暁溪だけ。
    相棒の鏡人・桐島とともに、日名一族の集落を訪ねた碧は…


    1巻では、碧の背負う宿命が語られた。
    2巻は、その宿命の行き着く先へと進むのかと思いきや、碧の心の動きを追っていく物語だった。

    暁溪と、その孫の水琴とふれあい、「人として生きる」希望を教えられた碧。
    自らの記憶を“穢れ”と称して碧に呑ませる事で、温かな思い出を碧に残して逝った、暁溪のおおきな慈愛が、碧を満たす。

    けれどその一方で、碧が兄のように慕ってきた従兄の涼は、碧を優しくいたわるようでいて、その心には、一族の中で唯一無二の存在である碧への複雑な思いが大禍津日神として育ちつつあり…
    いずれそう遠くない未来…というか3巻では、彼の存在が碧をまた大きく傷つけざるをえないでしょう。
    3巻が楽しみ。


    ところで、暁溪は末期ガンだったということになっていたけれど、ガンでは、昨日まで元気だったのにちょっとの隙に…なんてことはないでしょう。
    些末なことだけれど、引っかかってしまった。
    いっそのこと、自らの納めた鏡のひび割れに呼応して鏡師も命を縮めてしまった…とでもした方が、浪崎と日名の古い結びつきを語ることになったかも。

  • BLくさい小説2巻目。

    相変わらずBLっぽい、と言いたいところだが、今回はじいちゃんと孫娘のおかげでそこまで感じず。
    二人ともね、なかなかいいキャラをしておりまして、結構好き。
    そこはかとなくかとなく漂っていた暗い雰囲気も二人が一蹴してくれる。

    だがしかし、二人に比べて兄さんの病み具合が怖い。
    子供の時はよかったのかもしれない。
    きっとあの中では心の拠り所となる兄だったのだろう。
    だが、今やどうだろう。
    毒といってもよい存在ではないか。
    もう、穢れてるでしょ。
    実は鏡とか持っているかもしれない。

  • 今回はある意味身内だけ。割れた鏡を直すだけではなく、普通の暮らしを知らない碧が人間らしさに触れる話。桐島に対する涼の不穏な動きが次作で明らかになりそうで、また碧が傷つくのでは…。

  • シリーズ第2巻は鏡師の一族にまつわる話。
    独自の世界を作り上げて始まった物語は、まだまだ発展しそうな雰囲気を感じます。

  • 続けて読むべきこのシリーズ。
    碧たちが訪ねる鏡師 暁溪の茶目っ気がたまらなく可愛いです。
    孫とのコンビが最高。
    後半になるにつれ、切なくも人の温かみを読み手にも伝えてくれる素敵な内容でした。

  • 呑む相手の生き様や感情は些事と切り捨て、穢れを呑むためだけに生きている碧。
    鏡師が載せる想いを知り、感情を取り戻していく。

  • 「穢れ」という名前は便宜上。
    その能力の実は、記憶を呑む。
    それが穢れていようといまいと。
    本人がそれを穢れと言ってしまえばよい
    そういう条件か。
    そう、本人申告制なんだよ。
    本人が認めなきゃ呑めない。
    そんなもの、どうやったって奪えない。
    ただ、伝えてなかったんだな。
    詐欺みたいなもんだ。
    だから罪悪感が生まれてしまう。
    在り方自体を変えなければならない。
    歴代がやれなかったことを。

  • 「薄紅ノ破片」
    人の心を考えずに自らの欲を。
    彼の中で何が起きて今の考えに至ったのか分からないが、思い出した過去の経験以外にも何かしらきっかけがあったからこそ現在の彼になってしまったのでは。
    割れてしまった杯を使い続けているのは仕方ないのかもしれないが、直すことは不可能なのだろうか。

    「愛シキモノ」
    彼は人間なのか化け物なのか。
    あんな事を続けていたら精神的に参ってしまうのも無理はないだろうが、余りに過保護にし過ぎるのも彼の為にならず迷う原因になるのではないだろうか。
    子供は望まない理由が酷過ぎて、彼等は一族に産まれたせいで代償に自由を奪われたのだな。

    「暁ノ溪」
    壊れた杯を治す為に出された。
    優先的に修復するというのは商売をしている以上、余程な条件を飲まない限り厳しいのは当たり前の事ではあると思うが彼の出すものは何か違う物を見ている気がするな。
    一度も代理の杯を使用した事が無いとなると、不安などのせいで失敗を招く原因になりそうだな。

    「暁ノ鏡」
    最期の望みは亡くなってから。
    自らの余命を家族に隠し続けたのは下手に気を使われるのが嫌だったのもあるだろうが、思い出作りに励むよりも日常を普段通り過ごしたかったのだろうな。
    大切な思い出を少しずつ託す事により、彼は忘れられる事無く記憶の中で生き続けるのだろうな。

  • 濁り人の死に衝撃を受けた「カカノムモノ」の碧
    自分のアイデンティティーを失った彼
    ヒビの入った鏡

    修理してもらうために向かった「鏡師」の家での出会いと別れ

    鏡師のじーちゃんと、その孫が素敵
    泣けます

    これ、まだ続くんだろうなぁ
    碧の従兄弟の涼がヤバそう

  • 2018年5月新潮文庫刊。書下ろし。シリーズ2作目。長編仕立てで、登場人物が増え、ミーハー風ライトな展開のストーリー運びになっていました。前作にあったインパクトは薄れ、ありふれ感がして、あまり面白くありませんでした。

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著者プロフィール

第17回電撃小説大賞で<メディアワークス文庫賞>を受賞。「空をサカナが泳ぐ頃」でデビュー。

「2023年 『神様の御用人 継いでゆく者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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