人の心の穢れを呑まなければ、人間の姿で生きられない『加加呑む者』浪崎碧の物語、第2巻。
穢れを呑むために近づいた『濁り人』が目の前で命を落とす場面に遭遇し、心のバランスを崩してしまった碧。そのことが原因なのか、穢れをうける盃となる鏡もひび割れてしまった。
鏡を修復、もしくは作り直す事ができるのは、加加呑む者のための神具として鏡を作り続けてきた鏡師・日名一族の長である日名暁溪だけ。
相棒の鏡人・桐島とともに、日名一族の集落を訪ねた碧は…
1巻では、碧の背負う宿命が語られた。
2巻は、その宿命の行き着く先へと進むのかと思いきや、碧の心の動きを追っていく物語だった。
暁溪と、その孫の水琴とふれあい、「人として生きる」希望を教えられた碧。
自らの記憶を“穢れ”と称して碧に呑ませる事で、温かな思い出を碧に残して逝った、暁溪のおおきな慈愛が、碧を満たす。
けれどその一方で、碧が兄のように慕ってきた従兄の涼は、碧を優しくいたわるようでいて、その心には、一族の中で唯一無二の存在である碧への複雑な思いが大禍津日神として育ちつつあり…
いずれそう遠くない未来…というか3巻では、彼の存在が碧をまた大きく傷つけざるをえないでしょう。
3巻が楽しみ。
ところで、暁溪は末期ガンだったということになっていたけれど、ガンでは、昨日まで元気だったのにちょっとの隙に…なんてことはないでしょう。
些末なことだけれど、引っかかってしまった。
いっそのこと、自らの納めた鏡のひび割れに呼応して鏡師も命を縮めてしまった…とでもした方が、浪崎と日名の古い結びつきを語ることになったかも。