春の嵐―ゲルトルート (新潮文庫)

  • 新潮社
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本棚登録 : 931
感想 : 68
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102001011

作品紹介・あらすじ

少年時代の淡い恋が、そりの事故を機に過ぎ去り、身体障害者となったクーンは音楽を志した。魂の叫びを綴った彼の歌曲は、オペラの名歌手ムオトの眼にとまり、二人の間に不思議な友情が生れる。やがて彼らの前に出現した永遠の女性ゲルトルートをムオトに奪われるが、彼は静かに諦観する境地に達する…。精神的な世界を志向する詩人が、幸福の意義を求めて描いた孤独者の悲歌。

感想・レビュー・書評

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  • 不慮の事故で片足が不自由になってしまったクーンという男の話。不運を嘆きながらも、作曲の喜びに目覚め、人生を必死に切り拓いていこうとするクーン。また、彼と親友との間に現れた女性を巡っての複雑な人間関係も描かれている。“最も不幸なことを捨ててしまうことは楽しかったことを捨てることよりもつらい。避けがたい運命を甘受し、よいことも悪いことも味わいつくし、内的な本来の運命を獲得することが人間生活の肝要である”と冒頭で主人公は振り返っている。その言葉がとても重みをもつ、重厚な作品であった。

  • 少年時代の淡い恋が、暴走した橇と共に過ぎ去ったとき、不具になったクーンは音楽に志した。魂の叫びを綴った彼の歌曲は、オペラの名歌手ムオトの眼にとまり、二人の間に不思議な友情が生まれる。やがて彼らの前に出現した永遠の女性ゲルトルートをムオトに奪われるが、彼は静かに諦観する境地に達する・・・。

    あとがきで、訳者が筆者のヘッセと出会ったときの様子が描かれており、個人的には本編よりもこちらの文章の方がが印象が強い。ヘッセの、温かな人柄に触れた訳者の感動が綴られている。

  • 結婚した人と、老いるときまでそばにいる人が必ずしも同じではない類の物語の結末。
    クーンが自らの青春との別れを悟ったシーンが印象的だった。

  • 障害を負ってしまい、普通の恋愛もできなくなってしまった主人公と、彼を巡る人々の人生が淡々と描かれる。ゲルトルート、ムオト、両親、ブリギッテなど、障害者ではない体をもつ人々も、結局のところいろいろなものを失っていく。この淡々さが良いですね。
    主人公の母親と友人の友情が破綻する、利己的な友人とのエピソードって、極端に書かれてるけど、ああ、こういう母親の友人みたいな人リアルでも存在してそう…。

  • 青春時代の自己への幸福への葛藤
    熟年期の他者への幸福を臨む

    人は年を取ると青年時代より満足している。
    だが、それだからといって私は青年時代をとがめようとは思わない。
    なぜなら、青春はすべての夢の中で輝かしい歌のようにひびいて来、青春が現実であったときよりも、いまは一段と清純な調子でひびくのだから。

    「われわれ人間の中には、親切と理性が存在する」し、「私たちはたとえ短いあいだだけであるにせよ、自然や運命より強くありうるのだ」だから「私たちは必要なときには、たがいに近より、たがいに理解する目を見合い、たがいに愛したり、たがいに慰めあって生きることができるのである

    そんな大人へなれたら
    没入するような物が何かしらひとつでもあればそれもまた幸福

    春の穏やかな季節への嵐
    文章がいたく繊細で切ない

  • なぜかヘッセの自伝と勘違いして読み始めたけど、フィクションでした
    人の感情を繊細で豊かに描写する感じが三島由紀夫と似てる気がする
    本気に考えられた決心や思想はやはり心の中に平和を残し、変えがたい運命を忍ぶ助けとなる。(文庫p.169)という文章が好きでした

  • 主人公は作曲家。事故で片足が不自由になった彼の乱高下激しい人生、特に強い愛や友情ゆえに苦悩する日々の物語。感情表現の仕方が絶妙というか分厚い。常に内外、表裏、手前と向こう側が同時に書かれていて、小説ながらに「なるほど」と頷いてしまうこともしばしば。50も近づいてきて、未だどこか作曲家になる夢を懐き続けてる自分にとって、主人公を応援する気持ちも相混じり、一気に読んでしまった。

  • 2021年 9冊目

    プラトニック極まれたり。死者には勝てんよな。

  • 若い人は利己的で何か理想と食い違うと自殺したりする、でも、自分の命が他者と繋がってることを知っているものは安易に自殺したりしない

    年を重ねてゆくと満足感や幸福感は他者の役に立つことで得られることをしる、
    人生自体は空である、

    なるほどな、、、

  • 時代のせいなのか、筆者の育ちの良さのせいなのか、ともかく品が保たれているのは確か。ストーリー的には今でもありそうな感じだが、今だったらもっとギトギトした筆致となりそう。
    この意味でその昔の日本人がこの作家が好きだったというのは良く分かる。そして今は物足りないという指摘が多そうなことも何となく推察できる。
    まぁ当方としてはもう少し暗くっても良いかなと思います。直前に読んでいる作品もそうですが、どうもこの作家、ほんとの底に降りてきていない感じがする、しかも意図的に。

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