車輪の下 (新潮文庫)

制作 : Hermann Hesse  高橋 健二 
  • 新潮社
3.56
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本棚登録 : 6884
レビュー : 651
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102001035

作品紹介・あらすじ

ひたむきな自然児であるだけに傷つきやすい少年ハンスは、周囲の人々の期待にこたえようとひたすら勉強にうちこみ、神学校の入学試験に通った。だが、そこでの生活は少年の心を踏みにじる規則ずくめなものだった。少年らしい反抗に駆りたてられた彼は、学校を去って見習い工として出なおそうとする…。子どもの心と生活とを自らの文学のふるさととするヘッセの代表的自伝小説である。

感想・レビュー・書評

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  • 勉強ももちろん大切だけど、人との関わりや遊びからも人は成長することができるのだと改めて感じた。神学校で挫折して、いよいよこれから生きる喜びを学んでいくのかな、というところだったのに。残念。まさに車輪の下敷きになってしまった。それでも最後の夜は彼にとって唯一の救いだったんじゃないかな。

  • タイトルはかなりなじみがあったけれども、ちゃんと読んだのは初めてだった。

    海外の訳語小説は読みにくいという先入観から敬遠していたけれど、思ったより読みやすかった。

    多感な時期に、周囲の期待を押し付けられ、自分本来の大切なものを損なわれたこどもがどうなっていくか、そのときに感じる感覚なども含めて、とても丁寧に描かれている。

    もう中年期に差し掛かっている自分としては、あの頃の感じをすっかり忘れてしまった気がしていたけれど、読み進めるにつれ、そうだった、こんな感じだった、と思い出させてくれた。

  • 社会に順応できない主人公の悲劇を描いた作品。
    あるべき姿、であれないことの苦悩が長編として描かれている。社会が高度化し、緻密になって行くほど、このような人は増えて行くのかもしれない。
    程度の差はあれ、誰もが主人公の心情の一部を理解できるのではないか、と感じる。

  • 姉に薦められ出会う。読了。

    街一番の秀才として皆に誇られ厳しく育てられてきたハンスは、神学校(まるで今でいう進学校である)に入学し、全寮制のもとやはり厳格な教育を受ける。
    気弱で素直で優秀だったハンスは、不真面目な文芸家ヘルマン・ハイルナーを唯一の親友と覚え、やがて凋落していく。

    「疲れきってしまわないようにすることだね。そうでないと、車輪の下じきになるからね」(P144)

    心配する先生たちを相手にしないハンスはやがて失望を買い、ますます堕ちてゆく。ハイルナーが放校に処せられ、いよいよ精神も身体も耐えきれなくなったハンスは、学校を去る。

    『学校と父親や二、三の教師の残酷な名誉心とが、傷つきやすい子どものあどけなく彼らの前にひろげられた魂を、なんのいたわりもなく踏みにじることによって、このもろい美しい少年をここまで連れて来てしまったことを、誰も考えなかった。なぜ彼は最も感じやすい危険な少年時代に毎日夜中まで勉強しなければならなかったのか。なぜ彼から飼いウサギを取り上げてしまったのか。なぜラテン語学校で故意に彼を友だちから遠ざけてしまったのか。なぜ魚釣りをしたり、ぶらぶら遊んだりするのをとめたのか。なぜ心身をすりへらすようなくだらない名誉心の空虚な低級な理想をつぎこんだのか。なぜ試験のあとでさえも、当然休むべき休暇を彼に与えなかったのか。

    今やくたくたにされた小馬は道端に倒れて、もうものの役にもたたなくなった。』(P171)

    故郷に帰ったハンスは、死にたくも死ねず、恋も実らず、見習い工としての新たな生活も道半ばに、酔った帰りに川に落ちて生涯を終える。

    なんとももの寂しいこの物語は、ヘッセ自身の実際の幼少期の経験を大いに元としていることが、巻末で解説されている。

    彼は果たして何を学んだだろうか。周囲は果たして何を与えただろうか。優秀であり素直でありながら、自分という存在の何たるかに悩まされた孤独なハンスの苦悩を、詳しい情景描写によりありありと読者に想像させる、寂しくも印象深い物語であった。

  • ヘッセの代表的自伝小説
    ーー作中より
    学校と父親や二、三の教師の残酷な名誉心とが、傷つきやすい子どものあどけなく彼らの前にひろげられた魂を、なんのいたわりもなく踏みにじることによって、このもろい美しい少年をここまで連れて来てしまったことを、だれも考えなかった。

    疲れきってしまわないようにすることだね。そうでないと、車輪の下じきになるからね。
    ーーー
    全体的に暗い内容で、精神的にも現実世界においてもだんだん落ちていくハンスになんとも言えない気持ちになる。いくらでもやり直せるタイミングはあったように思ってしまうが、多感な年頃またその繊細さゆえに、自分の力では再び立ち上がることができなかったのかもしれない。周囲に救い上げる大人、神学校を辞めた後、優秀な模範生でなくなった後の彼自身を、その存在だけをそのまま認めてあげる人がいなかったことがとても悲しい。
    神学校で出会う親友ハイルナーと主人公ハンスは対照的な人物に思えるが、どちらもヘッセの中の人格であるというあとがきが興味深かった。
    ハンスの一面を持ちながらも、彼は85歳まで生き、ノーベル文学賞を受賞する文学者として知られている。
    単純な感想として、受験勉強で苦しんでる学生とかは読まないほうがいい気がした。ちょっと病む。

  • 読了。ヘルマン・ヘッセの自伝的小説である。どんな外国語文学に共通して言えることと思うが、当時のドイツの情勢やヘッセについて知識があるかないかで小説の理解が異なると思う。小説を読む前に、解説から読むのも1つの方法と思う。
    悩みながら成長する微妙な少年の心の弱さ、もろさ。それに対する大人達の態度が子供を押しつぶしてしまう。
    ヘッセの言いたかったことは何だろうか? 読み終わっても何度も自分に問いかける。時を置いて再度読み返したい本。

  •  文豪ヘルマンヘッセの代表作で、神学校に行った勉強に追われ友情とを選択しなければならないはざまで揺れる少年の気持ちを描いた大作。
     まだ恋愛感情等を抱きえない少年の、周りの期待に応えなきゃという気持ちと、勉強でなくても個性を気に入ってくれる友人への気持ちというのは、現代に通じることは少なくても想像することが難しくないくらいには、わかりやすいテーマであると思います。それをうまく描き切ったという点で、ふつうの小説家ではできないものです。

  • 勉強だけではなくて、心の豊かさも必要不可欠だと改めて感じる。

  • 秀才ハンスの繊細な心がありありと描かれた一冊。周りの期待に応えようと必死になり、自分自身を見失う様は痛々しくもあり、少年の純粋さも垣間見えた。
    周りに期待され、それに応えるために己を捨て、自分自身がやりたいことも押さえつけて生きていく必要があるのか。私自身に当てはまる部分も多分にあるため、非常に心打たれた作品であった。

  • 教育とか抑圧とか、100年前からそんなに変わってないんだよなと思う。子を持つ身としてはいろいろ考えさせられる本。でもなんつーか、親である以上、存在が抑圧でもあるわけで、逃げ回るわけにもいかんだろ、とかね。あ、それはギーベンラート君とは関係ないか。
    筋としては暗い話なんだけど不思議と清涼感があるのは、自然や人々の暮らしの精緻な描写のなせる業なのかな。りんご絞りとか、情景が立ち上がって甘酸っぱい匂いすらしてきそうだもの。
    あと、書き出しの父親ヨーゼフについての形容も秀逸。凡庸な父親を見事に写生しながら、背景やこの話の持つ雰囲気までをも召還するような。
    名作ってのはやっぱすごいね、と再認識。

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著者プロフィール

ヘルマン・ヘッセ(Hermann Hesse)
1877~1962年。ドイツ、バーデンヴュルテンベルク州生まれ。詩人、作家。1946年ノーベル文学賞受賞。代表作に『青春彷徨』(『郷愁』)『車輪の下』『デーミアン』『シッダールタ』『荒野の狼』『ガラス玉遊戯』などがある。

「2019年 『文庫 愛することができる人は幸せだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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