車輪の下 (新潮文庫)

制作 : Hermann Hesse  高橋 健二 
  • 新潮社
3.56
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本棚登録 : 6685
レビュー : 639
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102001035

作品紹介・あらすじ

ひたむきな自然児であるだけに傷つきやすい少年ハンスは、周囲の人々の期待にこたえようとひたすら勉強にうちこみ、神学校の入学試験に通った。だが、そこでの生活は少年の心を踏みにじる規則ずくめなものだった。少年らしい反抗に駆りたてられた彼は、学校を去って見習い工として出なおそうとする…。子どもの心と生活とを自らの文学のふるさととするヘッセの代表的自伝小説である。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルはかなりなじみがあったけれども、ちゃんと読んだのは初めてだった。

    海外の訳語小説は読みにくいという先入観から敬遠していたけれど、思ったより読みやすかった。

    多感な時期に、周囲の期待を押し付けられ、自分本来の大切なものを損なわれたこどもがどうなっていくか、そのときに感じる感覚なども含めて、とても丁寧に描かれている。

    もう中年期に差し掛かっている自分としては、あの頃の感じをすっかり忘れてしまった気がしていたけれど、読み進めるにつれ、そうだった、こんな感じだった、と思い出させてくれた。

  • 社会に順応できない主人公の悲劇を描いた作品。
    あるべき姿、であれないことの苦悩が長編として描かれている。社会が高度化し、緻密になって行くほど、このような人は増えて行くのかもしれない。
    程度の差はあれ、誰もが主人公の心情の一部を理解できるのではないか、と感じる。

  • 読了。ヘルマン・ヘッセの自伝的小説である。どんな外国語文学に共通して言えることと思うが、当時のドイツの情勢やヘッセについて知識があるかないかで小説の理解が異なると思う。小説を読む前に、解説から読むのも1つの方法と思う。
    悩みながら成長する微妙な少年の心の弱さ、もろさ。それに対する大人達の態度が子供を押しつぶしてしまう。
    ヘッセの言いたかったことは何だろうか? 読み終わっても何度も自分に問いかける。時を置いて再度読み返したい本。

  •  文豪ヘルマンヘッセの代表作で、神学校に行った勉強に追われ友情とを選択しなければならないはざまで揺れる少年の気持ちを描いた大作。
     まだ恋愛感情等を抱きえない少年の、周りの期待に応えなきゃという気持ちと、勉強でなくても個性を気に入ってくれる友人への気持ちというのは、現代に通じることは少なくても想像することが難しくないくらいには、わかりやすいテーマであると思います。それをうまく描き切ったという点で、ふつうの小説家ではできないものです。

  • 勉強だけではなくて、心の豊かさも必要不可欠だと改めて感じる。

  • 秀才ハンスの繊細な心がありありと描かれた一冊。周りの期待に応えようと必死になり、自分自身を見失う様は痛々しくもあり、少年の純粋さも垣間見えた。
    周りに期待され、それに応えるために己を捨て、自分自身がやりたいことも押さえつけて生きていく必要があるのか。私自身に当てはまる部分も多分にあるため、非常に心打たれた作品であった。

  • 教育とか抑圧とか、100年前からそんなに変わってないんだよなと思う。子を持つ身としてはいろいろ考えさせられる本。でもなんつーか、親である以上、存在が抑圧でもあるわけで、逃げ回るわけにもいかんだろ、とかね。あ、それはギーベンラート君とは関係ないか。
    筋としては暗い話なんだけど不思議と清涼感があるのは、自然や人々の暮らしの精緻な描写のなせる業なのかな。りんご絞りとか、情景が立ち上がって甘酸っぱい匂いすらしてきそうだもの。
    あと、書き出しの父親ヨーゼフについての形容も秀逸。凡庸な父親を見事に写生しながら、背景やこの話の持つ雰囲気までをも召還するような。
    名作ってのはやっぱすごいね、と再認識。

  • 学校や制度、または社会を「車輪」に見立てたヘッセの自伝小説
    神学校受験前に水車を壊すシーンが、自然児である自分との決定的な決別の象徴であり、多感な少年にとって残酷な場面であると感じた。
    ハンスは、無垢で感受に富む少年たちを均一化する教育(神学校や教師)や社会と自分らしく生きるために戦い、そこで疲弊し上手く立ち回れずに車輪の下敷きになってしまったのだろう。

  • あぁハンス…。自分は何かも中途半端だったからあそこまでの虚無感は無かったけどあれは苦しかった。今でも母親にゴミ捨て場の人になりたくなければ勉強しなさいとどやされるがなんかもう何でもいい気がしてきた。

  • かわいそうなハンス。さみしいハンス。誰にも慮られることなく冷たくなっていくハンス。ハンスがたどる運命の道はわたしがかつてたどりそうだった道だけに読んでいて同情してしまった。教育というものは大事だけれどそれよりも遊んでこの世の歓びを知ることはもっと大事だということをこの本は教えてくれる。少年期の心の浮き沈みを書いた本は多いけれど、これほど冷静に振り返っているものは初めて読んだ。
    かなり昔の本だし、読むのに苦労するだろうなと思っていたけれど、文語体なのにテンポがいいのか読みやすくてあっさり読了。

    (以下、好きなところ抜粋)
    彼はきわめて利口であったから、精神的な所有というものはすべて相対的な価値しかないということを忘れなかった。/彼らの中にはには、平等の意識と同時に、独立を望む心が現れた。そこにはじめて、多くの少年の子供らしいまどろみの中から、個性形成の芽ばえが目ざめたのである。筆紙には書けないような愛着としっととのささやかな場面が演ぜられ、それが発展して友情の契りになったり、おおっぴらにいがみあう敵意になったりした。/これを見たおとなの人があったら、このささやかな情景と、はにかんだ友情の表示のぎこちない内気な愛情と、ふたりの少年のまじめな細い顔とに、おそらくひそかな喜びを感じただろう。/ふたりの早熟な少年は友情の中に、初恋の微妙な神秘の一端を、わくわくする恥じらいをもって無自覚ながら、すでに味わっていたのだった。そのうえ、ふたりの結合は成熟する男の苦味のある魅力を持っていた。また同様に苦味のある薬味として、仲間全体に反抗心を持っていた。みんなにとってはハイルナーは親しめない男で、ハンスは不可解な男だった。それに、みんなのあいだの多くの友情は、そのころまだすべての無邪気な少年の戯れにすぎなかった。/先生たちが最も恐れるのは、それでなくても青年の発酵の始まる危険な年齢のころに早熟な少年に現れる異常な現象である。

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著者プロフィール

一八七七~一九六二年。ドイツ、ヴェルテンベルク州生まれ。詩人、作家。一九四六年ノーベル文学賞受賞。代表作に『郷愁』『車輪の下』『デーミアン』『シッダルタ』などがある。

「2016年 『文庫 少年の日の思い出』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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